「は?」
尚文がポカンとして俺の言葉を理解しきれていない。
音信不通の奴が帰ってきたら頭がイかれていた。
そんな反応。
「ソラ?」
先程までクスクスとおかしそうに笑っていた嫁さん、『エヴォリア』がそろそろにしろと言ってくる。
またしても、声のしたエヴォリアの方へ尚文が視線を向けて惚けている。
「おい、尚文、人の嫁さんに見惚れるんじゃねぇよ」
「え?え・・・、えぇ!?」
一度俺を見てから、もう一度エヴォリアに視線を戻してマジマジと見る。
さすがにイラっとしたので、エヴォリアの肩を抱き寄せてから言う。
「だから、俺の嫁さん、エヴォリアだ」
「どうも初めまして、改めてエヴォリアよ」
呆然と立ち尽くす尚文。
まぁ、俺も突然尚文が行方不明から帰ってきて、嫁とか紹介されたら驚くわな。
「え?いや、え?何、行方がわからなくなってた幼馴染みが突然嫁さんを連れてきたんだが、俺も何を言っているのかわからない。俺は恐ろしいものの片鱗を見たのかもしれなっ」
「パニクってネタに走らんで良いから」
ガスっと頭をはたいておく。
そんなこんなで、真実を話す訳にも行かず、(すべての分枝)世界を揺るがす事件に巻き込まれて、自分にも少なからず(前世的にも)関わりのある事柄だったので、(全分枝)世界中で暗躍して、世界を救う仕事をしていた。ちなみにその仕事にそのまま就職。その時(最初は敵だったが)仲間になったエヴォリアと恋仲になり、生涯の伴侶となったので、一段落したから新婚旅行も兼ねて帰郷することにした、と伝えた。
嘘は言っていない、いや、言えるかホントのことなんて。
とにかく、尚文を連れて実家に帰ってからそんな説明をした。
平凡な家庭であり、一般家庭の俺の家族は、突然いなくなった俺にビンタをくれたあと、怒濤の嬉し泣きをかましてからの抱擁、そして嫁さん紹介による大団円、この計5コンボである。
目まぐるしくはあるが、平和な世界を手に入れたからこそ出来ることだ。
そうして、実家の俺の部屋を宛がわれて、エヴォリアと二人きりになっていた。
『いいな!いいな!私も憧れちゃうなぁ!』
突然だが『ものべー』マジ神だわ、いや、俺も前世神だけどさ。
え?なんか唐突すぎる?そりゃ現実逃避だわ。
俺らに携帯やスマホがあるわけないし、エヴォリアがこの世界で持ってても意味無いけども、これが出来ちゃうんだわ、女の長電話。
『それでそれで?どうしたんですか!?ちゃんとソラ先輩のご両親に認められたんですか!?』
「えぇ、これからは私たちの娘ね、って言ってもらえたわ。」
『きゃぁーーー!!理想の展開ですね!』
これだ、相手の男のいる前で赤裸々に話すのだ。
しかも長い。
特に話し相手になっている相手も問題だ。
ミーハーで感情表現が激しい希美で、さらに妄想癖というか我らがリーダーであり、ノゾミの幼馴染みである『世刻 望』との妄想に役立つようだ。
まぁ、ノゾムのハーレムメンバーの一人なのだからノゾム攻略の鍵を求めているのだろう。
まったく、あいつはどこのギャルゲ主人公だ?
「あー、なんだ、明日は少し尚文に付き合って出掛けるから、俺は寝るぞ?」
この通信、俺の神剣に宿る守護神獣『アスカ』による力で繋がっている。
いや、すまん、見栄を張った。
本当は俺の守護神獣『アスカ』は大鷲の姿で、そのクチバシで虚空をついばむと、その場所の空間とか次元を食い破る事ができる。
いわゆる防御無視攻撃だ。
だが、それだけだ。
実際のところは、通信相手の『長峰 希美』の守護神獣『ものべー』の力が大半だ。
小さい孤島レベルのデカさで、ノゾムとノゾミが通っていた高校の校舎まるごと背負っていると言うヤバさ。
そしてなんと言っても、『ものべー』とか言う間抜けな名前だが、こいつは次元くじらで、世界の行き来から次元航行などの力により連絡が取れる訳だ。
つまり、一言で表すならば、次元航行移動要塞ものべーだ。
マジかよ?とか思うがマジだ。
そして、我ら旅団の拠点でもある。
今頃は『魔法の世界』にでも滞在して、ものべー使ってこちらに連絡しているのだろう。
俺のアスカの働きは、空間を開き続けるだけだ。
たまに理不尽を感じるんだがチートか?
しかも、ギャルゲ主人公のようなノゾムは前世最強の破壊神だし、ノゾミの前世はその破壊神を唯一倒せる存在だし、おい、完全に俺が下位互換なんだが?
「あら?私を置いて寝ちゃうの?ふふふ、寝かせると思ってるの?」
『きゃー!きゃー!』
さすがに何も言わずにベッドに入る。
すると通信をやめたエヴォリアが背中から抱き締めてくる。
ふむ、これは昨夜はお楽しみでしたね?とか両親か妹に言われたら死ねるな。
「でも驚いたわ」
「まだ言うのか?」
尚文と共に図書館に来ていた。
「だってなぁ、お前が言った世界を救ったって言うのが衝撃だわ」
「黙って勉強しような?お前が言ったんだぞ?今度の単位落とせねぇから、レポート作るの手伝ってくれとか。」
そうです、そんな理由で来ています。
まぁ、ノゾムの保護者の女教師から色々勉学を教わって(ノゾム達と一緒に授業を受けていた)、これでも教師レベルを自負してはいるんだが。
「いやぁ、帰ってきたら英語もペラペラ、今期の授業内容も説明しただけで理解するし、人間変われば変わるものなんだな」
「変わる前はダメだったと?」
抗議の声をかけたが返事はなかった。
その時、チリッと違和感を感じた。
尚文がこちらを見ずに本を片手にペラペラと捲っている。
すると、あるページで手が止まる。
その瞬間自分達を、いや、明らかに尚文だけを狙ったように光を浴びる、本が輝いたのだ。
「マジかよ!?」
答えは簡単で、俺には親しみのある感覚だ。
世界の境界を越える感覚、それを感じれば反応はすぐだった。
すぐにその力が尚文に向けられているのを感じとり、その力に割り込んだ。
「おお!」
あん?
「おお!勇者様方!どうかこの世界をお救いください!」
あぁ・・・・・、そう言う。
ごめんエヴォリア、新婚旅行は延期で仕事開始だわ。