堕ちた神々は何を願う 作:祀綺
(1回投稿したのを、消して直して再投稿した物です)
新大陸パトリアにて起こった内戦。
政治の中心であり、大都市のある北部パトリアは年々南部を摂取し、経済や技術の発展を目指した北部は、貿易を減らし国内需要を独占しようとした。
それに対し、南部パトリアは豊富な鉱山資源、農作物を売り外貨を獲て成長しようとした。
それゆえか、今は不明であるが、北部と南部の溝は深まり、更に北部の貿易の締め付け強化、南部の貧民の北部への流出などの小競り合いが続き、対抗措置として南部が『南部パトリア連合』を結成。それに対抗し北部が『北部パトリアユニオン』を結成し本格的な戦争へ移行する。
そして技術が上がり強い武器を扱い、人数が多い南部により劣勢を強いられた北部は、禁忌の技術により『擬神兵部隊』を結成、その力により一気に形勢を逆転させ勝利、和平まで勝ち取ったのであった。
しかし、終戦後、解散した擬神兵は各地で被害を起こし始めていた。その力により徐々に心を失い、神と謳われた者達は『獣』と呼ばれ始め人々に恐れられてしまっていたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
─北部パトリアのとある港街─
南北を分けた戦争にて勝利した北部でも戦争の爪痕は、戦争が終わって月日が経った今でも辺境である此処は、消せない程色濃く残っていた。年若い者達は少なく、かつて活気に溢れていたであろう街は、寂れ暗く賑わいとは真逆の雰囲気を醸し出していた。
「おい、まただってよ」
「なに?またなのか……何を言っても軍の連中は、聞く耳を持たないからな……どうする?」
「どうするって言ってもよ…………もうこれ以上、船も人も失うのは懲り懲りだぞ?」
海から離れた店にて、年老いた男2人が話していた。ここ数ヶ月、この街の沖合では船が突然沈没し、若者が数名行方不明となっていた。この事に街の住人は恐れ軍に頼んだが聞いて貰えず、更に海で
「……どうしたら良いってんだ」
「そういや……あいつはどうしてるかな……」
「あぁ……あの引きこもりか?戦争で死んだに決まってるだろ……戦争に勝ったと言っても、どれだけの奴が帰って来なかった?特にあいつは直ぐに死んじまったさ……」
「戦争に入る前は、あんなに元気だったのにな。戦争が始まったら引きこもっちまって……でも俺達の為、戦争に行ったんだよな……」
「あぁ…………支援金は、届いたんだよな。まぁそれで、若い連中の多くは居なくなって、此処には愛着のある奴や家族思いの連中しか居なくなっちまった」
男2人の会話は、それきり途絶えそのまま解散してしまった。そんな2人を外の物陰から見ていた男が居た。
白のロングコートを纏い、フードを深く被り
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
沖合では、1つのそこそこ大きい漁船が停泊していた。甲板に見えるのは、先程の白いコートの男のみ。つまり男は、漁船に乗り1人でここまで来たことになる。
その男は、甲板でただ立ち尽くすのみで、漁をする気配も無い。そもそも、服や周りの漁に使う筈の道具が無く、あるのは無数の樽のみである時点で、彼の目的は別にあると判断できた。
「…………来たか」
男が短く呟くと同時に、波が徐々に激しくなり海面が黒くなってきた。いや、
「仕方ないとはいえ、海上戦はキツイな……!」
男はコートの中に手を伸ばし、左右の腰から大口径の拳銃を2つ取り出し、即座に引き金を引いた。2つの銃口から出た弾丸は、船に絡みついたイカの触手を撃ち抜き、触手は海の中へ僅かに血を出しながら戻って行った。幸い、船は転覆しなかったが、何かが船を転覆させようとする意思の元襲って来ているのが分かった。そしてそれが、
「そろそろ出てこい、この引きこもり野郎……聴こえているんだろう?……隊の約束を果たしに来た」
男が海面に話し掛けると、海中から巨大なイカが現れた。数十メートルはあろう巨体。だが、その目には何処か理性を感じる光があり此方を見ていた。その巨大なイカにたいして、男は話し始めた。
「……久しぶりだな。相変わらず引きこもってたのか?まぁ故郷には帰ってきたみたいだか…………おかげで見つけるのは簡単だったな……おい、何か言ったらどうだ?オールド・マクドネル/
「……うるせぇ……引きこもってねぇよ……久しぶりだな中隊長……いや、元か。それともヴィゼルって前と同じ様に呼ぼうか?お前も、前みたいにマックと呼んでくれよな?」
「あぁ、ヴィゼルでいい……元気そうだな。その性格も、話し方もあの時から変わってない。変わったのは姿だけか」
───オールド……マックは親友の様に、楽しげにそして手足である触手をくねくねと動かしながら、此方に近づいてきた。
「あぁ……まぁ、陸には帰れなかったが、この体も慣れれば楽だぜ?ヴィゼルは今でも変わらねぇな、部隊の時からよ。そういや、最近は物騒になったなぁ?ここも戦争のせいですっかり錆びちまったせいか、この綺麗な海を汚す輩が多いぜ……」
「……確かに、海は綺麗だな。……マック、聞くが最近この周辺の海で、船が沈没する事件が多発している。そのどれもが、海に引きずり込まれるか、何かに潰されていた……マック、お前の仕業だろう?どうしてそんな事をした、優しかったお前がどうしてだ」
白いコートの男──ヴィゼルはその手に持った銃を突きつけ、告げた。
「…………ヴィゼル、この海を守る為に……綺麗な海を見続けたい
「…………そうか……お前……」
さっきから、話に妙な違和感がある。その違和感の正体が今の発言で分かった。
「……お前、人の区別がついてないどころか、
ヴィゼルは二丁の銃を構え、戦闘体制に移行した。これ以上、被害を出さない為、隊の約束を果たす為、そして願いを守る為に。
「おいおい、やんのかよ……さっきからお前が居たから、見逃してたが、もう我慢できねえ……そのでかいゴミを片付けさせろ!…………あ?ヴィゼル?お〜い……どこ行った?今の一瞬で……」
ヴィゼルは船内に隠れ、クラーケンの事を窓から見ていた。
「………(船に隠れれば、あいつは俺を認識出来ない。あいつは船をゴミや海を荒らす輩に見えるのか…………急所を撃ち一撃で終わらす)」
ヴィゼルは左に銃を構えたまま、右手で火をつけ、オールドの様子を伺った。
「あいつどこ行った?まぁいいか……さあって……さっさと消えろよゴミ!……海を汚しやがって!」
オールドはその腕を振り上げ、船に叩きつけた。その瞬間、置いてあった樽が割れ中から液体が流れた。それを見た瞬間、ヴィゼルは火を樽の方に投げ、逆側の甲板へ走った。
液体に火が触れた途端、爆発しクラーケンの触手は爆発で飛び散り、更に体に付着していた液体にも炎が引火し燃えだした。
「な!!こ、これは……油?!あ、あぁ海が!海が汚れる!!誰だ!!誰がこのゴミを捨てた!!」
「……俺だ、クラーケン。海上で動きを封じるには、お前の手足を飛ばせばいい。油を選んでよかったな、海を汚す奴の前でお前は逃げないだろう?……さぁ、俺だぞ、このゴミを捨てたのは」
ヴィゼルはそう言うと、銃で数発撃ち挑発する様に、船の後ろに出てきた。
ヴィゼルの発言に、驚きつつ顔を向けたクラーケンの顔には、驚愕と憤怒の形相が現れていた。そしてその双眸には、先程の理性は存在せず、あるのは人間性を失った獣の光に、敵対者を排除しようとする意思のある炎であった。
「……そうか…………お前かヴィゼル!!この海を汚す輩はお前だったか!!許さない!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!キシュアァァアァァアァァァアァ!!!!」
爆発の影響で沈没し始めた船の前半分を、クラーケンは突撃で沈めそのまま、再生した触手でヴィゼル本人ごと、残りの後ろ半分しかない船を叩きつけた。
「くっ!……流石の再生力だな」
ヴィゼルは銃で触手に対して、応戦して触手を何本か飛ばすが、直ぐに再生し何度も何度も船の残骸が沈み終わるまで、ヴィゼルと船事その海面を叩き続けた。
「はぁ……はぁ…………ははっ……ゴミが片付いた……ゴミを捨てる野郎も死んだ……は、ははは……ひひひひっ!!これからは、綺麗な海だ!!」
クラーケンは手足を上に掲げ、その巨体を揺らし笑い喜んでいた。だが、その笑いは周りの海洋生物たちへ恐怖与え、揺れることで生じる高波は陸地まで届き人々に謎の恐怖の存在を植え付けることになった。
「…………さぁて、あの
クラーケンは、陸地に見える港町へ動き始めた。既に彼には、故郷である街も一つの海を汚すゴミに見えていた。
「流石に大きい……どうするか……うん?何だ?急に暗く……!!」
「もう眠れ。お前のやるべき事は終わったんだ」
唐突にクラーケンに影が降りた。とても大きく、それでいてクラーケンの巨体に迫る大きさ。太陽は隠れ、クラーケンに降り注ぐ光は、無くなった。そして、急速に何かが上から近づいてくる。
「お、お前……!!」
クラーケン──オールド・マクドネルが最後に見た光景は、自身の眼前に高速で迫る巨大な翼だった。
────
───
──
─
後日、ある港町では巨大なイカの死骸が、浜に打ち上げられた。それは直ぐに軍が駆けつける事態となり、直ぐに基地へ運ばれる事となった。
ある街人の証言によれば、イカの頭頂部は何かでかい物で穿かれた様に穴が空いていたらしい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
山々の峠を超え、僅かな平地にある村の入口付近に来たヴィゼルは、クラーケンとの戦闘後、山を超え移動していた。
「はぁ……少し、休憩……するか…………」
ヴィゼルは、村に立ち寄り少し休もうと考えていた。先日のクラーケン戦で、力を久方ぶりに使った影響で疲労が溜まっていた。
「ここは、リヴレッドウッド……か。泊まれそうな所は無いな……野宿か……」
戦時中、海上での戦闘は僅かにあったが、殆どが飛行可能な奴や水中戦の行える奴で作戦を決行していたから、俺含め主に陸上戦の奴は慣れなかったな…………あぁもっと慣れとくべきだった。ハンクの奴は殆ど俺を作戦に参加させなかったからなぁ…………。
ヴィゼルが、村の中に入り途方に暮れていると、村の奥から来た1人の娘が食材を入れた籠をもって近寄ってきた。
「あの……どうしたんですか?……え!軍人……って事は、父に用があるんですか?」
清楚な服装に、腰まで届く三つ編み、そして………
「あぁ……何、たまたま山を超えたら、村が見えたんでな。少し休みに寄ったんだが……済まない、気を悪くしたな。俺は出てくよ」
「そ、そんな事はないです!……すみません、てっきり父に何かあると思って……もう戦争は終わって、ただ静かに暮らしたいのに……、あ!もし良かったら、家に来ませんか?お茶をお出ししますから……」
…………静かに暮らしたい……か、確かにこんなまだ子供と言えるくらいの子は、もっと笑って居るべきなのだろうが、戦争に勝ったとはいえ、戦争のせいでそんな暇もないか…………。
「……分かった。言った通り、少し休もうと考えていた所だ。お茶を貰おう」
俺はそのまま、少女の後ろをついて行った。途中、村の大通りを通ったが、村人の目線が良い物でないのは確認できた。それは、俺やこの少女にも向けられていた物だ。確実に何かある、軍服の俺を睨むならまだしも、少女に向ける意味がない。俺はその
それは、目的地である少女の家に向かい直ぐに分かった。どうして、この村で少女があんな目線を向けられるのか、軍服の俺が少女の父に用があると勘違いされたかが、分かった。
「着きましたよ。紹介しますね……こんな姿ですが、私の父、『
家である孤児院より頭一つでかい、全身硬い鎧の様な鱗に包まれた巨躯、それを優に超える大きな両翼、長く先が僅かに膨らんでいる尻尾、頭上を覆う様にある巨大な角。
それは正しく『ドラゴン』と呼べる、神話を代表する生物であった。それに、擬神兵部隊で数いる龍の中でも、ここまで巨躯なのは、あいつらと
「お、お前……ウィルか?……擬神兵『ニーズヘッグ』!……………あぁ、そうか……じゃあこの子がシャールか、お前の自慢の娘……確かに、良い娘さんだな」
「グルルルル……グアァァ」
ウィルは頭を、地面に着くまで下げ唸った。人の姿と引き換えに得た力は、話す事すら奪ったのだ。今は唸ることしかできない。…………が、俺の
「触れるぞウィル」
俺は頭に触れ目を閉じた。戦時中、力により言語能力を失う者達が多数いた。そんな時、作戦において支障が無いように意思疎通する必要があった、そこで俺は擬神兵になった際に手に入れた、
まぁその生物が
それに、理性も失いかけだとこれは役に立たない。最初にやった奴は理性を失うのが早くて、これが出来ず力を疑ったからな。あの鳥野郎…………触れる以前に嘴でつついて来るからな……。
「…………(無事に故郷に帰れたんだなウィル、それにまだ意識があるなんてな)」
「…………(中隊長こそ、無事だったんですね。……はい、まだ私には意識がありますが、もし無くなってしまったらと思うと…………今ですら、私のせいでシャールに無理をさせてしまっている……子供達も私のせいで、危ないと遠くに行かせてしまった。中隊長、私はどうしたら………)」
「…………(その時は、俺が約束を守るさ。ハンクの野郎もきっと約束を果たしている…………ハンクか俺がしっかり役目を果たす。ただ…………ケインはどうもきな臭い、何処に居るのかも分からない、それに、何を考えているのかもな)」
「グァァ……グゥゥ(分かりました。どうか……頼みます。私は最後まで、この子の事を見守って居たいと思います)」
「あ、あの〜……どうかしましたか?急に…………」
目を開け横を見ると、シャールが此方を不安そうに見ていた。まぁ確かに、俺や対象以外にはこの会話は聞こえない。ただ目を閉じ黙っている様にしか見えないからな。…………この子は優しい、異形の姿になったウィルの事を、しっかり支えている。きっと彼女の存在が、ウィルの心を失うのを阻止しているのかもしれない。
「……なんでもない。ウィルが君に、迷惑を掛けてすまないと言っていた」
「え、えぇそんな事は無いよ!お父さんにこそ不自由な思いをさせちゃってるし…………」
シャールは下を向き、落ち込んでしまった。この親子は本当に似ている。あぁ、本当に…………温かい、こんな空気を味わうのは何時ぶりだろう。俺はシャールの頭に手を置き、孤児院の中に向かった。
「……さぁお茶を飲ませてくれ……出来れば、今夜一晩だけ、泊まらせてくれると助かる………………鍵が……」
「あ、はい!……って待ってください!い、今鍵開けますから?!」
───
──
─
「ありがとう、良く眠れた。生活が苦しいだろうに、晩飯まで出してくれてありがとう。これからもウィルの事、支えてやって欲しい。もし何かあったら軍に言え、ウィルの名を出せば、大抵は要望が通るはずだ」
「いいえ、此方こそありがとうございました。まだ人の姿の父の事を、知ってる方に会えただけでも良かったです。……これから何処へ行かれるんですか?」
俺はコートを着て、フードを被り準備を整えた後、ウィルとシャールに向け言った。
「一度軍に行って、情報局に擬神兵の場所を聞いてくる。此処には、もう来ないと思う、それじゃあな」
俺は後ろで手を振っているシャールと、静かに見つめているウィルの事を僅かに見たあと、村の外に出て、首都であるニューフォードにある情報局を目指した。
……シャールには、擬神兵の事を余り話さなかった。あんな顔をしている少女に、いずれ父を殺すなど言えるはずもない。
今後様々な人や仲間に憎まれようとも、隊の約束を果たさなければいけない。既に俺はあの時、あの戦場で決めたんだ。例え己を殺しても願いは果たすと………………。
それが、俺があの戦争で
描きたくなっちゃったです。まぁ気晴らし的な……そんな感じで書くから超不定期更新だけど、まぁ続けば良いなと、思ってます。
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