昭和××年
暑く照り付ける太陽がじゃり道を照らしていた夕方。
ボクは森の奥の社を見つけた。
辺りは人気はなく、ボクは吸い込まれるように社に入った。
「暗いな。うん?勾玉が見える。なんだろう」
手に触れた瞬間、ボクは光に照らされた。
「うわ…なんだろう。逃げよう!」
すぐ来た道を引き返して家に一目散に帰った。
それから三日後、あの出来事を完全に忘れていた時、道端に蝶が落ちていた。もう死んでいるらしく、蝶はピクリとも動かない。
「可哀そうに…可哀そうに…」
思わずつぶやいた時、蝶が再び動いた。見間違いではない、確かに生き返ったのだ。
「うわあ…」
ボクは救い主のつもりで片っ端から虫を蘇生した。素晴らしかった。だって、「平和」の力なんだから。
そんなある日、幼馴染、立夏の飼っている愛犬太郎が病死したという話を同級生から聞いた。
ボクはすぐ立夏の家に向かった。彼女は庭で一人泣いていた。
大丈夫、ボクに任せて。心でそう呟いて。
「立夏!!」
話しかけると、彼女が涙に濡れた顔を上げた。
「大丈夫、ボクに任せて!!」
「え…何?」
彼女は何か得体のしれないものを見るようにボクを見た。
「犬なんて大きな生き物は初めてだけど、やってみる!これは『平和』の力なんだから!!」
疑いの目を向ける立夏にボクは説明した。
「ね、すごいでしょ」
笑うボクに立夏の冷たい声にかけられる。
「…やめて」
「どうして?太郎がまた元気になるんだよ?平和じゃないか」
ボクには立夏が抵抗するのがわからない。凄い力なのに。
「太郎はね、懸命に生きたのよ!!そんなこと太郎も望んでない!!命の冒涜って言葉知ってる?!」
「どうしてだ!!平和になるのに!!」
生き返ったら苦しむ人はこの世からいなくなる。平和じゃないか。死んでもすぐ生き返るなら、死は怖くない。ボクは素晴らしい力を得たんだ。
「命は遊びじゃないの!!死は、その人が懸命に生きた証なの!!生き返らすのは自然の摂理に反するの!!人間がしていいことじゃない!!」
彼女は泣きながら叫んだ。
「何…言ってるんだ…」
ボクは騒然となった。立夏が喜ぶと思ったから。ボクは言った。
「そうかい、なら行くよ。あとで泣いても知らないからね!!」
そう言って立夏の家を出た。後ろで立夏の嗚咽が聞きながら。
帰り路、立夏の言い分に腹を立てていた。
「全く、頑固なんだから。…うん?」
手前にあの社が見える。まだ昼だと言うのに妙に暗い。
社か血に染まり、沢山の昆虫が見えてボクに襲いかかってきた。
「うわああああ!!」
全力で走ろうとしたが、足が動かない。足の方を見ると骨の手がボクを掴んでいた。
ボクは逃げようとして…その先の向日葵の花を見た。立夏が懸命に咲いてる、輝いた花だと言って笑っていた花が。
しかし向日葵はボクの方を見ず、意識がそこで途絶えた。
数年後
子どもが二人で遊んでいた。
「ねえ、知ってる?この辺り少年が刺されて死んだんだって」
「えー誰が殺したの?」
「わかんない。大量の虫の刺し跡があったって、おばあちゃんに聞いた」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ行くね!」
「ばいばいー!」
向日葵は、今日も太陽に向かって咲いている。