けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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第28話『木の実探偵の事件簿』⑤

 

 

 いよいよ土曜日の朝。

 天気も快晴で夏休み明けだというのにまだまだ夏の日差しが照り付ける。まだ朝早いから涼しいが、お昼頃には夏の暑さを感じられるだろう。

 絶好のプール日和である。

 遅れに遅れた『わくわくプールランド』のプレオープンもこれなら絶好の日和になるだろう。

 もっとも全天候型になる屋内プールレジャー施設だから日和が関係ないのも売りの一つではあるのだけれど。

 

「……なあ。お母さん……」

「どうしたの? エゾオオカミ」

「なんかさ……朝ご飯……いつもよりやけに気合入ってねーか……?」

 

 エゾオオカミは食卓に並ぶ朝から豪勢なご飯に戸惑いを覚えていた。

 若干引いてすらいた。

 ヤマイモをすり下ろしたトロロかけご飯はまだいい。

 だが、それに牡蠣フライとハンバーグが付くのはやり過ぎじゃあないだろうか?

 どうやらハンバーグに乗っているのはパインではなくアボガドだったらしい。

 そしてお味噌汁は朝からとん汁だ。

 

「そりゃあ今日は大切な日でしょう? もうバシっと決めちゃってきなさい!」

 

 エゾオオカミはとん汁をすすりつつ考える。

 母が何をバシッと決めて来いと言うのかイマイチ分からない。

 おそらくはセイリュウからの頼まれごとなんだからしっかり務めを果たして来いという事なのだろう。

 なんたって青龍神社は商店街にとっても大切なお得意様だ。色々な神事でお世話にもなっているし。

 

「そうそう。水着は現地でレンタルも出来るのよ?」

「いや、いいよ。無駄遣いもどうかと思うし」

 

 結局エゾオオカミもセルシコウも学校指定の水着にするのは変わらないようだ。

 せっかく軍資金にと臨時お小遣いをあげたのにと思う母エミリである。

 

「(しっかし、なんかお母さんの様子も変なんだよなぁ……)」

 

 一方のエゾオオカミは母の態度を不思議に思っていた。

 セイリュウからの頼まれごとをするのだから、多少持ち上げられるのは期待していた。

 けれど、追加のお小遣いに今朝のご馳走と少しばかり過剰な気がする。

 これは今日の依頼を失敗したりでもした事を考えるのがいよいよ怖い。

 

「(まぁ、失敗しなきゃいいだけだ。あ、ハンバーグ美味い)」

 

 料理内容に気合は入っていたが、量は抑えめだったのでエゾオオカミはペロリとそれらを平らげた。

 食べ過ぎでお昼にセルシコウのお弁当を美味しく食べられなかったら本末転倒である。その辺り母のエミリは心得たものだった。

 

「じゃあ、そろそろ行ってくるぜ」

「ええ、しっかりね、エゾオオカミ」

 

 この場合の母が言うしっかり、は『しっかりデートを楽しんでセルシコウを落として来い』の意なのだが、エゾオオカミは『しっかりセイリュウ様の依頼を果たして来い』と解釈した。

 

「わかってるって」

 

 支度を整えて出掛けるエゾオオカミをエミリは玄関まで見送る。

 

「エゾオオカミ、後ろ向きなさいな」

 

 エミリはエゾオオカミに後ろを向かせると玄関に置いていた火打石を準備する。

 

―カチッカチッカチッ

 

 それを三度打ち鳴らして切り火で見送る。

 

「おおげさだぜ」

 

 エゾオオカミの家は商店街で呉服店を営んでいる。

 節目のお出かけなどではこうして古風な儀式をしてくれる事があった。

 だが、今日のお出かけがそこまで重要かと言われると疑問のエゾオオカミだ。

 

「じゃあ水の事故には気を付けて楽しんでらっしゃい」

「ああ。行って来ます」

 

 こうして玄関を出るエゾオオカミを見送る母エミリ。

 ここまでの首尾は上々だ。

 旧友であるユキヒョウの母サオリに頼んで『わくわくプールランド』のプレオープン招待券を手に入れ、セイリュウに頼んで依頼という形をとってもらいそれとなくデートするように仕向けた。

 後は商店街の顔馴染み達に根回ししてそれとなく見守る。

 今回のデート作戦発案者であり総指揮官である“BigMam”は母エミリであった。

 

「けど、最後の仕上げくらいは自分でやりなさい」

 

 レールを敷いたのはここまでだ。

 後はエゾオオカミ自身の手で事を成し遂げて欲しい。

 そう願う母エミリであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 待ち合わせは『わくわくプールランド』前だった。

 時間30分前には来ていたセルシコウは気になって前髪を何度か弄る。

 変ではないだろうか。

 またも気になってセルシコウは髪を整える。

 昨日の夜にオオセルザンコウからは『わくわくプールランド』のアトラクションを説明されてデートプランを一緒に練ってもらった。

 今朝はお弁当作りに協力してもらったし出来る準備はしてきたと思う。

 せっかくだから東京へ引っ越し前にいい思い出にしたい。

 そう思うセルシコウに声が掛けられた。

 

「セルシコウー。早かったな。待たせたんじゃないか?」

「いえいえ、今来たところですよ」

 

 やって来たのはエゾオオカミだった。

 顔が赤くなるのはまだまだ暑い夏のせいだろう。セルシコウはそう思う事にした。

 エゾオオカミもやって来たところで、ちょうど『わくわくプールランド』もプレオープン開始時間である。

 周囲にはオープンを待ちわびた招待客の姿もチラホラ見られた。

 

「それじゃあエゾオオカミ、行きましょうか」

 

 というセルシコウにエゾオオカミは待ったをかけた。

 

「いや待ってくれ。まだターゲットが来ていない」

 

 エゾオオカミは招待客達の中にアオイとコイちゃんの姿を見つけていなかった。

 が……。

 

「ターゲット?」

 

 とセルシコウには話が通じていない。

 

「あ、そうか。まだセルシコウには説明できてなかったな……」

 

 エゾオオカミはかくかくしかじかと事情を説明した。

 セイリュウからの依頼でアオイとコイちゃんの二人を見守るという事を。

 説明を進める程にセルシコウの目が冷たくなっていく。

 

「呆れました……。そういう事情なら先に言って下さい。全くそういうところですよ、エゾオオカミ」

「いやどーいうところ……ってコレばっかりは俺が悪いな。スマン」

 

 素直に謝られたのでセルシコウも気持ちを切り替える。

 なんだかんだ言ったって、エゾオオカミがパートナーとして自分を選んでくれた事は嬉しくないわけではなかった。

 なので仕事だと言うのならそれでも構わない。手伝いくらいしてやろうと思う。

 

「そういう事なら、その二人が現れるまで待たなくてはなりませんね」

「だな」

 

 二人して物陰に隠れる事少し。ターゲットのアオイとコイちゃんが現れた。

 

「もう! コイちゃん姉さん! こんな日に寝坊だなんて!」

「いやぁー。ごめんごめん。今日の事が楽しみ過ぎて夜寝られなくてさぁー」

 

 ぷんすか怒るアオイがコイちゃんの手を引いていた。

 

「まぁ、プランには余裕を持たせてあるのでまだまだ大丈夫です」

「さすがアオイちゃん!」

「せっかくですから今日は遊び倒しちゃいましょう! コイちゃん姉さん!」

「合点承知ッ!」

 

 そうやって足早に入場していくアオイとコイちゃんの二人は当然エゾオオカミとセルシコウに気付く事はなかった。

 二人を見送ってセルシコウはポツリと訊ねる。

 

「ええと……あれがターゲットですか?」

「だな」

 

 そしてセルシコウはどうしてももう一つ訊ねたかった。

 

「あれ……見守る必要ありそうなんですか?」

「……多分ないような気がする」

 

 確かに仲が良さそうな二人であったが、うっかり行き過ぎないように見守れという依頼が必要そうな雰囲気には見えなかった。

 それはエゾオオカミも同じ感想だ。

 学年首位の優等生であるアオイがうっかり道を踏み外す事などないと思っていた。

 だが、それでは仕事にならない。エゾオオカミは気を取り直して言った。

 

「まぁでも依頼だからな」

「そうですね。仕方ありませんから付き合いましょう」

 

 アオイとコイちゃんから距離を取ってエゾオオカミとセルシコウも続く。

 最初にアオイとコイちゃんが訪れたのはレンタル用品店だった。

 ここは水着はもちろんの事、浮き輪や水鉄砲などのレジャー用品まで貸し出してくれる。

 セルシコウとエゾオオカミは学校の指定水着をそのまま流用するつもりでいたから殆どやる事はない。

 アオイとコイちゃんが水着選びの間待つつもりでいた。

 

「お、いいのあったぜ」

 

 と、エゾオオカミが棚に並んでいた星形のサングラスを掛けて見せた。

 

「……ぷっ……。似合ってませんよ」

「わかってるよ! アオイとコイちゃん先輩には顔が割れてるから一応だよ! 一応ッ!」

 

 セルシコウに笑われる程度にはエゾオオカミに星形サングラスは似合ってなかった。

 が、変装用という事で借りていく事にする。

 そうこうしている間にアオイとコイちゃんも水着を選び終わったようだ。

 試着室を借りて既に着替え終わっている。

 アオイが青色のワンピースタイプに、コイちゃんは黒のセパレートタイプだ。トップスは三段フリル状になっていてどちらかといえば可愛い感が強い。

 二人ともお揃いのパレオを腰に巻いていた。

 

「おおっと。俺らもさっさと着替えようぜ」

「わわっ、待って下さい」

 

 エゾオオカミはといえば家から水着を服の下に着こんでいた。中学生ならば許される。

 セルシコウの方はデートだと思い込んでいたので着替えは現地で、と思っていたから時間が掛かってしまうだろう。

 二人は慌てて行動を開始した。

 受付で招待チケットを渡して腕にタグを巻いてもらう。

 

「このタグはロッカールームの鍵にもなっています。あとプリペイド式でお金をチャージしておいてアトラクション内の売店で支払いに使えますよ」

「へー」

 

 事前にオオセルザンコウから『わくわくプールランド』の説明を受けていたセルシコウが教えてくれる。

 そして、チャージしたお金は帰りにタグを返す時に清算して使わなかった分を返してくれるという事だった。

 なるべく手荷物を少なくして遊んで貰う工夫らしい。

 

「おっと、こうしちゃいられねー! さっさと着替えちまおうぜ」

 

 二人してわたわたと着替えて、ロッカールームに荷物を預けた頃にはちょうどアオイとコイちゃんも受付を終わらせたらしかった。

 

「何とかセーフだったな」

「ですね」

 

 アオイとコイちゃんも自分達のロッカーへそれぞれ手荷物を預けると、最初のアトラクションへ向かう。

 それを待ってエゾオオカミとセルシコウも尾行を開始した。

 

「ところで、エゾオオカミ」

「どうした?」

 

 尾行するセルシコウはエゾオオカミに訊ねた。

 

「見守るのはいいのですが……、なんといいますか……セーフかアウトの判定はどうしたらいいんでしょう?」

 

 要はアオイとコイちゃんがどんな事をしたらダメなのかがよく分からないという事だ。

 エゾオオカミもそれをしばらく考えて……。

 

「言われてみれば考えてなかったな」

 

 ノープランであった事に気が付いた。

 

「そうだなぁ……。アオイ達の真似してみて、これはできねーよ!? ってなったらアウトって事でどうだ?」

 

 つまり、アオイとコイちゃんがする事を自分達もやってみて、これはダメだろうとなったらセイリュウへ報告という流れだ。

 

「他に考えもないですし、そうしてみますか」

 

 セルシコウも他にいい案がないので同意する。

 

「お……」

 

 と、エゾオオカミが早速アオイとコイちゃんに動きがあったのに気が付いた。

 二人して手を握りあったのだ。

 

「んじゃあ俺らも」

 

 ほれ、とエゾオオカミはセルシコウに手を差しだした。

 

「このくらいなら余裕というものです」

 

 手を繋ぐくらい何てことない。

 そう思ったセルシコウだったが、実際やってみるとこれが意外と恥ずかしい。

 昨日だって手を引かれたりしていたが、流れの中でやるのとはまた違う。

 これは手を繋ぎたいから繋いでいるのだ。

 気恥ずかしさは段違いというものである。

 が、これは序の口だった。

 よくよく見たらアオイとコイちゃんの手は指と指が絡み合う感じになっていたのだ。

 これはいわゆる……。

 

「「こ、恋人繋ぎッ……!?」」

 

 というヤツである。

 エゾオオカミとセルシコウは戦慄する。

 現物を目の当たりにしたのは初めてだった。

 あまつさえそれを自分達が真似するなんて。

 

「な、なあ! これはアウトじゃねーのか!?」

「ここここ、このくらいなんて事ないですよ!? セーフです、セーフッ!」

 

 セルシコウがそう言うのでは仕方ない。

 エゾオオカミも覚悟を決めて握りを変えた。

 と、セルシコウが握り返して来る。

 

「「(うわー!?!? な、何これー!?!?)」」

 

 やってみて二人してテンパった。

 普通に手を握るよりも密着度が段違いだ。

 相手の手の柔らかさも温もりもより鮮明に感じられる。

 何なら高鳴る鼓動すら相手に伝わってしまうのではと心配する程だ。

 

「で……判定は……?」

「せ、セーフでいいんじゃね?」

 

 訊ねるセルシコウにエゾオオカミはそっぽ向いて答えた。

 お互いに相手の顔をまともに見られない。

 が、先にギブアップするのは負けたような気がしてお互いにセーフ判定を出した。

 そうこうしている間に、アオイとコイちゃんの二人は手を繋いだまま最初のアトラクションの列へ並んだ。

 エゾオオカミとセルシコウも少し間を開けてからその列に続いた。

 最初のアトラクションはウォータースライダーだ。

 程なくしてアオイとコイちゃんの順番が回って来る。

 どうやら二人はカップル用浮き輪で二人一緒にウォータースライダーへチャレンジするらしい。

 

「って事は……」

「私達も、ですね……」

 

 エゾオオカミとセルシコウは顔を見合わせる。

 お互い顔は既に真っ赤だったが、やめるという選択肢はない。

 先に降りたらそれは負けを認める事だ。いや、実際にはそんな事はないんだけれど、二人ともそれに気が付かない。

 エゾオオカミとセルシコウの番もすぐにやって来た。

 

「ええと……お二人一緒に滑る感じでいいですね?」

 

 係員のお姉さんは赤い顔で恋人繋ぎしている二人を見てそう判断した。

 初々しいカップルだなー、とも。

 早速二人一緒に滑る用の浮き輪を用意すると注意を開始した。

 

「まず、お互い振り落とされないようにしっかり掴まってて下さいね。そうそう。ちゃんとくっついてー。で、下に着いたら係員の誘導に従ってプールサイドに上がるか、流れるプール方面へ進んで下さい」

 

 いくら大型の浮き輪とはいえ、二人で乗るには狭いので必然密着する事になる。

 エゾオオカミが前になったので、背中にセルシコウの体温だとか膨らみだとかを感じる事になった。

 だが、ドキドキしている暇はない。

 

「それじゃあ行ってらっしゃーい!」

 

 係員のお姉さんが二人の乗る浮き輪を押し出したからだ。

 

「「うわぁあああああああっ!?!?」」

 

 水飛沫あげて円筒形のパイプ内を猛スピードで滑り降りる二人。

 カーブの度に身体が振られる。

 振られ過ぎると浮き輪から振り落とされそうだ。

 

「せ、セルシコウ! カーブに合わせるぞ!」

「はい!」

 

 カーブの内側に身体を傾けた方が遠心力は小さくなる。

 その辺りはジャパリバイク改に乗った事すらある二人だ。

 息のあった体重移動でバランスを保つ。

 ウォータースライダーにも慣れて来た頃、セルシコウが言う。

 

「エゾオオカミ! アレを!」

「ん?」

 

 セルシコウが指さした方へ目をやると、先に滑り降りたアオイとコイちゃんの二人が流れるプール方面へ進んで行くのが見えた。

 

「って事は俺らもだな!」

「ええ、見失わないうちに行きますよ!」

 

 体重移動を駆使すればカーブでの旋回半径は狭くなる。

 必然スピードもあがるわけだ。

 何度となく二人で死線を潜り抜けたエゾオオカミとセルシコウにとってこれくらいの芸当はわけもない。

 

―バシャアアアアン!

 

 長い尾を引いて着水するエゾオオカミとセルシコウ。

 

「はーい、次の方が滑り降りて来ますので移動して下さいー。 どちらに行かれますか?」

 

 つまり、流れるプール方面へ進むか、それとも一旦プールから上がるかだが……。

 

「「流れるプールの方で!」」

 

 二人揃って係員へ返す。

 

「はーい、それじゃあこちらのゲートを通って流れるプールへどうぞー」

 

 着水場所は安全の為一方通行のゲートで流れるプールと接続されていた。

 エゾオオカミとセルシコウはウォータースライダーの余韻を楽しむ事なくアオイとコイちゃんを追う。

 今度の流れるプールはゆるやかな流れがありのんびり漂っているだけでも結構楽しい。

 アオイとコイちゃんも流れに身を任せて楽しんでいた。

 

「あー……。このぐらいの方が楽でいいぜ」

「ですね……。出来ればこのままでいてくれた方がいいかもしれません」

 

 さっきのようなウォータースライダーも楽しくないわけではないが、ずっと続くと疲れてしまう。

 こうやってのんびりするのだって悪くない。

 今度は皆で来たいと思うエゾオオカミだ。

 特にマセルカは水遊びが好きだから思いっきりはしゃいでくれるに違いない。

 

「なあ……」

 

 今度は皆で、と続けようとしたエゾオオカミだったが、それは叶わなかった。

 アオイとコイちゃんがひとしきり流れを楽しんだところでプールサイドに上がったからだ。

 

「追いかけましょう、エゾオオカミ」

「だな」

 

 アオイとコイちゃんは丸テーブルと椅子の並んだフードコートスペースへ移動する。

 何を注文するのかと見ていたらトロピカルジュースを販売している店へ並んだ。

 エゾオオカミとセルシコウも少し間を開けて続く。

 アオイとコイちゃんはフルーツで飾りつけられた大きめのグラスを受け取る。中身は何ともトロピカルな青色のサイダーだ。

 そして、その数は一つである。

 続けて店員がいい笑顔と共に、二人に二本のストローが絡み合ったストローを勧めているではないか。

 それを見たエゾオオカミとセルシコウは戦慄した。

 何故なら……。

 

「「(は、ハート型だー!?!?)」」

 

 二本のストローが絡み合って真ん中でハート型を形作っていったからだ。

 つまり、これは二本のストローで一つのジュースを飲むカップルドリンクというやつである。

 

「こ、これはさすがに……!?」

「アウト……! アウトですよね!?」

 

 わたわたと戸惑うエゾオオカミとセルシコウ。

 だってハート型だし。

 そうしている先では、アオイが何やらぷんすか怒ってからハート型ストローは取りやめ、普通のストローを二本受け取っていた。

 エゾオオカミとセルシコウは心の中でアオイに感謝する。これでハート型ストローは回避されたのだから。

 そのままアオイとコイちゃんは空いているテーブルに陣取ると向かい合って座った。

 

「ま、まぁ普通のストローなら……」

「そ、そうですよ。セーフです。セーフ。余裕です」

 

 ホッと胸を撫で下ろすエゾオオカミとセルシコウ。

 アオイ達が頼んだものと同じカップルドリンクを注文して、ノーマルストローを受け取ると、空いている席へアオイとコイちゃん達と同じように向い合せで座った。

 既にアオイとコイちゃんはカップルドリンクを二人で飲んでいる。その表情は割と普通だから見た目よりは恥ずかしくないのかもしれない。

 

「よっしゃ……行くぜ、セルシコウ」

「え、ええ」

 

 二人して気合を入れ直し、ストローを挿していざ。

 

「「!?!?!?」」

 

 やってみて気が付いた。

 これは想像以上に気恥ずかしい。

 テーブルに置いた一つのグラスをストローで飲むわけだから、必然お互いの顔がめちゃくちゃ近い。

 それで一つのドリンクを飲むわけだから、これは間接キス以上直接キス未満の行為と言っていい。

 

「けど……まぁセーフだよな……ハート型じゃねーし」

「で、ですね……余裕です。ハート型じゃありませんから」

 

 と言いつつもお互い顔が真っ赤でまともに相手の顔を見れない。

 それでも二人はセーフと言い張った。

 だってハート型じゃないし。

 

「けど……さすがに疲れたな……」

「ええ。同意です」

 

 不慣れな事の連続でエゾオオカミもセルシコウも疲弊しきっていた。

 

「なら、ここらで昼にするか?」

「そうですね……。そうしましょう」

 

 幸いアオイとコイちゃんはノーマルプールで開かれる競泳イベントに参加するつもりらしい。

 お互いに泳ぎ比べをしようという雰囲気なので、行き過ぎな行為もないだろう。

 それにノーマルプールの様子はこのフードコートからでも見える。

 ちょうどいいタイミングだと言えた。

 

「じゃあお弁当取って来ますね」

「おう。ここで待ってる」

 

 セルシコウがお弁当を取りにロッカールームへ向かう。

 その間にエゾオオカミは飲み物でも用意しておくか、と考えた。

 傍らに残ったカップルドリンクはさすがにお弁当のお供には無理がある。

 多分味なんかわからなくなるだろうし。

 ここは水に濡れて身体も冷えているし、敢えてのホットという選択肢もありだろう。

 ただ、セルシコウが用意してくれたお弁当がどんなメニューか分からないのでどんな飲み物を用意するのがいいか悩みどころではある。

 

「まぁ、お茶系なら大きく外さないか……」

 

 というわけでドリンク屋さんでホットのほうじ茶を二つ買っておく。

 その頃にはセルシコウも戻って来た。

 

「お待たせしました」

 

 セルシコウがお弁当箱を入れた風呂敷を解くと、中には二段重ねの重箱と小瓶がいくつか入っていた。

 まず二段目にはお弁当の定番とも言えるタコさんウィンナー、アスパラのベーコン巻き、出汁巻き卵、デザートにウサギさんリンゴが並んでいた。

 でもって、一段目の方はあまり見慣れないものが並んでいる。

 薄い丸形のそれはパッと見た感じパンケーキだ。

 

「これは?」

「まぁまぁ。取り敢えず食べて見て下さい。そのままでもいいですし、お好みでこちらのソースをどうぞ」

 

 どうやら小瓶の中身は調味料らしい。

 言われるがままにエゾオオカミは、まずはそのパンケーキを一つ手に取ってそのまま食べて見る。

 瞬間、口の中に程よい甘味と鮭の味が広がった。

 この甘味には覚えがある。

 

「これ……ジャガイモか!」

「はい。簡単に言えばジャガイモのパンケーキですね」

 

 だが、ジャガイモをパンケーキにしただけではこんな味にはならない。

 中に塩鮭のほぐし身を混ぜ込んだのだ。

 

「ちなみに、塩鮭だけじゃないですよ。こっちはコーン。こっちはカボチャを混ぜてあります」

 

 どうやらそれぞれのタネを変えているらしい。

 それぞれにまずはそのまま食べてみるエゾオオカミ。

 どうやら中の具に合わせてそれぞれに下味の付け方も変えているようだ。

 

「そのままでも美味いぜ、これ」

「まぁ、ざっとこんなもんです」

 

 これは具材によって下味を変化させたセルシコウの技によるところが大きい。ドヤ顔にもなろうというものだ。

 塩鮭は敢えてジャガイモに殆ど下味を付けずそれぞれの素材が引き立て合うように調整した。

 反対にカボチャやコーンの方はそれぞれに塩胡椒でしっかり下味を付けて甘さが前面に出過ぎないよう仕立ててある。

 そうなると気になってくるのが小瓶に入った調味料だ。

 赤いのがケチャップ。白いのはマヨネーズ。そして薄い緑色っぽいのはよくわからない。

 

「まぁ、セルシコウの事だ……どれも合うとは思うけど……」

 

 薄い緑色の物が一番気になっているエゾオオカミだ。

 マヨネーズよりも魅かれるその正体は……?

 スプーンでひと掬いして鮭のジャガイモパンケーキに乗せてみる。

 そして一口かじって……。

 

「!?!?!?」

 

 エゾオオカミはジャガイモと鮭とワサビに殴られた。いや、実際にはそれ程インパクトがあったという事だが。

 だが、これほどワサビが効いているのに、不思議とツーンと来ない。

 これは……。

 

「ワサビマヨネーズ、作ってみたんですよ」

 

 セルシコウが説明してくれる。どうやら摺り下ろしたワサビをマヨネーズで和えた物らしい。

 

「マヨネーズは辛みを抑えてくれますからね。少しばかり冒険しても大丈夫というわけです」

「なるほどなぁ……」

 

 この味にはエゾオオカミも覚えがあった。

 夏休みに『グルメキャッスル』(屋台)で出した最後の一品がヨーグルトソースにワサビを加えたともえスペシャルだったのは記憶に新しい。

 おそらく今回のワサビマヨネーズはそれを参考に作ったのだろう。

 もうエゾオオカミはお弁当の虜だった。

 

「ノーマルマヨネーズもいいけど、ケチャップもアリだな。美味いぞ!」

「今回は用意してないんですが、ウスターソースやバターなんかも合いますよ」

 

 そもそもベースとなる味がジャガイモだ。

 ジャガイモに合う調味料であればジャガイモパンケーキにも合うのは道理である。

 エゾオオカミが夢中で食べてくれるのでセルシコウも上機嫌で見守る。

 

「いや、美味かった。ご馳走様」

「はい、お粗末様でした」

 

 二人分よりも少し多いかなという量を用意していたお弁当だったが、食べ終わるのはアッという間だった。

 食後にエゾオオカミが用意してくれたほうじ茶を飲みつつセルシコウが言う。

 

「ときにエゾオオカミ?」

「ん?」

 

 まだ夢見心地のエゾオオカミにセルシコウはニヤリとしてから続けた。

 

「ジャガイモパンケーキは冷めても美味しいんですが……」

 

 まさか、とハッとするエゾオオカミ。そのまさかが告げられる。

 

「出来たてはもっと美味しいです」

 

 今でも美味いのにその先があったか、と脱帽のエゾオオカミ。

 

「わかった。もう完敗だ」

 

 どうやらセルシコウにはまだまだ敵わないと思い知らされたエゾオオカミは両手を挙げて降参の意を示すのだった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 結局その後もアオイとコイちゃんペアの行動はセーフ判定を出し続けた。

 もっとも、ギリギリの線を攻めてる行為もちらほらあって、その度にエゾオオカミとセルシコウはドキドキさせられたわけだが。

 アオイとコイちゃんの後に続く形で様々なアトラクションを楽しんだエゾオオオカミとセルシコウ。

 

「いやぁー! 面白かったな!」

 

 エゾオオカミは夕暮れ時の帰路で大きく伸びをする。

 なんだかんだで二人もしっかり『わくわくプールランド』を満喫できたようだ。

 

「ええ。あのボディーボード、というのが特に面白かったですね」

 

 セルシコウもそれに同意する。

 ちなみにお昼の後、波の出るプールでボディボードもやってみた。

 

「ああ。セルシコウはすぐに乗りこなしてたよな。さすがだぜ」

 

 バランス感覚が要求されるボディボードもセルシコウには朝飯前だったようだ。

 エゾオオカミの方はようやく感覚を掴めた頃だったが、上手く乗り切れてはいなかった。

 

「次回はさ、仕事抜きでこようぜ」

 

 エゾオオカミは今度こそボディボードを乗りこなしてやる、と意気込んでいた。

 

「そうだ。今度はさ、マセルカとかオオセルザンコウも誘おうぜ。あとルリだろ? アムールトラとユキヒョウも……あ、ともえ先輩達も誘わないとな」

 

 『わくわくプールランド』は全天候型、全季節対応の屋内プール施設だ。

 だからこれから夏が終わっても遊ぶ事が出来る。

 けれど……。

 エゾオオカミは横を歩いていたはずのセルシコウが立ち止まっているのに気が付いた。

 

「どうした、セルシコウ?」

 

 エゾオオカミが振り返るとセルシコウは立ち止まって俯いていた。

 

「すみません、エゾオオカミ。その約束は出来ないんです」

 

 どうして、と思うエゾオオカミ。

 もしや本当は楽しくなかっただろうか?

 いや、仕事に無理に付き合わせてしまったから怒らせてしまっただろうか?

 心配になったエゾオオカミはセルシコウの元へ駆け戻る。

 対してセルシコウはふるふると首を横に振った。

 

「だって、正式オープンの頃には私達、東京へ引っ越してるんです」

 

 顔をあげて笑うセルシコウは何とも寂し気に見えた。

 

「東京って……本当か……?」

「ええ。ハクトウワシの仕事の都合で再来週の日曜日には」

 

 『わくわくプールランド』の正式オープンは2週間後。セルシコウ達の引っ越しは約1週間後だ。

 だからもう皆で『わくわくプールランド』へお出かけするのは叶わない。

 

「あ、でも他の人達にはまだ言わないで下さい。週明けにでもちゃんとオオセルザンコウとマセルカ揃って言いますから」

 

 セルシコウは口元に人差し指を立てて、内緒ね、と笑って取り繕った。

 そんな笑い方をするセルシコウを初めて見たエゾオオカミは何と返していいのかわからない。

 行くなと言えばいいのか、寂しくなるなと同意すればいいのか、それとももっと他に言わなきゃいけない事があるのか。

 結局しばらくの沈黙の後、エゾオオカミが言えたのは……。

 

「そうか……」

 

 と一言だけだった。

 

「すみません。困らせてしまいましたね」

 

 またもセルシコウは寂し気に笑う。

 本当はエゾオオカミにも週明けまでは言うつもりはなかった。

 けれども、今日二人で過ごしてついポロっと口から出てしまったのだ。

 今日まで東京への引っ越しを誰にも言えなかったから一人で背負うのが苦しかったのかもしれない。

 どうして秘密を吐露する相手にエゾオオカミを選んでしまったのか、それはセルシコウにも全然分からなかった。

 そして何と言って欲しかったのか。

 行くなと言って欲しかったのか、寂しくなるなと同意して欲しかったのか、それとも……。

 だが、結果はこれ。エゾオオカミを困らせただけだ。

 言ってしまった事を後悔したセルシコウは早口でまくし立てる。

 

「さ、この話はお終いです。それより明日の事ですよ明日の。明日は空手大会なんですから。今日の練習はお休みにしますからしっかり休んで下さい。言っておきますが今日遊び過ぎたせいで大会に負けたなんて言い訳は聞きませんからね」

 

 エゾオオカミはまだ呆然としたままだった。

 あまりにも急な話についていけてない。

 自分の短慮でエゾオオカミを傷付けてしまった事を悟ったセルシコウはいたたまれなくなってしまった。

 

「今日は楽しかったです。さようなら」

 

 それだけを言い残すと脱兎のごとく駆け出す。

 

「あ……!? お、おい! セルシコウ!?」

 

 呆然としていたエゾオオカミがようやく反応出来た頃にはセルシコウの背中はもう遠くへ逃げ去ってしまっていた。

 その背中からはセルシコウがどんな顔をしているのか分からなかった。

 追いかける事すら出来ずにポツリと呟くエゾオオカミ。

 

「東京って……マジかよ……」

 

 その呟きに返事をくれる人は誰もいなかった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 すっかり日も暮れた公園のベンチで一人座るエゾオオカミ。

 さっきようやくセイリュウへ仕事の結果をメール出来たところだ。

 エゾオオカミはメールを打った後の携帯電話をしまうと溜め息をついて空を見上げた。

 このままここにいたところでセルシコウがやって来るわけがない。

 それはわかっていたが、かと言って何をどうすればいいのかも分からない。

 ハクトウワシが東京へ栄転というのは有り得る話だし、そうなればセルシコウ達三人も一緒に付いて行くしかない。

 これはしょうがない事なのだ。

 

「はぁー……」

 

 エゾオオカミはやるせない気持ちで溜め息をつく。

 と。

 

「やあ。随分お悩みのようだね、エゾオオカミ君」

 

 いつの間にやら、隣に和香教授が座っていた。

 

「うぉう!? きょ、教授!? い、いつの間に!?」

「はっはっは。一応声は掛けたんだがね。随分熱心に考え事をしていたようだから勝手に隣へ失礼したよ」

 

 エゾオオカミは最初こそ驚きはしたものの、誰かが来てくれた事は嬉しかった。

 誰でもいいから今の気持ちを聞いて欲しかったのだ。

 

「なあ、教授……。あのさ……」

 

 セルシコウが東京へ引っ越ししてしまう、という話をしようとしたところで、エゾオオカミはふと気が付いた。

 まだ誰にも言わないで欲しいとセルシコウに頼まれていた事を。

 喉元まで出掛かっていた言葉をぐっと呑み込むエゾオオカミ。

 

「いや、なんでもねー」

 

 なるほど、セルシコウも誰にも話せずにこんな気分だったのか。

 期せずしてエゾオオカミはセルシコウの心情を理解していた。

 

「そうかい」

 

 和香教授はそれ以上追及してこなかった。

 しばしの間、沈黙が流れる。

 その沈黙に気まずさを感じたエゾオオカミは和香教授に訊ねる事にした。

 

「教授こそどうしたんだよ。俺に何か用があったのか?」

「まぁ……ね」

 

 いつもと違った歯切れの悪さに訝しむエゾオオカミ。

 教授の顔を改めて見たエゾオオカミは気が付いた。

 その顔が何とも困ったような表情である事を。

 この顔はついさっきに見覚えがある。東京への引っ越しを話した時のセルシコウに似ているのだ。

 初めて見る和香教授の表情にエゾオオカミは溜め息をもう一度ついて気を入れ替える。

 

「よっしゃ。じゃあ話せ。どうした?」

「ふふ。そうやっていつも他人の事を気に掛けてくれるエゾオオカミ君が私は好きだよ」

「うっせぇ」

 

 少しばかり和香教授にいつもの調子が戻って来た事に安堵しつつもエゾオオカミは次の言葉を待つ。

 和香教授は少し考えてから言った。

 

「いやなに。あらためて自分のダメさ加減に嫌気がさしていたところさ」

「ダメさ加減ってそんな今さらな……」

「エゾオオカミ君っ!? 私そろそろ泣くよ!?」

 

 エゾオオカミとしては和香教授がズボラで家事を全部ルリ達に丸投げしていて研究とかそういう事意外は基本残念な大人なのはわかり切っていた。

 ここでそれを告げてトドメを刺す事もあるまい。

 

「で? どうしたよ。また料理でも挑戦してユキヒョウに怒られたか?」

「いや、そんないつも通りの事だったらよかったんだけどね」

 

 自嘲の笑みを浮かべてから和香教授は続ける。

 

「思えばエゾオオカミ君には恥ずかしいところばかり見られてしまっているね」

「それこそ今さらだ」

「そうだね」

 

 かつて和香教授はルリとアムールトラの為に用意した誕生日ケーキをセルリアンに奪われて危うく部屋を吹き飛ばしかけた事がある。

 その時にセルリアンから誕生日ケーキを取り返してくれたのが木の実探偵エゾオオカミことクロスアイズだった。

 

「そうか……」

 

 と一人納得の和香教授。

 一体どうしたのだろうとエゾオオカミが不思議に思っていると、和香教授はふぅと一息ついてからよく分からない事を言い始めた。

 

「エゾオオカミ君。私は今回キミ達の味方は出来ない」

 

 何の話だ、と訝しむエゾオオカミの前に和香教授はベンチから降りて片膝立ちになった。

 

「虫がいい上にひどい無茶振りだというのも分かっている。けれどどうか聞いて欲しい」

 

 一体何を言うつもりなのだろう、と思っていたエゾオオカミの手を和香教授は両手で包み込んだ。

 和香教授が思いついた事とはこれだった。

 

「木の実探偵エゾオオカミ君。キミに依頼したい」

 

 何を、と思うエゾオオカミ。

 だが、縋るような目で見あげてくる和香教授なんて初めてで、エゾオオカミは頷かざるを得ない。

 そして和香教授が告げた依頼内容はもっと意味がわからないものだった。

 

「どうかルターを止めて欲しい」

 

 なんでそこでルターが? と思うエゾオオカミ。

 疑問は尽きないが、和香教授はもう立ち上がってしまっていた。

 

「なあ、教授……」

「すまない。私はこれ以上は何も言えないんだ」

 

 尽きぬ疑問を訊ねようとしたエゾオオカミに和香教授はそれだけを答える。

 この奥歯にものが挟まったような物言いしか出来ない理由にエゾオオカミも心当たりがあった。

 ついさっきの自分と一緒だ。

 それは誰かに口止めを約束してしまっているから。

 誰にも言えないから、きっと藁にも縋る想いで依頼を出したのだろう。

 

「それじゃあ」

 

 去って行く和香教授を止める事は出来なかった。

 その背中を見送ったエゾオオカミは自らの手に視線を落とす。

 先程和香教授に握られた手の中にはドングリが一つ残されていた。

 事情を話せないらしい事は分かる。それでも頼まざるを得なかった事も。

 それは分かるけれどもエゾオオカミはセルシコウの事も含めて呟かずにはいられなかった。

 

「俺にどうしろって言うんだよ……」

 

 手の中にある木の実は答えを返してはくれなかった。

 

 

 

―⑥へ続く




 

 情報公開:『わくわくプールランド』

 色鳥町にオープン予定の全天候型オールシーズン対応の屋内プールレジャー施設。
 施設内にはウォータースライダーや流れるプール、波の出るプールなどがある。
 その他にもビーチバレーが出来る砂浜スペースやノーマルプールも完備だ。
 水着レンタルからレジャー用品までレンタルしてくれるので身一つで遊びに来ても十分楽しめる。
 また、時間毎に行われるイベントも目玉の一つ。
 波の出るプールでのボディボード体験や砂浜スペースでのビーチフラッグやビーチバレーなどなど様々なイベントが時間毎に行われる。
 本来8月中旬にオープン予定であったが、様々な理由でオープンが遅れて正式オープンは9月中旬になる予定である。
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