改行が上手くいっていなかったので修正。
いわゆる魔法少女の説明回。
前回のあらすじ、主人公である飛鳥レイのソウルジェムが魔女によって奪われてしまった! 大変だ!です。
7
――夜、巴マミの自宅。
なぜ――。
酷く困惑している。
殺されたわけでもなく、飛鳥レイは死んだ。
いったい死んでしまう要素がどこにあったのか。それが不明だった。
鹿目まどかは彼女の死を知り、悲しみで顔がぐしゃぐしゃになった。
巴マミは、そんなまどかを慰めながら仲間を失ったことに胸を痛めている。
佐倉杏子は――
『やられたね。まさか、ソウルジェムを狙ってくる魔女が現れるなんて想定外だった』
「やっぱ、それが原因だったか」
状況を分析するにレイが死んでしまったのは、魔女に彼女のソウルジェムを奪われたことに起因するのではないかと杏子は推測していた。
「佐倉さん、どういうこと?」
「魔法少女はそう簡単にくたばったりしねぇ。頑丈にできてるからな。
けど、今回、レイのやつは戦いの中で大きなダメージを負ったわけでもなく、怪我をしたわけでもなく、魔力を奪われたくらいだった。そんなんじゃ、死んだりしねぇよ」
魔法を遠慮なく行使しても、グリーフシードを使うことでソウルジェムの穢れを取り除くことで魔法を再使用できることから、魔力が枯渇してもすぐに死んでしまうことはありえない。
「衰弱はしたとしても、あとで何とかなる。加えて、あの時のレイは戦い続けるのもできただろうし」
だからこそ。
「不可解なんだよ。なにもかも。マミの背中でアイツがいきなり息を引き取ったこと自体が。
なあ、キュゥべえ。アンタ、アタシたちに話していないソウルジェム秘密があるんじゃないか?」
「えっと、ソウルジェムは、私たちが魔法少女になったときに生まれるものなんだよね。だから、魔法を使うためのものなんじゃないの?」
涙を拭ったまどかが質問する。
「鹿目さん。ソウルジェムの使用方法は、魔法少女への変身と魔法の行使よ。そして、魔法を使ったことによって溜まってしまう穢れをグリーフシードによって浄化するの」
ソウルジェムとはそういうもの。
まどかは、魔法少女になった時に教えてもらったことを再確認する。だからこそ、新たな疑問が生まれた。
「じゃあ、なんでソウルジェムには穢れが溜まるんだろ」
「それは……」
「そこがアタシもずっと引っかかってたのさ。さぁ、教えなよ」
三人の視線がキュゥべえに刺さる。
『まったく。仕方ないなー、君たちは。じゃあ、ソウルジェムの事実について話そうじゃないか』
無機質な声色。
キュゥべえの語る真実は、今まで語らなかっただけのもの。
聞かれなかったから語る必要のなかっただけのもの。
隠していたわけではないからこそ、「事実」と彼は言った。
『まずはソウルジェムの穢れが溜まってしまう理由についてだね。
それは君たちの魂を代償に行われる現象(魔法)を起こすためのの等価交換さ。
人間には到底行使することの出来ない奇跡を現実にするための対価。それがソウルジェムの穢れさ』
「つまり、アタシ達は自分の命を糧に魔法を使ってるってわけかっ!」
「騙していたわけね」
「そんなのってあんまりだよ……っ!」
必ずこの悪魔は少女たちにこう持ちかける。
『何を言ってるのさ。ちゃんとボクは聞いたはずだよ。その祈りに
きちんと話をしている。契約に齟齬があってはならないからだ。
『それを承諾して祈りを捧げたのは君たちだ。そんなふうに怒りを露わにするなんて、まったくワケが分からないよ』
「……」
『さて、話を戻そうか。
グリーフシードに移している穢れは君たちの魂の負(マイナス)の面だ。正(プラス)の部分が負(マイナス)に変わるとも言える』
「魂とは人の心のことか?」
『言い換えるのなら、心という意味は狭義では当てはまるね。
生物である以上、正によって魂は構成されているワケだけれど、それが正の反対である負に変換されるということは君たちにとって良い意味では無い』
キュゥべえは魔法少女になった少女たちに戦い方を教える中で、魂の大部分がマイナスに染まり切らない方法をも伝える。
戦い続けるためには魔法が必要であり、魔法を使うためにはグリーフシードが必要なのである。
だからだ。これまでは魔力の消費をグリーフシードの使用によって補填できると思っていた。だが、考えてみればすぐに分かるだろう。消費したものを別のものに移したところで何も変わらない。
であれば、悪いものを自分から切除するためにそれを使っているのではないかと。
命を生かすために、手術で内蔵を切り落とすようなもの。身体から膿を出していたのだ。
『もちろん、魔法少女としての役目を果たすのさ。そして、彼女たちには新たな役割が生まれる』
嫌な感じだった。
『そろそろ気づいたんじゃないかな。ソウルジェムが穢れを溜め込み、完全に染まり切ると、グリーフシードと化す。
すなわち、君たちは魔女になるのさ』
「なにっ!?」
「それって!」
『この国では、成長途中の女性のことを少女と呼ぶんだろう。だったら、やがて魔女になる君たちのことは魔法少女と呼ぶべきだよね』
「だったら、今まで倒してきた魔女たちは人間だったっていうのかよ!」
『全部がそうというわけではない。知っての通り、魔女は君たち人間から転じたものもいれば、使い魔から転じるものもいる。だから、一概には言えないのさ』
穢れをため込んだただのグリーフシードが魔女と化すこともある。だとしても、
「私たちは、同じように奇跡を願った少女たちをこの手にかけてきたということ……?」
『そうなるね』
「ひっぐ、うぇ、いっ……」
『何を悲しむ必要があるんだい? 彼女たちは君たちにとっては、知りもしない存在だろう。そんな対象に対して、感情を割くこと自体が無駄だとボクは思うんだけれど』
「テメェ!」
杏子は思わず、キュゥべえの首根っこを掴んで持ち上げた。
宙に吊るすようにして睨みつけている。
正義感の強いマミは自身のしてきたことに対して、苦しみ、憔悴した。相手を思いやる優しいまどかは、悲しみの運命にある魔法少女を想い涙した。
『君たちが魔女になる際に生まれる膨大な感情のエネルギーの回収がボクたちの役目なんだ。
今のレイのソウルジェムは魔女に奪われたままだ。これだとエネルギー回収が出来ない可能性がある。だから、みんなで協力して、レイを助け出そう!』
「どの口がっ!」
キュゥべえの目を見た。
感情の宿らない目。だが、嘘を吐いているようにも思えない目だ。
だから、きっとこの生物は本気でエネルギー回収のためだけに飛鳥レイの救出を依頼してきている。
『包み隠さず、話したというのに何をそんなに怒っているのか……人間とは、やはり不可解な生命だ』
「なら、一生不可解なままで構わないさ。理解されたいとも思わないね」
状況を打破するために必要なのは情報である。
ソウルジェムについての情報は得た。あとは助け出すために。
「どうすれば、いい。どうすれば、レイを助けられる……」
『さすがだよ、佐倉杏子。君は常に物事を冷静に捉えられる人物だ』
「御託はいい、早く教えろ」
『助けられるという保証はどこにもない。しかし、事は急がなければならない。なぜなら、今こうしているうちにもレイのソウルジェムは魔女に取り込まれつつあるのだから』
時間との勝負だった。
飛鳥レイのソウルジェムが魔女に馴染み、完全に取り込まれてしまえば、そこで終わり。本当にレイが死んでしまう
それは避けなければならなかった。
『それにレイ抜きでは、これからやってくるワルプルギスの夜には到底敵わないだろうね。そういった点からも、レイを助け出すことをオススメするよ』
超弩級。災害級の魔女。それがワルプルギスの夜と呼ばれている魔女。
『まあ、それは置いておくとして、ソウルジェムとは君たちそのものだ。通常は肌身離さず、身に着けているだろう。肉体を維持することも、動かすことにも役立っている。しかし、それと身体との距離が大きく離れてしまえば、動かすことも出来なくなる』
ゆえに。
『もう一度、レイと魔女が近づき、出会えば、彼女の身体は息を吹き返す。そこからは君たち次第だね。期待しているよ』
「なにか、方法はないの!?」
『なにせ、前例がないからね。これといった解決策は提示できないな。明確な判断からきた方法でなければ、それこそ君たちの怒りをさらに買うことになる』
「そんな……」
「――あきらめんな」
言い放った。
杏子には根拠なぞ、どこにもない。魔女を倒したとしても、レイを助けられるとも限らない。
分からない。自分には助け出せる自信なんか何もない。
それでも、
「アタシたちは魔法少女だ。奇跡を起こすのがアタシたちだろ。だからさ、心配すんな。なんとかなる」
アタシらしくないな、と杏子は思う。
自分のためにだけ戦うと決めたはずなのに、こうして同じ魔法少女の仲間とつるみ、気づけば、必死になって助けようとしていた。
そういえば、本人には言ったことはないが、レイのことをダチだと口にしたことがある。
「フッ」
たくさんの影響を受けていたみたいだ。それが可笑しくて、笑みが出た。
「絶対に助けて見せる」
「そうね、くよくよしてても始まらないわ。まだ何も終わってないもの」
「そうですね。杏子ちゃんの言う通り、なんとかなる。奇跡だって起こす。レイちゃんを助けて見せる!」
三人の心に火が灯る。
熱い勇気の火だ。暖かい、光だ。
――佐倉杏子は友達を助けるために全力だった。
8
「僕はどうなってしまったのだろう」
意識がはっきりとしない。ぼんやりと、宙を漂っているような感覚だけが脳を支配している。
レイはその感覚に身を任せていた。。
『おい、起きろ! いつまで寝てんだー! おーい』
「あと、五分……」
学校に行きたくない子供の台詞である。
『変な夢でも見てんのか。じゃあ、必殺のウルトラゼロキックで……』
「暴力は反対ですっ!」
飛び起きた。
寝ている時に蹴られるのは寝覚めが悪すぎる。といいうより、起床が遅れただけで、キックされるのは理不尽だ。
「……だれ?」
赤と青と銀の人……人?
人なのだろうか。二足歩行ではあるが、人間っぽくはない。
頭には二本の鋭利な、なんだろう。
「トサカ……?」
『いや、トサカて。これはゼロスラッガーっていうカッコいい武器でだなぁ……イケてるだろ?』
「イケてる、イケてるっ。ちょー、センス良いよ!」
『だろぉ。やっぱり、分かるやつにはこの良さが分かるんだよなー』
「フォルムが何と言ってもカッコいいね。しかも、しっかりと手入れされていてるのもポイント高めだよ」
『くぅーー』
握手を交わす。
二人の顔はどこか満足げだ。
レイは目の前の謎の生命とすっかり意気投合していた。
『久しぶりだな、レイ』
「……あれ。どこかで僕とお会いしたことがありまあしたっけ?」
レイの記憶の中にはイカしたトサカの知り合いはいない。
彼はレイの反応を見て、納得のいったように彼は言葉を続けた。
『そういえば、この姿では今回が初めてだったか。だったら、改めて自己紹介だ。
俺の名はゼロ。ウルトラマンゼロだ。以前、この星ではモロボシ・シンと名乗ったことがある』
「……え、シンくん!? うそ、やだっ、久しぶり!」
『三年ぶりだな。そういうお前は、けっこうおっきくなったじゃねえか』
「もはや、レディーだよ。レディー」
『ない胸のくせに、淑女を名乗るな』
「まだまだ発展途上だよ!」
正確には発育途上。そして、反応は浪速のおばちゃん。
胸がないことはあまり気にしてはいない。しかし、面と向かって言われると、傷つくものもある。
少女の心は繊細なのだ。
「ところで、シンくんは宇宙人なの?」
『ああ。故郷はM-七八星雲、光の国出身のウルトラマン。呼び方はゼロでも、シンでも、どっちでもいいぜ』
「じゃあ、シンくんで」
ウルトラマンの姿にシンの貌が重なった。
やっぱり、この温もりは間違いなく昔出会ったモロボシ・シンのものを感じる。
レイの心には懐かしさからこみ上げるものがあった。
『宇宙人であるカミングアウトをしたのに、えらく普通だな』
「でも、シンくんはシンくんでしょ?」
『お前、その歳で成熟しすぎじゃないか』
「なにせ、レディーですから」
褒めると調子づくタイプなのである。
「ところでさ、なんでシンくんとの奇跡の再会が果たされたのかな?」
彼とは三年前に別れてそれっきりだ。街ですれ違うことも、噂を聞くことも無かった。
『簡単に説明すると、俺の光をお前に分け与えたからだ』
「基準がウルトラマンでよく分かんないー」
彼は、そうだな……と思案して答える。
『あの時のお前は、心が暗く、酷く濁っていた。大きな闇に囚われていたんだ。
それを浄化するためには同じウルトラマンの光を分け与えるしか助ける方法が無かった』
当時、酷く荒んでいたのは覚えている。
どうしようもないほどに自分は世界を拒んでいた。
友達を失い、助け、失う。
自身の生に意味を見失っていた。
そんな時に出会ったのが彼、モロボシ・シン。ウルトラマンゼロだった。
……同じウルトラマン?
「待って、同じウルトラマンってどういうこと!?」
『お前、やっぱ自分では気づいていなかったか』
「ということは、僕も宇宙人っ!? でも、この星で育ってきたんだけどっ! いったいどうなってんだ〜!」
『いや、別に宇宙人というわけではないんだがな』
「そうなの?」
てっきり、自分も人間ではなかったものと思ったレイ。
その理由がゼロから語られる。
『昔話を少ししよう。かつて、とある宇宙で光の巨人と闇の眷属と戦争があった。
この戦いにおいて、一人の闇の眷属が光の軍勢に付き、状況は一転。光の巨人たちが勝利を掴んだ。
その巨人の名はティガ。光の巨人ティガ』
しかし、その巨人は元来、光の巨人であったという。闇に囚われ、自分を見失ったが、もう一度光を取り戻した勇者。
ユザレという名の女性が彼に心の光を取り戻させる要因になったらしい。
今のレイとゼロの関係に似ている。
闇へと堕ちかけたレイ。それを救ったゼロ。性別や巨人としては逆なのかもしれないが、共通点が二人にあるなぁとレイは感じた。
『そうして、ティガたちは自分たちの遺伝子を人類に託し、この
「だから、同じ
『おそらくだが、な』
「そっか」
出会いはロマンチックな運命などではなく、決められていた必定。
『惹かれて見つけるに至ったのはそれが理由だと思うが、だからって助けたのはそれだけじゃないぞ』
「え?」
『同じ
誰かを助けるのに理由なんているかよ。お前が苦しんでいたから助けたいと思った。それだけだ』
弱い者を助ける。それがウルトラマンではない。
彼らはきっとどのような存在であったとしても、相手を尊び、手を伸ばす。
差し伸べるのではない。手を取ろうとするのだ。
それが不可能な時もある。それでも、彼らは僅かな
それが宇宙に響く、彼らが光の巨人と呼ばれる所以。
「あっはっは、単純明快だね。これほど、心に深く刺さるものはないよ」
『だろ? 助けたいから助けた、でいいんだ』
他人を助けるなんてエゴでしかない。自身がそう思ったから助ける。
そんな理由でいいのだ。
救いの手を必要としないものだっているだろう。それでも、その命を守りたいと思う心がある。
「たしかに、それ以上の理由はいらないね」
『テメェの守りたいもんを守ればいい。難しいこと考えるのはそれからだ』
ふと、レイは杏子と彼は似ていると思った。
気質や考え方が近いのだろう。感情に任せては行動せず、理性的に動くが、胸の中に大きな情熱を秘めている。
熱い人物。それが二人の共通点だ。
『……よぉし!説教垂れるのはここまでだ。なぜ、今、このタイミングで俺が出てきたのかを簡潔に述べるぞ』
「は、はいっ!」
『俺の存在は、以前、お前に渡した光の残滓のようなもの。そこに宿しておいた俺の意思の欠片だ。
もう一度、お前の心(たましい)が危険領域に達した際のセーフティとして設けていたのが俺というわけだ』
「やっぱり、けっこうやばい状態ってことね」
『ああ。だが、まだ終わったわけじゃない。本当の戦いはここからだぜ』
前に言ったことのある言葉に愛おしさが込み上げる。それを発したのは彼の影響だったのだろう。
愛おしさといっても、彼を恋愛感情をもってして見ているわけではない。
優しい、この暖かい気持ちが愛おしさなのだとレイは思う。
『俺の力(光)はとっくにお前の心(たましい)に融けている。どう扱うかもお前が決めろ』
「うん」
『これから先、とてつもなく大きな困難が待ち受けているだろう。挫け、膝を着くこともあるかもしれない』
「うん」
『それでもお前には、お前を信じる仲間がいる。それを忘れるな』
「うん」
レイは光の遺伝子を継いでいる。
避けることのできない未来が待っている。
同じ光の戦士である
『レイ、光を継ぐ者として、どう在りたい?』
――遥か太古から現代へと続く意思があった。
これは、まさに運命なのだろう。
光の巨人の遺伝子を持つ者が魔法少女として、堕ちた闇である魔女を討つ。
本質を光として、そっちに引っ張られることもあるだろう。それでも、運命を選び取るのは彼女自身だ。彼女の手が掴んだものが彼女自身の
それだけは誰にも譲らない。譲れない。譲ってやるものか。
「僕は、僕自身が守りたいと思ったものを守るよ。
『それがお前の答えだな』
満足したように、彼は微笑む。
表情からは分からないが、そんな気がしたのだ。
『レイ、これを』
「なに?」
彼が左手をレイに向けた。
流れ出すのはキラキラとした光の粒子だった。それが魔法少女に変身するためのブレスレットに注がれていく。
『――ウルティメイトブレス。俺がとあるウルトラマンから授かったもの。その力の一端だ。
なぁに、心配すんな。きっと、お前の力になってくれる』
「シンくんはさ、なんで僕のためにここまでしてくれるの? 出会って、たった一回だけ言葉を交わしただけなのに」
『お前のことが気に入ったから』
即答だった。
気恥ずかしい台詞を言うことにこの宇宙人は躊躇いがないようだ。
「……うん。なら、仕方ないねー」
『ああ、仕方ないな』
「ふっ」
はっはっは!と二人して笑う。
言葉を通して、光を通して、心が繋がったような感覚。
「もう、大丈夫。やるべきことも、揺るがない意思も得た。だから」
矛盾だらけの世界で、基準だとした言葉は意味を失うだろう。
それでも未来を信じている。だから、旅をするのだ。答えを探して。
「シンくん、仲間が待っているから行くよ」
『やるべきことは分かっているな』
「うん、やり方もバッチリ! だから……」
『じゃあな』
「また、いつか、どこかで」
出会って、別れて。
そうして巡る。ああ、運命のようだ。
意識が引っ張られる感覚共に、少女は目を醒ます。
ずっと繋がっている想いがあった。
「おはよう、杏子。けっこう心配を掛けちゃった感じかい?」
「お前はずいぶんとお寝坊さんなこって……心配なんてしてねーよ」
「ツンデレだねー」
「チッ、誰が!」
「はいはい、仲が良いのは分かったから行くわよ」
「本当に良かったよ、レイちゃん」
「ごめん、みんな。もう大丈夫だから」
――さあ、勝ちに行こうぜ。
9
『待っていたよ、僕』
「全部、取り戻しにきたぜ。僕」
空中で佇む自身がいた。
再び、対峙する。あの時と違っているのはこちらの戦力にまどかが追加されたことだ。いや、
『もう少しすれば、君の全てを完全に僕のものにできるのに』
「急いできて正解だったね」
黒いレイの姿は最後に見た時と変わっていた。
漆黒のみの衣装は、上半身には青銅色が追加され、スカートの部分が漆黒に施されている。
オリジナルの飛鳥レイが銀を纏った魔法少女ならば、彼女はもう別の飛鳥レイになろうとしていた。
近づくのではなく、独自の進化を求める。なんて、欲深き生命なのだろうか。まさに人間のよう。
『それも、時間の問題よ。あなたの魂はここにある』
黒いレイはブレスレットの中に銀色に輝くソウルジェムを覗かせさせる。
『これが真に僕のものになると思うと、ゾクゾクするねー』
「させないさ」
『僕にこれを取り返す手段が無いことくらい、僕が一番よく分かっているよ』
全てをコピーしたのだ。データなら既に閲覧し終えている。飛鳥レイが出来ることの全てをこの黒いレイは頭の中にある。
「みんな、ここからは手を出さないでくれないかい」
「お前、何言ってんだ。前回、何も出来ずにこうなったの忘れたのかよ」
「そうだよっ、みんなでいけばなんとかなるはずだよ」
「そうね。貴女一人を行かせるために、私たちはここにいるわけじゃない」
杏子が、まどかが、マミがレイの言葉を拒否する。
自分を助けるために彼女たちが一緒に着いてきてくれた。涙が出そうになるくらい嬉しいし、感謝もしている。
「みんなを信じていないわけじゃないんだ。ただ、まずは僕のソウルジェムを取り戻さなくちゃいけない。あと、」
「あと?」
「自分には負けられないしねー」
自分には負けられない。自分の心はそう叫んでいる。
「仕方ない、でしょ?」
「仕方ないのかしら?」
「仕方ないんじゃないかな?」
「仕方なくないだろ」
「ありゃ」
彼のようにはいかないみたいである。
「でも、ピンチだったら助けて」
「任せろ」
杏子に二人が頷く。頼もしい仲間だ。
みんなが好きだ。守らなくちゃならない。そのためにも、ここで死ぬわけにはいかない。
だからこそ、取り戻さなくてはならない自身の
「いくぞ、僕」
『来なよ、僕』
跳躍する。その勢いのままに右の拳を叩きつけるように放った。
避けられた。
読まれていたのだろう。思考パターンすらも、解析され、戦闘においては厄介なこと極まりない。
それでも飛鳥レイが諦めることはない。そのことすらも、敵には見透かされているが。
『わかんないかなー、無駄だってこと』
「活路ってやつは、切り開くもんだよ」
敵はどんな相手であっても油断しないレイの性格すらも引き継いでいる。これでは隙すらも見出すことは出来ない。
高い壁にはいつだってぶち当たるものだが、これほど自分自身が障害になるとは思ってもみなかった。
『我ながら、僕の諦めの悪さには反吐が出るね』
「そいつはどうも」
左の拳を左の拳で受け止められる。
ビリビリと衝撃が全身に走った。
渾身の力を籠めても、膨大な魔力を迸らせても、同等のパワーで返される。
「くっ」
『ね、無駄でしょ?』
「それはどうかな」
レイは相手の拳を掴んだ。
『無駄な足掻きを……なにっ!?』
黒いレイのブレスレットから、レイのブレスレットへと光の粒子が流れ込んでいく。
その現象を目にした瞬間、敵は拳を振り払おうとする。が、しっかりと掴まれており、離されはしない。
『何を!』
「取り戻すって言っただろう?」
全ての光がレイの元へと返還され、ブレスレットが青き輝きを取り戻す。失った方は黒く、輝きを失い、濁り始めていた。
一度距離を離す。
「僕の魂は僕だけのものだ。誰にも渡さない」
レイが腕を伸ばし、ブレスレットから銀色のソウルジェムが現出した。
この輝きこそ、飛鳥レイの心の輝き。
自分の光を取り戻したことにより、ブレスレットがウルティメイトブレスへと変化する。
よっぽど、頭にきたのだろう。怒りを隠そうともせず、語気を強める。
『返せ!』
怒りのままに光線が放たれた。その姿は、初めてレイが黒いレイと対峙した時のよう。
凄まじい熱量の光線をレイは
「次はこっちからいくぞ」
ブレスに手をあて、光を収束していく。継承したレイの力はより彼のものへと近づいていく。
光線の構えを取るレイをそのまま映したように、黒きレイも光線の構えを取る。
「ワイド・
『ワイド・シュート!』
眩い輝きが空間を震わせた。