けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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多分ギリギリだけど間に合いましたー!
けものフレンズR1周年おめでとうございます!

そんなわけで、後編も是非お楽しみ下さい。


番外編『ともえの修羅場体験記』(後編)

 

 

 タイリクオオカミの部屋は活気に満ち溢れていた。

 

「よし!このページはしっかり乾いてるね。そしたらこれは消しゴムかけだ。頼むよ。」

「はい!お任せ下さい!」

 

 タイリクオオカミからイエイヌへと原稿が手渡される。

 

「タイリクオオカミ先輩っ。こっちのページはベタ塗り終わりましたっ!」

「OK。速いね。そしたらそれはしばらく横に寝かせた状態でかわかしてインクが垂れないのを確認してから吊るして乾かそう。」

 

 タイリクオオカミ、イエイヌ、萌絵、ともえと忙しくページに手を入れていく。

 

「ともえ。まだ効果線と効果音まで進んでるページはないから、その間は萌絵の方を手伝っててくれるかい?」

「ラジャー!」

 

 春香に出された『宿題をキチンとやる』という言いつけは既に果たした三人。

 それぞれの作業を忙しくこなしていた。

 タイリクオオカミは自分の作業もしながら三人が暇にならないように指示を出していく。

 まるで背中に目があるのか、というくらいともえ達が戸惑わずに済むように絶妙のタイミングで指示を出す。

 

「(まずまずのペースだナ。)」

 

 見守るラモリさんから見てもこのペースは速い方なのではないかと思える。

 出来上がりにかかる時間と残りページ数を単純に見れば十分に間に合いそうなペースだと予測を立てる。

 ただ、それはあくまで今のペースを維持出来ていればの話だ。

 これから疲労も溜まればミスだってするかもしれない。

 もしかしたら予期せぬアクシデントだってあるかもしれない。

 だが…。

 

「(それを心配したところで仕方がナイ…。何もない事を祈るしかないナ…。)」

 

 と余計な心配は自身のAI処理のみで終わらせて言葉には出さないラモリさんであった。

 そんな彼の願いも虚しく、順調な歯車が狂いそうな出来事が起ころうとしていた。

 それは担当編集兼寮の管理人であるアミメキリンがタイリクオオカミの部屋を訪れた際に起こった。

 彼女はタイリクオオカミに様子を聞いた後に申し訳なさそうに言った。

 

「実は…。会社の方でトラブルが発生したみたいで…。」

「トラブル?何かあったのかい?」

 

 タイリクオオカミは原稿を描く手を止めずに問う。

 あまり褒められた態度ではないだろうが、アミメキリンにはタイリクオオカミが原稿を完成させるのが何より大事だから仕方がない事だった。

 そしてアミメキリンもその邪魔になるような事はしたくない。

 なのに、続く言葉はタイリクオオカミの集中を削ぎかねないものだったので、その言葉は何とも歯切れが悪かった。

 

「その…。なんでも会社のある区画で停電が発生したらしいんですが、その影響でサーバーのデータが一部壊れてるかもしれないって…。」

 

 それにピクリ、と一瞬タイリクオオカミも手が止まる。

 

「それは大変じゃないか。もっとも私の原稿はまだ入稿前だから幸い…と言っていいのかどうかはわからないけれど難を逃れたが、他の作家さんに影響が出ているかもしれないね。」

 

 出版社のサーバーに保管していた原稿データが消えていたりしたら一大事だ。

 

「なんで私はこれから会社の方でデータの確認と復旧作業に行って来ます。」

 

 申し訳なさそうに言うアミメキリン。

 

「本当だったらタイリクオオカミ先生だって大変なのにお側でサポートしたかったのですが…。」

「こちらは、うん。何とかなるよ。アミメさんこそこんな時間からは大変だと思うけど無理しないでね。」

 

 そんなアミメキリンにタイリクオオカミは痩せ我慢でも何とかなると言うしかなかった。

 

「ええと、今日のご飯は食堂でご飯くらいは炊いてるんですが、他はまだ何も準備できてなくて…。ごめんなさい。」

「いいさ。それくらいは自分たちで何とかするよ。最悪でもコンビニなり何なりで済ませるさ。」

 

 アミメキリンが今日はともえ達の分まで含めて夕飯を用意するつもりでいた。

 だがこれから会社へ行かなくてはならない以上、それは果たせそうもない。

 そして、ともえや萌絵に料理までお願いしては手痛い時間のロスになってしまうだろう。

 ともかく、事情が事情だ。

 ここで我がままを言っては掲載誌の発行が出来なくなる可能性だってあるのだ。

 タイリクオオカミも、ここはアミメキリンを送り出すしかなかった。

 そこで口を開いたのは成り行きを見守っていたラモリさんだった。

 

「何か確認したい事があったら俺に連絡をクレ。画像データくらいならすぐにスキャンして送ってヤル。」

「本当ですか!?助かりますっ!じゃあこれ私のアドレスです。すみませんがよろしくお願いします!」

 

 言いつつアミメキリンはバタバタと準備して出かけていくのだった。

 

「ともかく、こちらはこちらで全力を尽くそう。」

 

 気を取り直したように言うタイリクオオカミ。

 アミメキリンがいなくなった事でほんの少しではあるが浮足立ってしまった。

 そんな時にこそミスは起こるのだ。

 イエイヌが次に消しゴムかけをしようと新たに吊るされた原稿に手を伸ばす。

 そして自分の机に置くと消しゴムをかけようとした。

 

「…!待つんだ!イエイヌ!それは…!」

「……え?」

 

 タイリクオオカミの制止の声は一歩間に合わなかった。

 

―ヌルリ。

 

 イエイヌが先程と同じように丁寧に消しゴムをかけようとしたその一手目にイヤな手応えが返ってくる。

 ちょうどイエイヌがかけた消しゴムの跡を追いかけるようにインクが滲んでしまっていた。

 そう。

 インクが乾ききっていなくて滲んでしまったのだった。

 

「あ…。あ…。わ、わたし、なんて事を…。」

 

 イエイヌの顔がみるみると青くなっていく。

 そのインクの滲みは取り返しがつかない事のように思えた。

 

「大丈夫だ。イエイヌ。問題ない。」

 

 タイリクオオカミはいつの間にかイエイヌのテーブルにまで移動していた。

 青い顔で泣きそうになっているイエイヌの頭を撫でる。

 

「よくここで止まってくれたね。丁寧に仕事をしてくれていたおかげだよ。このくらいなら十分修正出来る。」

 

 もしもイエイヌがそのまま消しゴムをかけ続けていれば原稿は取り返しのつかない事になっていただろう。

 そして、雑に広範囲を一度に消しゴムかけしていたとしても同じだった。

 きちんと丁寧に消しゴムをかけていたから、インクの滲みは最小限で済んでいた。

 

「ともえ。このページはもう一度乾かして、乾いたらホワイトで修正しよう。」

「ラジャー!」

 

 タイリクオオカミの指示にスチャっと、ともえは白いインクを用意した。

 

「イエイヌちゃん、このくらいの失敗なら全然取り返せるから心配しないで。」

「そうそう。アタシ達も実はベタ塗りをちょっとハミ出したりする失敗って結構するんだー。」

 

 タイリクオオカミに続いてともえも萌絵も順番にイエイヌの頭を撫でてあげる。

 とんでもない失敗をしてしまった、と動転していたイエイヌもようやく落ち着きを取り戻す事が出来た。

 

「あの…。なんで…。」

 

 イエイヌは失敗してしまったのに、こんなに優しくされるのが何故なのかわからずにいた。

 

「そりゃあ、イエイヌは同じチーム?群れ?ともかくそういうものだからさ。」

 

 タイリクオオカミはそう言って笑う。

 

「失敗したって構わないんだ。そこから何かを学んで次に活かしていく事が出来ればね。」

 

 そして少し考えるような表情を見せたタイリクオオカミは今度は少し困ったような苦笑を見せる。

 

「それにね、失敗って経験は狙って出来るわけじゃないから結構貴重なんだ。そういう経験は色々と漫画を描く上で重要でね。」

 

 その言葉にイエイヌは何だか胸が暖かくなる想いだった。

 と、同時に今まで感じた事のないような気持ちも同時に抱くのだった。

 

 

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 イエイヌの出来る作業自体は消しゴムかけだけになる。

 だから、必然としてイエイヌの仕事だけがなくなる状態が出来てしまっていた。

 なので、イエイヌは空いている時間を利用して、単身食堂のキッチンへとやって来ていた。

 実はこういう時間が出来るであろう事を見越していた春香がイエイヌにある物を託していた。

 それはキャップつきの瓶に小分けされたふりかけとおむすび用の海苔を入れた袋。それと、三角のプラスチック製の小さな型のようなものだ。

 

「失敗したっていい…。そこから何かを学んで次に活かせれば…。」

 

 先程タイリクオオカミに言われた言葉を思い出しながら、イエイヌは炊飯器を確認する。

 中には炊き立ての白米が湯気を立てていた。

 イエイヌはそれをしゃもじで救うとボウルの中に取り出す。

 そこに春香から預けられたふりかけを満遍なく振っていく。続けてご飯を潰さないように優しく丁寧にしゃもじでご飯を混ぜこんだ。

 

「実は…。ちょっとだけタイリクオオカミさんが羨ましいって思ってたんです。」

 

 タイリクオオカミはともえと萌絵とも大の仲良しという風で自分に出来ない事も出来て、しかも自分が知らないともえと萌絵を知っていた。

 きっと自分が手伝いを申し出ても本当はいらなかったのかもしれない。

 けれど、タイリクオオカミは自分の事も歓迎してくれた。

 そして失敗した自分の事までも気遣ってくれた。

 いつの間にか、イエイヌはタイリクオオカミが羨ましいという気持ちから、ともえと萌絵が羨ましい、と思うようになっていた。

 タイリクオオカミがともえと萌絵にどこか似ているように思えるのはきっと、ともえと萌絵がタイリクオオカミからも色々と教わったおかげなのだろう。

 だから、そんな時間を過ごしてきたともえと萌絵が羨ましい、という気持ちが芽生えていたのだった。

 最初は小さな嫉妬心から自分も手伝いを申し出たイエイヌだったが、今はタイリクオオカミの…、いや、臨時のタイリクオオカミを中心とした群れの為に自分に出来る事をしたいと思ったのだ。

 イエイヌはふりかけを混ぜ込んだご飯を、持ってきたプラスチック製の小さな三角形をした型の中にしゃもじで入れる。

 そして、その型についている蓋を使って上からそっと押しつけていく。

 そうして型の裏側を指で押し込むと、綺麗に三角形のおむすびが転がり出てきた。

 それに持ってきた海苔を巻けばおむすびが一つ完成だ。

 ラモリさんはこっそりとキッチンを覗いていたが、この様子なら心配なさそうだ、と飛び跳ねてこっそりとその場を後にする。

 

「失敗したってきっとタイリクオオカミさんもともえちゃんも萌絵お姉ちゃんも…。」

 

 そう思えば、イエイヌは初めての料理に挑戦するのだった。

 イエイヌは初めて、ともえがともえスペシャルを作り続ける理由が何となくわかったような気がした。

 

 

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 時刻は19時を回っていた。

 さすがにタイリクオオカミもともえも萌絵もお腹が空腹を訴えてきていた。

 ちょっと休憩してみんなでコンビニでも行って何か買ってこようか、と思案をはじめる。

 そんなタイミングでお盆におむすびの乗ったお皿とお茶の入った急須を乗せたイエイヌがやって来た。

 

「みなさん、ちょっと休憩してご飯にしませんか?」

 

 まだ暖かい上に巻いたばかりの海苔もパリパリな状態を保っているおむすびがいくつも大皿の上に並んでいた。

 それを中央のミニテーブルの上に置く。

 

「え!?これ、イエイヌちゃんが一人で作ったの!?」

 

 驚きの声をあげるともえにイエイヌは恥ずかしそうに頷いた。

 アミメキリンもいないし、他の入居者達も停電で発生したトラブルの為に出払っている今、イエイヌ一人しかこれを作れる者はいなかった。

 

「すごいよ!美味しそうだよっ!」

 

 ともえはイエイヌに抱き着いていた。

 

「本当、上手に出来たね!」

 

 萌絵も逆側からイエイヌに抱き着き頭を撫でる。

 二人ともイエイヌはお手伝いはよくしていたが、一人で料理を作るのは初めてだった事を知っていたのだ。

 ともえと萌絵にとってはとても嬉しいサプライズである。

 

「いや、ちょうどお腹ペコペコだったんだ。ありがとう。イエイヌ。」

 

 それはタイリクオオカミにとっても計算外の嬉しいサプライズだった。

 みんなでミニテーブルを囲んで「いただきます。」と手を合わせる。

 

「うん!美味しいよ、イエイヌちゃんっ!」

「ほんとほんと!」

 

 味付けとしては春香が持たせてくれたふりかけが殆どだったが、ともえと萌絵の二人に手放しで褒められるとやはり嬉しくなってしまう。

 イエイヌの尻尾は激しくぶんぶん揺れていた。

 

「暖かいおむすびに熱いお茶。これだけでもご馳走だよ。」

 

 タイリクオオカミにも好評のようだった。

 二つ目に手を伸ばしたタイリクオオカミに、イエイヌが思わず「あ。」と声をあげてしまう。

 どうしたのだろう、と小首を傾げるタイリクオオカミにイエイヌはこれまた恥ずかしそうに言った。

 

「じ、実は4つだけ作ったんです…。イエイヌ風ともえスペシャルを…。」

 

 その言葉に萌絵が一瞬固まった。

 凄い勢いでバッとラモリさんの方を振り返る、がラモリさんは試作型多機能アームを首の変わりに横に振った。

 どうやらラモリさんもこれは把握していなかったようだ。

 

「ははは!失敗を恐れないその心意気はいいね!」

「なんでともえスペシャルが失敗の代名詞みたいになってるのか釈然としないけど受けて立つよ!」

 

 そんな様子を大笑いして見ているタイリクオオカミに何やらぷんすかしながらも、ともえもその4つの特別製おむすびの一つを手に取った。

 萌絵もこうなればどうとでもなれ!とばかりに特別製おむすびに手を伸ばす。

 イエイヌも自分の分の特別製おむすびを手に取った。3人にだけ食べさせて自分は食べないというわけにはいかない。

 みんなで「せーの」で特別製おむすびをパクリ。

 タイリクオオカミの口の中に強いカツオ節の香りが広がった。が、不味くはない。

 むしろ…。

 

「美味しい…と思うよ。うん。」

 

 それは具材として中に削ったカツオ節を軽く醤油で和えた物を入れたおむすびだった。

 イエイヌとしてはキッチンにあったカツオ節を使っておむすびを作るのはかなり賭けだった。

 実際はカツオ節の醤油和えはご飯に合う組み合わせではある。

 それでも、自分で考えておっかなびっくりでも作った物が美味しいと言ってもらえて、イエイヌの尻尾は激しく揺れていた。

 そんなイエイヌとともえの間に割り込むように萌絵が座る。

 で、二人の腕を片手ずつに握ってみせる萌絵。

 そのまままるでボクシングのレフェリーが判定を告げるかの如く、イエイヌの方の手を持ち上げた。

 

「イエイヌちゃん、WIN。」

「な、なんでー!?!?」

 

 ともえの絶叫にタイリクオオカミは腹を抱えて笑った。

 

「いや、確かに!ともえスペシャル対決はイエイヌに軍配を上げるしかないね!」

 

 勝因としてはおっかなびっくりな分、お醤油を控え目にした事だろう。

 ともえのように思い切りよく醤油びたしにしてしまっていたら、醤油の味しかしなかったはずだ。

 

「もうー!い、いいもん!タイリクオオカミ先輩のいい顔いただいちゃうもんっ!」

 

 と未だに大笑いしているタイリクオオカミのスケッチを始めるともえ。

 悔しいが、イエイヌ風ともえスペシャルは美味しかったし、大笑いしているタイリクオオカミはとてもいい顔をしていた。

 あっという間にスケッチを描き上げたともえのスケッチブックを覗き込む萌絵。

 今度はともえの方の手をあげさせて…。

 

「今度はともえちゃん、WIN。」

 

 と言うのだった。

 それに再び大笑いするタイリクオオカミ。

 とても賑やかな食事休憩となったのだった。

 

 

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 それから…。みんなで再び作業に没頭したり、みんなでワイワイお風呂に入ったり。

 でもっておしゃべりする余裕もなくみんなで眠ったり。

 作業の方も順調だった。

 どうやらアミメキリンの方も無事にトラブルを解決できたようで、夜には戻って来た。

 たくさん作っておいたイエイヌ特製おむすびのおすそ分けをしたところ、ご飯を食べてる余裕もなかったらしくて大層感謝されてしまった。

 そうして、土曜日。早起きして朝から原稿作業を進めていくタイリクオオカミ達。

 全てが順調というわけではなかったけれど、それでもどうにかこうにか原稿は完成した。

 あらためて出来上がった原稿を読んでみる事になったともえ達。

 今回のエピソードに関しては一番最初の読者だ。

 話の内容はこうだ。

 ギロギロは学校の校舎裏に住み着いた子犬を見つける。

 ところが、それと同時に学校内で文房具などが紛失する事件が多発。

 校舎裏に住み着いた子犬に疑いをかけられてしまう。その子犬がそんな事をするはずがない、と信じたギロギロは名探偵の別人格と入れ替わって捜査を開始する。

 紆余曲折あって真犯人のカラスを見つけ出した名探偵ギロギロは、巣の中に貯め込まれたキラキラ光る文房具たちを回収し、子犬の無罪を証明するのだった。

 そして、その子犬は学校の飼育小屋で飼われる事になり、飼育係のギロギロが大切にお世話をしていく事になる、というオチである。

 

「完成…したね。」

 

 タイリクオオカミは出来上がった原稿に最後のチェックを入れてから大切に封筒にしまう。

 まさに締め切りギリギリでの完成。

 これを後は出版社に届けるだけだが、この時間なら郵送するよりも直接持って行った方が早い。

 日曜日でも鉄火場の出版社は普通に仕事があるらしい。

 アミメキリンも今朝は早くから出勤していった。

 

「せっかくだ。みんなで出版社まで行ってみようか。」

 

 タイリクオオカミの提案でともえと萌絵とイエイヌとラモリさんも原稿を届けに行く事になった。

 早速みんなで社員寮の玄関をくぐる…。

 と……。

 

―ハッハッハッハッ

 

 何故か玄関先に見た事もないイヌがいた。フレンズではなく普通の犬のように見える。

 大きさとしては中型犬くらいだろうか。

 それがちょこんと座って尻尾を振っていた。

 

「なんか…。」

「この子…。」

「やけに見覚えがあるような?」

 

 確かに初めて見る犬のはずなのに、ともえも萌絵もイエイヌも何故だか凄くよく知っているような気がした。

 そしてそれはタイリクオオカミも同じだった。

 その犬は座ったままじーっとタイリクオオカミ達を見ている。

 それは何かを言いたそうに見えた。

 イエイヌがその前にしゃがみ込んでその犬を見つめ返す。

 

「ええと…。それ、いれちゃダメ?って言ってるような…。」

「イエイヌちゃん!この子が言ってる事わかるの!?」

「同じ犬ですから、何となくは…。」

 

 ともえの驚きにイエイヌは頷いてみせる。

 タイリクオオカミはそれに顎に手をあてて考え込む。

 

「それ…?入れる…?一体何の事だろう。」

 

 そうしていると……。

 

―バチィ!

 

 とその犬の毛が逆立って周囲に静電気のような稲光が走る。

 突然の出来事にタイリクオオカミは持っていた封筒を取り落としてしまった。

 

「わふっ。」

 

 犬は封筒を咥えると、どこかに駆け出してしまった。

 

「そ、それダメぇ!」

 

 慌てて叫んだともえの言葉を聞いたのかどうか。

 再びシュタタタ、と駆け戻ってくる犬のような何か。

 まるで「ああ。忘れ物忘れ物。」とでもいうかのように、流れるような動きでヒョイっとラモリさんを尻尾ではたいて飛ばして自ら背に乗せる。

 そのまま封筒を咥えて、ラモリさんまで背中に乗せて再びどこかへと駆け出してしまった。

 

「ってそれはもっとダメぇ!?」

 

 一瞬呆気にとられたともえであったが、すぐに気づいて走り始める。

 なんせ犬らしき生き物は原稿の入った封筒にラモリさんまで持っていってしまったのだ。

 見過ごすわけにはいかない。

 

「ここはわたしが!」

 

 言うが早いかイエイヌが矢のように飛び出した。

 その速度はまさに目にも留まらぬ速さである。

 イエイヌは元々別な世界に暮らしていたので、この世界のヒトとほぼかわらぬフレンズよりも身体能力では優れているのだ。

 それでも、原稿とラモリさんをもった犬には追い付けない。

 さらに悪い事には人通りの多い道に出ようとしていた。

 この調子で爆走していたら周囲の注目を集めてしまうのは必至だ。

 

「こうなったら…。」

 

 イエイヌは首に巻いたチョーカーに手を触れる。

 それこそが萌絵の作った変身アイテム“ナイトチェンジャー”であった。

 

「変身ッ!」

 

 イエイヌが叫ぶと同時、その身体をサンドスターの輝きが包む。

 一瞬後に現れるのは腰までの短いマントを翻し、金属製の胸当てにデフォルメされた犬の頭を模した手甲とレッグガードをつけたヒーロー…。

 

「クロスナイト!」

 

 である。

 ちなみに、姿だけを変える変身アイテムである為、別に変身してもしなくてもイエイヌの強さには大して違いはなかったりする。

 最後に目元を隠すミラーシェードをまとったクロスナイトは人通りの多い大通りへと飛び出した。

 先行して大通りに飛び出した犬らしき生き物は封筒を咥えてラモリさんを背に乗せたまま道行く人達の足の間を縫って走り抜けてゆく。

 

「きゃあ!?」

「なんだなんだ!?」

 

 突然の出来事に驚き戸惑う人たちはさらに犬を追って現れたクロスナイトに目を丸くする。

 クロスナイトは短いマントを翻して先程駆けて行った犬を追う。

 街路樹や街灯、商店のひさしなど、人々の邪魔にならない位置を飛び跳ねて移動するクロスナイト。

 あっという間に犬もクロスナイトも消えていってしまった。

 そんな一瞬の追いかけっこに街の人たちも呆気にとられていたが、やがてポツリと呟いた。

 

「あれって…。」

「もしかして…?」

 

 最近街で噂になりつつあるヒーローであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

「はひ……。はひ……。」

「お、お姉ちゃん、無理はしないで…。」

 

 イエイヌを追って走るともえと萌絵とタイリクオオカミであったが、あっという間にペースダウンを余儀なくされた。

 それは萌絵があっという間にバテてしまったからだ。

 彼女は運動が苦手で、特に長距離走は大の苦手なのである。

 もう息も絶え絶えであった。

 

「ともかく、萌絵にあまり無理をさせるわけにはいかない。」

 

 タイリクオオカミは立ち止まる。

 

「で、でも原稿とラモリさんが…。」

 

 それにあわせて萌絵も立ち止まり肩で大きく息をする。ともえが萌絵の背中をさすっていた。

 

「いや、それなんだが…どうしてさっきの犬は原稿とラモリさんを持って行ったんだろう…?」

 

 タイリクオオカミは真剣な顔で考え込んでいる。

 ともえと萌絵にはそれがセルリアンの仕業ではないか、と思えた。

 そしてセルリアンの仕業であるならば、答えは簡単、タイリクオオカミの描いた原稿に宿った『輝き』を取り込む為だろうと思えた。

 ともかく、セルリアンの事は伏せて何とかそれをタイリクオオカミに伝えるしかない。

 

「多分だけど、タイリクオオカミ先輩の絵が好き?とか…?」

「いや、それであればラモリさんまで持っていく理由がないじゃないか。」

 

 タイリクオオカミはともえの言葉を否定しつつも何かが引っかかっていた。

 玄関口で会った犬らしき生き物には悪意や敵意などは一切感じなかった。

 それどころか、どこか親しみさえ抱く程だった。

 

「どうして私はあの犬に見覚えがあったんだ…?それにイエイヌが言っていた…。それ…。入れちゃダメ…?」

 

 タイリクオオカミはさらに思考に没頭する。

 思えばあの犬には不自然なところが多い。

 それにイエイヌが言っていた『それ』とは原稿の事だろうか?

 そして、前だって、原稿は封筒に入れるまではちゃんと描き上げていた。

 

「そうか……。そういう事か…!」

 

 タイリクオオカミの頭には一つの線が繋がった。

 

「謎は全て見通した!」

 

 それは“名探偵ギロギロ”の決め台詞だ。

 タイリクオオカミはまさにギロギロの如く鋭い眼光でポーズを決める。

 思わずともえも萌絵も見とれてしまった。

 まさに原作者によるギロギロ推理ショーの開幕であった。

 

「まず、あの犬…見覚えがあっただろう?あれはね、スパークスだよ。」

 

 スパークス、とは今回の“名探偵ギロギロ”が世話する事になった子犬につけた名前である。

 なるほど、言われてみれば原稿作業で何度も見てきたあの漫画の中の子犬が成長した姿にも見える。

 だから不思議とタイリクオオカミどころか萌絵もともえも見覚えがあったのだ。

 

「そしてね。イエイヌが言っていた言葉で確信した。やはり私は一度既に原稿を完成させていた。」

「タイリクオオカミ先輩っ!?それってどういう…!?」

 

 ともえが驚くのも無理はない。

 なにせ本当に原稿作業を終えたのであれば、昨日と一昨日の苦労は一体何だったのか。

 

「だがね。原稿は盗まれた。私の手から離れて編集部へ届けられる間にね。」

「「な、なんだってー!?」」

 

 ともえも萌絵も思わず声を揃えてしまった。

 原稿を盗めるとしたら郵便屋さんとかそういう事だろうか、と戸惑う。

 郵便屋さんならば確かに封筒をこっそり開けてもう一度封をしなおす事だって出来なくはないかもしれない。けれどそんな事をする動機がない。

 

「いいや。犯人は郵便屋さんなんかじゃないよ。…私だってイエイヌがあの犬の言葉を教えてくれなかったら気づけなかった。そのくらい些細な違和感だったんだ。」

 

 タイリクオオカミが何を言いたいのかはわからないが、推理ショーはまさに佳境を迎えつつあった。

 

「イエイヌが教えてくれたあの犬の言葉…。『それ…入れちゃダメ。』それとは原稿。入れちゃダメなのは……。封筒さ!犯人は封筒に何かの仕掛けをしたんだ!」

 

 バッっと手のひらをともえ達に向けるタイリクオオカミ。

 ともえ達だからこそわかる。

 封筒がセルリアンだとしたら…、郵送される間にタイリクオオカミの原稿に宿った『輝き』を食べ放題で白紙にしてしまう事だって出来ただろう。

 なるほど、辻褄はあっているように思える。

 

「あの…。でも、なんであの犬…スパークス?はラモリさんまで持って行っちゃったの?」

 

 控え目にともえが挙手して訊ねる。

 

「それは簡単さ。ラモリさんは中々に慎重派なようだからね。また原稿が何らかの原因でダメになった時に備えて、原稿をスキャンしてバックアップデータを取ってくれていたのさ。」

 

 それは事実だった。

 ラモリさんは念のために、と原稿の画像データをスキャンして保管していた。

 万が一原稿がダメになった時にデジタル入稿できるようにだ。

 

「じゃ、じゃああの犬…、スパークスは…。」

「ああ。スパークスは私の…いや、私たちの原稿を守ろうとしているんだ!」

 

 もう一度タイリクオオカミはしゅば、と伸ばした手を二人に向けた。

 

「で、でも、それなら封筒を持っていかなくても…。」

「いいや、スパークスとしては私たちが封筒に何か仕掛けがされている事を知らないと踏んでいた。だからそれをわかってもらうよりも強硬策に出た方がより確実だったんだ。」

 

 それなら確かにあの場で静電気のような物を放ってまで原稿を奪っていった理由にもなりそうだ。

 あの時の犬…いや、スパークスとしては封筒と原稿とラモリさんを同時に守って、しかも戦いの被害がタイリクオオカミ達に及ばないように離れるつもりだったのだ。

 

「だ、だったらイエイヌちゃんにこの事を伝えないと!?」

 

 萌絵が慌てる。

 イエイヌはこの事を知らない。

 だからスパークスを退治してしまうかもしれない。

 何とかしてこの事をイエイヌに伝えなくてはならなかった。

 

「それなんだけど…。何とかなるかもしれない。」

 

 ともえは自分のスケッチブックを取り出してみせた。

 その仕草だけで萌絵はともえが何をするつもりなのかを理解した。

 

「ええと、タイリクオオカミ先輩。今から見る事は内緒にしておいてもらっていいですか?」

 

 ともえの真っ直ぐな視線を受けてタイリクオオカミもまた頷いた。

 

「いいとも。キミが、キミたちがそういう目をしている時はいつだってそれ相応の理由があるときだ。だから約束しよう。これから見る事は秘密にしておく、と。」

 

 タイリクオオカミは嘘をつく。

 けれど約束を破る事は決してない。

 だから、ともえは叫んだ。自分たちと原稿を守ろうとしているスパークスの為に。

 

「変身!」

 

 ともえの持つスケッチブックがパラパラと自動的にページがめくれてタイリクオオカミのページで止まる。

 

「クロスハート・タイリクオオカミフォーム!」

 

 そして、ともえの身体をサンドスターの輝きが包んだ。

 まず足首にファーのついたニーソックス。黒と白のチェック柄のミニスカートが翻る。

 と同時に髪色が黒に変化してピョコン、とオオカミの耳とふさふさの尻尾が生える。

 そして、キュッと首もとにスカートと同じ柄のネクタイが結ばれた。

 そして身体を覆うタイトなブレザー。

 最後に手首と首元にもファーが巻きつけられる。

 仕上げにいつも使っている肩掛け鞄にスケッチブックを納めて変身完了!

 

「ええとね…。ともえちゃん…じゃなくてクロスハート…。」

 

 変身完了したクロスハートに萌絵が静かに詰め寄る。

 そして顔をあげると一気にまくし立てた。

 

「着ようよ!ブラウス!!なんでブレザーの下が素肌なの!?えっちぃんじゃないかな!?」

 

 タイトなブレザーの下は何も着ていない状態で胸元のささやかな膨らみが強調されていた。

 しっかりと結ばれたネクタイが胸元をほんの少し隠してはいるものの、ある意味さらに強調していた。

 どうやら久しぶりの萌絵お姉ちゃんによるフォームチェックではアウトだったらしい。

 

「そ、それはともかく!イエイヌちゃんにタイリクオオカミ先輩の推理を伝えないと…!」

 

 どうどう、と萌絵をなだめつつクロスハートは大きく息を吸うと空に向かって……。

 

「あぁおぉおおおおおおおおおおおおん!!」

 

 と遠吠えを放つのだった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 イエイヌ…、いや、クロスナイトはとうとうラモリさんと原稿の入った封筒を持った犬を追い詰めていた。

 

「さあ、原稿とラモリさんを返して下さい。」

 

 人気のない河川敷でクロスナイトは一歩を詰め寄る。

 犬のような生き物は毛を逆立てて静電気のようなものをパチパチと爆ぜさせた。

 

「アワワワワワ。」

 

 それに背中に乗せられたままのラモリさんが慌てる。

 ラモリさんが大人しくされるがままになっていたのはこの静電気のせいだった。

 どうやらそれでラモリさんの運動機能を麻痺させていたらしい。

 クロスナイトは人質をとられた格好だ。

 ならば人質に危害を加える暇すら与えずに一撃で勝負を決めるしかない。

 クロスナイトは腕にサンドスターの輝きを集める。

 必殺技の一つ、犬の噛みつき攻撃を模した『ドッグバイト』を放つ構えである。

 対する犬のような生き物も、牙を剥いて一触即発の雰囲気だ。

 次に何かの切っ掛けがあればこの二人は雌雄を決するべくお互いの技を放つであろう。

 そこに……。

 

―あぁあおおおおおおおおおおん!!

 

 というオオカミの遠吠えが遠くから響いた。

 それが切っ掛けだった。

 クロスナイトの注意が一瞬逸れたのを見た犬…いや、スパークスが原稿の入った封筒を空中に投げるとそこに…。

 

「わふっ!」

 

 という鳴き声とともに電撃を放ったのだ。

 一瞬遅れてクロスナイトが飛び掛かる!

 しかし電撃がバチリ!と封筒に直撃するのが先だった。が何も変化が起きない…と思いきや空中で封筒がピタリと止まった。

 そして封筒はグニャリ、と形を変えるとまるでタコが獲物をとらえるかのように大きく身体を広げてスパークスへと襲い掛かった!

 

「させませんよ!」

 

 グニャリ、と形を変えた封筒をクロスナイトの爪がとらえた。

 明らかに原稿が入っていないであろう部分を掴むとそのままグシャリと握りつぶした!

 

―ギョォオオオ!

 

 と悲鳴をあげる封筒型セルリアン。

 その腹に抱えたタイリクオオカミの漫画原稿をついに手放した。

 このセルリアンは精工な擬態が得意なセルリアンだった。

 その精工な擬態能力は嗅覚に優れるイエイヌですら騙しおおせる程だった。

 だがどうやら、このスパークスは騙し切れなかったのだ。

 そして、精工な擬態は得意でも反面、直接の戦闘能力は低かった。

 既に人質の役割を果たしていた漫画原稿も手放してしまった。

 なので…。

 

「ワンだふるアタァアアアアアック!」

 

 両手を犬の顎に見立てたクロスナイトの必殺技にはひとたまりもなく封筒型セルリアンはパッカァアアアアンとサンドスターの輝きへと還るのだった。

 そして空中に飛び散った漫画原稿を素早く回収してまわるスパークス。

 二人して漫画原稿を回収し終えて一息。

 

「何とかやりましたね。」

 

 とクロスナイトはスパークスの前に膝をつくと手を差し出した。

 それにぽふんと手を乗せるスパークス。お手状態である。

 クロスナイトがスパークスが味方であると気づいたのには理由がある。

 それはクロスハートが放った遠吠えが原因だ。

 オオカミは遠吠えや鳴き声で様々なコミュニケーションをとって群れで狩りをする。

 先程の遠吠えでタイリクオオカミが語った推理を凝縮して伝えられたのだった。

 それこそがクロスハート・タイリクオオカミフォームの技『ムーンハウリング』である。

 

「何はともあれ…。漫画原稿も無事。ラモリさんも無事。お手柄、という事にしておきましょう。」

 

 イエイヌは変身を解くとスパークスの頭を撫でるのだった。

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 最初にタイリクオオカミが原稿を完成させた時。

 封筒に擬態した封筒型セルリアンはまんまと『輝き』のたっぷり詰まった漫画原稿を手に入れてそれを捕食した。

 だが、たった一欠けらだけだが、食べきれなかった分があったのだ。

 それがスパークスの描かれたページである。

 スパークスの描かれたページもまた、セルリウムに触れてセルリアン化した。

 そしてそばにあった電気コンセントとも結合して電気の能力を得ていた…のだが、これがまたどういうわけか全く凶悪な存在にはならなかった。

 むしろ、自身を食べようとした封筒型セルリアンに敵対し、自分と同じような匂いをもつタイリクオオカミの漫画原稿を守ろうとすらしたのだった。

 ラモリさんのセルリアン解析機能によると、どうやらこのスパークスによく似たこのセルリアンは活動に大した『輝き』は必要ないだろう、との事だった。

 その代わり、多少の電気代がかかるかもしれない、とも言われたが些細な事だった。

 

 結局、クロスナイトとスパークスの守った漫画原稿は無事に出版社へと持ち込まれて、漫画雑誌も無事に発売された。

 そこにはもちろん、“名探偵ギロギロ”の最新話も掲載されている。

 そしてスパークスは、というと…。

 

「スパークル。ペンを持ってきてくれないかい?」

「わふっ」

 

 今日も今日とて漫画の原稿作業に勤しむタイリクオオカミ。

 その差し出した手にあのスパークスと呼ばれた犬のようなセルリアンがペンを渡す。

 結局、漫画そのままの呼び名だと問題があるかもしれない、と思ったタイリクオオカミはあの犬をスパークルと名付けて飼う事にしたのだ。

 現在はマルヤマ出版女子社員寮の庭に犬小屋が設えられて、そこを住処にしている。

 愛嬌はあるので、アミメキリンをはじめ、他の入居者にも可愛がられているようだ。

 問題はタイリクオオカミのペンなどを持って行ってしまう事だった。

 こうして頼むと持ってきてくれるので問題はないのだが、些か不便な気がしないでもない。

 タイリクオオカミのペンを持って行ってしまうので電気のスパークと物をパクるを引っ掛けたネーミングとしてスパークルというのが名前の由来らしい。

 

「まったく、とんだアシスタントを雇ってしまったようだね。」

 

 苦笑しつつもタイリクオオカミはスパークルをひと撫でしてから原稿作業に入るのだった。

 

 

 

けものフレンズRクロスハート番外編『ともえの修羅場体験記』

―おしまい―

 




【セルリアン情報紹介】

封筒型セルリアン『フー』

 封筒をコピーしたセルリアン。
 擬態能力に優れており、そう簡単にはその擬態を見破る事は出来ない。
 中に入れられた絵や手紙などの『輝き』を食べてしまう。
 擬態能力には優れるものの、直接戦闘能力は決して高くない。


犬型セルリアン『スパークル』

 タイリクオオカミが描いた犬の漫画キャラクターにとりついたセルリアン。
 どういうわけか穏やかな性格をしており、活動にも大した『輝き』を必要とするわけではない。
 セルリアン化する際に電気コンセントとも結合しており、電撃を操る事も出来る。
 無害で大人しい性格をしているようなので、タイリクオオカミに引き取られて様子を見られる事になった。
 タイリクオオカミのペンを持って行ってしまうのはその『輝き』で活動に必要なエネルギーを得る為と、彼なりのアシスタント作業のつもりらしい。
 必殺技は静電気で痺れさせて動きを止める『スタンスパーク』である。
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