優しい嘘つきのIS奮闘記 《完結》   作:乙女座

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お、おまたせしました。
ど、どうぞ


番外編 太平洋上に幻影は疾る 最終章 ~時空のたもと 夢轍~

「たった今アメリカとイスラエルが共同開発していた試作型IS『銀の福音』が暴走したと連絡が入った。同時に無人兵器『ジム』150機が共に暴走し福音と共に太平洋を横断しこちらに向かっている。」

 

さまざまな機材が置かれ対策本部とされ昨日の平和な夕食をとった所とは思えないような宴会場に千冬の声が響き渡る。

 

「日本の自衛隊も出撃したが撃墜された。幸い死者は出ていないそうだ。」

 

「よ、よかった。」

 

誰もまだ死んでいないことに安堵する一夏。

しかし、自衛隊すらも壊滅させるほどの連携を取る敵部隊。

 

「もう日本の領海内には入っている。私たちIS学園に届けられた任務は彼らの撃退、及び撃墜だ。」

 

刻々とこちらに向かってきている。

野放しにすれば罪のない人々が巻き添えになる可能性がある。

 

「ちょっと待ってください織斑先生。我々にそのような任務を下すのですか?」

 

デュバルが時を含んだ声で千冬に問いかける。

 

「あぁ、上からの命令だ。」

 

「バカな!確かに代表候補生とは言え私は実践経験があるがいい。だがラウラ少佐も含んではまだ学生であり子供だ!実戦経験もない!そのようなところに向かわせるとは上層部の人間はどうかしているぞ!」

 

「お、おちつけよデュバル。」

 

「………………」

 

黙る千冬。嫌な空気が流れる宴会場。そんな中沈黙を破った人がいた。

 

「デュバルさん。わたくしはかまいません。」

 

「オルコット孃?」

 

セシリアだ。

セシリアは目を閉じながらゆっくりと話し出す。

 

「わたくしたちは国の代表でここに来ました。最初は日本に対して酷いことを言ったりしましたが………町に出掛け商店街と言うところにいきましたわ。」

 

懐かしそうに話し出すセシリア。

 

「そこは男女とも平等で活気に溢れていましたわ。駅では電車に乗ったことのないわたくしに駅員の男性は優しく教えてくれましたわ。電車の中でも大荷物を持っているわたくしにまだ幼い子供が席を譲ってくれました。わたくしを日本の皆さんは助けてくれました。女尊男卑の世の中で女性に対して良い印象ではないIS学園の生徒であるわたくしを日本の方々は助けてくれました。温かく笑いかけてくれました。わたくしにはこの国に、日本に恩があります。そんな暖かなこの国が今危機なんです。わたくしは彼らのために戦います。」

 

手が震えているのは皆が見てわかる。

だが、彼女の瞳には覚悟が見てとれた。

 

「そうよ。あたしだってこの日本で住んでたのよ?あたしの第二の故郷を襲わせないわ!まだ会ってない友達がいっぱいいるんだから!それにあたしの家族が経営してた店。まだ残ってるのよ?また仲良く戻ってこれる様にって。ほんと、あそこの人達は……グスッ。お人好しなんだから………」

 

鈴も覚悟は決まっていた。

 

「僕だってこの国を守りたいよ。騙して編入してきたのにこの学園の皆は僕に優しくしてくれた。僕を受け入れてくれた。一緒に泣いたり、笑ったりしてくれた。もしここから僕は逃げ出せば一生後悔する。絶対に逃げない。守って見せる!」

 

シャルロットもいつもの笑顔でそう答える。

 

「フッ…私の力を発揮するときだな。それにデュバル。私たち軍人に戦いの意味を問うとはナンセンスだな。私たちシュヴァルツェ・ハーゼが戦う理由は……そこに守るべき民がいるからだ。私は一般市民を守る誇り高きドイツ軍の軍人だからな。織斑教官。見事完遂して見せましょう。」

 

ラウラは敬礼をして答える。

 

「わたしも………転校ばかりしてきたが、そのたびに私を優しく受け入れてくれた友が沢山いた。今でも手紙をくれる優しい友達だ。そんな友達のためなら私は戦う。家族のために。友達のために。そしてこの学園で出会えた仲間たちと一緒に。何かあれば言ってくれ。私は専用機が無いからここで皆の無事を願うことしか出来ないが皆が戻ってくることを信じている。」

 

箒も目に涙を浮かべながらそう答える。

 

「なぁ、デュバル。デュバルの覚悟を俺に話してくれたよな?俺だってできれば女性には戦ってほしくない。デュバルと同じだ。千冬ねぇを……たった一人の家族を守りたいんだ。友達も、仲間も。そのための力だ。何かを傷つける力じゃない。何かを守りたいと言う力なんだ。皆それを持ってる。そんな破壊しかしない兵器に俺たちが負けるわけがない!やらせてくれちふ、織斑先生!」

 

強い意思のこもった瞳で、覚悟を決めた一夏。

 

「…………すまなかった。君達の覚悟、しかと見せてもらった。では共に戦おう。そして皆で生きて帰ってくるぞ。」

 

「………すまない。では作戦内容だ。敵の情報はお前たちのISに直接おくってある。こんな非常事態だ。機密も秘密も無しだ。ジムに関してはそれほど強くはないが数が多い。そして危険かもしれんがデュバルにも出てもらうが無理だけはしないてくれ。デュバルを筆頭にお前たち代表候補生と織斑は前線に出てもらう。いち早く福音を無力化するために一夏。お前の零式白夜で無力化しろ。他のものは活路を開くんだ。一夏はなるべくエネルギーを使わせないために運んでもらうんだが………福音までは篠ノ之……任せるか?」

 

「待ってくれ千冬ねえ。箒は専用機が……」

 

箒が戦うと聞いて一夏が何か言おうとしたとき

 

「大丈夫だよぉ!箒ちゃんは赤椿があるからね!」

 

いつの間に居たのか束がいた。

 

「すまない篠ノ之箒。今は少しでも可能性が有るものをぶつけるほかないんだ。戦ってくれ。」

 

そう言って千冬は箒に頭を下げた。

ブリュンヒルデであるあの織斑千冬が頭を下げたのだ。

 

「え………ちーちゃん?」

 

「本当は君たちには戦わせたくない。でも………今はそれしか方法が無いんだ。すまない。本当にすまない。私も一応は出るつもりだが、最終防衛ラインで待機するようにと言われている。山田先生はこの旅館の防衛。我々大人がやらなければならないことをお前たちにやらせるのだ。」

 

「ま、まかせてください!」

 

箒は少し戸惑いながらも返答をする。

 

「頼むぞ?では束。設定などを頼む。作戦は30分後に開始する。そして………教師命令だ。必ず、必ず一人も欠けることなく戻ってきてくれ。以上だ!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 

作戦開始3分前。

代表候補生は砂浜に集まっていた。

 

「静かですわね。」

 

「もうすぐだね。僕………ちょっと怖いな。」

 

「………落ち着いて。皆、絶対帰るわよ!」

 

セシリア、シャルロット、鈴がISを展開。

 

「行こうか。一夏。乗ってくれ。」

 

「頼んだぞ箒。お前を信じる。」

 

「任せろ嫁。私が必ず守るからな。そうだ、帰ったら花を買いたいん「あんたそれ死亡フラグよ。」む。」

 

ISを展開し、箒の赤椿におぶさる形になる一夏。ラウラの死亡フラグを回避させた鈴。

 

「では、行こうか!諸君!行こうかヅダ!」

 

デュバルがヅダを展開する。

 

淡い水色。濃い青の迷彩が彩られ、モノアイが光る。

ヅダは今ここに甦った。

 

 

 

「敵が視認できるまであと500秒!各機戦闘体勢に入れ!戦力比は1対25だ!心してかかれ!」

 

デュバルの掛け声で各々武器を展開する。

一夏は片手に雪片弐型を展開する。

 

「敵影確認!いくぞ!」

 

ヅダがジムに攻撃をしかける。

シュツルムファウストを発射。ジムに直撃させ撃墜。続いて盾の白兵専用ピックを突出させジムに突き刺す。

近くのジムがパナップマシンガンで攻撃をするがヅダは突き刺したジムを盾にし突っ込んでいく。

 

「これだけ数がいるんですもの。狙い撃ちませんわ!ティアーズ!」

 

セシリアがビットを展開。

 

「乱れ撃ちますわ!」

 

両手にスターライトMKⅢを展開。同時攻撃を仕掛ける。

 

次々に撃墜されるジム。

 

そんな中突き進んでいく箒と一夏。

5機のジムが行く手を阻まんとおどりでる。

 

「やらせるか!くらえ!」

 

ラウラの駆るジュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンが放たれる弾は確実に命中し炎を纏い落ちていくジム3機。

 

「まだだよ!」

 

シャルロットのラファール・リヴァイヴカスタムのガルムから放たれた弾が、残りの2機を撃墜する。

 

「活路を開くわ!いっけえぇええええ!」

 

鈴の甲龍から見えない弾丸が放たれる。ジムは襲い来る見えない弾丸に次々と破壊されて落ちていく。そして白兵を仕掛ける鈴。

 

「よし!一夏!福音が見えた!後は任せたぞ!」

 

ジムの群れを突破し目の前には福音がたたずんていた。

 

「la?jdtrajtmdwtplakqmeajtwmetwmd!」

 

銀の鐘から大量の弾が放たれる。

箒は一夏の盾になりながら突き進む。

 

「ありがとう箒!いくぞ!白式!雪片弐型!」

 

箒の後ろから飛び出しイグニッションブーストで福音に接敵する。

 

「うおおおおおおお!」

 

一撃を入れる。

 

「la!la!jdjpdmpamudmtgbmwv」

 

距離を置こうとするが一夏がそれをよしとしない。

 

「うおおおおおおおお!!!!」

 

斬る、斬る、斬る、斬る。

 

「これが!守ると言う力だ!!!」

 

最後の最後の一撃を与える。

 

「キェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

断末魔のような声をあげて落ちていく福音。

ISが解除され搭乗者のナターシャ・ファイルスが墜ちていくのを一夏が受け止める。

 

「よかった。」

 

「一夏!!大丈夫か!?」

 

箒が一夏に近づいていく。

 

「あぁ…なんとかなったな。」

 

そう言い笑顔を見せる一夏。

 

『一夏。聞こえるか?こちらはジム部隊を全て排除した。そちらはどうだ?』

 

デュバルから通信が入る。

 

「あぁ、大丈夫だ。作戦はせいこ…!!箒避けろ!」

 

「!!」

 

一夏の怒号と共に箒はその場から離れる。そしてそこにビームが降り注いだ。

 

「何で?」

 

一夏が見つめる先に居るもの。

 

ジムの形はしてはいるが、自分達が見てきたジムではなかった。

 

『聞こえるか!一夏!今すぐそこから避難しろ!私が時間を稼ぐ!そいつらはジムの発展型、後期量産型だ!箒とファイルス氏を連れて撤退しろ!いいな!』

 

「な!デュバルを置いて行けるかよ!俺は『いいからいけ!』………ッ!りょう…かい。箒!エネルギー残ってるか?!」

 

「大丈夫だ。援護するから逃げるぞ!」

 

一夏はファイルスを抱いたまま撤退を開始する。

箒も後期量産型ジムに牽制をしながら撤退。そんな二人をいたぶるかのようにビームライフルを二人に浴びせるジム。

 

「くっ!」

 

「うぅ!」

 

「待たせた。後は任せたまえ。」

 

自分達の真横を凄いスピードで過ぎていったデュバルはヒートホークで1機のジムに切りかかる。

 

「!!」

 

「敵、攻撃対象変更。」

 

「撃墜スル。」

 

ジム4機はその場から少し離れたデュバルを追いかける。

 

 

「っ!箒この人を頼む!」

 

「一夏?!」

 

一夏はファイルスを箒に渡し、デュバルを追いかける。

 

「箒さん!一夏さんとデュバルさんは?」

 

浜に戻った箒を他の専用機持ちが問い詰める。

他のメンバーも無事ではあるが満身創痍であったためデュバルに撤退するように言われ戻ってきていた。

 

箒はファイルスを待ち構えていた救護班に渡し千冬に報告をする。

 

「今、デュバルがジム後期型を引き付けるために囮になりました。一夏がその後を追う形で………」

 

「織斑先生!」

 

真耶が走りながら旅館から出てきた。

 

「どうした!」

 

「デュバル君のヅダのエンジンがもうすぐで臨界点を突破しそうで、何度呼び掛けてもスピードを緩めません!」

 

「くっ!あいつは………まさかこの海域から離れようとしてるのか…」

 

千冬の顔が険しくなる。

 

「デュバル少佐………」

 

ラウラは何かを悟ったかのように静かに涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も聞こえない。

 

聞こえるのはヅダのエンジン音だけ。

 

 

先程から私のヅダはぐんぐんとスピードを上げていく。

後には4機のジムがついてきている。

 

一夏達は離脱できただろうか?

 

任務は成功しているだろうか?

 

よく考えればIS学園に来てから私は変わった。多くの人と関わったからだろう。ヅダの有能性を訴えるために走り続けて来たが、もはや必要ないだろう。

 

機体が軋んでいる音がする。

 

だが止まることは出来ない。

 

ん?後ろのジムの1機が減っているではないか。

 

「このやろおおおおおお!」

 

誰だ?誰の声だ?

 

『…………デュバル!………エンジンを……』

 

無線からは何かが聞こえるがわからない。

 

「デュバル!エンジンを切ってくれ!頼む!頼むからぁ!!!」

 

ジムの後ろには一夏が着いてきている。纏っているISの形状が変わっている。

 

あいつめ、セカンドシフトしたのか………本当に面白いやつだ。

 

彼と出会えて変われた。彼は優しい青年だった。

 

仲間を思い

 

信じ

 

自分の意思を曲げない。

 

彼ならきっと……………………………

 

あぁ、いつの間にか朝になっていたのか

綺麗なものだな

 

 

 

 

「エンジントラブル………ヤツハ……バケモノカ…………」

 

3機のジムが炎をあげ爆発し落ちていく。

 

一夏はそんなことに目もくれずデュバルを追いかける。

 

「デュバル!エンジンを切ってくれ!頼む!戻ってきてくれ!」

 

一夏は泣きながら叫ぶ、一夏の目にはエンジンから炎を出しているヅダが写っていた。

 

「一夏……無事だったのだな……ヅダは……もはやヅダはゴーストファイターなどではない………この決定的戦況で戦っている。この歴史は何人たりとも消すことはできまい。それに…………大切な友人を守れたのだから。」

 

「エンジンカット!!!!!!!!!」

 

一夏は自身のISが限界を迎えそうになっているのに気付き停止する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヅダは……デュバルと共に炎を纏い空中で火を吹きながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー

 

『福音事件』

 

アメリカとイスラエルの共同開発した銀の福音。

そして無人兵器ジムの暴走事件は大事件になることはなかった。アメリカは今回の事件は不慮の事故として発表、日本もジムを何体か受けとる形で穏便にすました。ドイツはこの事件で死亡したジャン・リュック・デュバル少佐はヅダの整備に何らかの原因があると言われ、事故死とされた。

 

しかし、俺は忘れない。俺の友達が最後まで逃げることなく走り続け散っていったことを。

 

 

優しい嘘つきのIS奮闘記 番外編

 

~太平洋上に幻影は疾る~

 

 

 

 




何か少し小走りだったような………
夢轍と時空のたもとの歌にそって作ったつもりがなぜか悲しいときはいつものほうが合ってるような気がする。


では次回からはバーニィのターンだ!

そして祝!お気に入り1000を突破していました!
これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いいたします!
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