つってもさ、原作をなるべく壊さない様にしないとな。
そう思うとさ、まぁ、制限あるよね。
「取り乱すなよ、お前ら。あまり悟られても黒幕に処理されるからな」
「正直半信半疑ですが、そんな召喚して2日目で相手も動くでしょうか?」
イツキが自分の顎に手をやり、考えるようにうつむく。
「あいつら、平気でやって来るぞ?しかも、言葉巧みに人を操って、犯人が誰かもわからなくさせる天才だ」
うげぇ、と声をあげるモトヤスと尚文。
「こういうのはな、気が抜けてきたくらいに直ぐくるぞ、すぐ!」
俺が冗談の様に言うと、流石に全員苦笑気味だ。
「まぁ、自分の世界がやばいのに、そんな露骨に不和を撒き散らされて、都合よく動くやつが居るんなら、それはもう確定だろ?」
レンの言葉に俺以外の3人全員が頷く。
それにしても、こうも空気中のマナが淀んでいるのに薄いとはなんなんだ?
敵の思惑で淀んでいるなら、マナ溜まりの様な濃厚でベッタリしている筈だが。
それにしても、この世界はつくづく怪しいところに目を瞑れば、ご都合主義で生きていけるだろう。
神剣の欠片とは言え、契約しなくとも神剣の力が使える。
本来契約してしまえば体は作り替えられ、マナを効率よく運用出来るように、マナだけで体が構成されて体から排泄されたもの、血だろうとマナへと帰り、金色の霧となって消える。
そのあとには何も残らない。
まぁ、自分が死んでも跡形も残らんのだが、
「こちらでお待ちです」
兵士が玉座、謁見の間の扉を開く。
まぁ、決まっていたことだし?とんとんで話が進むわけで。
俺は四人から離れる。
「どうされたかな?異界の勇者よ」
む?
「噂では他の世界を渡り歩き、数々の世界を救ってきたとか。であれば、勇者として扱うのが良いかと思ったのだがな」
王が声をかけてくるが、無言で首をふる。
誰かに盗み聞きでもさせてたか、気を抜いたつもりも無いが、俺固有のDスキル『トランスロケート』を発動させておくべきだったか?
「ふむ、まぁいいだろう。」
王はそのまま話を進めていきやがる。
盗み聞きの処罰は無しか?あん?
「これは・・・」
似た世界に来たことがあるため、どんな土産なら嫁さんを喜ばせられるか考えていると、予想していたと言うか、呆れると言うか。
おい、そこの大臣、人望が無いとかなにいってるんだ?
1日2日で人望もくそもあるのか?
仲間になる奴が尚文、言い換えるなら盾の勇者のところに来なかったのだ。
まぁ、流石に他の3人も可笑しいことがわかるだろう?と思って見てみたが、まぁなぁ見たいな顔してやがる。
「まぁ、盾だしなぁ。俺の知ってるゲームじゃ詰みだよな」
「そうですね、僕の方でも死に職業です」
「上級職としては、俺のゲームでも選ばないな」
あぁ~、なるほど、何か覚悟が足らんと思ったら、こいつらゲームの思考優先なのね。
つまりあれか、そのゲームにこの世界が似ていると?
馬鹿馬鹿しい、つまりそれは仕組まれるぐらいじゃないと引き当てないレベルの偶然だと気づけよ。
そのあとも、やっぱり盗み聞きしていたのか、この世界に疎いだ、色々理由は言われたが、ようするに?と要点を得ない説明のあと、胡散臭い女が名乗り出て 仲間になることが決まったようだ。
そうして四人は城を出ていった。
「して、異界の勇者殿はこれからどうされるのかな?」
媚を売るように大臣が近寄ってくる。
動向を把握していたいと言うことかな?
「嫁さんを呼ぶか考えてるんだが、金が無いからな、自力で稼ぐか考え中だ」
「でしたら、私達の方でも工面させていただきますが?」
ふむふむ、取り込みたいんだな?
ははは、なんだクズどもめ!
「いらない、俺は正式な勇者じゃないし、まず第一にこの勇者召喚は犯罪、つまり拉致したとして、この国を俺の組織のブラックリストに載せるべきかの方が重要だ」
瞬間ぎょっとした顔に冷や汗を滴らせる。
「もうひとつ、了承無しに召喚、つまり拉致した上に泣き落とし?かは知らないが働かせるとは、それってどこの頭が狂った国だ?異界の人間なら痛い思いをしようが、死のうが痛く無いと?あぁ、勇者武器は異世界の人間しか使えないんだったか?んー、割りに誠意が感じられない対応を盾の勇者にしたのはなんでかな?」
捲し立ててこれでもかと脅す。
くそでクズな上層部の膿とか、どこの国もたまんねぇな、おい。
大臣が俺の背後に視線をやる。
なるほど、そう来たか。
「え?」
後ろからズブリ・・・、と感触がしない。
まぁ、当然だ。
「なっ!?」
「おい王様や、見たよな?」
嘲笑と侮蔑を込めて、大臣の後ろでふんぞり返っていた王を睨む。
はは、腰抜かしてらぁ。
後ろから突っ込んできた侍女が、俺を"すり抜けて"そのまま大臣の腹を短剣で刺した。
これが俺の守護神獣との合わせ技、固有の全体D(ディフェンス)スキル『トランスロケート』、任意の仲間、または範囲を一時的に物理攻撃を無効化するスキルだ。
もちろん無効化する方法は自分の体表面に、守護神獣アスカの空間を裂く能力を触れる瞬間に発動すること。
「おい?お前らは見たよな?ん~?」
ニヤニヤしながら他の騎士を眺める。
「今ので判ると思うけど、俺に物理攻撃は効かない(まあ、あんまり使うとマナ切れ起こすし、概念攻撃は防げんが)」
がっしりと騎士の鎧の上から肩を掴んで凄む。
「見たよな?あの女が大臣を刺した、間違いないよな?」
騎士はガタガタ震えながらカクカクうなずいている。
「あと、俺の組織は確かに優しいが、俺個人は破壊神の次に戦闘が得意な戦神の生まれ変わりだぞ?危害が来るなら、戦争大歓迎だぞ?」
牙剥き出しの狼の様に笑ってやる。
「次に下手なちょっかい出したり、なめた態度取ったら俺の組織で拉致犯罪国として、滅ぼしてから世界を救う。わかったか?」
沈黙?ったくよぉ、返事も出来ない大人にはなりたくないねぇ、お?俺おっさんだったわ、あはははは!
悠々と城を出る。
それにしても、尾行をされているのは話が理解できていないのか?
しょうがないかと思いつつ、路地裏に入る。
ズボンのポケットから右手を後ろにかざす。
「待っていただきたいでごじゃる!」
すっと黒服仮面の女が、てか何故ごじゃる?
「拙者は王の監視役を担ってごじゃる、女王の影にごじゃる。女王と王は現在別の思惑で動いており、今回の事も女王は不本意なのでごじゃる。その事で異界の勇者殿に、お聞きしていただきたい事があるのでごじゃる」
王の監視役・・・、ね。
必死な様子で膝まずいて話す影とやら。
別に俺だってあんな態度取りたくてとった訳じゃない。
慢心をしているつもりもない。
幼馴染みの尚文に、あんな露骨に不愉快な事をされたら、俺だって腹が立つってもんだ。
「話は聞くが、判断はこちらでするぞ?あと、女王ってあそこで何も発言しなかったハリボテじゃないってことか?」
そう、女王らしき奴は見たが、あの状況を平然と見ていた。
あれで動かないどころか、腰を抜かしてた王を淡々と眺めていただけだ。
あれはハリボテの人形にしか見えない。
「流石は歴戦の勇者殿にごじゃる、その女王は拙者にごじゃる。影武者も兼任しておるのでごじゃる。」
なるほど、それならばまあ、納得できるか?
「話を続けるでごじゃるが、この国は代々女系王族、つまり女王が一番偉い国にごじゃる。現在、女王は他国にて戦争を止めるために首脳陣としている最中にごじゃる」
「あん?つまり、何か?今この国で起こっていることを、その女王は何も知らないって事か?」
「そうでごじゃる。そして、一番の問題は勇者召喚は本来、他国と協議して、順番に行うモノであり、確実に我が国、メルロマルクはその権利が遅いはずでごじゃる。にも関わらず、それを強行して行ったのが、三勇教の教皇と王なのでごじゃる」
それを推測するだけですぐにわかるが、
「ふむ、このままじゃこの国の立場も危うく、あの対応も本来のこの国の姿ではないと?」
「まこと、遺憾ながらその通りにごじゃる。そもそも、女王がご不在でなければ、この様な暴挙はやらせはしないのでごじゃる、故にどうか、どうか寛大なご処置を」
だから、こちらのブラックリストに入れないでくれってか?彼我の戦力差がよく理解してらっしゃる。
あぁ、だがなんとなくわかってきた。
つまり黒幕はそこに漬け込んだと。
しかたない、そうそうに動こうか?
「して、その女王は今どこに?」
「現在はフォーブレイと言う国にて、協議に参加してごじゃる。しかし、勇者召喚を独断で行い、しかもすべての勇者を召喚して抱えてしまっている今、その事で他国から攻められ、戦争に発展してしまう恐れがあるので、帰ってこれる日時も伸び、現状いつ戻れるかわからないのでごじゃる」
「そんな事はどうでも良い、そこに居るんだな?」
俺の言葉にどうやら呆気に取られて、影は思考停止中の様だ。
「フォーブレイの正確な位置のわかる地図と、現在の位置と方位を教えろ」
「は?」
「呆けてるんじゃない、お前それでも特殊部隊なのか?理解が遅いな」
「今から向かわれるのですか!?」
あ、ごじゃる口調忘れてやがる。
たぶん、これで面をして顔隠す事で個人の特定を防いでいるんだろうな。
「おう、"今"そこに行くからよ。ほら、早くしろ」
呆けた相手の額にデコピンをすると、力加減したにも関わらず大きく仰け反る。
力加減したよな?
「りょ、了解にごじゃる!」
慌てて影に消えると数分で戻ってきた。
そして、手に持つ地図を広げて方位や距離を聞いていく。
「おーけー、アスカ」
粗方の説明を受けてアスカを呼び出し、空間をついばませる。
「ソ、ソラ殿、それは?」
「簡単に言えば、こいつは俺の力の一部であるアスカ、そしてこいつはこの様に、空間をついばむことで引き裂き、その先の空間も引き裂いて繋げることが出来る。つまりあれだ、こいつは距離を無視して移動できる能力だと思えば良い」
「は、はぁ・・・?え?は?」
理解が追い付き始めると、次第に混乱してきている様だ。
「ち、ちなみに、人数などの制限は?」
「あん?そりゃ・・・、みりゃわかるだろ?1人ずつだ」
「ひ、1人ずつ?」
「あぁ、1人ずつ、順番にはいればこの裂けた空間が続くまでだ。さすがにそんな長くは無いけどな」
なんだ?影が呆けてやがる。
あぁ、期待外れってことか?
おまえ、そりゃしょうがないだろ!メンバーの移動拠点を操る希美ならば、そりゃものべー(移動要塞)ごとこっち来られる上に、空を飛びながら戦闘まで可能、なんだっけ?あれはスキルで良いのか?
たしかS(サポート)スキル『ものべー落とし』
大きさ的にアリンコをボディープレスする人間の図、いやオーバーキルだろ。
そして、その『ものべー落とし』は発動すると、その場に居なかったはずのものべーが(距離を無視してワープ移動で)駆けつけて、大陸の様な巨体で押し潰す。
ざけんな!どう見ても俺なんかより理不尽だろ!
いや、それでかすり傷のイャガとか、エト・カ・リファとかやばすぎるけどさ。
俺の能力はどうせちっぽけさ。
この、チート野郎共がぁ!
「んじゃ、そう言う訳で行ってくるわ!他の連中は任せた」
そう言ってアスカの空間渡りで、飛び出した。
後ろから今でごじゃるか!?となんか聞こえるが無視だ無視、解決するなら早い方が良い。
Gは見つけ次第叩けって言うだろ?え?違う?そんなぁ。
こんなので本当に満足か?
俺はわからない。
このあとの展開原作知ってればわかるだろう?ニヤリ
槍の勇者のやり直し(スピンオフ)でも、Web版でも言ってたけど、何か少しでもズレて尚文がアレにならないと、タヌキチが仲間にならないし、それどころか本編ヒロインが死ぬとかどこのラノベゲームの選択肢ですかね?