けものフレンズRクロスハート   作:土玉満

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第28話『木の実探偵の事件簿』②

 

 

 一方その頃。

 

「「ありがとうございました」」

 

 キンシコウとセルシコウの二人が同時に礼をすると、精魂尽き果ててこれまた同時に床へへたりこんだ。

 色鳥駅前方面にあるキンシコウのうちが経営するスポーツジムでは多目的ホールを貸し切っての激闘が終わったところだった。

 

「腕を上げましたね、キンシコウ」

「そう言うセルシコウさんこそ」

 

 同種のフレンズだけあって二人はそっくりだ。

 強く在りたい、そして強者と戦いたいという嗜好まで似ている。

 荒い息を整えつつ二人して感想戦へ移る。

 

「今日のキンシコウは前に戦った時よりも気迫というべきか……闘気が充実していたというべきか……。精神的に一回り成長したように思います」

 

 セルシコウが今日対戦した感想はこうだった。

 以前は相手に打ち込ませてからいなして応じる後の先を取る戦い方だったのだが、今はどうだ。

 必要とあれば積極的に先手を狙って来る。

 強敵に勝利する。その事に貪欲になったと思えた。

 

「ありがとうございます。そうですね。そうかもしれません」

 

 キンシコウはセルシコウにもタオルを渡しつつ胸中を語る。

 夏休み前の空手大会で起こったトラブルはキンシコウの世界を変えた。

 空手大会に現れた謎の化け物との対峙、そしてセルシコウとの出会い。

 元来、争い事は嫌いだと思っていたけれど、あの日にキンシコウは知ってしまったのだ。強敵と腕を競い合う事の楽しさを。

 今日、こうしてセルシコウと再戦してみて、やはり心が躍り昂っている。

 あの日抱いた夢は間違いではなかった、とキンシコウは再認識できた。

 だから、キンシコウは改めてそれを口にする。

 

「私は……もっともっと強い敵と戦ってみたいです。この拳でどこまで行けるのか。その先に何が見えるのか……それを知りたいと思っています」

 

 キンシコウが突き出した拳を、セルシコウは両手でぎゅっと握っていた。

 

「わかります!!」

 

 強敵と相対した時にこそ感じる血沸き肉躍るあの感覚。

 そして強者との戦いでしか分からない何かがあると思っている。

 セルシコウはキンシコウが自分と同じ道を歩み始めた事をとても嬉しく思っていた。

 それでこそ我が強敵(とも)だ、と。

 

「私は本気でプロの道へ進もうと思っているんです」

「なれますよ。キンシコウなら」

 

 他ならぬセルシコウに夢を後押しされるとキンシコウとしても心強い。

 だが……。

 

「ただ、両親にはまだ快い返事は貰えていないんです」

「な、なんでですか!?」

 

 信じられない、と目を見開くセルシコウ。

 キンシコウならば間違いなく強者になれる。そして、それにはより強い者と戦える環境こそが望ましいはずではないのか。

 反対する理由がセルシコウには全く理解できないでいた。

 

「私はあまり争い事が好きではなかったので、プロの世界で勝ち残れるのか不安なのだそうです」

「その心配は無くないですか?」

 

 セルシコウは先程キンシコウと手合わせしたからこそわかる。

 今のキンシコウならば強者ひしめくプロの世界へ足を踏み入れたとしても決して気後れなどするまい、と。

 だが、キンシコウは首を横に振る。

 

「両親の心配も理解できないではありません。厳しいプロの世界で生き残れるのは本当に強いひと握りの猛者だけです。そして春までの私ではそのひと握りに入る事は叶わなかったでしょう」

 

 セルシコウにはキンシコウが育ってきた境遇というものはよくわからない。

 だからこそ両親とそして他ならぬキンシコウ自身がそう言うのならそうなのだろう。

 

「だからこそ、私は今度の空手大会で結果を出して両親を説得しようかと」

 

 つまりキンシコウは誰の目にも分かりやすい結果を出してプロの世界でも通用すると見せつけるつもりなのだ。

 

「ええ。貴女なら大丈夫ですよ」

 

 と頷くセルシコウだったが、ふと気が付いた。

 

「ちなみに、その空手大会とは?」

「あれ? 知らなかったですか?」

 

 夏休み前に中学生が参加できる空手大会は終わってしまった。

 来年まで大きな大会はないかと思っていたが、キンシコウの言ではそうでもないらしい。

 不思議に思うセルシコウにキンシコウは一枚のチラシを見せてくれた。

 

「今年の空手大会は事件があったから中止になっちゃったじゃないですか」

「そうですね……」

 

 二人が出場した空手大会はカラテリアンの乱入という事件によって中止に追い込まれてしまった。

 なので、この地区からは代表が選出されないという事態になったわけだ。

 

「その埋め合わせというわけでもないのでしょうが、市が主催する空手大会が開催される事になったんですよ」

 

 キンシコウが見せるチラシには『市民空手大会』という文字が躍っている。

 セルシコウがチラシの内容を見ると開催場所はいつかと同じ色鳥武道館である。

 それに、(かた)と組手の部に別れているのも以前と一緒だ。だが小学生、中学生、一般、の部にさらに細分化されており広く参加者を募っている。

 

「私は一般、組手の部へエントリーしました」

 

 つまり、セルシコウは敢えて大人達と戦える一般の部へ挑戦するつもりらしい。

 募集要項でも一般の部は年齢不問となっているから、中学生が一般の部にエントリーしちゃいけないなんてルールはなかった。

 

「貴女もエントリーしませんか? セルシコウさん」

「ええ。それはもちろん構いませんが……。いいんですか? 私が勝っちゃったら結果を残せませんよ」

 

 セルシコウの言にキンシコウはニヤリと不敵な笑みを返す。

 

「コテンパンにしてあげますから心して掛かって来て下さい」

 

 なるほど。

 どうやらキンシコウは本気らしい。

 セルシコウという強敵を倒してこそ道が開けると考えているのだ。

 

「そういう事でしたら返り討ちにしてあげましょう」

「言っておきますが、手抜きなんかしたら絶交ですからね」

「まさか」

 

 二人して視線で火花を散らした後にコツンと拳を合わせる。

 そうして互いに宣戦布告が終わったところでセルシコウはふと気が付いた。参加が決まったのはいいが、果たして大会はいつなのか。

 

「あ。そうですよね。大会は今度の日曜日です」

 

 キンシコウが慌ててチラシの開催日を見せてくれる。

 今日は木曜日だから3日後という事だ。

 広く参加者を募集している関係で当日エントリーだって間に合うらしい。

 参加は確定として……

 

「ふぅむ……」

 

 ……とセルシコウは考える。

 ライバルでもあるキンシコウと白黒ハッキリさせるよいチャンスでもあるがもう一つまたとない機会がある。

 

「(エゾオオカミとの手合わせ……そろそろいい機会では……?)」

 

 夏休みに二人で稽古を始めてからエゾオオカミは腕を上げた。

 元々はエゾオオカミに稽古をつけたのだって、自らの手で鍛え上げた強者と戦う為だ。

 今回の空手大会はまたとない機会になるのではないだろうか。

 

「(いやいや……)」

 

 とセルシコウは考え直す。

 正直に言えばエゾオオカミの技はセルシコウに遠く及ばない。

 まだまだ成長するだろうから、ここで手合わせをして自信を打ち砕くのは得策とも思えない。

 

「もしかして、エゾオオカミさんの事ですか?」

 

 キンシコウに言い当てられてセルシコウは「なっ!?」と顔を真っ赤にした。

 

「私だってそのくらいわかりますよ」

 

 と、ドヤ顔のキンシコウである。

 エゾオオカミとセルシコウの二人が公園で稽古しているのは噂で知っている。

 

「まだ真剣勝負をするには時期尚早。かと言ってこの機会を逃したくもない、といった辺りでしょう?」

 

 キンシコウに言われた事がそのまま図星だったのでセルシコウは真っ赤なままコクリと頷くしか出来なかった。

 

「ではこういうのはどうです? エゾオオカミさんには(かた)の部に出てもらうというのは」

 

 セルシコウは出された提案を熟考してみる。

 なるほど、よい考えだ。

 いつかの大会ではエゾオオカミは如何にも素人だった。

 だが、今はどうだ。

 セルシコウの目から見てももう一端の拳士だ。

 それにセルシコウとの稽古ではおそらくエゾオオカミ自身が成長の実感を得られていないだろう。

 だから大会での結果はエゾオオカミに成長の実感をくれるだろうし自信をつける事にも繋がる。

 そうなれば、さらなる伸びしろが期待できるはずだ。

 

「なるほど……いいかもしれませんね」

 

 そう思うセルシコウだったが、最終的な決定はエゾオオカミ自身にしてもらおうと考える。

 もしかしたら何か用事があって大会には参加出来ないかもしれないし。

 だがセルシコウは心のどこかで、エゾオオカミがセルシコウと一緒の部に参加してくれる事を望んでもいた。

 セルシコウとエゾオオカミは今日も夕飯後に稽古の予定だ。その時に持ちかけてもいいだろう。

 そこまで考えたセルシコウの顔をキンシコウがどういうわけかニコニコと覗き込んでいる。

 

「何か?」

「いやぁ……やっぱりセルシコウさんは自分より強い人じゃないと好きになれませんよねー」

 

 うんうん、頷きながらキンシコウは続ける。

 

「その為にエゾオオカミさんへ稽古をつける……。私、いいと思います!!」

 

 キンシコウはやたらいい笑顔で親指を立てて見せた。

 

「な、な、な……」

 

 セルシコウはどう反応していいのか分からずにまたもや赤面するしかない。

 

「応援、してますよ」

 

 言いつつキンシコウは力強くセルシコウの肩に手を置く。

 そんなセルシコウは真っ赤になった顔を両手で覆って隠すしか出来なかったのだった。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

「カラカルー。和香さーん。接続完了したみたいだよー」

 

 菜々が後方に控えた二人に手を振る。

 ここは和香教授が昔にルリと暮らしていた山奥の家だ。

 カラカルが以前に手入れしてくれた広い庭のど真ん中にグネグネとした空間の歪みが生まれていた。

 今日は菜々とカラカルが帰る前準備として、異世界へ渡る為の接続を確認しに来たわけだ。

 

「ほいほい。それじゃあ入れ忘れはないわねー?」

 

 カラカルがアタッシュケースを閉じて空間の歪みへ近づくと、それをポイと中へ投げ入れた。

 中身はこちらの世界で集めた物資が色々だ。

 大半が園芸屋さんやホームセンターなどで購入してきた植物の種子になる。

 こちらの世界ではありふれた物ではあるが、菜々達の世界から見たら品種改良された逸品だ。

 あと、和香教授が研究していた『メモリークリスタル』の解凍方法について記録したUSBメモリも入っている。

 

「ふむ。問題ないみたいだね」

 

 和香教授は設置された計測機器が接続されたノートパソコンを見ながら言う。

 どうやら問題なく菜々達の世界へ物資を送れたらしい。

 

「ほんじゃあ、本命も行っておくわよ」

 

 続けて、カラカルがもう一つアタッシュケースを空間の歪みへ投げ入れた。

 中身はこちらの世界の奈々から採取した血液を保存したアンプルが入っている。

 カラカル達がやって来た理由もこれが大きい。

 異世界にいる同位体同士から生まれる反発力を利用したエネルギー装置。その為にわざわざ世界を渡ってやって来たのだから。

 

「これでとりあえず任務完了ってわけね」

 

 カラカルもホッと一息を吐く。

 空間はまだ接続されたままだ。少しばかりの胸騒ぎを覚えた和香教授が訊ねる。

 

「カラカル君と菜々君は今日帰るわけじゃないんだろう?」

「うん。起動実験とかが終わるまではコッチにいる予定。万が一の時にはまた奈々に採血をお願いしないといけないから」

 

 答える菜々に和香教授もホッと一息だ。

 カラカルと菜々がいてくれるおかげでルリとアムールトラも喜んでいる。いきなり帰るとなったら二人とも悲しんでしまう。

 

「そうか……。じゃあキミ達さえよければ引き続きよろしく頼むよ」

「当たり前でしょ。ルリ達に夕飯までには帰るって約束したもの」

 

 安心したように言う和香教授にカラカルが指を突き付けるようにして返す。

 別れの時はそこまで先の事ではないだろうが今日ではない。

 だから残された日を有意義に過ごそう。

 となればこんなところで無駄に時間を過ごす事もあるまいと、和香教授は確認する事にした。

 

「さて、今日の予定は以上かい?」

「あ、ちょっと待って。アッチから返信があるはずだから」

 

 菜々はまだ空間の歪みの前にいた。

 アチラからもこちらがしたのと同じようにアタッシュケースが届くのかもしれない。

 少しの間待っていると変化があった。

 

―ザッ

 

 歪みの向こうに人影が見えたと思ったら一人のフレンズが歩み出て来た。

 歩み出て来たのは綺麗な青みがかった毛並みに、青色のブレザーとチェック柄のミニスカートを着たフレンズである。

 

「あら。マルタタイガーじゃない」

 

 その姿を見た菜々が言った。

 マルタタイガーと呼ばれたフレンズはツカツカと菜々に歩み寄ると菜々の顎を下から掬い上げる。

 いわゆる顎クイというやつだ。

 

「菜々……。違うだろう? キミと僕の仲じゃないか。いつものように親愛を込めてルターと呼んでくれていいんだよ」

 

 言いつつマルタタイガーことルターは菜々の顎を持つのと逆の手で青いバラを差し出す。

 

「はいはい。ルター。なんであなたがコッチに来てるの?」

 

 傍目から見るとルターは超イケメンなフレンズと言っていい。

 そんなフレンズからの顎クイなんて少女漫画のワンシーンのようではあるが、菜々は慣れっこなのか若干呆れた反応だった。

 

「ん? それはね!」

 

 パッと菜々を放すルター。くるくるとターンしながら距離を取るとまるで俳優か役者のように、青バラを持った手を胸にあてて芝居がかった一礼をしてみせる。

 

「この僕こそがメッセンジャーというわけさ」

 

 どうやらルターがアチラの世界から追加でやって来たという事らしい。

 それを理解したカラカルがルターに詰め寄る。

 

「ちょっとちょっと! アンタまでこっち来る必要あったの!?」

「ふっ……。カラカル……。キミという子猫に会えない間、僕の胸は張り裂けそうだったよ! キミに会う為ならば僕は世界だって越えてみせるのさ」

「答えになってないわよっ!?」

 

 ぷんすか怒るカラカルの後ろから和香教授が歩み出て来た。

 

「やあ、ルター。大きくなったね。それに綺麗になった。すっかりステキなレディじゃないか」

 

 ルターに負けず劣らず、口説いているようにしか思えない挨拶をする和香教授。

 そんな和香教授にルターもまたツカツカと歩み寄って行く。

 果たして口説き合戦でも始まるのかと思いきや……。 

 

「和香さぁああああん! 久しぶりぃいいいいい!!」

 

 ルターはなんと和香教授に抱き着いていた。

 

「おやおや。やっぱりルターはまだ可愛い子猫のままだったかな? レディなキミも子猫(キティ)なキミもどっちもステキだけどね」

 

 そんなルターを受け止め、和香教授はその頭を撫でてやった。

 本物の猫のようにゴロゴロと喉を鳴らすルター。

 

「あー。ルターは和香さんに育てられたもんね。和香さんにだけは相変わらず甘えん坊さんだ」

 

 そんな様子に菜々は苦笑する。

 和香教授がアチラの世界に渡った時にまだ幼いルターと出会ってその世話をしてきた。

 そのせいでどこか性格が和香教授に似てしまってもいる。

 

「で? ルター。メッセンジャーなんでしょ? アッチからの返信を教えてよ」

 

 気を取り直してカラカルが訊ねる。

 が、ルターは再びクルクルと回転しつつ接近し社交ダンサーのようにカラカルの腰を抱く。

 

「ふっ……それは追い追いという事でいいじゃないか。今はキミに再会できた喜びに溺れていたいのさ」 

 

 続けてカラカルの眼前に青バラを差し出す……が。

 

「おっと、カラカルにはこっちの方がいいかもしれないね」

 

 言いつつルターは青バラをしまい、代わりにカーネーションを一本差し出す。

 カーネーションと言えば母の日に送る定番だ。

 言いたい事を察したカラカルは眼前のルターにジト目を送った。

 

「言っておくけど……ママじゃないわよ」

「まぁまぁ。来ちゃった以上しょうがないよ」

 

 呆れるカラカルを菜々がフォローする。

 ルターの生活力は壊滅的だ。そんなところまで和香教授に似てしまった。

 なので、こちらの世界に来てしまった以上カラカルの世話になるつもり満々であるらしい。

 つまりこのカーネーションは「ありがとう」の先渡しという事なのだろう。

 仕方ないと苦笑した和香教授もフォローに回る事にした。

 

「こんなところで立ち話もなんだ。今日のところはうちに泊まるといいよ」

「さっすが和香さんっ!」

 

 ルターは和香教授に再び抱き着いてすりすりしていた。

 和香教授にとってルターは妹分だ。なので来てしまった以上は便宜ぐらい図ってやりたい。

 

「それに、もう接続が切れてしまったようだ」

 

 和香教授達の背後で空間の歪みは元に戻ってしまったようだ。

 いずれにせよ、これでルターがすぐに帰還する事は叶わない。

 だが、当面は問題ない。

 和香教授にとってルターの生活スペースを確保する事だって容易い事だ。

 それにルターの世話だってカラカルもいるし菜々だっている。

 帰還するまでの間をこちらで過ごす事に何の問題もない。

 だが……。

 

「ふぅむ……」

 

 和香教授には気になっている事があった。

 

「ん? どうしたの、和香さん」

「いや、何でもないよ」

 

 訊ねる菜々に和香教授は曖昧な笑みを浮かべて考えを口にする事はなかった。

 和香教授が気になっているのはルターの事である。

 

「(ルターはどうしてこちらに来たんだ……?)」

 

 わざわざメッセンジャーとしてフレンズを一人送り込む意図が分からない。

 長く複雑なメッセージだったとしても手紙なり和香教授がやったように何かの記録媒体を送ってもよかったはずだ。

 それをわざわざメッセンジャーを送り込むのは非効率に過ぎる。

 そして……。

 

「(どうしてメッセージを伝えようとしない?)」

 

 和香教授が一番気になっているのはそこだった。

 カラカルが訊ねた時にルターははぐらかしたように思える。

 小さな違和感が和香教授の中に生まれていた。

 

「(まぁいいか)」

 

 結局、和香教授はその違和感を呑み込む事にした。

 ルターが訪ねて来た事自体は嬉しいし色んな話も聞きたい。

 とりあえず……。

 

「帰りに寄り道して買い出ししていこう。せっかくだから今日の夕飯は豪華にお願いしてもいいかな?」

 

 せっかくだから今日はルターの歓迎会も兼ねて夕飯は豪勢にしたいと思う和香教授だ。

 

「おっけー。じゃあ今日はすき焼きとかどう?」

「うん、いいんじゃない? ルリ達にも連絡しておくね」

 

 早速メニューを考えるカラカルに菜々が留守番と宿題に勤しんでいるであろうルリ達に電話していた。

 

「久しぶりにカラカルの手料理が食べられるのかな? 楽しみだ」

 

 ルターも楽しみにしてくれているらしく、昔と変わらない笑みを見せている。

 そんな姿を見て和香教授は自身の胸に生まれた小さな違和感を一旦忘れる事にするのだった。

 

 

 

 

―③へ続く。

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