古明地さとり(偽)の現代生活   作:金木桂

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例大祭参加します!!!!


一般で。


問14:たけし君は昼食で一皿1250円のオムライスを食べ、お腹が一杯だったので20%残しました。そこでたけし君は残った残飯の分返金を求めました。たけし君の手元には幾ら返ってくるでしょうか。

 カタログは容易に手にはいった。

 三階のレジ横に、売れることを見透かすかの如く山脈となって積み重ねられていたからだ。

 お値段およそ1500円、昨日の中国人観光客よろしく衣類爆買いキャンペーンで使ったお金と比べれば非常にお安い。人数分ということで2冊買った。

 こいしはその表紙を見つめて表情を変える。少し不満げのような、期待が外れたような。

 

「原作と違うわ、この霊夢の顔。魔理沙の顔も」

「そりゃデフォルメされているわよ。原作絵も良いけれど、少し癖が強いもの」

「……まあ可愛いから、いいや」

 

 と言いつつ、ストンと落とすようにビニール袋に入れる。いいや、とか言った人の扱い方じゃないよねそれ。

 一方でレミリアとフランもカタログの入った袋を片手に、今度は漫画棚を見ている。特にフランが。

 

「え、もうこのシリーズ新刊出てる……!買うしかない……!」

「フランさ、さっき早く帰りたいとか言ってなかったっけ?」

「え、ちょっと邪魔しないでくれるかしらお姉様」

 

 ぞんざいな口ぶりで、フランはレミリアとは逆方向へと歩いて行った。

 

「何しに付いてきたのでしょう……あの二人」

 

 首を傾げつつ、構わず僕は無視して置いていくことにした。もうここに用はないのだ。

 

「えーお姉ちゃん、もう行くの?」

「ええ、長居は無用よ」

「……まあリスクを考えたら仕方ないね」

 

 うんうん、漸くこいしにもリスクヘッジの意識が生まれてきたようで何よりだ。

 と、僕が内心ほっとしていると袖を引っ張られる。

 

「ところであっちのコーナー何かしら? R18? 何の略称なんだろ?」

「………………まだこいしには早いわ」

「え〜」

 

 最近同じ事ばっかり言ってる気もする。でもしょうがない、純粋無垢畑出身の女子中学生にエロ同人誌を教えるのはかなり抵抗があるのだ。花壇をアイゼンを巻いた長靴で荒らすような、そんな忌避感。

 ただの男子高校生(引きこもり)には荷が重いので気になったらあとで親に聞いといて、と責を丸投げしようとして再度袖を引っ張られる。

 

「ねえねえ、でもフランは入ってったよ?」

「……あの子は常識に囚われないから」

「それなんて東風谷早苗?」

 

 きっと僕の表情は苦虫を潰したみたいな仏頂面になっていることだろう。

 

 余計な事をしてくれたフランを恨めしく睨みながら、エスカレーターで下の階へと下りていく。下りていく途中に上から大きな声が聞こえて、駆け下りるようなドスドスとした音と、それから少ししてフランの手を引っ張ったレミリアが背後から現れた。

 

「何で一言も言わずに先に行くのよ……!」

「あれ、レミリアさん。来たんですか」

「そりゃ来るわよ! 何のためにえっちらおっちらここまで来たと思ってるのよ」

「てっきり趣味かと」

「それはフランだけよ!?」

 

 フランはそうなんだ。いや、サブカル趣味は何となく知ってたけどさ。

 

「お姉様。私もうちょっと探りたいのだけど」

「貴方は我慢なさい。遊びに来た訳ではないのよ?」

「私も違うわ。実った果実を収穫する為に来たのよ」

「駄目だこの妹……もう手遅れだった」

 

 レミリアは額に手を当てて項垂れた。

 先ほど僕たちを待っていたときはまた別種の不満げな表情を隠さず、フランは足元を見下ろす。よく見ると履いてるものが運動靴に変わっている、赤いローファーでは目立つと買い直したのだろう。

 

 外に出ると丁度昼時。時計がてっぺんを回り、更に長針が半周した頃合いだった。

 取り敢えず昼ご飯を食べよう、とこいし、それと何故かついてくるレミリアにフランと話が合い道端にあった値段のリーズナブルな洋食屋に入る。

 メニューを見たフランが首をひねる。

 

「ここ、洋食屋じゃなくてオムライス屋じゃん」

「……本当ですね。オムライス以外のメニューがサラダしかないのね」

 

 メニューを取ってみて、フランの言葉が真だと分かった。

 ケチャップやデミグラスソースやホワイトソース、あるいはバターライスやケチャップライスと種類はあれど基本オムライスのようだ。

 

「私ラーメンのほうが良かったわ。豚骨のやつ。脂ぎっててニンニク増せるやつ」

「貴方はまたそういうのを好む……フランは少し黙りなさい」

 

 呆れ顔を通り越して最早反応するのも面倒とでも言いたげな無表情でレミリアはフランから目を離した。

 その対面に座るこいしは、と確認すれば期待通りぽかんと頭の上に「?」と疑問符を浮かべている。良かった。こいしは二郎系だの家系だのとは無縁にそのままでいてくれ頼む。

 僕はメニューを捲ろうとして、

 

「お姉ちゃん、ラーメンってなに?」

 

 と、こいしの言葉で手が止まる。

 

「え? こいし、貴方ラーメンを知らないの?」

「麺類ってのは分かるわ。名前的に」

「何というか、今時珍しいわね」

「人生495年分は損してるわそれ」

 

 自分の元ネタと掛け合わせるな、しかもそれ人じゃないし。

 いや、にしてもお嬢様だというのは知ってたけどまさかラーメンすら知らないなんて……。他にもこいしは知らなくとも世間一般的にはメジャーな物事が色々とありそうだ。

 フランは足をフラフラとバタ足させながら口を開いた。

 

「じゃあさ、今度食べに行きましょ? 美味しいわよラーメン」

「いいわよ。でも何処に行くの?」

「こいしは胃袋に自信はあるかしら?」

「フランさん? ウチのこいしにそっち系のラーメンを薦めるのは辞めてくれますか」

 

 思わず口を挟んでしまう。

 胃が大きいとか小さい以前に、ラーメンを知らない人間に二郎系を薦めるとか頭狂ってるでしょ。そりゃフランドール=スカーレットは狂ってるけども。

 ラーメンの基準が二郎系(それ)になるのは流石にヤバい。下手したら一生嫌いになるレベル。それこそ人生損してるって多分。

 

「フランさんに変な固定観念を植え付けられても困るし、今晩はラーメンにしようかしら」

「おー! 楽しみだわ」

 

 変なって何よ……、とブツブツ文句を垂れるフランは無視してこいしの髪を撫でる。つやつやとした手触りに、猫みたいに目を細めたこいし。アニマルセラピーならぬこいしセラピー。いや寧ろこいしがセラピストなのかもしれない。滅茶苦茶に癒やされる……。

 

「あなた達ねぇ……。これからお昼を食べようってときに何で夕飯の話をしてるのよ」

 

 冷たく整った相貌をむっつりとさせて、レミリアは店員を呼んで注文を取った。次いで全然注文を考えてなかった僕たちも急いでメニューを決めて店員に伝える。

 

 店員が去ると同時に、こいしがメニュー表を脇に立て掛けた。

 

「そう言えばお姉ちゃん、能力の話ってレミリアたちにしたっけ」

「ああ、してなかったわね」

 

 と云うのもつい先程、電車内で交わされた話。

 こいしの無意識が無意識に他人の無意識を手繰っているという、あの話だった。ややこしいなこれ。

 レミリアは不審そうに眉を顰めた。

 

「能力の話?」

「こいしが能力の進化を訴えてるんです」

「進化……ねぇ」

 

 別に明々と歓喜してたり嬉々としていた訳ではないけど、それまで弛緩していた表情を強張らせた。

 

「一応、先んじて言っておくけど私たちにはないわ。フラン、そうよね」

「ええお姉様。まあ私の能力は壊さないと確かめようがないから、分からないけど」

「あー、そうね。でもだからといってそこら辺の路駐してる車とか壊す訳には行かないし……まあ置いておきましょう。多分大丈夫よ、ええ」

 

 ……何だか不安が残るけども。

 とにかく紅魔組は異常が無いようだった。無いと仮定しよう。そうしないと更に厄介な状況という事になってしまうから考えたくない。

 

「それで、能力が進化したと言ったけれど。どういうことかしら」

「えーっと。簡単に言いますと。昨日までは他人から自身の姿を隠すために能力を意識的に使用していたのですが、今日聞いた話によれば無意識に使用してしまうらしいです。十把一絡げに言ってしまえば、能力のオンとオフが反対になってしまっている、ということです」

「なるほどねー……。原因に心当たりは?」

「───こいし、どう?」

「ないわよ? 何なら私の昨日までの生活を羅列してみる?」

 

 こいしは少し物憂げに目を萎ませた。

 何とも感じていないような振る舞いをしているけど、こいしだって今の状況に不安を感じないはずがない。アニマルセラピー扱いするだけじゃなくて僕もこいしをフォローしていかなきゃ、と思って拳に力が入る。

 レミリアは溜息を一度ついて、

 

「結構よ。もし原因が生活習慣なら同じ住居で生活していたさとりにその兆候が無いのはおかしいわ」

 

 と、何故か八つ当たり気味に僕は睨みつけられる。

 まるで「全く……厄介な問題を持ってきたわね」とでも言いかけて、寸前で喉奥に呑み込んだみたいな顔つきだ。実際は心を読んでるから、みたいな、という言葉は適切じゃないけどまあそれは大した問題じゃない───。

 

「───それでどうです。情報を一つ提供した訳ですけど、私への警戒は少しは薄くなりましたか?」

「……やっぱり気付かないフリをしてたのね、流石は覚り妖怪。凝固した血液より腹黒いものね」

「失礼ですね。不信感を隠そうとした貴方よりは幾分かマシですよ」

 

 こいしやフランには悪いけど、この場の空気を悪くしてでもレミリアとは話さなくてはならないことがあった。

 

 まず前提として、レミリアは僕のことを密かに疑っている。

 それに気づいたのは偶然だった。昨晩の帰宅路、唐突にレミリアがこいしを自分の家に来るよう話をしたのは未だに記憶に鮮明に残っているだろうか。

 そのときは別に疑問は感じなかった。そもそも感じる余裕も無かった。こいしが居なくなると思って取り乱して、僕の思考は外野にまで及ばなかったのだ。

 けど家に帰って考えてみればやはり妙だと思った。幾らなんでも既に僕の家で居候しているレミリアからしてみれば他人を、スカウトするみたいに自分の家に引き入れるなんて、と。そうして考えてみれば僕は異性だから暮らしづらいというもっともな理由も建前に思えたし、思い返してみればレミリアはこいしが居候している理由を知らない。加えてこいしの年齢だって僕はレミリアに教えていない。

 それらを鑑みれば、些かあの提案は性急過ぎなのだ。突飛と言っても過言じゃない。

 

 極め付けは僕たちが外出するのを見越したように着いてきたこと。

 運命を読んでアニメショップへと先んじていたのは本当だろう。

 しかしその動機。例大祭のカタログを買うためというのは嘘ではないにせよあくまでついで、本命はきっと僕を監視するためだ。その対象からこいしは外れている。

 

 そう、レミリアは古明地さとりだけを警戒しているようなのだ。

 

「全く……。貴方の前では考えないように、あるいは別の思考でカモフラしていたのに。何でバレたのかしら」

 

 レミリアは先程よりは大きなため息を一度すると、持ったコップをぐるぐると回しながら言った。中に入ったロックアイスがからんころんと音を立てる。

 

「論理的思考ですよ。決定的なミスはこいしを私の家から離そうとしたとき、あれは話題の切り方が強引過ぎでしたね」

「それは認めるわ。なんたってその子、運命を視ずとも貴方にゾッコンなんだもの。切り出す機会が無かったのよ」

「それであんな話題転換ですか。迂闊でしたね。まあ良いです……それより。私を警戒した理由、話してもらえませんか?」

 

 僕はレミリアを覚りながら、そう口にした。

 無意識にでも周りの心を掃除機で吸うみたいに覚ってしまうこの能力だけど、更に意識を集中すれば絶対に聞き漏らすことはない。一言一句、口だけでなく心の声まで搾り取らせてもらおう。

 

 はぁ……、とレミリアはコップをテーブルの上に置くと、手を太ももの上に乗っける。

 そして、話し始める。

 

「昨日。私はこの現象は東方Projectを開発してる人間が怪しいと言ったわよね」

「覚えています」

「実はもうもう1つ、犯人候補の可能性を捨てきれない対象がいたのよ」

「……同じく、憑依した人間ですか」

「その通りよ。正解の拍手は要らないわね」

 

 あっけからかんと、歯に衣着せずに言った。

 僕を警戒してた事実から予想は何なく出来ていた。

 他人の姿形を非現実のキャラクターにするなんて普通の人間ならば到底出来ない。しかし仮に、それが出来てしまったとしよう。

 もしそんな能力が発覚し、発動してしまったとき、一番最初に誰を架空のキャラクターにしてしまうだろうか。

 その答えは自分以外にほかならない。普通の人間なら初めから他人で試そうとはならないはずだ。

 

 補足として、本当にそんな人間が存在するのならばこの近い地域で憑依現象が起きているのも納得できる。

 こいしは歩いて僕の近所まで来たからして、僕の家とこいしの実家の距離はそう遠くはない。最寄り駅が同じスカーレット家も然りだ。

 

「……それで、私が黒幕だと警戒した訳ですか」

「そうね。普通に怪しいのよ貴方、唯一男だったり高校生と名乗るくせして妙に理知的だったり。完全に猜疑心を捨てるのは無理よ」

「ついでに、こいしが違うと思った理由も聞いて良いですか?」

「それこそ貴方はわかっているんじゃないの。あんな感情の発露が大きくて、物事を知らない子が黒幕だなんてあり得ないわ。もしそうなら物凄い役者よ役者、アクトレスになった方がいいんじゃないかしら」

 

 まあそんなことだろうとは思った。

 電車すら乗ったことなかったと宣うこいしにこんな事件を起こすのは第三者から見ても不可能なのは明々白々としている。

 逆に、僕を怪しむポイントは何個もあったというわけで。

 

「まあ、レミリアさんの推理はハズレとだけ言っておきます」

「それは残念ね。残念賞のティッシュくらいくれるかしら」

「卓上にナフキンがあるのでそれで良いなら」

「つれないわね」

 

 軽口を叩き合うと、区切り良く丁度料理が運ばれてきた。

 プレートに乗ったオムライスは湯気を放つほどの熱を醸し出していて、ライスを紡錘形に包んだふわふわの卵の上にデミグラスソースが惜しげもなくかけられている。

 

「……食べましょうか。冷ますのは勿体無いです」

「同感ね」

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 オムライスは中々美味しかった。見た目以上の味で、しかも食べてみればボリュームもある。また機会があれば行ってみたいなここ。

 

「美味しかったねお姉ちゃん」

「それは良かったわね」

 

 満面の笑みを浮かべたこいしに、う〜ん、百点満点!

 ナフキンで口元を拭きつつ前に座る紅魔二人娘を見てみた。

 レミリアは優雅にスプーンを手に、未だ食事を続けている。しかし皿の上までは優雅と行かなかったようで、ぐちゃぐちゃに撹拌されたような卵にテーブルクロスに落ちに落ちた米粒。幼稚園児か己は。一方のフランは普通に食べ終えていた。

 

「結局さっきの話は何だったのよお姉様。聞いてたけど宙ぶらりんで気持ち悪いわ」

「ちょっと待ちなさい、まだ食べてるから」

 

 小さく掬いながらもぐもぐと食べるレミリアに、フランは駄目だこれとばかりに肩を落とした。代わりにこちらへと視線を向ける。

 

「ごめんなさいね、お姉様が粗相をして」

「んぐ……、ちょっとフラン? 私は疑っただけよ」

「いえ。私はあんまり気にしていないので、()()()さんはお気になさらず」

「ねえ、それむっちゃ気にしてない? 凄い気にしてるでしょ?」

「そっかー、良かったわ。私はさとりのこと信じてるからね」

「ありがとうございます。私もフランさんのことは信用していますよ」

「え、眩しい。なんなのよこの疎外感」

 

 フランとの信頼関係を確かめ合うと、僕は漸く食べ終えたレミリアに目をやった。

 

「これで3対1となりますけど、どうしますかレミリアさん? 私のこと、まだ疑いますか?」

「何それ!?卑怯よ卑怯、さすが古明地汚いわ!」

「私もお姉ちゃんも汚くないわよ?毎日お風呂に入ってるんだもの」

「え、いや、そういう意味じゃないのだけど……」

 

 純粋というか、天然なこいしの言葉にたじろぐレミリア。気持ちは分かる。天然ウナギより天然だからねこの子。同情はしないけど。

 レミリアは今日何度吐いてるか数えるのも億劫になるため息をつくと、呟くように唇を動かした。

 

「……分かったわ、分かったわよ。猜疑心を持ち込むのは止めるわ、これで良い?」

「はい、感謝します。正直やり辛かったので」

「貴方は心を読めるもの、そりゃそうね。謝りはしないけど」

 

 と、話も纏まったところでレストランから出ることと相成った。

 

 

 




もうちょっとしたら展開が大きく動いてほしい(願望)

PS.サブタイのせいで更新が遅れてます、誰か僕の代わりに考えて…。
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