けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

23 / 107
【登場人物紹介】

名前:スザク

 異世界からやって来たフレンズ。
 イエイヌやアムールトラが住んでいた世界とも違う場所からやって来た。
 そこはセルリアンに支配された世界であり、セルリアンに憑依された状態でこの世界へとやって来たのだった。
 クロスシンフォニーとの激闘の末、身体にダメージは残ったものの元のフレンズへと戻る事が出来た。
 かつては炎を操る守護けものとして圧倒的な力を誇っていたが、今はその力を振るう事も出来ない。
 現在、サンドスター研究所でその研究に協力したり療養に励んでいる。
 なお異世界から来たフレンズである為、この世界にいる色鳥南高校のスザク校長とは別人である。
【スザク校長】「イケるイケる!頑張れ頑張れどうしてそこで諦めるの!鍛えよう!鍛えたら乗り越えられる頑張れ頑張れ!」
【スザク】「こっちの世界の我…こんなか…。」


第11話『走れ!ジャパリバス』(中編)

 

 サンドスター研究所中庭。

 広い敷地をもつサンドスター研究所は中庭も結構な広さを備えていた。

 遊歩道にベンチもあれば芝生もあり、所員たちの憩いの場となっていた。

 まだ早めの時間な今はともえ達の貸し切り状態だ。

 早速芝生にレジャーシートを広げて場所を確保。

 春香と萌絵のお弁当にかばんのお弁当、そしてルリのお弁当がどんどん並んでいく。

 

「ほう…。これは中々に壮観ですね。じゅるり。」

「味の方も期待してもよさそうなのです。じゅるり。」

 

 と早速博士と助手が目を輝かせ、まさに猛禽の如くお弁当に狙いを定めていた。

 

「萌絵さんと春香さんのお弁当も朝に少しいただきましたけれど美味しかったですよ。」

 

 というかばんに博士と助手は「しまった、食べそびれたか!」という顔をする。

 

「アライさん達も最初からそっちに合流してればよかったのだ。」

「そうだねえ。かばんさんの朝ご飯も食べられたかもしれないのにねえ。」

 

 と残念がっているところにユキヒョウがニヤリとしつつ二人の肩を叩く。

 

「まあまあ、お二方。わらわのルリの手料理も忘れて貰っては困るのじゃよ。」

「いやいや、ユキさん!?いきなりハードルあげないで!?」

 

 といきなり持ち上げられた格好のルリが慌て始めるが

 

「ウチはルリの作ってくれるもんやったら何でも美味いで。」

 

 とさらにアムールトラに追加で持ち上げられてしまった。

 そんな微笑ましい光景を横目にドクター遠坂もともえと萌絵に連れられてレジャーシートに腰を下ろした。

 すかさず隣にイエイヌを座らせるともえ。

 

「イエイヌちゃん、あのね。お父さんはおむすびは海苔がパリパリ派だから、これを巻いてあげてくれる?」

 

 そして萌絵がイエイヌに海苔なしのおむすびとジップロックつきの袋に小分けにしていた海苔を一枚渡してくる。

 

「あ、はい。わかりました。で、でも…それ…。」

 

 イエイヌは手渡されたおむすびに戸惑いを覚える。何せそれは『ともえスペシャル』だったからだ。

 

「ああ、これは大丈夫なヤツなの。お父さん専用だけど。」

 

 萌絵がそう言うなら大丈夫なのだろう、と言われるがままにおむすびに海苔を巻いてドクター遠坂に手渡すイエイヌ。

 ただイエイヌの鼻には何やら危険な香りが届いている。本当に大丈夫なのだろうか。

 ドクター遠坂はイエイヌにもお礼を言いつつ、いただきます、と早速そのおむすびを口にした。

 

「!?…、こ、これはっ!ともえスペシャルVer4.83だね!」

 

 それはワサビ振りかけをふんだんに混ぜ込んだおむすびだった。鼻にツーンとくるかこないか、絶妙な加減になっている。

 子供向けの味ではないが、ドクター遠坂のような辛党の大人向けには数少ない成功例の一つだった。

 

「そ、そんな!?食べても平気なともえスペシャルがあるだなんて!?」

「イエイヌちゃんヒドイよぉ!?」

 

 思わず素直な本音が出てしまったイエイヌであった。

 ちなみに、イエイヌも試しに一口食べさせてもらったところ、鼻にツーンと来てしまって慌ててお茶を飲むハメになってしまったのだった。

 

「お、お父さんというのは凄いんですね…。」

 

 と、何やら別な方面でイエイヌに尊敬の念が生まれ始めていた。

 

「ふぅむ。我はこれが好みじゃな。」

 

 と、スザクはルリのサンドイッチを頬張っていた。

 

「あ、わかる。なんかこれ今までに食べた事ない味かも。これ何かわかる?かばんちゃん。」

「んー…。ほんとだ。タマゴサンドなのはわかるんだけど、でもこの強い香りは…。」

 

 と自然とお互い食べさせあいっこ状態になっているサーバルとかばんであった。

 

「あ…。実はそれ茹でタマゴを潰す前にスモークしてみたんです。」

「な、なにそれー!?そんなの出来るの!?」

 

 ルリの言葉に食いつくサーバル。

 一方でかばんは…

 

「もしかして、タマゴサンドに使うマヨネーズも同じチップで燻したりしてませんか?」

「そう!そうなんですよ!試してみたら味にまとまりが出て面白かったので!」

 

 と、早速味の分析に入っていて、それを言い当てられたルリは嬉しそうにしていた。

 

「じゃからわらわのルリが作ったものも忘れて貰っては困るといったじゃろう?」

「せやな。ルリの作るものは何でも美味いで。」

 

 と、その反応にユキヒョウもアムールトラも自分の事のように嬉しそうにしていた。

 ちなみに、ルリの趣味の一つ、燻す系の料理はマンションだとやりづらいかと思っていたけれど、同マンション内にあるキッチンスタジオをユキヒョウが借りてくれたのだった。

 

「でも、これ面白いねえ。ルリちゃんはきっといいお嫁さんになれるよ。」

 

 と萌絵に褒められて真っ赤になってしまうルリ。真っ赤になりながらも質問を返した。

 

「あ、あの。萌絵さんは将来はどうするんですか?」

 

 萌絵はそれにしばらく考えるようにしてから、答えを返す。

 

「そうだねえ。とりあえず高校はともえちゃんと同じところにしようかなって思ってたよ。将来はお父さんみたいに何か研究するのもいいかなーとか漠然とは考えてたけど…。」

「ほう。ならば遠坂萌絵はライバルで同僚になるかもしれないですね。」

「そうですね。博士。しかし我々も負けないのですよ。」

 

 そういう博士と助手は理系の高校受験を決めていた。彼女達は3年生。今年受験である。

 とはいえ、博士と助手が学年1位と2位の成績を独占し続けているので受験への心配はなさそうだ。

 二人でライバル心なのか萌絵にまとわりつきワチャワチャしている博士と助手。萌絵はデレっと相好崩していた。

 

「わ、私も…!あの…、萌絵さんみたいになりたいな…って…」

 

 と後半は尻すぼみに消え入りそうな声になりつつ言うルリ。

 

「まあ、萌絵ねーちゃんみたいになりたいって最近勉強がんばってるみたいやもんな。」

「もー!アムさんそれ内緒ー!」

 

 赤くなってアムールトラをペシペシ叩くルリ。

 

「ほうほう、ならば宝条ルリも我々と一緒に働く事になるかもしれないのですね。」

「今度図書室にでも来るがいいのです。一緒に勉強するのです。」

「ほんと!?いく!いきます!」

 

 と何やら博士助手とルリでチビっこ同盟が結成されつつあった。

 

「そういえば、アタシは高校はそのまま高等部に行こうかなって思ってたよ。」

 

 ともえが言う通りジャパリ女子中学には高等部もあり、そのままエスカレーター式での高校進学も可能だった。

 博士と助手のように外部の高校を受験するパターンも少なくはないが、大半の生徒がエスカレーター方式を選んでいる。

 

「将来かあー。アタシ将来は何をしようかなあ…。」

 

 うーん、と思い悩むともえ。ともえは運動神経は抜群でだいたいのスポーツも人並み以上には出来る。

 けれどそれを職業に出来るほどかというとそうではないように思えた。

 将来。

 まだ先の話ではあるけれど、大分近づいて来ている話でもある。

 

「ちなみに、かばんちゃんは?将来どうするとか決めてるの?」

 

 参考に、とともえはかばんへと話を振ってみる。

 成績優秀で大体の事は何でもやってのけてしまうかばんである。その将来はどうするのか、というのは興味があった。

 以前から動物が好きと言っていたから獣医さんとかが夢なのだろうか。

 それともやはり萌絵や博士助手たちと同じように何かの研究をするのだろうか。

 他のみんなも興味をひかれてかばんの答えを待つ。

 

「ぉ……さん…とか…なりたいな…って。」

 

 と、その言葉はよく聞き取れなかった。

 全員がもう一度、と耳を傾ける中、半分ヤケになったかのように真っ赤になったかばんがもう一度答えた。

 

「お、お嫁さん……です。」

 

 ある意味納得半分、驚き半分でもある。

 ともえも萌絵もイエイヌもアライさんもフェネックも博士助手もまだ付き合いの浅いルリとユキヒョウとアムールトラまでもが一斉にサーバルの肩に手を置いた。

 一同気持ちは一緒だった。

 

「サーバルちゃん。頑張って幸せにしてあげるんだよ。」

「う、うみゃああああああっ!?!?」

 

 みんなの乗せられた手の重みはそのままサーバルの重責を表しているかのようだった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 さて、そんな楽しい昼食が終わって食後のお茶まで楽しんだ一同。

 ドクター遠坂はイエイヌ特製のお湯に葉っぱいれたヤツお弁当のお供バージョンも大層気に入ったようで彼女の頭を撫でまくっていた。

 多少冷めても味が落ちづらい麦茶にしたのが正解だったろうか。そのあたりをチョイスしてくれた春香に感謝しつつイエイヌは尻尾を揺らしていた。

 

「みんな、ご馳走様。とても美味しかったよ。」

 

 とお礼を言った後に、ドクター遠坂は「さて」と話題を変える。

 

「次はみんなに最近出現しているセルリアンの話をしないといけない。ついて来てくれるかな?」

 

 みんなでお弁当の後片付けをした後にドクター遠坂の案内で研究所の一角へ移動する。

 そこは大きなシャッターのついたガレージのような場所だった。

 

「みんな、この色鳥町にリニアモーターカーの実験線が出来るのは知っているかな?」

 

 そのガレージの前でみんなに振り返るドクター遠坂。

 それはこの街の住人なら多くの人が知っていた。数年前にそれが決定してから街の郊外でかなり大きな工事が始まっていたからだ。

 街の郊外に高架がいくつも建てられて今もなお工事は続いている。

 

「最近その実験線の工事現場でセルリアンらしき目撃情報があってね。」

 

 ガレージ横の通用口から中に入ってみんなを招き入れるドクター遠坂。

 中の廊下を進んでいくと、程なくして大型のモニターが複数ならぶ部屋へとやってきた。

 

「「「「「お、おお……。」」」」」

 

 と感嘆の声をあげるともえ達一行。

 見た目の雰囲気としてはまるで秘密基地の指令室だ。大型モニターにはよくわからない情報が次々映し出されていてそれが刻一刻と変わっている。

 そして、この部屋で一心不乱にキーボードを叩いている女性がいた。

 

「そのセルリアンについての説明は彼女にお願いしよう。このサンドスター研究所でセルリアン研究を専門にしているカコ博士だよ。」

 

 と、ドクター遠坂に紹介されると手を止めて立ち上がるカコ博士と呼ばれた女性。

 スラリとした長身とアップにした髪が凛とした印象を与える。そして白衣姿が様になっていた。

 

「クロスハート、クロスナイトとははじめまして。クロスシンフォニー達は久しぶりだね。」

 

 言いつつカップに数本単位で立てていたチュッパチャップスを一本ずつ全員にくれた。

 萌絵は、「ああ、これ糖分補給用だな」とは気づいていたもののそこは今は指摘しないでおくことにした。

 

「さて、早速で申し訳ないのだけれど、リニア実験場に現れたセルリアンについて説明をさせてくれ。」

 

 言いつつカコ博士は目の前のキーボードを操作してモニターを切り替える。

 

「現れたセルリアンは2タイプ。一つはショッピングカートを模倣したものらしい。我々は『ドンカート』と呼んでいる。」

 

 モニターに映し出されたセルリアンはかなりの大きさである事がうかがい知れる。表示されている数値を信じるならば大型のダンプカーと同じくらいの大きさがあるようだ。

 

「そして、この『ドンカート』に搭載される形でもう1つのセルリアンがいる。自転車を模倣したセルリアンで通称は『サイクラーズ』だ。」

 

 その横に並べられたバイクのような2輪車はなるほど確かに自転車のようだ。今度はよく知るサイズの自転車と同じ程度の大きさだが、問題は数だった。

 

「こちらは『ドンカート』を守るような形で随伴している。現時点で少なくとも10体は確認している。」

 

 それにともえが挙手した。

 

「ええと、アタシ達はそれを倒してくればいいって事だよね?」

「その通り。だが倒そうにも問題がある。」

 

 ともえの言葉に再びモニターの画像を切り替えるカコ博士。

 

「この2体はどうやら暴走行為をする習性があるようなんだが、問題はその速度だ。巡航速度で時速60kmは出ている。」

 

 なるほど、常にそれだけのスピードで移動しているという事であれば追いつくだけでも一苦労だ。

 その気になれば一瞬だけならそのくらいの速度を出す事はクロスハートにもクロスナイトにも可能だろう。

 だが、常にそんな事をすれば一瞬でサンドスターを大量に消費してしまうのは容易に想像できた。

 

「そこで…、今回はコレを使って欲しい。ジャパリバスだ。」

 

 とカコ博士がブラインドを上げる。その先はガレージの中であり黄色のカラーリングの小型バスが一台駐車されていた。

 

「これはドクター遠坂の手によって改造されているから説明は彼に任せよう。」

 

 まるで猫科の動物かのように大きな耳がついている前部が駆動部であり後部の客車を牽引するのだろう。

 運転席は一人乗りのようだ。

 

「まず、このジャパリバスはラッキービーストが接続して自動運転が可能だ。最高速度は時速200km。今回の戦いに十分耐えられるはずだよ。」

 

 とドクター遠坂がモニターにジャパリバスを表示しつつ説明してくれる。

 

「いざとなったらもちろんマニュアルドライビングモードに切り替える事もできるから、これはクロスシンフォニー用だね。」

「あ。はい。大丈夫です。」

 

 とコクリと頷くかばん。

 

「ええ!?かばんちゃん運転できるの!?」

「はい。海外ライセンスですが免許もありますよ。」

 

 ともえの驚きにこれまた意外な事を言い出すかばん。

 

「も、もしかしてハワイで?」

「ミライお姉ちゃんに教わりました。」

 

 それはとある漫画で主人公の少年探偵が年齢不相応な事をする際の決め台詞を真似たものなのだが、今回ばかりは冗談とも思えなかった。

 

「そして、こっちはイエイヌちゃん…じゃなかった。クロスナイト用だよ。」

 

 と続けてモニターに映したのはポニーサイズの4つ足の乗り物だった。

 

「これはラモリさんが接続して完全自動運転が基本だね。最高速度は時速220km。短時間なら飛行も出来るけど、まだ飛行制御プログラムは出来てないから使っちゃダメだよ。」

 

 どうやら馬のように跨って乗るものらしい。よくよく見れば馬の頭にあたる部分にラモリさんの胴体がちょうど半分くらい埋まるくぼみがある。

 これはラモリさんによる自動運転用のシートなのだろう。

 

「名前はラモリケンタウロス。」

 

 ラモリケンタウロスは見た目通り、騎士の騎乗する鉄騎となるのだろう。本来運転などとは全く縁のないイエイヌ用にラモリさんとセットでの自動運転がメインとなっていた。

 こうなってくると、当然クロスハート用の乗り物もあるのだろう。ともえはワクワクして目を輝かせていたが…。

 

「あー…その…。クロスハート用の乗り物はないわけじゃないんだ…。けど…。」

 

 とどうにもドクター遠坂の歯切れが悪い。

 

「その…自動運転機能が間に合ってないから完全手動になっちゃうんだ…。」

 

 と、ドクター遠坂が示した乗り物はバイクだった。

 

「ジャパリバイク。最高速度は時速220kmまで出せるけど…、かなり危険だよ。」

 

 やはりドクター遠坂も人の親だ。いきなり自動運転機能もないバイクに娘を乗せる事はしたくないらしい。

 そして、ともえは中学生。当然バイクの免許などは取ってないし、運転した経験だってない。

 

「ともえは春香さんに似て運動神経抜群だからバイクだってすぐに乗りこなせるとは思うんだけど、ちょっと…ね。」

「そっかあ…。」

 

 確かに時速220kmまで出せるようなハイパワーなバイクは一筋縄で操れるわけでもないだろう。ともえは残念そうにしながらも納得せざるを得ない。

 今回はジャパリバスの客車に乗せてもらって移動するのがよさそうだ。

 そうしていると、一つの声が響いた。

 

「はい!こんな事もあろうかと!!」

 

 全員がそちら振り返るとその声の主は萌絵だった。

 

「いやー。アタシも一回言ってみたかったんだよね。こんな事もあろうかと!」

 

 いそいそ、と萌絵は自分の鞄から何かのパーツを取り出してドライバーであっという間に組み上げてみせる。

 それはスケボーの形をしていた。というかスケボーそのものだった。

 

「はい。クロスハート用にはこれ。普段ともえちゃんが使ってたスケボーを改造しちゃいました。」

 

 ともえの趣味の一つはスケボーだったりする。よく公園で練習したりしているがその腕前だって中々のものだ。

 彼女が公園のハーフパイプで練習していたりすると軽く人だかりが出来る程だったりもする。

 

「い、いつの間に…。」

「いやー。コツコツと?」

 

 と事もなさげに言ってのける萌絵。確かにナイトチェンジャーやパーソナルフィルター発生装置を作り出した腕があればスケボーの改造くらい朝飯前なのかもしれない。

 

「中にモーターとバッテリーを仕込んであって、最高速度は120kmくらいまでは何とかいけると思う。」

 

 いや、それはそれで凄いんじゃないだろうか、と一同ビックリだ。

 

「4輪全部にモーターを仕込んで制御用のAIも組み込んで最適化してあるから結構スピードも出せるよ。ただ、バッテリーは最大で10分しかもたないけどね。」

 

 萌絵の説明にただただ目を丸くするばかりの一同。

 

「名前はジャパリボード、って事にしとこうか。取り敢えずクロスハートはジャパリバスに乗せてもらって現場で状況に応じて使ってもらうのがいいんじゃないかな。」

 

 とジャパリボードをともえに手渡す萌絵。

 

「おおお!?萌絵お姉ちゃん!?凄いよ!?ありがとー!」

「ま、このくらいのサポートしか出来ないけど頑張ってね。」

 

 思わず抱き着いてきたともえを抱きとめる萌絵。

 

「クロスハートのサポート役としてはまだまだ萌絵には敵わないなあ。」

 

 と相好崩してそんな二人を見守るドクター遠坂。

 そうしていると、モニターにアラート表示が次々と現れる。

 何事か、と全員がモニターを見ると、どうやら先程言っていたセルリアン達が工事現場に現れたらしかった。

 

「早速で悪いけど3人とも。工事現場に現れたセルリアン達の退治をお願いできるかな。」

 

 ドクター遠坂の言葉にともえとイエイヌとかばんが揃って頷く。

 

「私もここから出来る限りのサポートはしよう。」

「見守る程度しか出来ぬが我もな。」

 

 とカコ博士とスザクがそれぞれの席についた。

 いよいよ出動、というところに一つの声があがる。

 

「あの!ま、待って下さい!わ、私も行きます!連れて行って下さい!」

 

 とその声の主はルリであった。

 

「で、でも…。」

 

 逡巡を見せるともえ。

 確かにルリはセルリアンである事を自覚してからは色々と特別な事も出来るようになっていた。

 けれどそれが戦える程のものなのかどうなのかはまだ疑問だった。

 

「ルリの代わりにウチが行く。せやからルリはここで安心して待っとき。な?」

 

 と進み出てきたのはアムールトラであった。

 アムールトラはイエイヌと同じ世界から来ただけあってセルリアンと戦う力だってある。

 ビースト状態を制御するビーストドライバーがなくなった今ではビースト化こそ出来ないが、セルリアンと戦う事が出来ないわけではない。

 だから、ともえ達としてもアムールトラがついてきてくれるなら断る理由はなかった。

 

「けど……。」

 

 なおもアムールトラに何かを言いたそうにしているルリに…。

 

「な。頼む。ルリ。ここで萌絵ねーちゃんやユキヒョウ達と一緒に待っとって。」

 

 アムールトラは彼女の両肩に手を置いた。

 ルリはうつむいて黙り込んでしまった。納得はしきっていないことはわかってはいたが仕方がない。

 

「そういうわけや。クロスハート。今回はウチが手ぇ貸したる。」

 

 だが、話は終わり、とばかりにアムールトラはルリに背を向けてともえ達の方に歩みよる。

 

「じゃ、じゃあ……。」

 

「「「変身!」」」

 

 ともえ、イエイヌ、かばんの三人の声が響いてサンドスターの輝きとともにクロスハート、クロスナイト、クロスシンフォニーの三人が現れる。

 さらにラモリさんがラモリケンタウロスに接続。ラッキービーストもジャパリバスの運転席に飛び乗った。

 

「じゃあ行ってくるね!」

 

 イエイヌフォームに変身したクロスハートはジャパリバスの後部客車に乗り込む。それにアムールトラも続いて、そしてラモリケンタウロスもクロスナイトも後部客車へと乗り込んだ。

 

「ラッキーさん。ボクはどうします?」

 

 サーバルシルエットに変身したクロスシンフォニーは運転席のラッキービーストに訊ねる。

 

「後ろに乗っテ。ここはマカセテ。」

 

 というラッキービーストにクロスシンフォニーの顔にも自然と笑顔が浮かんだ。

 クロスハート、クロスナイト、クロスシンフォニー、そしてアムールトラとラモリケンタウロスを収容したジャパリバスは高らかにエンジン音を響かせる。

 

「動作正常。いつでもいけるぞ。」

 

 とカコ博士が言う。

 

「じゃあみんな気を付けて。」

 

 とドクター遠坂が言うと同時、ガレージのシャッターが開いて外の明かりが入って来る。

 

「お父さん、そこは……って言っておくと格好がつくと思うな。」

 

 と萌絵がドクター遠坂に耳打ちした。

 それに「ええ!?」と何やら困惑の表情を浮かべるドクター遠坂。

 しかし、萌絵が期待した目で見上げてくるので、しょうがなくコホンと一つ咳払い。

 続けて白衣をバサリと翻し右手をシュバ!と真っ直ぐに伸ばしてこう叫んだ。

 

「ジャパリバス、発進!」

 

 空気を読んだラッキービーストがそれに併せてバスを加速。猫の耳がついた可愛らしい外見の小型バスは見た目とは裏腹の速度でもって戦場へと駆け出した。

 その具合を満足そうに見送るドクター遠坂。

 

「ちなみに今の掛け声がなくとも別に発車は出来る。」

 

 と言うカコ博士。くつくつ、と笑いたそうにしているのを我慢しているようだった。

 

「娘の前でくらいいいじゃないかっ!?」

 

 ドクター遠坂は真っ赤になった。

 カコ博士は今の場面を収めた監視カメラの映像をいいアングルになるように編集。こっそりとラモリさんあてに通信した。

 きっとラモリさん経由で奥さんに届くだろう、と予想しつつ。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 ジャパリバスは順調に車通りの少ない道を走る。

 ちょっとだけ奇抜な見た目のジャパリバスはやはり注目の的だった。

 時折、沿道にいる親子連れなんかが手を振って来たりするのでクロスハートはそれに手を振り返していた。

 やがて郊外に出てすっかり車通りもなくなった頃、遠くの方に高架の道が見えてきた。

 あそこがリニアの実験線だ。

 工事用車両などの乗り入れ口にはやはり“進入禁止”の立て看板と通行止めのバーが立っていたが、ジャパリバスが一旦停車。ラモリさんが多目的アームでバーを避けて戻って来た。

 なにか謎の機能で飛び越えたりはしないんだ、とちょっと残念なような気がするクロスハートであった。

 それはともかくとしてリニアの実験線予定地へと入ったジャパリバス。

 既に高架としてはほぼ完成しているようで、車が通るのには何の不自由もない。

 これからリニアモーターカー用の各種送電線などを敷設していくのだろう。

 だが、それらがない今、この道は格好のスピードサーキットと化していた。

 おそらく幅とそしては4車線道路を入れてもまだ余裕があるだろう。この道をセルリアン達は我が物顔で走っているのだろうか。

 速度を上げるジャパリバスの前にダンプカーくらいの大きさに肥大化したショッピングカートが現れる。

 それはジャパリバスに気が付いたのかカートの籠の後ろ側を開いた。

 これはショッピングカートを一つにまとめる際に連結しやすいようにする為の機構なのだが、これが今はハッチの役割を果たしていた。

 開いたハッチから次々と小型の自転車サイズのセルリアン達が降り立ってショッピングカートのセルリアンを囲むようにして走りはじめた。

 

「前情報の通りだね。」

 

 クロスハートの言葉にクロスナイト、クロスシンフォニー、そしてアムールトラの三人が頷いてみせる。

 いよいよこの暴走セルリアンとの戦いが始まろうとしていた。

 

 

―後編へ続く。

 




【後書き】

書いてみたら思ったよりも分量が多くなってしまったので中編も挟む事にしました。
イチャイチャ日常パートを削ればもっとテンポよく進むのかもしれないけど、そこを削ると自分の楽しみが4割くらい減ってしまうので分量を増やす方向になりました。
後編もなるべく早く仕上げたいなあ、と思っているのでお付き合いの程よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。