なんだかんだで夕暮れ時。
一度、遥にも連絡を入れたものの、やはりまだプーは戻っていないらしい。
やはりこうなっては、無事を祈るくらいしか出来る事はなさそうだ。
ともかく、妹も同然の萌絵やともえやイエイヌに心配を掛けるわけにはいかない。
「ただいまぁー!」
店内はアルバイトのパフィンとエトピリカとオオアリクイが上がった後だったものの、ともえとイエイヌ、それに萌絵が戻っていたから賑やかさは相変わらずだった。
「お帰りなさい、
そろそろ店仕舞いへ向けて準備中だった『two-Moe』では、ともえもイエイヌも萌絵も掃除に勤しんでいた。
「ごめんなさいね。ちょっと野暮用で今日はお手伝いできなかったわ。今からでも何か手伝おうかしら?」
「大丈夫よ。もう殆ど済んでるから。それよりも
「あはは。ハルおば様にはお見通しね」
春香は微笑むとすぐにオーダーを入れる。
「イエイヌちゃん。レモンティー淹れてくれる?
「はい、お任せ下さい!」
イエイヌはといえば、今は普段着姿だった。
ついさっき商店街のお手伝いから戻って来たばかりで残る作業が店仕舞いのお掃除だけだったので、制服に着替えていなかった。
それはともえも一緒で、やはり商店街を駆け回った時と同じ格好である。
萌絵はそれよりも少し早く戻っていたのでメイドさん風制服だ。
イエイヌは手早く茶葉の準備から、お湯の準備、ティーセットの準備までを滞りなく進めてあっという間に紅茶を淹れてくれた。
最後に輪切りのレモンを浮かべて出来上がりである。
「どうぞ。
「ありがとうねぇ、イエイヌちゃん」
お礼を言ってから
レモンの酸味と砂糖の甘味が疲れた身体に染み渡る。
「すごいわね。イエイヌちゃん。お茶を淹れるのが上手なのね」
これは茶葉の持つ旨味をしっかり引き出した一杯である。
「ふっふーん。でしょう?」
「自慢のイエイヌちゃんだもんねー」
それに、ともえと萌絵が何故か得意満面だ。
三人はワイワイとお掃除へ戻る。
しかし、もったいない事をしたと思う
いくら疲れていたとはいえ、せっかくの一杯だからもう少し味わって飲めばよかった。
名残惜し気にティーカップを指でなぞっていると、そこに声が掛かる。
「あら? まだ飲むなら何か淹れる? イエイヌ程上手くないけどね」
「あ、うん。お願いするわ」
今のは誰だったんだろうと。
その答えはすぐにわかった。
「はい。水出し麦茶だけど。冷たいのもいいでしょう?」
たっぷりの氷を入れた麦茶をトレイに乗せて戻って来たのは『two-Moe』のメイドさん風制服に身を包んだプーであった。
相変わらず大きな帽子と似合ってない眼鏡で変装した状態であったが。
「な、な、な……」
あまりの事態に
そんな
「
「そりゃ、疲れてるよぉ!? 探したんだからっ!?!?」
思わずツッコみを入れてしまう
なんでプーがここに、とか、今まで何をしていたのか、とか色々訊きたい事はあるけれど、椅子の背もたれに大きく寄り掛かって崩れ落ちてしまう。
「ほんと、無事でよかったわよ……」
ヘタれこみつつ言う
「どうしたの。
「あったわよぉ!? 探してたの! プーを!! っていうかプー! あなた携帯はどうしたの!?」
ロッカールームに置いていた自分の服からわざわざ携帯電話を引っ張り出してみると、充電切れでうんともすんとも言わない状態だった。
そこにラモリさんがテコテコやって来る。
「ホレ。充電ケーブルならあるからそこで充電するといいゾ」
ラモリさんが差し出すままに、プーは電源席のコンセントを借りて携帯電話に充電してみる。
電源を入れるとすぐに不在通知が山のような数になっているのが画面に出て来た。
「あらら……」
プーは困った顔でほっぺをポリポリ掻く。
実は色鳥町に来てからすぐに携帯電話は電池切れになってしまっていた。
それでも、プーは元々目的地があったわけでもなく、ブラブラと色鳥町を散策していたのでそれでも困ったりはしなかったわけだ。
「でも、こんなに連絡取ろうとしてたって何かあった? リーダーにはちゃんと断りを入れてたと思ったんだけど」
プーが別行動で色鳥町観光をしていたのは
何か緊急の用事でもあったのだろうか、と訝しむ。
「まぁ……色鳥町って私が思っているよりもセルリアンがわんさか出るみたいなのよ。だから、一人で出歩いて何かあったらと思ったらね」
「ご、ごめんなさい。まさかそんな事になってるなんて」
「いいわよ。私だって昨日実際にセルリアンと戦うまではそこまでだと思ってなかったもの」
何はともあれ、プーが無事でよかったと安堵の
安心したら、どうしてプーがこんなところでこんな事をしているのかが気になった。
そこに割り込んで来たのが萌絵である。
「あっれー? プーちゃんって
プーは色鳥町に来るのは初めてだったはずだから萌絵やともえと知り合いであるはずがない。
「えっとね、今日知り合ったの。『Bard-OFF』で。で、萌絵に色鳥町を案内してもらってたの」
言って萌絵とプーの二人して「「ねー♪」」と手のひらを合わせている辺り、随分と意気投合したのだろう。
「で? なんでプーが『two-Moe』のウェイトレスさんになってるの?」
プーが色鳥町観光をしていたのは分かる。けれどそれがどこをどうしたら『two-Moe』の店員さんになっているのか。そこから一気にわからない。
「萌絵に商店街を案内してもらったでしょう? そしたら思いのほかすごくて。色々見てたらすっかり日も暮れ掛けてもう夕ご飯の時間じゃない?」
「で、アタシが夕ご飯に誘ったの。プーちゃんをともえちゃんやイエイヌちゃんや
プーと萌絵がかわるがわる説明してくれるが、それではまだプーがウェイトレスさんをしている理由にならない。
「で、お昼に続いてタダでご飯をご馳走になるのも悪いから、お店のお手伝いをさせてもらってたってわけ」
ようやく
どうやら、
プーは小首を傾げるようにしつつ言う。
「
「ほんとにね!?」
そんな偶然があるものか、と言わんがばかりに
ともかく、プーが無事でよかった。
あとは色鳥エンプレスホテルまで連れて行けば取り敢えずは安全だろう。
なんせそこには遥もいれば、色鳥町から助っ人としてセルリアンフレンズ三人組まで来てくれている。
なので、
「プー。送るからホテルへ戻りましょう」
ところが、プーは首を横に振る。
「ごめんなさい。それは出来ないわ」
なんで、と意外そうな顔をする
けれど、幼馴染であるだけに知っている。プーがこうなった時は頑固である事を。
きっとそこにはプーなりの真剣な理由があるはずだ。
その理由を語るべくプーの口が開く。
「私は色鳥町の為に歌わないといけない。けど、私はここに誰が住んでどんな暮らしをしているのかわからないの。そんな状態じゃあ気持ちのこもった歌は歌えないわ」
プーは根っからのアイドル気質で、そこに掛ける情熱がどれ程のものか
プーが
けれど、今はのんびり観光をさせてあげられる状況ではないのだ。
何と言って説得したものか、
「ええっと……ねえ。
萌絵としてはすっかり話が見えていなかった。
けれど、
「あー。ええとね。違うのよ、萌絵ちゃん。プーと喧嘩してるわけじゃなくて……」
事、ここに至っては色々と白状するしかない。
「プー。まず、このハルおば様が伝説の守護者の一人ね」
「もう。
「マジよ」
最初何かの冗談だと思っていたプーも、
重々しい
当の春香本人は「あらやだ、伝説だなんて」と涼しい顔して笑っていた。
信じられない気持ちはよくわかる
「で……。こっちの子達が色鳥町の守護者達」
「も、もしかして……?」
「そう。クロスハート達よ」
ともえもイエイヌも萌絵も三人して顔を見合わせる。
プーに正体を明かしてしまってもいいのか、と。
けれど、
続く
「プー。帽子とメガネを外していいわよ」
プーは頷くと、変装用にずっと被っていた帽子を脱いで大きな伊達メガネを外す。
今度はともえと萌絵とそして春香が驚く番であった。
三人の表情が驚きに固まるのを見てから
「紹介するわね。私の幼馴染で同じ部活のプー。本名はプリンセス。ロイヤルペンギンのフレンズで
直後、ともえと萌絵と春香が驚きで叫ぶ声が店内に響く事になった。
もっともイエイヌだけは、「春香お母さんがこんなに驚くのって珍しい気がします」と呑気なものだったが。
の の の の の の の の の の の の の の
「ふう。お風呂ありがとう。いいお湯だったわ。それにパジャマまで貸してもらっちゃって」
そう言うのは変装を解いたプーことプリンセスであった。
ここは遠坂家、萌絵の部屋だ。萌絵とともえの二人は未だ「「あわわわわ」」となっていた。
なんせ今をときめく
「もう。二人ともいい加減慣れなさいな」
気持ちはわからないでもないけれど、
結局あの後どうなったのかと言うと、
色鳥町の地脈を清浄化する為にプリンセス達『歌巫女』がライブを行う事。
先日の『ヨルリアン』事件で大変だったともえ達には、
「もう。ハルおば様の太鼓判があるから私だってプーがこっちに泊まる事に賛成したんだから。イエイヌちゃんを見習ってしっかりしてよ」
単に
こんな状態になっているのには理由がある。
安全の為ホテルへプリンセスを戻したい
なんせこの場には、クロスハート本人であるともえも、クロスナイトであるイエイヌもいる。その上現役を退いたとはいえ春香もいれば、萌絵もそして
考えようによっては色鳥町で最も安全な場所である。
そんなわけで、ともえと萌絵は自分の家にアイドルがいるという奇妙な体験をする事になったわけだ。
イエイヌだけは状況を理解していないせいで、プーとも相変わらず普通に接していたが。
「プーさん。パジャマ似合ってますね。ちなみにそのパジャマは萌絵お姉ちゃんの匂いがするので安心できますよ」
「本当? んー? よくわからないわね」
自分の袖口をクンクンするプーにとうとう萌絵が我に返った。
「も、もう!? 嗅がなくていいよぉ!?」
ようやく「「あわわわ」」状態から脱した萌絵は続けて呟く。
「プーちゃんが
半日以上も一緒にいた萌絵だったが、まさか自分がファンであるアイドルと一緒だったとは夢にも思わなかった。
萌絵は未だ現実に付いていけていない。
さすがにこうなるとプーとしてもいたたまれなくなってきた。
「なんかゴメンね。騙すつもりはなかったんだけど、素顔で出歩くと観光どころじゃなくなりそうだったから……」
「プーちゃんが謝る事ないよっ!?」
萌絵の言うとおり、プーの事情は分かっていた。
なので、ここはその辺りの事は置いておいて、明日どうするかを決めた方がいい。そう考えた
「ねえ。プーは明日どうするつもり? 明日の夕方がライブ本番よ」
急遽開催となった
その開催日は明日の夕方18時からとなっていた。
今回の
とはいえ、プーも夕方まで時間があるかというとそうでもない。
ライブの準備やリハーサルがあるので明日の昼には現場入りしなくてはならない。
「そうね……。明日は10時くらいまで街を見て周りたいわ。そこからは色鳥武道館に移動してリハーサル前には現場入りしなきゃ」
大雑把な希望を伝えるプーだったが、じゃあ具体的に明日はどうするかという目途は立っていなかった。
そこで頼るように萌絵の方を見る。
「んー。じゃあ、こういうのはどうかな? 明日朝ご飯食べたら、青龍神社に行くっていうのは」
「いいかもね! 青龍神社の夏祭りは終わったけど、あそこって結構有名な神社だもん。あと、見晴らしもいいし!」
萌絵が考えてくれたプランにともえが賛成してくれる。
青龍神社は県下でも有数の神社で参拝客だって多い。観光するならいい場所だ。
「いいわね。じゃあ明日はそこに行ってみるわ。ありがとうね、萌絵」
「どういたしまして」
こうして、丸く納まりかけた。
だがしかし……
「ちょっとまって。まさかプー。明日もあなた一人で出歩くつもりじゃないでしょうね?」
「いいわ。私が護衛についてあげるから」
半分呆れつつ言う
本来なら明日は朝から
それに
それだったら、とともえが挙手した。
「ねえねえ、アタシも一緒に行こうか?」
イエイヌも同意するようにうんうん頷いている。
護衛としてこの二人程頼もしい人物もいないだろう。
だというのに、二人は萌絵に後ろから抱き締められるようにして止められた。
「あんまり大人数だと騒がしくならない?」
萌絵が心配したのはそこだった。
プーだって他の
それなのに一人で行動していたのは大人数だと自由に動き回れなくなるのを危惧しての事だったのではないか。
護衛として
「どうかしら? プー」
やはり最終的な決定は彼女がすべきだろう。
「萌絵が言う事ももっともね。もう少しだけ自由にこの街を見て周りたいもの」
プーはしばらく考え込んでからそう答えた。
それが希望というなら否はない。
ともえもイエイヌも頷いた。
「けどさ。やっぱりアタシも何か手伝いたいなぁ」
ともえの気持ちには萌絵もイエイヌ同意だった。
いくら
さて、何が出来るかと考え込むともえとイエイヌと萌絵の三人。
「プーちゃんは
ともえの言葉に萌絵もイエイヌも頷いた。
それだったら護衛対象が多い色鳥武道館を手伝いに行った方がいい。
「もしかしたら
「ね!」
ともえと萌絵は二人して同じポーズで顔を付き合わせて頷き合う。
そんな二人に
「なんだったら、サインくれるように頼んでおいてあげるわよ」
「「いいの!?」」
再び同じ動きで
「じゃあじゃあ、アタシ、イワビーのサイン欲しいっ!」
「それくらいならお安い御用よ。イワビーさんは私に楽器の弾き方教えてくれた人だから仲いいし」
ともえのリクエストに
けれど、
「ちなみに、ここにもう一人
「「いいの!?」」
その指摘に今度はプーに二人して詰め寄るともえと萌絵。
やたらキラキラした目を向けてくる二人に若干気圧されながらもプーは応えた。
「え、ええ。そのくらいでいいなら喜んで」
の の の の の の の の の の の の の の
翌朝。
青龍神社へと続く長い階段を二人で昇るプーと
今日は予定通り、青龍神社を観光したらそのまま現場入り。その後リハーサルから本番である。
既にともえと萌絵とイエイヌは色鳥武道館へ向かっているし、今日の段取りは遥やマーゲイ達に連絡済みだ。
「それにしても、本番前だっていうのに随分余裕が出来たのね。昔は朝から緊張でガチガチだったじゃない」
「そりゃあ一年も
「ほほーぅ? 言うじゃない。でも、ちょっと今日の朝ご飯食べ過ぎじゃなかった? 体重管理大丈夫?」
「あ、あれは今日の朝ご飯が美味しかったのが悪いわ」
今日の朝ご飯が美味しかったのは事実だ。
なんせ、春香と萌絵が二人で張り切って用意してくれたのだ。
焼き立てパンとベーコンエッグにサラダというシンプルなメニューではあった。
けれど、程よい半熟具合の焼き加減は今思い出しても幸せになれる。
「そ、それに、この階段はいい運動になりそうだからセーフよ。セーフ」
そう言うプーもついさっき、実際ここの階段で走り込みをしているらしい四人組とすれ違ったばかりだ。
確かホワイトタイガーのフレンズにその妹っぽいフレンズ。それと龍系のフレンズに水棲動物の特徴を備えたフレンズだった。
「ああ、あの四人ね。あれって四神のビャッコとセイリュウの娘さん達とそのお付きみたいよ」
萌絵が教えてくれた通り、その四人はセイリュウの娘であるアオイとビャッコの娘であるシロの二人にホワイトタイガーとコイちゃんであった。
「色鳥町の現状が大変そうだから、守護者の修行を前倒しして始めたみたいよ」
萌絵はそれを昨日の夜に遥から聞いていた。
一番小さなシロが一番張り切ってスタート位置である麓へ駆け下りていたのを思い出す。
おそらくもう少ししたら駆け上がってくる彼女達に追い抜かされる事だろう。
噂をしていたら、ちょうど彼女達が駆け上がって来たところだ。
邪魔にならないように
一番最初に駆け上がって来たホワイトタイガーと、その後ろにペースを守って走るアオイの二人。
二人は道を譲ってくれた
と、そこから大分遅れてシロとコイちゃんの二人もヘロヘロになりながら続いていた。
「ほ、ホワイトタイガーもアオイも速いのだぁー……」
「ほ、ほんとだねぇ~。アオイちゃんもいつの間にそんな速くなったの~……」
先を行っていたホワイトタイガーとアオイの二人は少しだけ足を止めて二人を待つ。
「シロ様、頑張って下さい。千本ダッシュの一本目ですよ。ここは根性で乗り切りましょう!」
「千本はさすがに無茶ですが三本くらいはこなしたいですね」
追いついたシロとコイちゃんの背中をポンと叩いてからホワイトタイガーとアオイは再び階段を駆け上がる。
「「お、鬼ぃ~」」
シロとコイちゃんは二人して泣き言を零しつつも先を行く二人を追う。
それを見たプーの顔には笑顔が零れる。
「ふふ。色鳥町の守護者達も頑張ってるのね」
「そうね。私も妹達が頑張ってるのを見ると姉として負けてられないって気持ちになるわ」
むん、と拳を握って見せる
「言っておくけど
「うそっ!?」
「ほんとよ。むしろ萌絵の方が姉っぽいまであるわ」
「そそそ、そんな事は……!?」
ないとは言い切れない
実際には一人っ子の
その事実に
「じ、実は妹達に妹にされていたというの……!?」
「なくはないわね。
そんな風に言われて今度は頬を膨らませる
「も、もう! そんな事言うんだったら新学期からお弁当作って来てあげないんだからっ!」
「あはは、ごめんごめん。冗談だったら」
「はいはい、ありがとうねー」
プーに頭を撫でられるままにされる
それを言うとまた怒り出すだろうから言わないが。
代わりにプーはこんな事を言い出した。
「本当はね。今日は朝から現場に向かってもよかったの」
プーはアイドルとして、また『歌巫女』として色鳥町の為に歌う。
そのモチベーションを探す為に単身行動していたはずだ。
それはもういいのだろうか、と
「うん。昨日散々萌絵に見せてもらったもの。ここで暮らす人達の事を。その人達を守る為なら私は歌える」
それに、と付け加えるプー。
「こっちに友達も出来たんだもの。それだけでも歌う理由なんて十分だわ」
どうやらアイドルである
だったらどうして今日はわざわざ寄り道なんてしたのだろう。
「まあ、最近
途端にプーは言葉を濁した。
プーと
けれど最近はプーが
「だから、たまには二人で過ごしてもいいんじゃないかなーってね」
本番前にこんな余裕まで見せるようになるとは、すっかりプーも大物である。
それにしても、随分と可愛い事を言ってくれるものだと
「あら。じゃあ今はプーを独り占めね。責任重大だわ。ちゃんとステージまで送らないと全部私のせいになっちゃう」
そう冗談めかして笑う
「そうよ。よろしく頼むわね。私の騎士さま?」
「頼まれたわ。私の
言って二人してクスクス笑う。
そうこうしているうちにどうやら頂上まで辿り着いたようだ。
掃き清められた参道に、荘厳な本殿。そして脇側には社務所がある。
一通り見渡した後に
「どうする? せっかくだしセイリュウ様に挨拶でもしていく?」
「そうね。もしかしたら遥社長の昔話なんかも聞けるかもしれないものね」
さて、そうしたらセイリュウを探さなくては。
本殿の方から何か気配がするからそちらにセイリュウがいるのだろうか。
本殿の上がり口脇では一本目の階段ダッシュを終えたアオイ達四人が休憩しているのが見えた。
彼女達にセイリュウの所在を訊ねるのもよいかもしれない。
そう思っていたがどうやらその必要はないようだ。
本殿の扉が開いて神主服のセイリュウが姿を現したからだ。
「結界に反応があるから何かと思えば随分なお客様のようで」
だが現れたセイリュウは随分と剣呑な雰囲気を纏っていた。
キッと鋭い視線を
「あああ、あれ? なんかセイリュウ様怒ってない?」
「私達何か悪い事しちゃったかしら!?」
「あ、もしかしたら参道の真ん中って歩いちゃいけないっていうじゃない? そのせいかも」
だが、セイリュウはそんな二人とすれ違うようにさらに入り口の方へ歩みを進めると、その背に
セイリュウが視ていたのは
「ここは神域です。貴女のような者が訪れる場所ではありませんよ」
セイリュウが放った言葉に応じるのは
「お言葉ですね。こちらの世界のセイリュウ。我とてセイリュウですよ。我を祀った神社であるなら歓迎してくれてもいいでしょうに」
「もっとも」と前置きしてから
「我はセルセイリュウ。ここで祀られるには相応しくはありませんが」
その言葉と共に、セルセイリュウは目深に被っていたフード付きマントを脱ぎ捨てる。
―バサバサバサッ!
と同時、その下に隠されていた大量のお札が舞った。
それらはスッと伸ばしたセルセイリュウの右腕に纏わりつくように渦を巻く。
「いけない……!」
セイリュウは背中が総毛立つ程の危機感を覚える。
もしもセルセイリュウが彼女と同じかそれ以上の技を使えるのだとしたら。
セイリュウもその危機を迎え討つべく袖口から大量のお札を投げ放つ。
それらはセイリュウが伸ばした右腕に纏わりつくように渦を巻く。
「ほう」
どうやら同じ技でもって迎え撃つつもりらしいと悟ったセルセイリュウはニヤリと笑う。
ならば力比べと行こう。
「
「
二人の腕に纏わりつくように渦を巻いていたお札は、その腕先で砲塔の形を為す。
「「
セイリュウとセルセイリュウの声が重なると同時、それぞれの腕先に蒼と黒の光が生まれた。
「「
二人の叫びと同時にそれぞれが放った蒼と黒の閃光が激突した。
―④へ続く。