けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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【これまでのけものフレンズRクロスハートは!】

 夜に沈み行く色鳥町。
 一人、また一人と倒れていくヒーロー達。
 絶対絶命のピンチを前についに彼女が立ち上がった。
 叫べともえ!
 今こそフレンズの力を借りて変身の時だ!
 世界の命運を賭けた戦いが始まろうとしていた。



第25話『その名はやっぱりクロスハート』①

 

 

『ちぃ……! 小賢しいのう!』

 

 色鳥駅前。

 今や無人となった駅前では巨大霊亀と化したセルゲンブとクロスナイトが戦っていた。

 クロスシンフォニー、クロスレインボー、クロスラピスにクロスラズリ、この四人を同時に相手どっても勝ちを納めたセルゲンブであったが、しかし意外な事にクロスナイト一人には攻めあぐねていた。

 

「そらぁ、そうやろ。イエイヌ……いや、クロスナイトは強いんや……!」

 

 クロスラピスに連れられて退避していたクロスラズリはニヤリとする。

 クロスナイトがやっている事はとことん基本に忠実だった。

 攻撃をかわし、盾で防ぎ、そして隙を見ては剣で反撃する。

 たったそれだけしかしていない。

 

『おのれぇ!』

 

 業を煮やしたセルゲンブは亀の口から凍える息吹(ブレス)を吹き付ける。

 

「ナイトシールドッ!」

 

 けれど、それはクロスナイトが手にした丸形の盾で阻まれた。

 今の攻撃は大振りの一撃だ。

 反撃のチャンスを見てとったクロスナイトは息吹(ブレス)の一撃を盾で押し込み前へと出る事で死角へと潜り込んだ。

 即ち、霊亀の首元だ。

 ここからなら、ダメージが通りやすそうな首を狙える。

 しかしクロスナイトは敢えてそうしなかった。

 かわりに、巨大な霊亀の脚へと向かうとその一本にナイトソードの一撃を加えた。

 

『ぐぬっ!』

 

 クロスナイトが首を狙って来ると思っていたセルゲンブは脚への一撃に障壁を張る事が出来ない。

 そして、巨体の下に潜り込まれた事でクロスナイトの姿を見失ってすらいた。

 セルゲンブの防御は当然ながら意識を向けていない箇所では弱くなる。

 当てずっぽうで障壁や結界を張って防御する事は出来るが、視界の通らない場所まではカバーしきれないのだ。

 

『それならば!』

 

 セルゲンブは自身の周囲一帯から氷柱を生み出す。

 たちまちのうちに氷の槍が幾つも地面から立ち上がるものの、そこに串刺しとなったクロスナイトはいなかった。

 既に彼女は大きく飛び退って、攻撃範囲から逃れていたのだ。

 先程からずっとこうだ。

 クロスナイトはセルゲンブの攻撃を防ぎ、かわし、そして隙を見て攻撃をしては深追いする事なく逃げる。

 

『(あと一歩を踏み込めば、容赦なくカウンターの餌食としてやるものを……)』

 

 しかし、クロスナイトはセルゲンブの間合いを巧みにかわしていた。

 

「え、ええっと……ねぇ、アムさん? イエイヌさんってあんな強かったの?」

 

 戦いを見守るクロスラピスことルリは思わず訊ねていた。

 四人がかりでも敵わなかった相手だというのに、クロスナイトはたった一人でセルゲンブと互角に戦っているように見える。

 

「まぁ、当たり前と言えば当たり前なんやけどな。イエイヌとウチでは大きく差があるものが一つあるんや」

 

 クロスラズリことアムールトラの解説にルリはやはり小首を傾げる。

 イエイヌとアムールトラはこことは別な世界を故郷としているフレンズだ。

 実力としては大きな違いはないと思っていた。むしろアムールトラの方が大型獣である為、戦いを得意としているように思える。

 けれどイエイヌの方がアムールトラよりも大きく勝っているものが一つあった。

 

「それは経験や」

 

 アムールトラはビースト状態であった頃の事をハッキリとは覚えていない。

 だから、実質戦いの経験というのはこちらの世界に来てからしか積んでいないのだ。

 けれどイエイヌは違う。

 彼女はかつてヒトのいなくなったジャパリパークでヒトが帰るおうちを守る為にセルリアンとも戦って来たし、こちらの世界へ来た後も沢山のセルリアンと戦って来た。

 戦いの経験値という意味でなら一番豊富なのは、おそらくイエイヌなのだ。

 その経験が敏感にセルゲンブの殺気を読み、必殺の間合いを外している。

 だが、このままでは埒が明かない。

 それはセルゲンブもクロスナイトも一緒だ。

 

『クロスナイトとやら。野生解放はしないのか?』

 

 何度か攻撃を受けたセルゲンブであったが、ダメージらしいものは負っていない。先程叩かれた脚もせいぜいわずかな痛痒を感じる程度だ。

 だが、セルゲンブは知っていた。

 クロスナイトにはセルゲンブにダメージを与えられるだけの切り札を持っている事を。

 

「ど、どうしてセルゲンブがイエイヌさんの野生解放の事を……」

 

 ルリの疑問ももっともな事だが、それはオオセルザンコウが送ってくれた情報のおかげだ。

 クロスナイトの野生解放は理性と本能の両方から力を引き出す凄まじいものである、と。

 ちなみに、どうしてそれをオオセルザンコウが知っているのかといえば……。

 

「ウチがオオセルザンコウに自慢してもうた……」

 

 原因はアムールトラだった。

 アムールトラとしては何気ない雑談のつもりだったのだが、オオセルザンコウが話を聞いてくれるのでついつい止まらずイエイヌ自慢をしてしまった事があるのだ。

 

「ご、ごめぇええええん!?」

 

 慌てて平謝りするアムールトラであったが、当のクロスナイトは落ち着いたものだった。

 

「別に構いませんよ。今、野生解放を使うつもりはありませんから」

『ほう?』

 

 つまり、ここまではクロスナイトの思惑通りという事らしい。

 しかしセルゲンブにとっても有利は揺るがない。

 切り札である絶対矛盾障壁《アキレスと亀》は使ってしまったものの、それで四人を実質無力化出来た。

 そして、クロスナイトも積極的に攻めてくるつもりはないと見える。

 となればセルゲンブにとってはあとは『ヨルリアン』が世界を夜に沈めるまで守勢に回ればいい。

 時間はセルゲンブの味方だ。

 

『そして、時が経てば経つ程に有利になるのは我の方じゃ。見るがいい』

 

 辺りの“夜”はどんどんと深くなっていく。

 そしてクロスレインボーが先に吹き散らした『ナイトメア』達も再び姿を現しはじめた。

 そうなれば、多対一。

 クロスナイトが『ナイトメア』に気を取られて状況が悪くなるのは目に見えている。

 戦闘不能となったかばんや菜々やアムールトラ達はしばらくの間はクロスラピスに任せられる。

 けれどその先がない。

 セルゲンブの有利はやはり揺るがない。

 だが、クロスナイトの瞳から希望の光が消える事はなかった。

 

『何故そんな無駄に抗う?』

 

 どうにもそれが理解できないセルゲンブである。

 

「さっきも言いましたが、簡単な事ですよ」

 

 対するクロスナイトの答えは至極単純明快だった。

 

「クロスハートは必ず来る。だからです」

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 既に“夜”へ沈んだ駅前への道をジャパリバイク改が走り抜ける。

 その後ろからは大量の『ナイトメア』達が追いすがっていた。

 

「ラモリさん。マニュアルドライビングモードにしてね」

「マ、マジカ……」

「まじよ」

 

 ジャパリバイクを駆る春香はといえば無人となった駅前への道をマニュアルドライビングモードでかっ飛ばしていく。

 追いすがる『ナイトメア』の群れだって勢いはかなりのもので、少しでもスピードを緩めればたちまち追いつかれてしまいそうだ。

 自動運転よりも春香が手動で運転した方が速いと判断しての事だった。

 

「だ、大丈夫なの?」

 

 サイドカーに収まった萌絵は思わず訊ねていた。

 

「大丈夫よ。私はこういうの得意だから」

 

 普段娘達にはそういうところを見せる事は少ない春香であるが、彼女の運動神経は抜群である。

 実は遠坂家の自宅ガレージにはドクター遠坂が手ずからカスタムしたスポーツカーもあったりする。

 それを運転するのは専ら春香である。

 もちろん娘達の前では安全運転ではあるが、必要とあらば春香はそのドライビングテクニックを十二分に発揮するだろう。

 今がまさにその時だった。

 

「ともえちゃん、次、左に曲がるわね」

 

 春香は言いつつ、ハンドルを切りさらにアクセルを捻って開ける。

 ちょうどそこは十字路だ。

 左に曲がるという事はほぼ90度近いコーナリングになる。

 春香は敢えて対向車線側に一度進路を膨らませると、コーナーへ進入していく。

 今は街の人達みんなが避難していて無人だからこそ出来る事だ。

 そして、悠長にスピードを落としていたら後ろに追いすがる『ナイトメア』達に飲み込まれてしまう。

 見事なアウト・イン・アウトでコーナーを抜けていくジャパリバイク改。

 ともえは春香の意図を察して、萌絵と一緒に収まったサイドカーから身を乗り出し、自らの体重を利用して荷重移動。車体の浮きを抑え込む。

 

「そうそう、上手よ、ともえちゃん」

 

 期待通り、と春香はウィンクして見せた。

 

「さあ、飛ばすから二人ともしっかりついて来てね!」

「「は、はひ……」」

 

 春香の事だからこういう事も出来るんだろうとは思っていたけれど、実際目の当たりにすると乾いた笑いしか出ないともえと萌絵である。

 しかしこの調子で飛ばせば『ナイトメア』に追いつかれる事もないだろうが、かと言って振り切る事も出来ずにいる。

 このまま『ナイトメア』達を引きつれたまま色鳥駅に行ってしまっていいものか。

 そんなともえと萌絵の心配にも春香はいい笑顔を返してくれた。

 

「ああ、その辺りも大丈夫よ」

 

 春香には何か考えがあるというのだろうか。

 

「ラモリさん。予定ポイントを通過したからお父さん達に合図を出して貰える?」

「アア。マカセロ」

 

 どうやらその通りらしい。

 果たして一体どんな策があるというのか……。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 サンドスター研究所では、発電所とのホットラインが繋げられていた。

 

『なるほど。現在起こっている異変はセルリアンと呼ばれる新たな生物のせいだ、と』

 

 ホットラインが繋がったモニターには発電所所長が映されている。

 ドクター遠坂が時間を掛けてした説明を発電所所長はようやく理解してくれた。

 それはどうしても必要な事だった。

 

『それで、我々に折り入って頼み、とは?』

 

 モニターに映された発電所所長が言う。

 

「はい。少しの間で構いません。送電システムのコントロール権限をお借りしたいのです」

 

 ドクター遠坂の言に発電所所長は渋い顔をする。

 送電システムと電力は、この非常事態下における人々の生命線だ。

 『ヨルリアン』の取り巻き『ナイトメア』達は既に溢れかえり始めている。

 人々が避難した屋内にまだ被害が出ていないのは電灯の明かりのおかげだ。

 その電灯を維持する送電システムを明け渡すには相応の理由というものがいる。

 その理由をドクター遠坂は語る。

 

「現状を維持しても状況は悪くなるばかりです。原因を取り除かねばなりません。その為の人員を無事送り届ける為に送電システムが必要なのです」

 

 なるほど、もっともだ。

 既に屋外に設置された街灯はほとんどまともに機能していない。

 電力は届いているのだが、どうにもその電力がどこかに漏れ出ているようで街灯が点灯しなくなっているのだ。

 それは色鳥駅を中心として設置された街灯に顕著な症状である。

 つまり、『ヨルリアン』は街灯の“輝き”も喰らっているのだろう。

 ドクター遠坂は一時的に大電力を街灯へ送り込む事でほんのわずかな間でも点灯させるつもりだったのだ。

 そして、その一瞬をクロスハートに託し、問題を解決してもらえば市民にも被害は出ない。

 問題としては発電所側がそれを了承してくれるかどうかなのだが……。

 

『それではダメでしょう。現状でどこかに多くの電力を割けばその分どこかの電力が少なくなる。つまり、市民が避難する屋内の電力を少なくせざるを得ません。だからその提案は飲めません』

 

 当然と言えば当然の返答に、しかしドクター遠坂はなんとか説得の言葉を探した。

 しかし、モニターの中の発電所所長はニヤリとしてみせる。

 

『勘違いしないでいただきたい。私は、それではダメだ、と言ったのです。つまり市民の避難先にも街灯にも両方十分な電力を回せばよろしい』

 

 果たしてそんな事が可能なのか。

 まさか、とドクター遠坂は思い至る。

 

『そう。発電所の全力運転を以ってすればどちらも賄う事くらい出来ましょう』

 

 発電所所長は事もなさげに言ったが、全力運転とは過負荷状態での運転だ。

 理論上可能というだけで安全基準も設備破損のリスクも完全度外視である。

 

『我々は発電所の全力運転で手一杯でしょうから、誰か送電システムのコトンロールを引き受けてくれれば助かりますな』

 

 つまり発電所所長は送電システムのコントロールを手伝えと言っているのだ。

 それはドクター遠坂の思惑とも一致する。いや、それ以上だ。

 だが疑問もある。

 

「どうしてそこまで……」

 

 発電所所長やその所員達の職務を考えれば無理なお願いをしているはずのドクター遠坂だ。

 協力を拒みこそすれ、加担してくれるとは思ってもみなかったのだ。

 対する発電所所長はモニターの中でしばらくの間、その理由を語る言葉を探すようにする。

 

『クロスハート、というのを知っていますかな?』

 

 まさか全く外部の人間からクロスハートの名を聞く事になるとは思わなかった。ドクター遠坂の心臓はドキリと跳ね上がったが、どうにか表情に出るのは堪えられただろう。

 構わずに発電所所長は続ける。

 

『謎の化け物とも呼ぶべき新生物、セルリアンとそれを何とかする為の人員……。まぁ、パズルのピースを組み合わせるには十分ですな』

 

 発電所所長は少ない情報を繋ぎ合わせて何が起こっているのかを正確に理解していたらしい。

 さすがに色鳥町の電力を一手に賄う発電所の所長を任される人物である。

 しかし、そんな彼はその場にそぐわないような笑い方をして見せる。

 それはドクター遠坂には、まるで家で家族に見せるような笑顔だと思えた。

 そんな顔をして何を言うのか。

 

『実は私の娘が中学で水泳部をしているのですよ』

 

 発電所所長の言葉にドクター遠坂も思い当たる事があった。

 つい先日行われた水泳部の地区大会で、クロスハートは現れたセルリアンを退治して皆を守ったのだ。

 

『娘からクロスハートに助けられた、と聞いて何かの冗談だと思って笑ってしまったら口を聞いてもらえなくなりましてね』

 

 そう言って発電所所長はモニターの中で照れくさそうにほっぺを掻いている。

 だが、同じく年ごろの娘を持つドクター遠坂には身につまされる話でもあった。

 

『だから、今日、家に帰ったら娘にこう言うのですよ。お父さん達、今日はクロスハートを助けたんだぞ、とね』

 

 どうやらクロスハートは想像以上に沢山の人々を助けていたという事なのだろう。

 発電所所長は冗談めかした笑みを浮かべると、しかしキッパリと言った。

 

『譲りませんぞ』

 

 と。

 せっかくだからいい格好をさせろという事なのだろう。

 

「わかりました。お願いします。父の威厳を見せてやりましょう」

『承知致しました』

 

 二人はニヤリとして通信を終わる。

 頼もしい仲間を得られた以上、大人の意地を見せる時だ。

 

「さて、1番から5番までの燃料弁を開いてくれ。これより当発電所は全力運転を開始する!」

 

 通信を終わらせて発電所所長は所員達を振り返って宣言する。

 無茶に突き合わせる事になったけれども所員達の士気は高かった。

 彼ら所員達も少なからず噂は聞いているのだ。

 通りすがりの正義の味方、クロスハートの噂を。

 実在するかもわからない正義の味方だったが、その手助けが出来るのだ。

 これで張り切らなければ男がすたるというものだ。

 

「了解! サンドスタージェネレーター接続!」

「サンドスターリアクター内、圧力上昇。三番、四番圧力弁解放、まだまだ圧力正常値内に留められます!」

「予備冷却システム接続、サンドスターリアクター温度も正常値です!」

「発電所稼働率、108パーセント。まだまだいけますよ!」

 

 大人達の意地が夜に明りを灯す。

 だが、発電所所長は冷静に状況を見守って算段をつけていた。

 

「全力運転は保って40……いや、30分といったところですか」

 

 それを過ぎて全力運転を続ければ設備の破損などが起こり得る。

 それまでに事態が解決する事を祈るばかりだ。

 

「頼みますよ、クロスハート」

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 ジャパリバイク改が走り抜ける道路脇に設置された街灯が突然まばゆいばかりの光で道を照らしはじめた。

 つい先ほどまで、消え入りそうな程か細い光だったというのに。

 結果、ジャパリバイク改に追いすがっていた『ナイトメア』達が大慌てで離れて行く。

 春香はそれを横目で視界の端に入れると、満足気に微笑んだ。

 『ナイトメア』は光に弱い。

 街灯の明かりは『ヨルリアン』が勢力圏を広げるにつれて、“輝き”を奪われていた。

 現象としては電圧が下がって、それに伴い光量も下がってしまっているのが確認できていた。

 そこで、ドクター遠坂達が大電力を一時的に回して春香の進路を切り開いたわけだ。

 

「やっぱりお父さんはカッコいいわね」

 

 煌々と進路を照らす街灯がドクター遠坂達大人の手によるものだと春香だけが知っていた。

 この輝きは大人達の意地と言えよう。

 しかし、そんな意地も長くは保たなさそうだ。

 この輝きは色鳥駅を中心として集中させている。そここそが決戦の地となるからだ。

 その分、外縁部は手薄だ。

 『ナイトメア』達は数を頼みに寄り集まると、自らの身体を挺して街灯の明かりを受け止め、後続への道を作る。

 盾となった『ナイトメア』が明かりでかき消されたら、次の『ナイトメア』が。そして次、また次、とまるで屍を乗り越えるが如くリレーしていって、とうとう街灯の一本へと取り付く。

 

―ガシャァンン!

 

 大量の『ナイトメア』にたかられた街灯の電球はついに砕け散った。

 そうやって外縁部から迫るようにして街灯を次々破壊していくのだ。

 

「これはまずいわね」

 

 その様子を見ていた春香が言う。

 この作戦は、ともえ達を無事に決戦の地へ送り届けるだけでなく、その舞台を彼女達に有利にする為のものだ。

 いくら大した強さでないとはいえ、大量の『ナイトメア』がいればそれだけで気が散らされる。

 そして、より脅威となるものが生まれつつあった。

 寄り集まった『ナイトメア』達が一つに混じり合って巨人になろうとしていた。

 集合体となった事で、光にもある程度耐性が出来ているらしい。巨大になった腕で次々と街灯を薙ぎ払っていく。

 あともう少しで色鳥駅だ。

 この『巨人ナイトメア』を引きつれて行くわけにはいかない。

 

「仕方ないわね。ともえちゃん。萌絵ちゃん。ここは任せて先に行きなさい」

 

 春香は自動運転席からラモリさんをサイドカーに放り込むと、ジャパリバイク改との切り離しスイッチを押した。

 

「ラモリさん、二人をお願いね」

 

 ジャパリバイク改とサイドカーは切り離してそれぞれに自立して走行出来たりする。

 ただ……。

 

「お母さん……?」

「ジャパリバイク改ってサイドカーを切り離すと自動運転出来なかったんじゃあ……?」

 

 ジャパリバイク改の自動運転はサイドカー込みのバランスでのみ自動運転機能を使える。

 それは二輪のみでの自動運転が非常に難しかったからだ。

 もしもサイドカーを切り離したら強制的に手動運転に切り替わる。

 ともえと萌絵に言われてようやくその事実に思い至った春香である。

 

「あ」

「「あ、じゃないよぉおおおおお!?!?」」

 

 ジャパリバイク改本体の方はさっきからずっと春香による手動運転だったわけだが、サイドカーの方はちょっと事情が異なる。

 ともえと萌絵とラモリさんを乗せたサイドカーはただでさえ手狭なのに定員オーバーだ。

 いくら春香に匹敵する運動神経の持ち主であるともえがいても、そのコントロールは困難だ。

 

「ま、まぁ、あとは駅前方面までカーブとかないし……」

 

 ともえと萌絵の悲鳴が遠ざかっていくのを春香は遠い目をして見送った。

 ラモリさんだっているし、道路は無人状態だからきっと大丈夫だ。

 それよりも……。

 

「さて、昔とった杵柄ね」

 

 春香はジャパリバイク改から降りるとあらためて『巨人ナイトメア』と向き直る。

 『巨人ナイトメア』は身の丈一〇mにもなろうかとしていた。

 なおも周囲から『ナイトメア』が寄り集まっている。

 ヒトである春香に果たして対抗できる術などあるというのか。

 

「ヒトは“けものプラズム”を持っていないから、セルリアンに対して無防備になってしまう。けれどヒトもサンドスターは持っている。ヒトがセルリアンに対抗する為に生み出したサンドスターコントロール術、久しぶりに見せてあげるわ」

 

 春香は大きく息を吸って、ギラリと目の前の巨人を視線で射抜く。

 

「宝条流ッ!! サンドスター・コンバットぉ!!!!!!!」

 

―ダンッ!!!!!!!!!!

 

 春香の踏み込みがアスファルトの地面を抉る。

 目にも留まらぬ速さで『巨人ナイトメア』との間を詰める春香。

 そのまま巨人の足元に潜り込むと……。

 

「宝条流サンドスター・コンバットッ!! 水面蹴りぃッ!!!!!」

 

―スパァアアン!

 

 身を沈めて地面と平行に回し蹴りを放つ!

 足を刈り払われて、たまらず巨人はバランスを崩す。膝を折り巨人は地に倒れ伏した。

 その顔面目前に、既に春香が先回りして腰だめに拳を構え、攻撃態勢を整えている。

 

「サンドスター・コンバット……! 正拳突きぃいいいいいいいッ!!!!!」

 

―ボシュゥ!!

 

 ゴムでも殴ったかのような音とともに、春香の放った正拳突きが『巨人ナイトメア』の頭を吹き飛ばした!

 体内のサンドスターを呼吸と精神力によって操り、生体エネルギー、言わば“氣”で身体を覆う。

 そうすることで本来“けものプラズム”を持たないヒトでもセルリアンに通用する攻撃を繰り出す。

 それこそが、守護の一族に選ばれた宝条家の持つ秘儀、サンドスター・コンバットなのだ。

 

「ふぅ……」

 

 まずはひと段落といったところか。

 だが、『巨人ナイトメア』はそれ以上霧散せずに、首のないままに立ち上がろうともがいていた。

 『巨人ナイトメア』は『ナイトメア』の集合体だ。

 頭部ごと首を吹き飛ばされても、それで活動を停止したりはしない。

 それどころか、周囲の『ナイトメア』達が寄り集まって再び頭部を再生しようとしていた。

 

「あらぁ……。困ったわねぇ」

 

 それを見て春香はいつもの調子で頬に手をあて困った仕草をして見せる。

 『ナイトメア』は『ヨルリアン』がいる限り無限に湧き出て来る。

 つまり、『巨人ナイトメア』は『ヨルリアン』がいる限り無限にパワーアップして無限に再生するという事だ。

 そして、春香には大きな弱点があった。

 

「昔と違って長い時間は戦えないのよねぇ」

 

 それは長期戦を苦手としている事だ。

 春香が守護者を引退した理由でもある。

 彼女は宝条家始まって以来の天才と目されていたが、度重なるセルリアンとの戦いの中である一つの病気に罹患してしまっていた。

 それが『後天性サンドスター過多症候群』である。

 以前萌絵が罹っていた病気とほぼ同じだ。

 春香は体内サンドスターをコントロール出来るから日常生活には支障がない。

 短時間ならばこうして人間離れした活躍を見せる事だって出来るだろう。

 けれど、長時間こうして戦闘状態になれば身体に大きな負担がかかる。

 『巨人ナイトメア』は相性が最悪の敵と言えた。

 

「でも、ともえちゃんと萌絵ちゃんが今から格好つけに行くんだもの。邪魔はさせないわ」

 

 それでも春香は不敵な笑みを浮かべて見せると言い放った。

 

「お母さんにも格好つけさせてもらわないとね」

「そうだね。その通りだ」

 

 どこからともなく、それに同意する声が聞こえた。

 と同時、『巨人ナイトメア』の上半身が汚れでも拭き取るかのようにゴッソリと消し飛ばされる。

 それをしたのは春香ではない。

 

「やあ。姉さんは相変わらず無茶をするね」

 

 では誰がそれをしたのかと言えば、彼女の妹、和香教授である。

 既にセルリウムで右腕を覆い異形の巨腕へと変じている。

 そのひと薙ぎは雑だけれど単純に強力だ。

 もしも和香教授がその気なら『巨人ナイトメア』を跡形も残さず吹き飛ばす事だって出来ただろう。

 けれど彼女は敢えてそうしなかった。

 上半身を吹き飛ばされた『巨人ナイトメア』に再び『ナイトメア』達が寄り集まって再生を始める。

 それこそが和香教授の狙いであった。

 程よく再生したところで……。

 

「そらっ」

 

 再び異形の右腕をひと薙ぎ。それだけで再生しかけていた『巨人ナイトメア』の上半身はまたもや吹き飛ばされた。

 『巨人ナイトメア』を再生する為に次々と周囲から『ナイトメア』達が集まってくる。

 いくら無限に湧き出て来ると言っても、一度に出現する量には限りがあった。

 それらが『巨人ナイトメア』の再生で手一杯になってくれるのなら、周囲に被害をもたらす事もない。

 

「あとはこのまま再生しかけたならその都度吹き飛ばす。ここで釘付けになってもらうよ」

 

 和香教授は春香とよく似た不敵な笑みを浮かべて見せた。

 彼女にも体力の限界はある。

 体力が尽きる前にセルゲンブ達元凶を排除しに行く選択肢だってあった。

 けれど、この戦いは娘達のものであり、ともえ達のものであり、そして今を戦い抜いて来た戦士達のものだ。

 だからここはその手助けをしてやる事が母の務めと定めた。

 

「さすが和香ちゃん! こういう時だけは物凄いカッコいいわ!」

「だけ、は余計だよ!?」

 

 娘達を信じて任せる。

 それはそれで母の意地というものだ。

 春香と和香の姉妹は昔のように賑やかに『巨人ナイトメア』と相対するのであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

―カッ!

 

 先程まで弱々しい光を明滅させるだけだった駅前の街灯が一斉に眩い明かりを灯す。

 それに伴い、ジリジリとクロスナイトを包囲していた『ナイトメア』達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 

『だが、それでも我の有利は揺るがぬぞ』

 

 セルゲンブの言う通り、今までと同じく『ナイトメア』達の援護を受けられないというだけの事だ。

 それだけならば決してクロスナイトが有利になったわけではない。

 だがそれでもクロスナイトはニヤリとしていた。

 

「いいえ。そうでもありません」

 

 クロスナイトの鋭敏な嗅覚には風に乗って待ち焦がれていた人達の匂いが届いていたからだ。

 その余裕の意味が分からずに訝しむセルゲンブ。

 

「もうすぐ来ますよ」

 

 クロスナイトの言う通り、ジャパリバイク改のサイドカー部分だけが駅前ロータリーへと突っ込んで来た。

 

「うひゃぁあああああああっ!?!?」

「と、止まってぇええええええええ!?!?!?」

 

 そこに乗る萌絵とともえの二人は悲鳴をあげながらの登場であったが。

 思わず呆気に取られて成り行きを見守るセルゲンブの前にサイドカーがスピンしながらどうにか停止する。

 

「お姉ちゃん、ラモリさん、大丈夫?」

 

 ともえがいち早くサイドカーから這い出て、萌絵の手を引いて降ろす。

 

「な、何とか……」

 

 萌絵もどうにかサイドカーから降りて来た。片腕には「アワワワ」となっているラモリさんを抱えている。

 あまりに締まらない登場にセルゲンブも思わずその光景を見守ってしまった。

 これが、クロスナイトが待っていた者だというのか。

 訝し気なセルゲンブの視線を受けて、ともえと萌絵も顔を見合わせる。

 

「ええと……セルゲンブ……ちゃん?」

『いかにも』

 

 ちゃん付けには若干引っかかるものがないでもないけれど、セルゲンブは頷いて見せた。

 

「道中で事情は色々聞いたよ。でも、この世界はあげられない!」

 

 ともえはビシリ、とセルゲンブに指を突き付けるとキッパリ宣言した。

 

「よ、よかったぁああああああ! よかったです! ともえちゃあああああん!」

 

 さっきまで冷静だったクロスナイトが思わずともえに飛びついていた。もうほっぺたにペロペロする勢いだ。

 だってともえがいつも通りだったのだ。

 青龍神社で最後に見たともえの姿を知っていただけに、クロスナイトは内心物凄く心配していた。

 信じてやるべき事をやっていたけれど、それでも心配だった。

 その心配が安堵にかわって喜びが爆発してしまったようだ。

 クロスナイトは思う。やはり萌絵を信じて任せてよかった、と。

 

「心配かけてごめんね、イエイヌちゃん」

 

 そんなクロスナイトをなだめるように変身前の呼び名でもって呼びつつ、ともえはその背中をぽむぽむと軽く叩く。

 

「けど、アタシ達が来たからにはもう大丈夫! この世界もオオセルザンコウちゃんも取り返す!」

 

 ともえの力強い言葉であるが、意志だけでどうにかなるわけがない。

 なんせ『ヨルリアン』となったオオセルザンコウの元へ行くには……。

 

『そんな事はさせぬがのう』

 

 巨大霊亀となったセルゲンブをどうにかしないといけない。

 だが、それにも作戦があった。

 

「うん。そういうわけで手分けをします」

 

 作戦立案者である萌絵がセルゲンブに頷きつつ言った。

 手分けをする、という事はクロスハートとクロスナイトの二人でどちらかがセルゲンブの足止めをするつもりだろうか。

 

『無駄じゃぞ。『ヨルリアン』とて並みのセルリアンではない。たった一人で仕掛けたところで返り討ちになるのがオチじゃ』

 

 そんな浅はかな考えをセルゲンブは一笑に付した。

 けれど……。

 

『え?』

 

 思わずセルゲンブは間の抜けた声を上げてしまった。

 ともえがクロスナイトの手を引いて色鳥駅の駅舎ビルへと向かってしまったからだ。

 確かにクロスハートとクロスナイトの二人がかりなら、もしかしたら『ヨルリアン』に付け入る隙も出来るかもしれない。

 けれどそうしたらセルゲンブの相手は誰がするというのか。

 この状況でセルゲンブに対し、一歩を踏み出したのは萌絵だった。

 

「あのね。セルゲンブちゃん? ちゃんでいいのかなぁ?」

『いや、呼び名はどうでもいいのじゃが……』

「じゃあ、セルゲンブちゃん。あなたの相手はアタシとラモリさんだよ」

 

 戸惑いを見せるセルゲンブに萌絵はキッパリと言い切った。

 

『「「「「は、はぃいいいいいい!?!?」」」」』

 

 それにはセルゲンブのみならず、戦いを見守るかばん、サーバル、菜々とルリとアムールトラまでもが素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

「む、無茶です!? 萌絵さん!?」

 

 かばんが慌てて言う。

 ハッキリ言ってその通りだった。それにセルゲンブまで含めて誰もがうんうん頷いている。

 萌絵は頭がよくサポートには向いているが反面運動はからっきしだ。

 しかも普通のヒトであり、春香のようにセルリアンと戦う訓練すらした事がない。

 萌絵が戦うという選択肢はあり得ない。

 

『あ、あのー……。いくら我が冷酷無比と言っても、さすがに変身すら出来ぬ無力なただのヒトを一方的に攻撃するのは寝覚めが悪いんじゃが……』 

 

 セルゲンブの戸惑いは止まらない。

 もしや、こうした心理戦で時間を稼ごうというのだろうかと訝しむ。

 だとしたらお粗末過ぎる。

 セルゲンブの鼻息一つで萌絵など吹き飛ばせるだろう。

 確かに寝覚めは悪いだろうが、それが必要とあれば躊躇う事などしない。

 だが、萌絵はこう言った。

 

「変身出来たらいいって事だよね? じゃあ安心だ」

 

 彼女は愛用の肩掛け鞄からスケッチブックを取り出す。

 一体全体何をするつもりだ、と誰もが萌絵の行動を固唾を飲んで見守る。

 もしや、何か逆転の一手となる発明品でも用意してきたというのだろうか。

 だが、そういう事ではないらしい。

 萌絵はスケッチブックのページを自ら開いて一言叫ぶ。

 

「変身!」

 

 と。

 萌絵はヒトであってヒトのフレンズではない。

 だから変身なんて出来るはずがない。

 そのはずだった。

 なのに、萌絵の身体をサンドスターの輝きが包み込んだ。

 

「クロスハート……!」

 

 萌絵が腕を伸ばし、変身ポーズを決めると共にサンドスターの輝きが舞い散った。

 そして、そこに現れたのは……

 緑がかった髪に翡翠色の爪、左右の瞳にそれぞれ赤と蒼色をした不思議な光点を宿した少女だった。

 その少女の服も変化している。

 黒の長袖アンダーシャツに青色のベスト。

 膝上までのハーフパンツ。

 足元は丈夫そうなトレッキングシューズ。

 水色の模様が入った飾り羽根がついたアドベンチャーハットを被る。

 そして仕上げに、アドベンチャーハットにオレンジの模様が入った二本目の飾り羽をつけて変身は完了したようだ。

 現れた少女は宣言する。

 

「ともえフォームッ!!」

 

 と。

 見守っていた誰もが開いた口が塞がらない。

 なんせ、本来変身なんて出来るはずのない萌絵が変身して見せたのだから。

 そしてその姿はよく見知ったものだった。

 なんせ、それがそのままともえの姿そのものだったのだから。

 

「あ、あれ! 変身スプレー(仮)じゃないんか!?」

「ち、違うと思うよ!?」

 

 あまりの事態にアムールトラが戸惑い、横のルリに訊ねる。

 かつて萌絵は変身スプレー(仮)というアイテムを使ってともえそっくりの姿に変装してみせた事があった。

 けれど、今起きているのはそういう事ではない。

 萌絵は確かに“変身”してみせたのだ。

 セルゲンブはもうわけがわからない。

 ヒトのフレンズはフレンズの力を借りて変身する技を持っている。

 けれど、ヒトにそんな技はない。そんな事が出来るはずがない。

 だから目の前の存在はセルゲンブの理解を越えていた。

 

『貴様……ッ!? 貴様は一体なんなのじゃ!? 一体何者なのじゃぁあっ!?!?』

 

 セルゲンブの絶叫にともえの姿をした少女は応えた。

 

 そう。

 

 その名は……

 

 

 やっぱり…………

 

 

「クロスハート。通りすがりの正義の味方だよ」

 

  

 

―②へ続く




【用語解説:サンドスター・コンバット】

 守護者の一族、宝条家に伝わる秘術。
 体内のサンドスターを呼吸と意思の力で操り、“けものプラズム”に相当する氣へと変換するのがサンドスター・コンバットである。
 ヒトがセルリアンに対抗する為に編み出した武術であるが、身に着けるには厳しい修練が必要だ。
 また、この技を多用すると体内サンドスターが増えていって後天性サンドスター過多症候群に罹る事もある。
 なお、元ネタは旧けものフレンズちゃんねる併設のBBS内『とにかくポジティブ!誰でも妄想を吐き出していいスレ』にて連載されていた『けものフレンズRッ!炉心融解』にて登場していたサンドスターコンバットより。
 BBSが閉鎖されているので現在は閲覧不可能となっているものの、スピード感と勢い溢れる独特の文体が素晴らしい作品でした。
 技を放つ際にやたらと『!』マークが付くのは元ネタ準拠である。
 みんなもサンドスター・コンバットで戦う時は大きな声で叫ぼうねッ!!!!!!!!!!!!!!!
 なお、宝条流サンドスター・コンバットの他にも流派があるらしい……? 



 最新話でも再度宣伝です。
 ツイッターでナベワタ様よりステキなイラストを頂きました。
 下記URLから見れますので、ぜひご覧下さい!


https://twitter.com/nabewata1120/status/1360930409177964544?s=20


 ともえちゃんと春香お母さんにわしゃられまくるイエイヌちゃんがめちゃくちゃ可愛いです!

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