紅魔族なベル君   作:36ヶ崎

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ロキの口調マジでムズイ……


自己紹介

「エイナさあああああああん!!」

「え?」

 

 叫び声に反応したのはギルド一の受付嬢として名高いエイナ・チュールだ。エルフとしての見目麗しい美貌を持ちながらも、ヒューマンの親しみやすさを持つ彼女はハーフエルフである。

 

 そんな彼女は最近自分が担当することになった少年の冒険者の無事に安堵する。どこか弟のような感じのさせる彼の声に振り向くとーー

 

「エイナさあああああああああん!! アイズ・ヴァレンシュタインさんについて教えて下さああああああい!!」

「いやぁああああああああああ!!」

 

 全身を赤黒く染め上げ、異様な臭いをさせながら走ってくる少年の姿が目に飛び込んで来た!?

 

 

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 

 

「あのねぇベル君、流石にモンスターの返り血を浴びたまま来るのはどうかと思うよ?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 エイナさんの言葉に項垂れる僕。

 ギルド本部に備えてつけられた個室スペースの一角。そこで僕はエイナさんにお説教されていた。僕の常識のなさについて度々お説教されている。

 出会ってからまだ日は浅いはずなのに、この場所を利用した回数は既に数え切れない程だ。それだけ僕に常識がないということなのだろう。

 僕でさえこんなに怒られるのだ。里一番の非常識人であり、中二病なゆんゆんはどれくらい怒られるというのか。

 

「それで? アイズ・ヴァレンシュタイン氏についてだっけ?」

「はい、そうですそうです!」

 

 僕には食い気味に答える。

 が、エイナさんはちょっと困ったような顔をして。

 

「う〜ん、私が教えるより君が直接聞いた方がいいんじゃないかなぁ? 同じファミリアでしょ?」

「それは、そうなんですけど……」

 

 聞きたくても聞けないというのが本音だ。

 

 僕がロキ・ファミリアに入ったのはつい最近のことであり、その時にはアイズ・ヴァレンシュタインさんは不在だったのだ。なんでも、遠征に行っているらしい。

 だから僕が一方的に知っているだけで、アイズ・ヴァレンシュタインさんは僕の事を知らない。

 それに、もし仮に知り合いになれたとしても直接は聞けない。だって恥ずかしいし。

 

 そんな僕の反応に何かを察したエイナさんは、うーんと頭を悩ませてから。

 

「じゃあ、神ロキに聞くってのは?」

「……神さま、アイズ・ヴァレンシュタインさんのこと溺愛してるらしくて……。そんな事聞いたら何言われるか……」

「何も言われないと思うけどなぁ」

 

 多分、エイナさんの言う通りだろうけど……。でも、やっぱり少し不安が残る。あんな神さまだけど、嫌われたくはないし。

 

 エイナさんと話し合った結果

 結局の所は、アイズ・ヴァレンシュタインさんについては神さまに相談することになった。もしかしたら、協力してくれるかもと。

 それに、あれだけの美人ならば団員の中にも好意を寄せている人がいてもおかしくはない。だから、最悪の事態にはならないだろうと。

 

「……ベル君」

「はい?」

 

 帰り際、出口まで見送りに来てくれたエイナさんに呼び止められる。

 何か逡巡した素振りを見せた後、意を決したように。

 

「あのね、女性はやっぱり強くて頼り甲斐のある人に魅力を感じるの。アマゾネスがそうでしょ? ……だから、頑張れば……いつか、ね?」

「……」

「……もしかしたら、アイズ・ヴァレンシュタイン氏も振り向いてくれるかもよ?」

 

 それは紛れもなくギルドアドバイザーとしてではなく、エイナ・チュール個人からの言葉であった。

 年上の女性にあまり耐性のないベルにはそれが堪らなく嬉しかった。

 

 勢いよく飛び出して駆け出した後、振り返り。

 

「エイナさん、大好きー!!」

「ええっ!?」

「ありがとうございましたー!!」

 

 顔を真っ赤にさせて驚いたエイナさんを確認した後、僕は笑いながら街の中へと走っていった。

 目指すは本拠地(ホーム)

 

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 

 ここはロキ・ファミリアホーム本拠地(ホーム)、黄昏の館。

 夕食時である現在は一部を除いた殆どの団員がこの場に集まっている。

 夕食前ということもあり、皆少し興奮気味だ。

 

「ねえねえアイズー。あの白い髪の子誰かなー?」

「私たちが遠征に行ってる間に入団した人でしょうか?」

「多分、ロキから説明あるんじゃない?」

 

 それぞれがお互いの話に花を咲かす。その為、アイズの漏らした「あの子……」という呟きに気付く者はいない。

 

「ほな、皆少し静かにしてなー」

 

 瞬間、まるで時が止まったかのようであった。主神であるロキの言葉に団員が皆が従い、皆がこちらを向く。

 ロキはその反応に満足したように頷くと、

 

「最近ウチらの家族になったベルや! 皆仲良くしたってなー」

 

 ロキはそのままベルに自己紹介を促す。

 ベルは少し苦々しい顔をした後、覚悟を決め、

 

「我が名はベル・クラネル! やがて紅魔族随一の冒険者となる者!」

 

 辺りが静まり返った。

 先程ロキが意図的に作り出したものとは違い、自然に生じた静寂。それも物凄く重々しい。

 

 普段、明るく天真爛漫なティオナでさえもこの時ばかりは凍りついていた。

 当のベルの方もこの状況を幾分か予想していたようで若干の苦笑いだ。

 唯一、博学多才にして長寿を生きるエルフの王族のみが事の事情をいち早く理解をし、ため息を吐いていたのだったーーー




ゆんゆんは紅魔族的には中二病らしいです。
可哀想……

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