けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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フォーム紹介

名称:G・ロードランナーフォーム
特徴:スピード特化
パワー:C スピード:S+ 防御力:C 持久力:C
必殺技:爆走!スピードスター

 G・ロードランナーのフレンズ、ゴマとのクロスハートフォーム。特にスピードに優れているフォームだ。
鳥のフレンズなのに地上を走るのが速いのだが空を飛べないわけではない。
必殺技の爆走!スピードスターは自身の速度をさらに上げるバフ技だ。
スピード特化とは言っても最高速度を乗せた一撃は十二分に必殺技と言える火力を秘めている。



第4話『イエイヌの戦い』(後編)

 そして運命の月曜日。

 決戦は今日の放課後。萌絵が休んで勉強見ようかと提案してくれたがそれは断った。

時間までの間、ラモリさんが着きっきりで厳格な時間管理をしながら休憩を挟みつつ勉強を見てくれた。

昨日の復習を中心に疲労が残らない程度に勉強をしながら時間を待つイエイヌ。出来る事は全てやったと言っていい。

 

「それじゃあ、そろそろ時間なので行きますね。」

 

 イエイヌは春香に挨拶をすると筆記用具を入れた筆入れを手にとる。

何度も確認したそれは今日の武器だ。メインウェポンはHBの芯を装填したシャープペン。予備弾倉が満タンなのも昨日のうちに確認済みだ。

さらに万が一の場合に備えてHB鉛筆三本をサブウェポンに。昨日のうちにしっかりと削って準備は万全だ。

鉛筆の反対側には消しゴムがついているがこれはあまり使わない方がいいと言われている。確かに消し心地はあまりよくなく消し後が汚れやすいのであまり多用はできない。だがそれでも消しゴムを落としてしまったりした時の保険としては心強い逸品だ。

 そして消しゴムも真新しいものが一つに、ずっと使っていて小さくなってしまった予備が一つ。

今日の騎士の剣がシャープペンなら消しゴムは騎士の盾だろう。武装も万全だ。

 

「ええ、気を付けていってきてね。ラモリさんもイエイヌちゃんをよろしくね。」

「アア。任セロ。」

 

 玄関まで見送りに来た春香。

 

「イエイヌちゃん、頑張ってね。」

「はい。お任せ下さい。」

 

 春香の見送りに力強く頷くイエイヌ。騎士の出陣である。

 今日はラモリさんが学校までイエイヌについてきてくれる。

余裕を持って出発した分今日はゆっくりと歩ける。もう都合三度目となる通学路ではあるが今日は決戦場までの道のりだ。歩みの一歩が重い。

やがて校門が見えてくる。その先にそびえる校舎が今日は魔王城だ。

 校舎の入り口ではともえ、萌絵、かばん、サーバル、ヘビクイワシ、ゴマの6人が待っていてくれた。

試験は一人で受けなくてはならないだろうが、それでも自分にはこんなにも心強い味方がいてくれるのだ。とイエイヌの胸には決戦への闘志が湧いてくる。

 

「お待たせしました。」

 

 イエイヌの短い言葉と表情に既にかける言葉はない事を悟った6人。短く頷きだけを返す。

だから、このタイミングでほんの一瞬だがイエイヌの表情が硬く強張ったものに変わった事に一同心配そうな表情を向ける。

この脈絡のないように思える表情が変化する理由は一つしか思い当たらない。

 

 そう。この世界に来てからも何度か嗅いだ事のある匂い。セルリアンの匂いがしてしまったのだ。

どうしてだろう。どうしてこうも上手くいかないのだろう。何も今日、今、このタイミングで出てこなくてもいいのに…。その想いがイエイヌの胸に湧き上がる。

 

 セルリアンが現れた以上、戦いにいくしかない。何せこの世界でセルリアンと戦えるフレンズはイエイヌだけなのだから。

目の前の試験は残念だが仕方がない。やはり自分が戦うべきはどちらなのか、イエイヌにはわかっていた。それでもただただ悔しい。

みんなが自分の為にしてくれた事が無駄になる事にただただ悔しい気持ちだけが膨らんでいく。

だが、それでも行かなくてはならない。自分をナイトと呼んでくれた人たちの為にも。

 

 イエイヌが校舎から背を向けようとした時、その肩が両側から掴んで止められる。

 

「へーい。イエイヌちゃん。誰かお忘れじゃないかなー?アタシもいるよ。」

「はい。イエイヌさんは何の心配もなく試験会場へ向かってもらって大丈夫ですよ。」

 

 イエイヌの肩を両側から掴んだのは一人はともえ。もう一人はかばんであった。

それぞれにイエイヌに頷いてみせる、が…。

 

「いえ…あの…その…」

 

 セルリアンの事をかばんに言ってもいいのか逡巡を見せるイエイヌ。

 

「大丈夫、この街にもイエイヌちゃんが前に言ってたセルリアンハンターみたいな人がいるんだから。ね、かばんちゃん。」

「ええ。はい、大丈夫です。」

 

 なんでかばんさんがセルリアンの事を?それにこの世界にもセルリアンハンターが?という疑問をイエイヌが口にする前に

 

「すみません、ヘビクイワシさん。イエイヌさんを試験会場まで案内して貰えますか。」

「はい、任せて頂いてかまわないのであります…が、かばん君は?」

「ええと、ちょっと一仕事できちゃいまして…。」

 

 かばんはイエイヌをヘビクイワシに預けてしまう。

 

「あの…!その…!い、いいんですかっ」

 

 なおも振り返り逡巡を見せるイエイヌに

 

「ここは任せて先に行って下さい。」

 

 と頷いてみせるかばん。ゴマとヘビクイワシがイエイヌを連れて校舎の中に入っていき、残されたのはともえ、萌絵、かばん、サーバルの4人だ。

 

「ヒーローになっちゃった以上一回言ってみたいセリフだよね。わかる。わかるよ、かばんちゃん。」

「あはは。中々ちょうどいいシチュエーションってないんですよね。今回は丁度よさそうだったんでつい。」

 

 イエイヌが消えていった校舎の方を眺めながらかばんの隣に立つともえ。肘でちょんちょん、とかばんを突くとかばんも少しばかり照れ臭そうに頭をかく。

そんな二人の元へ萌絵とサーバルが駆け寄る。

 

「えっと、かばんちゃんっ。セルリアンだよね?いくんだよね?」

「そっか…。またセルリアンが出たんだ。だからイエイヌちゃんあんな顔してたんだね…って何でサーバルちゃんもセルリアンの事を知ってるの?」

 

 駆け寄ったサーバルの言葉に萌絵が疑問を口にする。言ってもいいのかどうか迷うサーバルが口を開く前に

 

「萌絵お姉ちゃん、こちら紙飛行機の君。」

 

 とかばんを手のひらで指し示しながらあっさりと言うともえ。

 

「え?……ええええええ!?!?」

 

 一瞬何を言われたのか分からなかった萌絵。ようやく理解した時思わず驚きの声をあげる。

 

「今回はボク達に任せてもらって大丈夫ですよ。遠坂さん達はイエイヌさんについて安心させてあげて下さい。」

 

 こくり、と頷いてみせるかばん。

 

「ねえ、かばんちゃん、一つだけ条件がある!」

 

 と何故か助けられる側のはずのともえがそんな事を言い出す。

 

「遠坂さん、じゃなくてともえって呼んで欲しいな。アタシ達仲間になれそうだもん。」

「あ、そういう事ならアタシも萌絵がいいな。アタシもかばんちゃんって呼びたいし。」

 

 そんなともえ達にかばんも笑いながら頷く。

 

「じゃあ、ボク達からも一つ。次に会う時は紙飛行機の君じゃなくて……って呼んでください。」

 

 こしょこしょ、と耳元で二人に囁くかばん。

 なるほど、そんな名前だったのか。確かに優しいこの子に似合いの名前だ。紙飛行機の君よりもずっといい。と二人は揃って頷く。

 

「うん。イエイヌちゃんの試験が終わったら必ず駆けつけるから。だからそれまで持ちこたえて。」

「ええ…!?ともえちゃん…。試験って結構かかるよ?それまでには終わっちゃってるんじゃないかな…。」

 

 萌絵のそのもっともな言い分にともえは何やらウィンクして、ほら!あれ!みたいな合図をかばんに送っている。

 

「あ、ああ!ええと、コホン。………時間を稼ぐのは構いませんが……。別に倒してしまっても構わないでしょう?」

 

 言ってクスクス忍び笑いを漏らすともえとかばん。それは二人が共通して読んでる漫画の台詞だ。

そう、せっかくヒーローになったのだから憧れのシチュエーションで言ってみたいセリフの一つや二つあるというものだ。中学2年生。そういう憧れをもつお年頃でもある。

その一点ではともえとかばんは既に分かりあってしまっていた。

 

「アタシ、かばんちゃんはもう少し固い感じかと思ってた。」

「幻滅しちゃいました?」

「ううん。もっと好きになった!」

「私も!私もかばんちゃん大好きだよっ!」

 

 そんなサーバルといえーい、と手を合わせるともえ。

 

「じゃあ、遠坂さ…じゃない。ともえさん、萌絵さん。行ってきますね。いこう、サーバルちゃん。」

「うん、頑張って!」

 

 とサーバルを伴って旧校舎の方へと歩き出すかばん。二人に背を向けたかばんの顔は戦士のそれであった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

「かばんちゃん、何だか嬉しそうだね。」

「うん。やっぱり仲良く出来そうだなっていうのは嬉しいよ。」

「そうだよね。お友達増えるの嬉しいもんね!」

 

 旧校舎までの道を歩くかばんとサーバル。その両脇から出てきた制服姿のフレンズ達がかばんと同じ方向へと歩きはじめる。

 

「やあやあ、かばんさん。今日もセルリアン出現だなんて最近多いねえ。」

「それでもかばんさん達とアライさんとフェネックがいるのだから大丈夫なのだ!無敵の布陣なのだー!」

 

 そのフレンズ達はアライさん生徒会副会長と庶務のフェネックであった。

 

「二人も来てくれたんですね。今回も頼りにしてます。」

「はいよー!」

「アライさんにお任せなのだー!」

 

 と、4人に増えたかばん達の先で木にもたれて腕組みの姿勢で待っているフレンズがさらに二人。

 

「まったく待ちくたびれたのです。こないのかと思ったのです。」

「遅かったですね。何をしていたのですか。」

 

 言いつつかばんの後ろにつくのは先代会長と先代副会長のコノハ博士とミミ助手である。

 

「すみません、ちょっと生徒会の仕事で。」

「まったく、この学校の長の座を譲ったのだからしっかりするのです。」

「そうなのです。ちゃんと食べているのですか?」

「あはは…、はい。その辺バッチリですよ。博士先輩と助手先輩も今回もよろしくお願いします。」

「任せるのです。我々はこの学校の長だったので。」

「ええ。我々はかしこいので。」

 

 都合6人は旧校舎前の開けた場所で足を止める。そこには細長い巨大なミミズのようなセルリアンがいた。

うねうね、と蠢くセルリアンに対し、5人を残したままさらに数歩を踏み出し前にでるかばん。

 

「じゃあ…みんな行くよ!」

 

―バッ

 

 と全員が揃って左腕を前に突き出す。すると制服のブレザーの袖の下に隠れていた揃いの腕時計のようなものが露わになる。

その左腕を揃いのポーズで胸元に引き寄せて

 

「変身っ!」

 

 かばんの声が響き、続けて…

 

「「「「「「「クロスシンフォニー!!」」」」」」

 

 6人の声が重なり、サンドスターの輝きに包まれる一同。

 

「フェネックシルエットっ!」

 

 輝きが治まったとき、後ろに控えていたはずのアライさんにフェネックと博士助手にサーバルの姿は跡形もなく消えてしまっている。

そのかわり、かばんの立っていた位置にはピンクのカーディガンにクリーム色のミニスカート。大きな耳にピョコンと揺れる尻尾をもった一人だけが立っていた。

そう。彼女こそが人知れずセルリアン達と戦い街を守って来た先輩ヒーロー。その名は…。

 

 クロスシンフォニー

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 放課後の視聴覚室。

 今日はそこがイエイヌの編入試験会場として用意されていた。ここにはセルリアンの匂いも届かない。だからどうなったのかはわからない。

けれどもイエイヌが信頼するともえと萌絵の二人が大丈夫だと言ったのだから大丈夫だ。

準備してきた筆入れの中身を出して配置につける。

 試験官は今までに話した事のない教師だった。緑がかって見える髪色はどこかともえに似たものを感じさせる。

 

「今日の試験官を務める教師の星森 ミライです。試験の説明をしても?」

「はい。お願いします。」

 

 教師、ミライの言葉に頷きを返すイエイヌ。

 

「試験範囲は3教科。国語と数学と英語の3科目です。このテスト用紙一枚に全て問題文と回答欄がありますからね。」

 

 つまり、各教科ごとに区切るわけではなく、一度に3教科全ての試験を受ける、ということなのだろう。

 

「制限時間は30分。今からテスト用紙を配りますから開始の合図があるまでは裏返しのまま机に置いておいて下さいね。」

「はい。わかりました。」

「それと、後ろの付き添いの人達も試験中は静かにお願いしますね。私語はもちろん厳禁。即退場ですからね。オイナリ校長もですよ。」

 

 そう、特別に試験会場で付き添いを許可されたともえ、萌絵、ヘビクイワシ、ゴマの4人。視聴覚室の最後尾でイエイヌを見守る。そしてその一団の中にはオイナリ校長も加わっていた。

 

「わかってるよ。ミライさん。邪魔はしないから安心して。」

 

 と手をひらひらさせるオイナリ校長。これですっかり説明は終わったのだろう。ミライも満足そうに頷きイエイヌに向き直る。そして…。

 

「それでは…はじめ!」

 

 合図と共にバッとテスト用紙を裏返すイエイヌ。いよいよ決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

『やあやあ、私が一番手かあー。いやー、このセルリアン案外速いねー。攻撃力とかは大した事ないみたいだけどさー。』

 

 クロスシンフォニーの心に直接響く声、それはフェネックのものだった。

黒い細長いミミズのようなセルリアンは身を縮めたり伸ばしたり、普段の速度はそこまでではない。

だが、ゴムのような弾力のある身体で周囲に身体を引っ掛けてそこを起点にして伸ばしたゴムの反動で繰り出す攻撃はかなりの速度だ。

 鞭のようにしなる攻撃が何度も襲い掛かるがそれを最小限の動きでヒョイヒョイかわすクロスシンフォニー。

 

『私の耳は大きい分よく音を聞き取れるからねえ。このくらいの攻撃なら後ろからされたってかわせるさー。』

 

 まるで後ろに目があるかのように死角からの攻撃にも余裕の最小限の動きでかわし続けるクロスシンフォニー。

 

『それじゃあそろそろ…っと、いくよー。かばんさーん。』

「はい、まずは一撃っ!」

 

 ギリギリまで引き付けた一撃をかわして身体を入れ替えるようにしてゴム型セルリアンに手刀の一撃を叩きこんでみるクロスシンフォニー。

しかし…

 

―ビヨヨヨーン

 

 とまるで手応えがない。ゴムのような身体は伸びるばかりで手刀で切断する事はできなかった。

 

『ありゃりゃ。これはダメだねえ。私のパワーじゃあ切断はおろかダメージすら入らないかも…。』

「はい…。そういうセルリアンの能力なのかもしれません。」

『という事は交代だな!セルリアンの詳しい解析ならアライさんにお任せなのだー!』

「ですね。まずはあのセルリアンの能力を調べて対策を立てましょう。」

『それじゃあ交代前に、一応目くらまししとこうかー。』

 

 ダンッ!と大地に手を叩きつけるクロスシンフォニー。

 

「砂隠れ!」

 

―ゴォッ!

 

 っと手をついた大地から砂埃が撒きあがりクロスシンフォニーの姿を覆い隠す。ゴム型セルリアンもキョロキョロと周囲を見渡すような仕草をしているがどうやらクロスシンフォニーの姿を見つける事は出来ていないようだ。

 

「シルエットチェンジ!アライグマシルエットっ!」

『待ってましたなのだー!』

 

 カッとサンドスターの輝きに再び包まれるクロスシンフォニー。輝きが治まると今度は薄紫の上着に黒のミニスカートに縞々尻尾。アライグマのフレンズの格好をしたクロスシンフォニーがが現れる。

砂埃に隠れながら一気にゴム型セルリアンに近づくクロスシンフォニー。するり、と撫でるようにセルリアンの身体に手をあてる。

 それでクロスシンフォニーの存在に気が付いたセルリアン。ビュンッ!と身を捩ってムチのようにしなる攻撃を繰り出してくるがその時にはもう遅い。

既にクロスシンフォニーは再び砂塵の中に消えている。

 

『ふっふっふ。バッチリ触ってきたのだ!これであのセルリアンの事はまるっとお見通し!これが必殺、アライアナライズなのだー!』

 

 そう、アライグマシルエットの技の一つは手で触れたものの特性を把握するというものなのだ。名付けてアライアナライズである。なおこの技に攻撃力はないので必殺ではない。

 

『まったく、アライの技はなんでこう性格とあってないのですか。』

『そんな事ないのだー!アライさんだって賢いのだー!』

『まあ、今日のところはそういう事にしておいてやるのです。』

『ぐぬぬー!』

 

 クロスシンフォニーの心の中で賑やかに言いあっているアライさんと博士助手。それに思わず苦笑を浮かべるクロスシンフォニー。

気を取り直して把握したセルリアンの特徴をもう一度思い出す。

 

『ふむ。輪ゴムに取りついたセルリアンなのですね。』

『さしずめワゴメリアン、とでも言ったところなのです。』

 

 心の中で同じくセルリアンの特徴を思い出しているらしい博士と助手たちの声。どうやらこのセルリアンは輪ゴムの特徴をコピーしたようだ。

ゴムの特性を持っているのはわかってはいたが、問題はその弾性がどの程度かという事だろう。

 

『切り裂くような攻撃が有効だとは思うのですが…。セルリアン化した時にゴムも強化されたのでしょう。』

『ええ。おそらくトラックくらいなら吊るしても耐える程度の弾性がありそうなのです。』

「そうですね。これだとサーバルちゃんの爪でも切れるかどうか…。」

『そして切れなかったらゴムの反動を利用した手痛い反撃をしてきそうなのです。』

『どうしますか?かばん。』

 

 しばしの逡巡。だんだんとクロスシンフォニーの姿を隠していた土煙も治まってくる。もう考えている時間も残り少ないようだ。

だが…土煙が治まってその姿が再び現れたとき、そこには自信に満ちた笑みを見せるクロスシンフォニーがいた。

 

「はい。考えがあります。」

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

「(おかしいです……。)」

 

 イエイヌはメインウェポンのシャープペンで再び解答を書き込み問題を一つやっつける。鎧袖一触だ。

なのにイエイヌの心は晴れない。

そう、あまりにも問題が簡単すぎるのだ。既に国語を終わって数学へと問題が移っている。

だがそれも昨日の午前中くらいにはもう出来るようになったような内容なのだ。

まるで…

 

「へっへっへ、四天王最弱の小学1年常用漢字の書き取りあたりは出来てもこの俺、二桁の足し算様には手も足も出まい!貴様に繰り上がりが出来るかな!?」

 

 とでも言わんがばかりの問題文に若干の申し訳なさを感じつつも答えを書き込んでいく。

答えを書き込んだ瞬間、ばかなぁああああっ!?!?と四天王二番目の刺客、二桁の足し算が吹っ飛ばされていったような気がするが気のせいだ。

 

「(これは何かの罠…?)」

 

 あまりの問題文の簡単さにイエイヌの頭にそんな考えがよぎる。

 

「(いや………だとしても!前に進むしかないっ!)」

 

 イエイヌは四天王三番目の刺客、一桁の掛け算と割り算コンビにも口上を述べさせる暇すら与えず撃破!

さらに回答欄を進んでいく。いよいよ最後の英語エリアへと突入していくのだった。

 

 

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 いよいよ砂煙も晴れた旧校舎前。もうクロスシンフォニーを隠すものはない。

ゴム型セルリアンあらためワゴメリアンはゴムの身体をたわめて側にあった石を自らの身体で挟み込み、まるでスリングショットのように打ち出す!

 クロスシンフォニーに迫る石礫!

 

「シルエットチェンジッ!」

 

 再び叫ぶと同時、サンドスターの輝きが周囲を満たし一瞬クロスシンフォニーの姿を隠すとそこに石礫が着弾!

先ほどまでクロスシンフォニーのいた場所には石礫で抉れた地面があるのみ。誰もいない。

手応えのなさにワゴメリアンはキョロキョロ、と周囲を見渡すかのような仕草をしている。今度は視界を遮るものはなにもない。一体どこに隠れたというのか。

 

「ワシミミズクシルエット。」

 

 とワゴメリアンの頭上に茶色を基調としたコートのような衣装を身にまとった鳥型フレンズの姿をしたクロスシンフォニーがいた!

頭の翼を音もなく動かし、空中からワゴメリアンを見下ろすクロスシンフォニー。

 

「いきますよ、助手先輩!」

『まったく助手使いの荒い事ですね!』

 

 文句を言いつつもニヤリとした雰囲気が伝わってくるミミ助手の声。 

 

『もっていくのです、かばん!サンドスターありったけです!』

 

 その足先にサンドスターの輝きが集まって、猛禽の爪が形成される。

 

『「サイレントダイブッ!」』

 

 音もなく上空から急降下アタックをぶちかますクロスシンフォニー!先ほど形成した猛禽の爪でガッチリとワゴメリアンを掴むと…

 

『「いっけぇええええええええっ!」』

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

 と急降下の勢いそのままに地面にワゴメリアンを押し付け引きずっていく。周囲にゴムの焼けるイヤな匂いが広がる。そうしてワゴメリアンを引きずって向かう先は、先日掃除して水を張ったばかりのプールだ。

今日はまだプール開きをしていない為、放課後の今、プールには誰もいない。

 

『くっ…。ここまでですね…。かばんっ!博士!後は任せます!』

 

 力技でここまでワゴメリアンを引きずって来たクロスシンフォニー。最後の一仕事、とばかりにワゴメリアンを掴んだままプール上空へ飛び上がる!

 

『よくやったのです、助手!あとは任せるのです!いくのですよ!かばんっ!』

「はい!シルエットチェンジッ!」

 

 再びプール直上でサンドスターの輝きに包まれるクロスシンフォニー。

 

『「アフリカオオコノハズクシルエットッ!」』

 

 と今度は白を基調としたコートのような服を纏った姿に変化するクロスシンフォニー。家電セルリアン戦でも見せたシルエットの一つだ。

同じく足先をサンドスターで形成した猛禽の爪に変化させたクロスシンフォニー。ワゴメリアンを掴んだまま…

 

『「ステルスダイブッ!」』

 

 今度は水の張られたプールへ急降下ダイブ。ワゴメリアンをプールの水面へ叩きつける!

 

―ズドォオオオオオンッ!

 

 と盛大な水柱が吹き上がる!

 

―ギ、ギ、ギ。

 

 プールの底で明らかに動きが固くなるワゴメリアン。

 

『なあなあ、フェネック。なんであのセルリアンは水に落とされたら動きが鈍くなったのだ?』

『それはね。水に落とされたからじゃないんだよー、アライさーん。』

『かばんはセルリアンを地面を引きずって摩擦熱で加熱した後にプールの水で急激に冷やしてやったのです。』

『熱く加熱された後に急速に冷やされたゴムは劣化してしまうのです。そして劣化したゴムは弾性を失って脆くなるのです。』

『なるほどぉ!窓際に放置した輪ゴムってすぐに切れちゃうもんね!さっすがかばんちゃんだね!』

『つまりかばんさんの作戦勝ちなのだな!やっぱりかばんさんは偉大なのだ!』

『そうだねえ。でも最後の仕上げが残ってるからねー。仕上げはやっぱりサーバルに任せるのさー。』

『うん!任せて!待ちくたびれちゃったよ!』

 

 水柱となったプールの水がまるで雨のように降り注ぐ中、飛び込み台に降り立つクロスシンフォニー。

 

「シルエットチェンジ……!サーバルシルエット!」

 

 クロスシンフォニーは最後のシルエットチェンジを叫び再びサンドスターの輝きに包まれる。大きな耳に白のノースリーブブラウス。黄色のヒョウ柄スカートに同じ柄のニーソックスとアームグローブをつけた姿にかわるクロスシンフォニー。

 

『じゃあ行くよ!かばんちゃん!』

「うん!サーバルちゃん!」

 

―ドンッ!

 

 と飛び込み台から水が半分近くにまで減ったプールへ飛び込むクロスシンフォニー!

スコールのように降り注ぐ水を吹き散らしてプールの水底で未だ体勢を崩すワゴメリアンに迫る!

 

『「疾風の……!」』

 

 その両手の爪にサンドスターの輝きが宿る。

 

『「サバンナクロォオオオオオオッ!」』

 

 爪が光条の軌跡を残し振るわれ、弾性を失ったワゴメリアンの身体が細切れになる。

最後に残ったコアともいうべき『石』を爪で切り裂いて、一度プールの底を蹴り高くジャンプした後、逆側のプールサイドへと降り立つクロスシンフォニー。

 クロスシンフォニーが着地と同時、『石』を失い細切れにされたワゴメリアンの身体はパッカーン!とサンドスターの輝きへと還った。

 未だサンドスターの輝きに照らされるプールを見て…

 

「あー…。プールの水を減らしちゃったの怒られる前に…。」

『逃げた方がいいねえ。これは。』

『ですね。かばん。さっさと逃げるのです。』

『スタコラさっさなのです。』

 

 と、水柱となったプールの水が未だに周囲に降り注いでいるが、プールの水かさは随分減ってしまっているように見える。

それに苦笑するとクロスシンフォニーは再び大ジャンプでいずこかへと姿を消すのだった。

 

 謎のヒーローは事件が解決したならクールに去るものだ。だから決して教師に怒られるのがイヤだったわけではない。

決して決して先生方にこってり絞られるのがイヤだったわけではないのだ。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

「(なっ……一体どういうことですか……)」

 

 放課後の視聴覚室ではイエイヌの戦いが続いていた。英語エリアもアルファベットの書き取り、大文字、小文字ともに全て埋めた後、いくつかの単語の意味。英文和訳。和文英訳をこなしていって最後の問題に入っていたのだが……

その最後の問題がイエイヌを苦しめていた。

その問題文は……

 

次の英語を訳しなさい。

There is a book on the desk.

 

 というものだ。

 

「(どういう事ですか…。どうなっているんですかこれは…!?)」

 

 単語の意味はそれぞれわかる。『それらは、本です、机の上。』これを英訳のルールに従って並べ替えれば、『それらは机の上の本です』になるはずだ。

しかし、それを回答欄に書く事にイエイヌの頭は警鐘を鳴らしたのだ。

 そう、『それらは、本です』というのならば『There are books』にならなければおかしいのだ。

違う、これは正解ではない。頬に流れる汗を拭うイエイヌ。一度書いた答えをゆっくりと消しゴムで消す。

問題文がまるで

 

「ほう、さすがここまで辿り着いただけの事はある。四天王最強のこの私の攻撃を見破るとはな。」

 

 とでも言っているようだ。

 四天王最強、中学1年の英語終盤に習い数多の不勉強な中学生達に不正解を叩きつけた存在。その名は……

 

「threr is構文……!」

 

 見守る萌絵が遠くで小さく呟く。そう、それは知ってさえいれば非常に簡単なのだ。

there is~で~がある、という英語の構文なのだ。つまり、正解は『机の上に本がある。』となるのである。

 

 だが、それを知らなければ途端に凶悪な初見殺しに化ける。イエイヌが最初に書いた答えのままであれば不正解、部分点すら貰えないだろう。

 

 英語に今まで全く触れた事のないイエイヌ。基本構文のルールや単語の語彙力を増やす事には力を注いだが、特殊な構文まで学ぶ余裕がなかったのだ。その事に萌絵の後悔が募るが後の祭りである。

 

「さて、どうする?諦めるかね?ここまで辿り着いただけでも大したものだと言えよう。この私を空白のままにしたところで何ら恥じる事はない。」

 

 消しゴムで消した解答欄がそう言ってくるかのようだ。ここまでの快進撃で稼いだ時間も刻一刻と減っていく。

いや、これまでの問題はイエイヌの油断を誘う為のものだったのではないだろうか。だとしたらまんまと罠にハマった事になる。

 

「(落ち着いて…。考えるんです…。この文章はおかしい。)」

 

 そう。この文章には矛盾点がある。thereという複数形とisという単数形そしてa bookという単数形が一つの文中に存在する事だ。

 

「試験時間、残り3分です。」

 

 考え続けるイエイヌに試験官であるミライの無情な宣告が告げられる。それでもイエイヌは考え続ける。加熱する思考で焼け切れてしまいまそうだ。

 

「(つまり、どっちかが間違っている!複数形は一つ!単数形は二つ!だったらこの問題文、複数形はいったん無視して考えてもいいはず!)」

 

 イエイヌは賭けに出た。もう無茶苦茶な理論ではあったが必死で思考を巡らせる。

 

「(thereの事は一旦置いておくとして、だとしたら…。主語になりそうなものはa bookしかない…!なら残りの言葉は本がどんな状態なのか説明する言葉のはず…!だとしたらこの文章の意味は…!)」

 

 イエイヌの思考がさらに過熱していく。その思考の先に一筋の道が見えた気がした。

 

「試験時間残り1分です。」

 

 自らの直感を信じて解答欄に答えを書き込みにメインウェポン、シャープペンを走らせようとする…。だが!

 

―スンッ…

 

 とシャープペンの抵抗がなくなりガクリと力が抜けたように紙に金属部分が押し付けられる。走らせたシャープペンはイヤな手応えを返し、その軌跡を紙に刻んではいない。そう、芯切れだ。

今から芯を再装填しても間に合わない。

 

「よくやったと褒めてやろう。しかし、ここまでの戦いで貴様の剣は既に限界だったようだな。だが誇るがいい。貴様は四天王最強のこの私をここまで追い詰めたのだからな。」

 

 そう最後の解答欄の空白が勝ち誇っているかのようである。

 

―パシンッ!

 

 静寂の視聴覚室にイエイヌがシャープペンを置く音が響く。諦めたのか…!?

 

 いや……!

 

 素早くサブウェポンのHB鉛筆に持ち替えたイエイヌ!ガガガッと最後の解答欄に怒涛の攻撃を繰り出す!

あとは間に合うかどうか…!

見守る萌絵もともえもヘビクイワシもゴマも、一様に両手を合わせ神に祈る。誰もが同じ事を祈った。

 

間に合え!と。

 

「そこまで!筆記用具を置いて下さい。」

 

 試験官のミライの言葉が響いてイエイヌの手からHB鉛筆がコロンと転がる。

 最後の解答欄には『机の上にあるのは本です。』という回答が書き込まれていた。

 

「ふ…。見事だ。まぐれだろうとなんだろうとこの私を倒した事…。誇るがいい…。」

 

 教師ミライの手によって回収されていくテスト用紙の四天王最強がそう言っているような気がした。

 

「ふふ…。こういうのを言うのにピッタリのことわざがありましたよね…。」

 

 全力を出し切った心地よい疲労に身体を支配されながらもイエイヌはポツリと呟く。

 

「たしか……。そなえあれば嬉しいな?」

 

 残念ながらそのことわざは間違っていたが、試験は終わったのだ。もう減点対象ではない。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 試験の終わった視聴覚室。ミライ先生の元へオイナリ校長がやってきて解答を一瞥すると二人で顔を見合わせて頷きを交わす。

 

「詳しい採点は後でするけどね。合格だよ。文句なく。」

 

 と告げるオイナリ校長。

 

「あの…。オイナリ校長。やけに問題文が簡単だった気がするんですが…。」

 

 と控えめに挙手するイエイヌ。後ろで見守っていた萌絵達もそれに頷く。

 

「うん?今日の試験はイエイヌちゃんの成長を見る為のものだからね。中学2年生に編入して本当に勉強についていけるかどうか。」

 

 と解説をはじめるオイナリ校長。

 

「まず、先週の金曜日の時点ではまったくゼロの状態だったよね。平仮名を書くのですら怪しかったっていうのを私の方で確認してたの。」

 

 そのオイナリ校長の解説に一同黙って聞き入る。

 

「で、今回のテストってね。中学2年生相当の学力があるかどうかーよりも将来的に中学2年生に追いつけるかどうかを見るテストだったの。」

「だから問題文がやけに簡単だったんですね。」

「そうだよ。」

 

 つまり、オイナリ校長の解説を聞く限り、今回のテストは問題文の難易度を下げてイエイヌがどのくらい勉強が出来るようになったのかを見る為のものだったらしい。

この試験で何点とれたかよりは、ゼロの状態からどのくらい成長したのか、が合否に大きな影響を与えるものだったのだ。

 

「私たちだって生まれたてのフレンズにいきなり中学2年生の問題を突きつけるほど鬼じゃないつもりだよ。」

 

 と、オイナリ校長は肩をすくめて笑って見せた。

 

「それと今回のテスト結果を基にしてどういう補習授業をしようか考えようかと思ってたんですけど、まさかほぼ満点をとるとは思ってなかったです。」

 

 とミライが苦笑を浮かべる。

 

「あとね、イエイヌちゃんの学習意欲の高さを証明してくれるものがもう一つ、届いてるの。」

 

 ピッと一枚の封書を取り出すオイナリ校長。

 

「これはね、ウチの生徒会長が書いた昨日君たちがやった勉強会の報告書だよ。」

「え、ええ!?かばんちゃん!?いつの間にそんなの書いてたの!?」

「た、多分あの勉強会が終わったあと家に帰ってから書いたのではないでありましょうか!?」

 

 ともえの驚きに同じく驚きながらヘビクイワシが答える。確かにそんなものを書けるとしたら昨日の夕方から今日学校に来るまでの間しかない。

 

「これを読むとイエイヌちゃんがどれだけ頑張って勉強してたかよくわかるね。まあ、試験結果の参考程度にはするかもしれないよ、うん。」

 

 とかいいつつもガッツリ参考に組み込みます、と顔に書いてあるオイナリ校長。

そう、昨日の勉強会の後にかばんが用意した対抗策がこれだったのだ。

 

「あとね。やっぱり仮保護してる家族との生活ペースを合わせた方がいいだろうから、遠坂姉妹がいる中学2年生に編入が一番いいんじゃないかなーって職員会議でも言われてたし…。ああ、あとわざわざプール清掃作業にまで参加してくれてたし…」

 

 と指折数えるオイナリ校長。どうやらその全てが今回の試験のプラス材料として加味されていたらしい。

もっとありていに言ってしまえば、イエイヌは最初からたかーーーーーーい下駄を履かされた状態で試験に臨んでいたのだ。それは本人には知らされていなかっただろうが出来レースと言ってもいいくらいだ。

 

「と、いうことは…?」

「もしかして…。」

「色々とくたびれ儲けだったんじゃねーか!?」

 

 ともえ達の疑問をゴマの絶叫が肯定してしまう。

 

「まあまあ。これで明日からイエイヌちゃんも中学2年生決定文句なしなんだから無駄ではなかったよ。」

 

 と一同をなだめるオイナリ校長。

 

「それに、ほら。」

 

 オイナリ校長はイエイヌの方を指し示す。

 

「あの…!わたし、ともえさんと萌絵さんと一緒に学校にいけるんですよね!?ゴマさんとヘビクイワシさんと一緒に勉強できるんですよね…!」

 

 ようやく合格した、という結果に実感が湧いて来たらしいイエイヌ。ぷるぷると目に涙をためて嬉しさに身を震わせている。

 

「わたし、やりましたあああああああっ!」

「「うひゃあああああっ!?」」

 

 と、ともえと萌絵に飛びつき二人まとめてめっちゃすりすりしまくるイエイヌ。もうその尻尾はどっかに飛んでいきそうな勢いでぶんぶん振られていた。

 

「まあ…まるっきり無駄骨というわけでもなかったでありますな。」

「だな。」

 

 とそれを見守るヘビクイワシもゴマも嬉しそうに笑うのだった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 一夜明けて火曜日。

お弁当を用意する春香はとても上機嫌だ。これからのお弁当は三つ。鼻歌まじりで新しいお弁当入りの巾着を用意する。

 そして、娘達の部屋からは…

 

「ふぉおおおおお!?いいよイエイヌちゃんっ!めっちゃ絵になるぅー!」

「ほんとだね!ほんとに絵になるぅー!」

 

 という叫び声が聞こえてくる。制服姿のイエイヌはどうやら春香の想像通りくらいに可愛らしいのだろう。見るのがますます楽しみである。カメラの充電とメモリの残量を確認しながらみんなが出てくるのを待つ春香。

 

「萌絵ちゃんー、ともえちゃんー、イエイヌちゃーん。朝ご飯できてるわよー。」

 

 ゆっくりでもいいかとは思ってたけどやっぱり楽しみなものは楽しみなのだ。春香だってやっぱり早く見たいのだ。

 

「はーい、今行くねー。」

「ほら、いこう、イエイヌちゃんっ。」

「ほんとに変じゃないですか?ほんとにほんとに変じゃないですかっ?」

 

 とやってきたイエイヌの制服姿はよく似合っていた。きっと合格するだろうから制服を準備しておいてよかった、と春香は内心で笑みを見せる。

揃いのブレザーにリボンタイ。白いラインの入ったスカートは三人並ぶと非常に絵になる。

 

「ええ、とっても可愛いわ。イエイヌちゃん。」

 

 言いつつ皆を並べて写真を撮る春香。後でお父さんにも送ってあげよう、と心の中で誓う。

そして今日も綺麗に朝ご飯を完食した娘達を玄関まで見送る春香。

 

「じゃあ、三人とも、車に気を付けていってらっしゃい。」

「「「いってきますっ!」」」

 

 三人の声が揃って、そして三人での学校生活がこうしてスタートしたのであった。

 

 

 

けものフレンズRクロスハート第4話『イエイヌの戦い』

―おしまい―




セルリアン情報公開

第4話登場セルリアン『ワゴメリアン』

輪ゴムを取り込んでセルリアン化したもの。全長2メートルくらいのミミズのような外見をしている。
一見すると動きも遅いのだが、身体の一部をどこかに引っ掛けてゴムの弾力を活かした素早い移動や攻撃も可能だ。
また、石などを挟み込んでスリングショットのように飛ばしてきたりする。
攻撃力はあまり高くないが、鞭のようにしなる攻撃を受けるとめっちゃヒリヒリ痛い。
また、最大の特徴はそのゴムの弾性を持った防御力だ。
叩いても引っ張ってもダメージを与える事はできないだろう。また斬撃系の攻撃は効果が高いだろうが、その切れ味がゴムの弾性に負けた時はたわんだゴムによって手痛い反撃を受ける事になる。
如何にしてゴムの弾性に対抗するかが攻略の鍵になる。
力押しだけでは倒すのが難しい、見た目以上の強敵だ。
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