今回は二本立て!どうぞ!
「………」
イーリスの言葉を最後に通信が切られた。
『ふふふ………頑張ってねバーニィ?』
そう言ってアメリカを発つ時に応援してくれた彼女はバーニィにとっては恩人であり、恩師でもあった。
『捕獲、あるいは撃破』
『搭乗者の生死は問わない』
ローガンが辛そうにしていた理由。自分の教え子が乗っているISが暴走、しかも政府からは生死は問わないと言われている。上層部の判断は正しい。被害を押さえるべく海上での撃破は一般市民を巻き込まない方法であるから。だが、それを実行する人たちはどうだろうか?
「………では作戦を説明する。作戦は……」
バーニィには千冬の作戦の概要が全く耳に入ってこなかった。
◇
結局作戦は束の乱入により箒、一夏が担当することになった。最後まで渋っていたが赤椿に乗り高速で銀の福音を無力化することになった。バックアップとしてシャルロット、バーニィが後衛に回る。チャンスは一度きり、失敗すれば死ぬかもしれない。これはいつもの模擬戦や試合とは違う。その現実がシャルロット、箒、一夏に重くのし掛かる。
「絶対……生きて帰ってこような」
「当たり前だろ?みんなで笑顔で学園に戻ろう」
『作戦開始まで5分』
無線から真耶の声が聞こえた。真耶は最後まで子供にはさせるべきではないと言ったが、政府からの命令には逆らえず、なら彼らのオペレーターになると言う形に落ち着いた。刻一刻と迫る作戦開始までの時間。四人は少しの言葉を交わすだけで沈黙が多かった。そんな中セシリアが不安そうな面持ちで旅館から出てきた。セシリアはバーニィに、近づく。
「バーナードさん……死なないですわよね?」
『バーニィ……死なないよね』
「勝てますわよね?」
『勝てるよね?!』
泣きそうな声でそう聞いてくるセシリアの頭をバーニィはISを解除し優しく撫でた。
「もちろんさ……ほら、早く戻らないと怒られる。任せとけって!」
◇
神様………お願いです……バーナードさんを……皆さんをお守りください……お父様…お母様……お願いです!
皆でまた楽しい学園生活を過ごせるように……
お願いします……
◇
『作戦開始!絶対……絶対四人で帰ってきてください!』
「「「「はい!」」」」
作戦が開始され、箒、一夏が先行し、そのあとをバーニィ、シャルロットが追った。
◇
『聞こえますか?ワイズマン君……織斑くん達の先制攻撃が避けられました。もう一度攻撃を仕掛けます。相手の気を引いてください!』
福音が視界に写る。一夏と箒さんが何とか福音の攻撃を避けていた。福音の武装は外付けされた実弾の武装。それ以外はアーマーを纏っており内部に付けられているとのことだった。
嫌だな……ガンダムと同じような装備だ……アーマーの中には広範囲に攻撃できるレーザーが装備されているため、長期戦は望まれない……一夏の白夜零式で装甲を破壊、その後に箒さんの赤椿による攻撃で終わり……しかし、先行攻撃が失敗した。この場合は俺とシャルロットが囮になり、一夏、箒さんの攻撃で無力化だ。
「いくぞ!シャルロット!」
「うん!」
シャルロットはガルムを展開し攻撃を開始。それに続いて俺もマシンガンを展開し攻撃を開始。
福音に、ヒットアンドアウェイで撹乱する。
アーマーが付いておりあまりスピードが出せない福音を追い詰めていく。
福音の動きが鈍くなってきていた。よし!いける!
そう思っていた。
「一夏!なにをしてる!」
「船…船が居るんだ!」
一夏の言った通り、真下には漁船があった。
辺り一帯は封鎖した筈だ。恐らく密漁船だろう……無視して作戦を続行した方がいい。冷たいかもしれないが、密漁船を守りながら戦うなんて一端の学生が出来るわけではない。仕方ないんだ。割り切らないといけない。しかし、一夏は違った。今までのあいつの考えを忘れていた。どんなときも決して他人を見捨てない。それが例え悪人でも…一夏のいいところでもあるが弱点でもある。
船を庇うような立ち位置になり福音の攻撃を受けていた。
「一夏!」
箒さんの怒号にも似た声にも反応せず船を守る一夏。
俺たちの隙をつき福音は一夏に接近、高速で体当たりをし、吹き飛ばす。更に両腕を力任せに一夏に叩きつけた。一夏は気を失い海へと堕ちていく。
「一夏!!」
箒さんは一夏を海面ギリギリで受け止め安否を確認していた。
作戦失敗だ………撤退しないといけない。でも一夏を抱え、あいつが身を挺して守った船を安全な所まで誘導しなければならない。どうする?どうすればいい?!
『作戦失敗です!急いで作戦海域から撤退してください!』
山田先生の悲鳴のような指示が無線から聞こえる。
誰も死なせたくない………そうだ………約束したじゃないか……誓ったじゃないか……皆を守るって…この命に代えても。
「箒さん!一夏を連れて撤退してくれ!シャルロットは船を安全領域まで誘導!頼む!」
「バーニィは!?」
「奴の足止めをする!行け!早くしろ!」
「だめ!残るなら僕も!」
「…頼む!」
◇
「…頼む!」
怒りを含んだ声。従う他なかった。これが最善の策とシャルロットは自身に言い聞かせ、箒に近寄る。
「箒、一夏を連れて離脱できる?」
優しくそう問う彼女だが、顔は悔しさと悲しさで一杯だった。
「いけるが…バーニィは?」
「足止めをするって………だから早く一夏を連れてここから離脱。早く………」
「……すまない。バーニィ!後は任せる!必ず戻ってくるからな!」
そう言って箒は離脱していく。シャルロットは船まで近づき誘導を開始する。
「絶対……死なないでね……」
そう呟き作戦領域から離脱を開始した。
◇
「…………」
バーニィは遠ざかっていく3つの反応を確認する。
覚悟を決め3人を追おうとする福音の真正面に行き進路を塞ぐ。
「……ナターシャさん」
バーニィはスモークを展開する。福音は視界を奪われるがすぐにセンサーを作動させる。しかし、それを見越してバーニィはEMPを作動させ無力感させる。煙の中からマシンガンで攻撃をするが、アーマーに覆われている福音には大したダメージにはならない。
「…なら」
バーニィはチェーンマインを展開。福音に巻き付け離れる。
「これで!」
スイッチを作動させチェーンマインを爆破させる。爆風で煙が晴れ、爆発により起きた煙に包まれる福音。
「…………まだか……」
煙が晴れ姿を現したのはアーマーを捨て、高機動に特化した福音が現れた。
「キェエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」
叫び声のような音を出したと思えばバーニィの視界から消えた。
「…………え?……うわぁ!」
後ろからの大量のビーム攻撃が直撃する。
体勢を立て直そうとするが福音がそれを許さない。
ビームサーベルを展開し一閃。
この攻撃だけでバーニィのシールドエネルギーは3割も削られた。
「………こんな……無理だ………でも」
諦めることはしない。逃げない。前世のようにはしない。最後まで足掻く。どれだけ惨めでも……皆を守る。ここで自分が倒れてしまえば一夏や箒、シャルロットに被害が及ぶかもしれない………ナターシャさんをイーリスさんにもう一度逢わせるために。
それから何分経ったかわからない。バーニィの意識は朦朧とし……致命的な攻撃を避けるのに精一杯だった。
―死ぬのかな―
ふと頭にそう言った考えがよぎる
―死なないですわよね?―
―絶対死なないでね―
一夏と箒の反応が領域から離脱。
シャルロットと船も領域から離脱した。
撤退は完了した。一刻も早く自身も離脱しなければならない。
「みんな………あと…すこ…し……あと…す…こしなんだ」
バチバチと音をたてるラファール。警告音が響く。
自身の搭乗者にこれ以上のダメージは命に関わることを伝える。バーニィは最後の力を振り絞り撤退を開始。だが、もう戦えない機体に福音は容赦なく最後の一撃をバーニィに叩き込んだ。意識を手放そうとした彼の頭に過ったのは
死にたくない
この一言だった。
意識を失った搭乗者をレッドゾーンに到達し解除される筈のラファールは意識を失ったバーニィを守るかのように解除されず共に海へと墜ちていった。