けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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前回までのけものフレンズRクロスハートは!

ヒトがいなくなって荒廃したジャパリパークで暮らしていたイエイヌはオイナリサマによって別世界へと飛ばされた。
そこで出会った少女、ともえとその家族。
幸せな暮らしが始まると思いきや、突如現れたセルリアンが襲い掛かってくる。
絶対絶命かと思われたその時、ともえが何故かイエイヌと同じような衣装に変身してしまった。
二人でセルリアンを倒す事に成功したともえとイエイヌ。
安心したのも束の間、学校に遅刻しそうなのを思い出すのであった。

登場人物紹介

名前:遠坂 ともえ
特技:スケッチ 運動全般
好きな物:動物 フレンズ 家族
ジャパリ女子中学校に通う2年生。
ちょっとお転婆でドジなところもあるけれど元気印で誰とでも友達になれちゃう明るい女の子。
別な世界からやって来たというフレンズのイエイヌと出会った事で不思議な力に目覚めちゃった!?
なお、口癖は「めっちゃ絵になるぅー!」である。


名前:遠坂 萌絵
特技:スケッチ お勉強全般
好きな物:動物 フレンズ 家族
遠坂ともえの双子の姉でジャパリ女子中学校に通う2年生。
ちょっとのんびり屋さんなところはあるけれど、その頭脳は明晰。なんと既に外国の大学の卒業資格をとってしまっている程。
さらに母親譲りで家事全般も得意。
反面、運動はとても苦手。身体も丈夫な方ではない。
時々お姉ちゃんぶっちゃう時がある。
なお、口癖は「ほんとに絵になるぅー!」である。

名前:イエイヌ
特技:お湯に葉っぱ入れたヤツを淹れる 超嗅覚
好きな物:ヒト
別な世界、ヒトがいなくなって荒廃したジャパリパークからやってきた犬のフレンズ。
ヒトに尽くす事が無上の喜びであったがヒトのいない世界で報われぬ日々を送っていたところオイナリサマによってこの世界に送られてともえ達と出会う。
嗅覚に優れて持久力も高い。



第2話『その名はクロスハート』(前編)

「ま、間に合ったあー。」

 

案外思ってたよりも早くに学校に辿り着けたともえと萌絵とイエイヌの三人とラモリさん。

 

「もうー。途中注目の的だったよー?お姉ちゃん恥ずかしかったんだから。」

「ごめんごめん。」

とイエイヌの衣装から元の制服姿に戻っているともえ。

 

ともえは遅刻回避の為、変身して萌絵をお姫様抱っこで抱えて通学路を猛烈なスピードで駆け抜ける、という荒業に出たのだった。

途中通学中の生徒達の注目を集めてしまったのは言う間でもない。

 

「とりあえずこっちだよ、イエイヌちゃん。まずは学校はいろ?」

気を取り直して、といった様子でイエイヌの手を引いて歩き出すともえ。

すると、昇降口から校内に入ったところで一人の真っ白なキツネのフレンズが三人を待っていた。

 

「おはようございます、遠坂姉妹。その後ろの犬のフレンズが今日の見学者ですか?」

「あ、オイナリ校長先生、おはようございます。」

 

挨拶を返すともえ達の後ろからひょこり、と顔を覗かせるイエイヌ。その姿を見ると…。

 

「お、オイナリサマ!?」

と驚きの声をあげる。

「うん?どこかであった事あったかしら?でも様付けで呼ばれるような偉いフレンズじゃないよ。ここの校長先生だから偉いは偉いんだけどね。」

と不思議そうにイエイヌを見つめるオイナリ校長。その様子から

「別人…なんでしょうか……。ああ、その、ごめんなさい。フレンズ違いだったかもしれません。」

そう判断したイエイヌ。とりあえず頭を下げてみせる。

 

「オイナリ校長先生、こちらイエイヌちゃんです。いまウチで仮保護中なんです。」

「うんうん、じゃあうちの学校に通う事になるかもだね。今日は他の先生の手が空いてないから私がイエイヌさんを案内するよ。」

「あ、ええと。はい。よろしくお願いします。」

「俺もイエイヌに着イテイクゼ。ヨロシクなオイナリ校長。」

イエイヌがもう一度あらためてお辞儀をしてその腕の中に再びラモリさんがピョインと飛び込み納まる。

 

「じゃあ遠坂さん達、イエイヌさんはお昼には一度二人のところに帰すからね。二人はちゃんと授業受けるんだからね。」

「はい、オイナリ校長先生、イエイヌちゃんの事よろしくお願いします。」

萌絵がオイナリ校長にイエイヌを預ける前にこそっと耳打ちする。

「イエイヌちゃん…。一応、イエイヌちゃんは生まれたてのフレンズって事にしておいてね。もしわからない事とかがあっても生まれたてでわからないって事にできるからね。」

「あ、はい。わかりました。別な世界から来たの内緒ですね。」

短くコショコショと内緒話をしてから来客用のスリッパを履いてオイナリ校長の後に続くイエイヌ。

 

「さ、ともえちゃん。アタシ達も教室にいこ?」

「うん、そうだね。」

 

と揃って下駄箱をあけるともえと萌絵。

すると…

どささー。と音を立ててともえの下駄箱から手紙が落ちてくる。

 

「あー…二年生に上がってから今日も大漁だねえ。殆どが後輩ちゃん達からかなあ?」

下駄箱から落ちてきた手紙はどうやらファンレターとかそういう類のものらしい。

「ここ、女子校だからー!?こんなにお手紙貰ってもどうしていいのかわかんないからー!?」

「まあまあ。ともえちゃんファンクラブの会員規定でラブレターは本人が凄くこまっちゃうから下駄箱に入れるの禁止になってるの。だからあんまり難しく考えないで読んであげたらいいと思うな。」

「なんで萌絵お姉ちゃんはそんな事しってるのー!?」

「アタシが会長だから。」

といい笑顔で親指立ててみせる萌絵。

 

「もう、何が何やらどうなってるの…。」

「この前ブログも立ち上げたの。見てみる?ともえちゃんが運動部の助っ人にいくスケジュールとかのお役立ち情報も載ってて必見だよお。」

「いつの間に作ったのー!?」

色々とツッコミたいけど、ともえも朝からの怒涛の展開でそろそろ考えるのが疲れてくるのであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

そんなこんなでようやくお昼。

イエイヌとラモリさんも戻って来て今日は人気の少ない中庭の芝生でお弁当を広げる事にした三人とラモリさん。

 

「で、イエイヌちゃんはオイナリ校長先生とどうだった?」

「特に問題ナク過ごしてイタゾ。」

「はい。学校の中を案内してもらったんです。ともえさんと萌絵さんが授業っていうのをしてるのもこっそり見たんですよ。萌絵さんが黒板に文字書いてるの見ました!」

「あはは、今日当てられてたのちょうど見られちゃったかあー。」

「はい!オイナリ校長先生が難しい問題だったけどよく解けたって褒めてましたよ。」

ぶんぶん、と尻尾を揺らすイエイヌ。自分が褒められたかのように嬉しそうだ。

 

「いいないいなー!萌絵お姉ちゃんイエイヌちゃんにいいとこ見せられていいなー!」

「ともえちゃん。次の授業は体育でしょ?体育はともえちゃんの独壇場じゃない。イエイヌちゃんも見においでよ。カッコイイともえちゃんが見れるよお。」

「はい!カッコイイともえさん見たいです!」

とキラキラした目でともえちゃんを見つめるイエイヌ。尻尾がやっぱりぶんぶんと揺れてる。

 

「ようし!それじゃあ午後の体育はイエイヌちゃんの為にめっちゃ頑張っちゃおうかなっ!」

 

むんっと気合を入れてみせるともえに萌絵とイエイヌはおーっと小さく拍手を送る。

 

「で、話はかわるんだけどね?今朝のあれって何だったのかなあ。夢ってわけじゃなかったんだろうけど…。」

「あー。うん。セルリアンっていうのもそうなんだけど…。アタシがイエイヌちゃんみたいな格好になってたアレ。変身って言っていいのかなあ?」

「うん、ともえちゃん自身はわかんなかったかもだけど、髪の色とかまでイエイヌちゃんみたいになってたよ。まずは変身って呼ぶ事にしとこう?」

やはりともえがイエイヌの格好になって凄い力を発揮したあの現象は落ち着いて考えてみてもよくはわからなかった。

 

「ソレとダ。生徒達の噂話ナンダガナ?かばん生徒会長のと混じってエライ事ニなってるガ…、ともえガ萌絵ヲお姫様抱っこシテ登校シタっていうのは一つもナイゾ。」

 

と、しばらく考え込む三人とラモリさん。

 

「つまり、あの格好の時のともえちゃんはともえちゃんだって認識されてなかったって事かあー。」

萌絵がポムと手を打つ。

「あとねあとね、あの格好の時はすっごい力が湧いて来て匂いの違いとかもよくわかって…。」

「そうですね、あの時、本体セルリアンの匂いに一番最初に気づいたのともえさんでしたもん。」

「これってどういうことなのかなあ…。お姉ちゃんわかる?」

 

ともえとイエイヌの二人に見つめられてうーん、と萌絵は考え込む。この中で一番頭脳労働が得意なのは何と言っても萌絵なのだ。

 

「あのね、多分だけど、ともえちゃんはイエイヌちゃんの元になった動物の特徴を使えたんだと思う。」

「私の元の動物…。犬ですよね。」

「そう、匂いを嗅ぎ分けるのが得意で体力もあって…。多分そうだと思う。」

うん、と一つ萌絵は頷いてから

「とりあえず名前がないと不便だし、イエイヌちゃんの格好してたともえちゃんはイエイヌフォームって呼ぼうか。」

「なにそれヒーローみたいでカッコイイ!」

「そうだねえ、で、朝みたいに変身は自由に出来たりするの?」

「えっとね、スケッチブックがあれば。これのイエイヌちゃんの絵を見てたら何となく、こうイエイヌちゃんと心がね?つながったーって感じがしてね…、変身できる気がしたの。」

「相変わらずともえちゃんは破天荒だけどすごいねえ。」

 

しばらく萌絵はやっぱり考え込み、それをイエイヌとともえはじーっと見守る。

 

「よし、じゃあ条件付けをしちゃおう。」

「「条件付け?」」

とともえとイエイヌはハテナマークを頭に浮かべる。

「えっとね、今朝みたいに思っただけで変身しちゃったら大変でしょ?例えば体育の授業中とかにふと思ったら変身してましたってなったら大騒ぎだよ。」

「そっかー…。それもそうだね…。で、条件付けってどうしたらいいの?」

「要はこれをしたら変身する!って行動を決めちゃうの。合言葉みたいなものだね。まずスケッチブックを開いてイエイヌちゃんのページを開いてね?」

「「ふんふん…。」」

「で、合言葉を唱えるの。それが変身の合図。ともえちゃんは何か候補みたいなのある?」

「うぇええ!?急に言われても…。」

「だよねえ…。」

 

と二人して腕組みで頭を捻るともえと萌絵。

 

「あのあの…、さっきともえさんが心が繋がった感じがしたって言ってましたよね?」

「うん。あの時そんな感じがしたんだよ。上手く言えないんだけど…」

「実は…わたしも少しだけ似たような感覚があったんです。戦ってる中での気のせいかとも思ったんですが…。」

 

それを聞いてしばらく考え込む萌絵。

 

「こころ…繋がる…重なる…、コネクト…ううん…クロス。心は…ハート…。クロスハート、っていうのはどうかなあ?」

「おおおお!?なんかかっこいいね!?ほんとに変身ヒーローみたいだよっ!」

 

早速立ち上がってイエイヌの描かれたページを開いたスケッチブックを小脇に抱えつつシュバッっと腕を伸ばし変身ポーズのともえ。

 

「変身っ!クロスハート、イエイヌフォームっ!」

と、一瞬でサンドスターの輝きとともにイエイヌ風の衣装になって犬耳と尻尾も生えているともえ。

「「おおー。」」

と二人してパチパチ。

 

「てへへー。なんかちょっと恥ずかしいけど、でもこれ気に入っちゃった。」

と、制服姿に戻りながら頭の後ろをかきながら照れ照れのともえ。

「きっと使ってくうちに条件付けもピッタリハマってくると思うからいきなり無意識で変身するってことはないと思うよ。」

「そっかそっか!じゃあ午後の授業ではイエイヌちゃんにバッチリいいとこ見せてあげないとね!」

「はい!ともえさんのかっこいいところ、わたし、見たいです!」

と三人してキャイキャイとはしゃぎあっている。

 

「ナア、イエイヌ。アレはともえ達ニ見せナクテいいノカ?」

とラモリさんが訊いてくる。

「あ、そうでした…。でもまだ下手で恥ずかしいです…。」

「うん?なになに?」

ともえはイエイヌの様子に顔を近づけて覗き込むようにしてみる。ともえの顔が間近にきてイエイヌの色白の顔は一瞬で真っ赤に。

「あのですね…。オイナリ校長先生が字の書き方を教えてくれたんです。それで一緒に練習してくれたんですが…」

イエイヌは一枚の紙を取り出す。

そこには、まだ稚拙ながらも平仮名で『とおさか ともえ。 とおさか もえ。 とおさか はるか。 らもりさん。 いえいめ』と書かれていた。

「おおお!練習してたの!?しかもアタシ達の名前!嬉しい!えらい!!」

「もう、イエイヌちゃんってば本当に可愛いねえ!もうー!」

 

と二人にサンドイッチ状態で抱き着かれるイエイヌ。

「く、苦しいですよぉー…」

とは言いつつもイエイヌも尻尾が揺れて自然と笑みがこぼれてくる。

 

「ふむ。初めて文字を書いたにしては中々でありますね。ただ惜しい。『ぬ』と『め』が間違えております。」

その後ろから涼やかな声が響く。

ふと気づくとメガネをかけて頭に鳥の羽根をつけた女子生徒が一人立っていた。ピシリ、と制服を着こなしておりシワ一つない。

涼やかな目元とメガネのコントラストに銀色の長髪がよく似合っている。

そして、何よりやや短めのスカートからスラリと伸びた足が印象的だ。まるでそのまま雑誌のモデルにしても違和感がないくらいにスタイルがいい。

「あ、ヘビクイワシちゃん。こんにちわ。あ、この子はB組のヘビクイワシちゃん。生徒会の書記をしてるんだよ。」

「こんにちわ。ともえ君、萌絵君。それにキミがイエイヌ君でありますね?」

「はい、わたしイエイヌです。」

ペコリ、とお辞儀してみせるイエイヌ。ところが…

 

「そうでありますか…。ならば…!」

といきなりヘビクイワシと呼ばれた女子生徒の雰囲気がかわる。

 

―ゴウッ

と風を感じる程の怒気を見せるヘビクイワシ。

「ちょぉ!?どうしたのヘビクイワシちゃん!?」

「イエイヌ君…。キミがかばん君をイジメたというのは本当でありますか…?」

静かに怒りを堪えるかのように低い声で話すヘビクイワシ。鋭い眼光がイエイヌを射抜く。

「へ…?そんな事するわけないよ!」

とともえが前に出るようにしてイエイヌを庇う。

「ともえ君。キミには訊いていないのであります。どくのであります。」

「いいや、どかないよ。ちゃんと落ち着いてくれなきゃ。」

二人の視線が空中で絡み合いバチバチと火花を散らすかのようだ。

 

「どうあっても、でありますか…。」

「どうあっても、だね。」

睨み合うともえとヘビクイワシ。空気が張り詰め緊張が漂う。

「ならば……!」

くるり、とヘビクイワシはその場で華麗なターン。そこから鞭のようにしなるハイキックが飛び出す。

そのままでも鼻先を掠めるか掠めないか程度の間合い。この一撃はただの威嚇なのだろう。

だが、敢えてともえは、同じくくるり、とその場で同じようにターン。回転から同じくハイキックで迎撃!

二人の蹴り足が空中で交差する!

打点をずらしたお互いの蹴りは互いにダメージを与える事はない。だがこうなれば次は力比べだ。

蹴りの威力が高かった方がそのまま相手に押し勝てる…!

 

「やるでありますな。」

「そっちもね。」

バッとお互いに示し合わせたかのように蹴りの反動を利用して距離を離すともえとヘビクイワシ。

まずは前哨戦は引き分けのようだ。

お互いにニヤリとしてからダッ!と同時に相手に向けてダッシュ。間合いが詰まったところで、再びハイキックをお互いに繰り出す!

が……。

 

「はい、お二人とも、喧嘩はよくありません。」

バシン、とともえとヘビクイワシの間に割って入ってお互いの足を掴んで止めてしまうイエイヌ。

「まずヘビクイワシさん。お話はちゃんと聞きますから喧嘩はやめて下さい。」

「あ…うん。わかったのであります。」

とケンケン状態になっているヘビクイワシがイエイヌにコクコク頷く。

「それとともえさん。ヘビクイワシさんは全然本気出してないですよ。本気出してたらヒトのともえさんでは絶対大怪我してます。無茶しないで下さい。」

「え?」

「え?」

ヘビクイワシもともえも一瞬きょとんと?マークを浮かべる。その反応にイエイヌも

「え?」

と同じく?マーク。

 

「ねえねえ、ラモリさん。朝も思ったけどイエイヌちゃんって凄く強いよね。」

「アア。アレがアッチの世界のフレンズの標準なのカモナ。」

「じゃあイエイヌちゃん的にはヘビクイワシちゃんってもっと強いはずだーって思ってて…」

「ヘビクイワシ的ニハ普通に本気デともえトじゃれあってた、ト。」

とすっかり外野の萌絵とラモリがのほほーんと状況を見守っている。

 

「あとね、二人とも。スカートでそんな高く足あげるのはどうかなってお姉ちゃん思うな。見えちゃってるよ。」

という萌絵の指摘にヘビクイワシは慌ててスカートを抑える。

 

「あ、アタシはスパッツ履いてるから…」

「ともえちゃん…。朝少し寝坊して慌ててたでしょ。多分スパッツ履き忘れてるよ。」

「マジで…?」

「うん。水色と白のしm……」

「言わなくていい!?言わなくていいよぉー!?」

 

とヘビクイワシと同じように慌てて制服のスカートを抑えるともえ。

しかし、二人ともイエイヌが足をガッチリと掴んだままなので足が降ろせない。

「イエイヌちゃん、足、離してー!?」

「お二人とも、もう喧嘩しませんか?」

「しない、しないから離して!ね!?ヘビクイワシちゃん!」

「私も!喧嘩しないのであります!でありますから離してくださいー!?」

昼下がりの決闘はなんとも締まらない幕切れを見せるのであった。

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

ヘビクイワシの話をよくよく聞いてみるとどうやら今朝のお姫様抱っこ登校でこんがらがった噂話が原因らしかった。

今朝お姫様抱っこ登校を果たしたのは二人、かばん生徒会長と萌絵の二人である。

 

「それで、今朝からかばん君が元気がなかったのであります。噂話で誰かにお姫様抱っこで抱えられて登校した、と聞いてね。余程恥ずかしかったらしいのでありましょう。」

「あ、ちなみにそれサーバルちゃんなので今は関係ないよね。」

「ですね…。で、噂話を辿ったらどうやら犬耳の転校生らしき人物がお姫様抱っこで誰かと登校した、というのでてっきりイエイヌ君がかばん君に意地悪でもしたのかと早とちりしてしまって…。」

と芝生に正座状態で言うヘビクイワシ。隣にはともえが正座している。

 

「私の勘違いとはいえイエイヌ君には大変申し訳ない事をした!許して欲しい!」

深々と頭を下げるヘビクイワシにイエイヌは

「誤解が解けたようでよかったです。わたしは怒ったりしてないので頭を上げて下さい。」

とほにゃんとした笑みを浮かべて見せる。

 

「いい子でありますな。」

「いい子でしょ?」

「いい子だよねえ。」

と三人揃って頷くヘビクイワシとともえと萌絵。

 

「さ、誤解も解けたところでお昼食べないとお昼休みがなくなっちゃう!」

「ヘビクイワシちゃんも一緒に食べてく?お昼まだでしょ?」

「よいのでありますか?」

「もちろん。」

とお弁当を広げ始める三人。

 

「イエイヌちゃんはアタシ達の分けて食べようね。」

「ふむ。そういう事でありましたら私のミートボールもお一つどうぞ。秘伝のレシピを再現した自信作であります。」

あっという間にお皿がわりにイエイヌの前に置かれたお弁当箱の蓋には一人分のお弁当が出来上がっていた。

「んーっ、美味しいですぅー!」

と尻尾をぶんぶん振っているイエイヌ。

 

「喜んでもらえて何よりなのであります。イエイヌ君、こちらの卵焼きもどうでしょう。」

「あはは、そんなにあげてたらヘビクイワシちゃんの分なくなるじゃない。じゃあ、アタシのサンドイッチお一つどうぞー。」

「アタシのアスパラベーコン巻き食べてみるー?美味しいよー。」

 

ちなみに、心配していたともえのお弁当も幸いにしてそれほど型崩れしていなかった。

四人の賑やかなお昼タイムはあっという間に終わり…4分の3ずつだったけど、4人で満足そうに一息ついて

「「「「ごちそうさまでした」」」」

と皆で声を揃える。

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

萌絵が水筒に入れていたお茶を皆に配って食後のティータイム。

 

「まだ少し時間がありますな。それならイエイヌ君。お詫びといっては何ですが私でよかったら字の練習に付き合いましょうか。」

「いいんですか!?」

ヘビクイワシの思わぬ提案に尻尾を揺らすイエイヌ。

 

「よかったね、イエイヌちゃん。ヘビクイワシちゃんの書く字ってめっちゃキレイだもんね。」

「うんうん、さすが生徒会書記だよねー。」

ともえと萌絵もそれに嬉しそうな笑顔を見せる。イエイヌが嬉しそうだと自分達も嬉しいのだ。

 

「ヘビクイワシさんってどんな字を書くんですか?」

「うん?そうだね。私のはこんな字でありますよ。」

と持っていたノートを差し出して見せる。

 

「アタシ達も見てもいい?」

って興味津々な様子のともえと萌絵。

「あー…そ、それはちょっと恥ずかしい…いや、いっそ見てもらった方がいいのでありましょう。イエイヌ君のみならずともえ君にも萌絵君にも迷惑をかけてしまったわけでありますし…。」

しばらく逡巡してみせるヘビクイワシだったが、一人ぶつぶつと言ってともえと萌絵にも頷いてみせるヘビクイワシ。

早速三人でヘビクイワシから渡されたノートを見てみる。

 

「ふわぁー…。綺麗な字ですねえ。上手です。」

と綺麗に書かれた文字に感嘆の声をあげるイエイヌ。

「ふふ、ありがとうイエイヌ君。キミならすぐに上手な字が書けるようになるでありましょう。」

 

ともえと萌絵はというと…。

「ねえ、これって…小説…?」

「それにこれってかばん生徒会長とサーバルちゃん…?」

そのノートに綺麗に書かれた文字は

「これはかばん君とサーバル君の様子を記録したものであります…。」

モジモジと赤くなりながら言うヘビクイワシ。

 

「へえー!すごいね、読んでるだけで情景が目に浮かんでくるようだよー!」

「うんうん。相変わらずかばん生徒会長のところは仲良しだねえ。」

と二人してほっこりとした表情でノートを読む。

「笑わないのでありますか…?」

 

「へ?なんで?凄いとは思うけど、どこか笑うようなところある?あ、でもこの日のサーバルちゃんはドジだったねー。これは笑っちゃうかも。」

「あはは、でもともえちゃんも意外とサーバルちゃんの事を笑えない時があるから気を付けないとねえ。」

「そんな事ないよっ。」

ともえはぷくーっとほっぺを膨らませてみせるが、そのほっぺを指でツンツンしつつ萌絵が…

「水色と白の縞々。」

と告げると再び真っ赤になるともえ。

「それは忘れてえええええええ!?」

とじゃれあいながらヘビクイワシのノートを読んでるともえと萌絵。

 

「私はてっきり引かれるか、笑われるかすると思ったのであります…。」

まだ信じられない、というようにヘビクイワシは二人の様子を眺め、ポツリと呟く。

「そんなことないよ。これ見てるとヘビクイワシちゃんがかばんちゃんとサーバルちゃんの事を大切に見守ってるんだなーってよくわかるもん。」

「わかるよー。あの二人って見てるだけでも癒されるっていうかほっこりできちゃうっていうか…ねー。」

って頷きあうともえと萌絵。

 

「ああ、そっか。だからかばんちゃんの事であんなに怒ってたんだね。」

とようやく納得がいった、というようにヘビクイワシに頷くともえ。

「うぅ…。私とした事が噂に惑わされるなんて…。あの時はすっかり頭に血が上ってしまっておりました…。」

「もう気にしなくていいんですよ、ヘビクイワシさん。」

申し訳なさそうにしているヘビクイワシの頭をイエイヌが撫でてくれる。もうすっかり仲良しという風だ。

 

「そうだ…!この日とかさー、こんな感じだった?」

ノートを見ていたともえはやおらスケッチブックを取り出すと、それに凄まじい勢いでシュババ、と何事か絵を描いていく。

そこにはかばんちゃんとサーバルちゃんが描かれている。

「ヘビクイワシちゃんのノートを見てて頭に浮かんだ情景を描いてみたんだけど…。」

「ふぉおおお!?ともえ君!まさにこんな感じでありましたよ!」

とキラキラした目でともえに詰め寄るヘビクイワシ。

 

「いやあ、文字で記録するのもよいのですが、こうして絵で見返せるのも素晴らしいものでありますなあ…。」

と感動したようにうっとりとするヘビクイワシ。

「あの日のサーバル君は……ふふ。面白かったのでありますよ…。」

とその絵を見ながら思い出したように綻んだ笑顔を見せるヘビクイワシ。

それを見ていたともえと萌絵が何かが直撃した表情で固まって…

 

「いい!いいよー。ヘビクイワシちゃん!その笑顔めっちゃ絵になるぅー!」

「ほんとだね!普段はクールなヘビクイワシちゃんのその笑顔!ほんとに絵になるぅー!」

と二人してシュバババ!とスケッチブックに絵を描きはじめるともえと萌絵。

でもって、出来上がった絵をスケッチブックごと交換。お互いの絵を食い入るように見つめて無言でお互いの手のひらをパシンと合わせてハイタッチ。

 

「そうだ。ヘビクイワシちゃん。今日は美術部の活動日だからさ、後で放課後部室においでよ。他にも絵描いてみたいし!」

「い、いいのでありますか!?」

「うん、アタシももう少しそのノートの絵描いてみたくなっちゃったし。」

「わかりました!生徒会の仕事があるので少し遅くなるかもしれないでありましょうが必ず行きます!」

とすっかり仲良くなったともえ達とヘビクイワシであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

ここは旧校舎。古くなった校舎を倉庫がわりにしている。

普段は殆ど人気のない場所で様々な備品が納められている。

ただただ静寂のみが支配し、ホコリが舞う場所だ。

そんな静寂の中で

―ボコリ

と何かが泡立つような音が響く。

続けて床から湧き出してくる黒い水のような何か。

それは小さな水たまりくらいの大きさになるとウゾウゾ…と

ホコリを被る備品の一つへと向かう。

それはテント用の骨組みとなる鉄棒だ。

紐で一つにまとめられたテント用骨組みにウゾウゾと絡みつく黒い水のような何か。

それはどんどんと大きさを増していくのだった…。

 

―後編へと続く。




セルリアン情報公開

第1話登場セルリアン 『レギオン』
見た目はただの小型セルリアンだが自身と同じセルリアンを分裂して生み出す能力をもつ。
戦闘能力は高くないが、本体を倒さない限り無限に湧き続けていつか獲物を捕食してしまう。
どうやって本体を見つけ出して倒すのかが攻略の鍵だ。
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