紅魔族なベル君   作:36ヶ崎

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妖精と白兎(1)

 はあ、なんで私が……

 昨日夜遅くにロキに呼ばれたと思ったら、新入りの子の指導役を言いつけられてしまった。

 ロキが認めたからには、悪い人ではないんでしょうが、昨日の自己紹介を見るにちょっと不安です。

 

 リヴェリア様が言うには、彼の一族である紅魔族ではあれが普通だとのこと。

 格好良さを追い求める所と変なネーミングセンスを除けば基本的には普通らしいのですが……

 

 新人を育てるのはファミリアにとって大切な事だ。自分だって駆け出しの頃はお世話になった。だからこそ、新人教育は先輩冒険者の務めであり、義務であることは分かってはいるんですが……それでも、私だって平行詠唱ができるように特訓をしたい。

 

 そんな思いを抱えながら、ロキ・ファミリアの新人冒険者ベル・クラネルの教育係に選ばれてしまったレフィーヤ・ウィリディスは己が主神が指定した待合場所へと歩を進めた。

 

 

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「ここ、だよね?」

 

 昨夜、神さまから教育係をつけると言われた。曰く美少女エルフだと。里の女の子達はちょっと……いや、かなり癖があった為か、結構楽しみだったりする。

 それに、おじいちゃんにも言われたし。男ならハーレムを作れ、と。まだまだその夢は諦めていない。

 

 神さまに言われていた集合場所に着くと、そこに居たのは……

 

 明るく、清楚で、優しそうなエルフ美少女などではなく、

 若干不機嫌な様相を呈した、厳しそーな妖精さんだったのである。

 

 そう、僕ことベル・クラネルと指導役たるレファーヤ・ウィリディスの出会いは最高でもなく、最悪でもない、実に残念なものであったのだ。

 

 

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「いいですか! いくら私がついているといえど、油断はしないで下さい。ダンジョンでは何が起こるか分からない、冒険者の常識です!」

「は、はい!」

 

 ダンジョン4階層。

 以前調子に乗って一人で来てしまった5階層手前。

 前回の時は1人でだったが、今回は指導役のレフィーヤさんと一緒だ。レフィーヤさんはなんていうか……今まで僕が出会ったことのないタイプの女性だ。

 まぁ、エルフとこうやって話すこと自体が初めてなんだけど。

 

 戦い方やダンジョンでの注意点、気をつけなければいけない事などを教えてもらいながら、進んでいく。それが自身の体験などを織り交ぜながらなので、とても分かりやすい。

 最初は怖そうな人だと思っていたけど、意外とって言ったら失礼だけど、優しい人だってことが分かる。

 

 僕が倒したモンスター達からレフィーヤさんと2人で魔石を引っ張り出していると。

 

「……なんていうか、貴方少し変ですね」

「え、ええぇ!? へ、変ですか? 僕って……」

 

 へ、変なのだろうか、僕は……

 これでも里の中では常識人のつもりだったんだけど……

 僕がその言葉に衝撃を受けていると、言葉を発した当の本人であるレフィーヤさんは僕の様子にクスクスと笑う。

 その様子を僕が訝しんでいると。

 

「い、いえ。別に悪い意味ではないですよ。ただ、あんだけみんなの前で啖呵を切っておきながら、私と話す時はおっかなびっくりなので。それが少し面白くて」

 

 け、貶されているのだろうか。そんなに僕この人に何かしたかなぁ?

 

「……意外といいものですね。人に教えるのって」

「? えっと……何の話ですか?」

「気にしないで下さい、こちらの話ですので」

 

「貴方は…………。…………。貴方のこと、私はなんと呼びましょうか?」

「呼び方ですか? 別になんとでも呼んでもらって結構ですよ?」

「なんとでも。……じゃあ、ベルでいいですかね?」

 

 本当ならこんな話、ダンジョンでする話ではないのだが今は別だ。僕たちは今、レストと呼ばれる場所で休憩している。

 出入り口が一方向のみの小さな空間のことだ。

 空間内部の周りの壁を意図的に壊すことでモンスターが産まれないようするのだそうだ。そうすることでエンカウントするモンスターは1つしかない出入り口のみからとなり、対処しやすくするのだとか。

 よく考えられてるなぁ。

 

 因みに、「なら、壁を壊しながら進めばいいんじゃないですか?」と聞いたところ、「いたそうですよ? 実際にやった人が。途中で武器が破損したらしいですけど」と返されてしまった。

 

 やっぱり僕じゃダメみたいだ。あの天才少女ならどんなことを思いつくのだろう?

 確か、僕より先にオラリオに来ている筈だけど。

 




誤った情報があれば、報告して貰えると幸いです。

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