艦娘会話劇ー(天)ー特別完全版   作:司薫

15 / 35
第拾伍章 羅刹が来る

「にひひーん」

 海上での小休息中、口元から昇る白い煙を眺めていると、島風が俺を見上げて笑いかけてきた。口に煙草を咥えている。見たこともない、緑色の煙が揺らめいていた。

「なんだぁそれ?」

「気になります~?」

「いや、べつ」

「提督がくれたんですよ! 島風だけに!」

「だけじゃないだろぉう」

 滑り寄ってきた朝霜が島風の頭を叩く。

「いったーい!」

「大袈裟な声出ぁすんじゃないよぉう。ほぉらよ、天龍。あたいのやるよ」

 朝霜が煙草を差し出してきた。とりあえず受け取るか。

「おまえ吸わないんだったな」

「あたいは海風吸ってぇ方が性に合ってんかんねぇー」

 あのクソ提督がよこした煙草か。

「今吸ってんのが終わったらいただくぜ」

「おう!」

 他の奴に目をやると、長波も浜波も若月も同じ緑の煙の煙草を吸っていた……また俺だけのけ者にしようとしたな。

「ん?」

 頭の艤装、電探がひくつく。まだはっきり探知とまではいかないが、俺にはわかる。

「おいおまえら! 敵が接近してきてるぞ! と俺の電探が言っている! 戦闘準備だ!」

「了解!」

 駆逐艦共が威勢よく返事し、戦闘準備に入る。珍しく浜波もやる気のある声を出していた。四本の緑煙が空に上がっていく。灰の空に緑が混じり、どろどろとした黒へ、変色していく。その隙間から、捻じれ歪んだ砲弾が弾き飛ぶ。

「うっ」

 胸を抑えた。闇に空と海の境界は溶けている。ただそこいら中に火柱が上がり、その火が海面を赤く照らしていた。そしてその海面に、クラゲのような不気味な頭が沈んでいく。

「朝霜!」

 胸から手を離すと、血がどぷっと溢れ出した。通信機のチャンネルを調整し、再び胸を抑える。

「朝霜! 応答しろ! ヲ級はやった! 朝霜!」

 燃え盛る炎の音が煩い。敵の死骸が燃えている。助けられなかった船舶が燃えている。血と燃料と、海が燃えている。

「こちら朝霜! やったか!」

 通信機から応答が帰ってきた。良かった。

「ああ、やった。応援要請は?」

「送った! 今そっちに戻ってる!」

「気を付けて来い」

「敵の残数は?」

「敵はいない。敵はいないが。なんか変なんだ。さっきから妙な砲撃が」

 そのとき、背後から突き飛ばされた。視界が海中に飛び込み、瞬間冷凍されたような寒気が背中から伝わってくる。何が起こった? あ? 身体が上手く動かねぇ。遠く激しい砲撃の音が聴こえる。海底の闇に目をやると、何かが煌めいていた。なんだろう。深海棲艦じゃない。動いている。泳いでいる。銀色の帯のような。ずっと深くにいるみたいだが、はっきりと見える。かなり大きい。初めて見る何かだ。視界の端にも、煌めきが見えた。ただそれは泳いでいるのではなく、水底へ落ちていっている。銀色の線を引き、沈みゆく異形。深海棲艦だ。気付けば一つや二つじゃない。今しがた葬った深海棲艦の群れが、皆銀色の線を残しながら海の暗闇へと沈んでいく。ゆっくりと、流星が流れていくみたいだ。

 ガゴンッ、と頭に何かが当たった。手が動く。それを掴み、板か? 俺は頭を海上に上げた。艤装が浮き輪代わりになり、俺の身体はまだ海面にある。顎を板に乗せ、呼吸を整える。くっ、痛てぇ。背中を撃たれた。くそ。周りが良く見えねぇ。あーこれ、ダメだ。この体勢じゃ息もし辛い。背中を水につけないよう、上半身だけ仰向けにする。しようとした。余計な波が下半身まで一緒に仰向けにする。あぁ、背中から血の気が引いていく。でも呼吸は。俺は目を閉じ、数回、深く呼吸した。痛い、けど、ああ、空気だ。目を開けると、星空が見えた。辺りは変わらず燃えている。みんな無事か? 沈むのは俺だけでいい。はは。次から次へと沸いてきやがったな。なんだ。この辺りは比較的安全じゃなかったのか。まるで元からここにいたみたいにわらわらと……。

「おっそーい!」

 島風の声だ。無事だったか。視線で声を追う。いた。燃える海上で、なんだ、くるくると回転している。暢気な奴だな。両手で何かを掴み、ダンスでもしているつもりだろうか……待て、何とダンスしてる。

「おい、やめろ」

 ダメだ、声がまるで出ねぇ。島風がダンスをしている相手は若月だった。しかし若月はぐったりとして、意識があるのかも怪しい。見間違いでなけりゃ、腕も脚も変な方向に曲がってやがる。

「もっと! もっと速く踊れるよ! ブーーーーン!!」

 やめろ島風。あーくそ、何がどうなっちまってるんだ。

「フヒェヒェヒェヒェヒェ!」

 独特な笑い声がしたかと思うと、辺りに砲撃が飛んできた。

「し司令! み、見てっ。こ、この、戦果! 最っ、高っ!」

 過ぎ去る黒煙の中に浜波がいた。連装砲を乱れ撃ち、敵の残党を撃っているのかと思ったが、どこにも敵影は見当たらない。撃ってる方向もめちゃくちゃだ。何してんだこいつ。つか、もしかしてさっきの砲撃は。

「天……」

 掠れるような声と共に服が引かれた。首を曲げ、見ると、誰だ。長波か? 俺の服にしがみついている。どうしたんだ。痙攣している。髪は乱れ、目にも光がない。身体がもう、ほとんど海に沈んでいる。

「おい、しっかりしろよ」

「……むむむ、む……無理、言う、なよ……ああたしは……もももももう、ダメメだ」

 痙攣でうまく喋れていない。

「しっかりしろって」

「天、るー……もししししし……かか帰え、たら……つつ伝っ、あ……るるん、だ」

「いいから喋るなよ」

「あのの……は……き危険……過ぎる」

「は? 何が?」

「……ぁの、た煙草」

「煙草?」

「……ラダー」

 長波の言葉が頭の中で反響する。ラダー? そうだ。ラダーだ。どうして忘れてたんだ。あの緑の煙を吸ってから、皆おかしくなった。あれのせいで今こんなことに……くそっ!

「ごうっ!」

 島風の声と共に着弾の音がした! 島風がいた場所が、黒煙に包まれている。まさか。

「天……」

 俺の服を掴んでいた長波の指が滑り落ちる。俺は反射的に長波の服を掴み、引き寄せた……軽い。長波を引っ張り上げ、俺の上に乗せる。腹に、生ぬるい感覚が伝わってくる。手をずらし触ると、そこにはまだ温かな臓物があった。長波の半分は、なくなっている。

「畜生……」

「まだいた。いました、まだ」

 頭上で声がした。見上げると、そこには浜波の姿が。仲間に向けるものではない、深海棲艦に向ける冷たい目をして、俺を見下ろしていた。

「なんでだよ」

「……な、ぉの、んぁい」

 浜波の持つ連装砲の砲口が、俺に向けられる。狂っちまってる。そうなんだな。あの煙草のせいで。

「て、敵は、生きてちゃいけない、から……あぁ!」

 一瞬にして浜波の表情が憎悪に包まれる。俺は長波を抱き、目を閉じた。

「死ねえええええええええ!!」

 砲撃音が聴こえた。吹き飛ぶのは頭だろうか、胴だろうか。できれば頭がいい。でないと長波に当たる。これ以上長波を傷つけたくない。なにより、長波を離して、海に捨てるなんて、したくない。俺はそんなことを考えていたが、次に聴いたのは自分の頭か胴が吹き飛ぶ音じゃなく、何かが吹き飛ばされ海面に打ち付けられる音だった。

「ドウイウコトォ~? 上ガ騒ガシイト思ッテ来テミタラァ、共食イ~?」

 目を開けると、そこに浜波の姿はなく、代わりに黒い人型が立っていた。肌は亡霊のように白く、長い黒髪は蛸のようにうねり、先端が蛇や鎌、蟹の鋏と様々な形状をしていて、顔の上半分は黒い仮面のような殻に覆われている。間違いなく深海棲艦、それも鬼と呼ばれるような、上位種の姿をしていた。

「ネェ~、聞イテルゥ~? ソレトモモウ話セナイノカナァ~?」

 深海棲艦がしゃがみ、俺を逆さに眺める。異形の髪が俺を囲い、ぬめついた器官が這う。深海棲艦に話しかけられたのなんて初めてだったが、俺にはもう、驚きなどなく、ただ終わりを待っていた。こいつが何をしようがしまいが、俺はここで死ぬのだから。

「ネェ~、ソンナ興味ナサソウナ目ェシナイデヨォ~」

 鎌が、腕に刺さる。

「いっ」

「アハッ、喋ッタァ~。マダ喋レルジャナイ。ネェ~、ナニシテタノォ~? 教エテ欲シイナァ~」

「よく喋る深海棲艦だな」

「アッ、マタ喋ッタァ~。ネェ、何ガアッタノォ~?」

「……上に裏切られたんだよ」

 関係ないだろ、と言っても良かった。ただ何故か、普段の深海棲艦に対する憎悪が、こいつには沸かなかったんだ。怒りの矛先が別のものに向いていたからかもしれない。

「フゥ~ン」

 逆さの顔が、近づいてくる。次の瞬間、背中に刺すような痛みが走った。いや、実際に刺されている。口から血が溢れだす。深海棲艦はそんな俺を見て微笑んでいた。くそ、斬ってやる。あぁ、もう腕も動かねぇ。長波が海に沈む。耳元で声がする。

「モウ大丈夫ダヨ」

 身体が破裂しそうな感覚の中、俺の意識は暗い海の中へ溶けていった。

.

「……きて……起きて……天龍ちゃん起きて!」

「っほあ!」

 飛び起きた俺は、溺れかけたような呼吸を繰り返した。なんか凄い夢見たぞ。いや、夢じゃない。覚えてる。ラダー。今まで何度も夢で再生しては忘却を重ねていた。ラダーだ。仲間達はラダーで死んだ。死んでしまっていた! 俺があの鎮守府で最後に旗艦を務めた任務、その任務で俺以外みんな、死んでしまった! ラダーのせいで! それで俺はラダーを支給したあのクソ提督を半殺しにしたんだ。そしてラダー、木曾も確かにそう言っていた。あいつも……あいつも龍驤にあれを。龍驤にだけじゃないかもしれねぇ。木曾は知っているのか? あれの本当の危険性。現に龍驤はおかしくなった。あれが使われるのを止めねぇと。なんでこんな大切なこと今まで。

「天龍ちゃん!」

 バシンッ! と頬が叩かれた。

「は?」

 え? 目の前に龍田がいる。龍田がビンタしたのか? そうだよな。

「やっと気付いた」

 龍田の表情に普段の余裕がない。なんだ、明るいぞ。いや赤い。音。燃える音だ。辺りの雑木林が燃え盛っている。なんだこれ。

「龍田、何が起こった?」

「わからないの。わたしも今目を覚ましたらこんな状況で」

「ともかくある武器担いで逃げますわよ!」

 声に振り向くと、熊野が弾薬を搔き集めていた。鈴谷もいる……それだけだ。萩風と加古と、赤城さんがいない。いったい何が。

「危ない!」

 龍田が俺の頭を掴み身体ごと伏せさせる。何かが頭上を掠め飛んでいった。頭を上げ見ると、何かが木にめり込んでいる。爆発しなかった。あれは……ただの石か?

「鬼退治の時間だよぉ寝坊助共!」

 声と共に木の上から加古が降ってきた。片手に連装砲を握っている。

「鬼が出たのか!?」

「イエス! サー! けどあんたらが思ってる鬼じゃあないんだな。ほら刀でもなんでも手に取りな。餓鬼に食わせんのは鉄塊で充分よ」

「もっとわかりやすく話してくださいません!?」

 熊野が俺の思っていたことを言ってくれた。

「なぁに寝惚けたこと言ってんの。来るよ!」

 なにが来るんだ? ともかく俺は刀を握り立ち上がった。直後、再び火炎の中から石の弾丸が飛んでくる。刀の刀身で弾くと、重い感覚が腕に伝わってきた。口径は小さいが、威力はほとんど砲撃と変わらない。けどなんで石なんだ?

「どうしてみなさん起きているのでしょう。ちゃんと私のお茶、飲みましたよね?」

 炎が揺らぎ、その先に赤城さんの姿が現れた。加古が赤城に連装砲を向け、狙いを付ける。

「何してんだよ加古!」

「萩風がやられた! いやギリ防いだけど、向こうの方で気絶してら。誰がやったかは言わんでもわかるでしょ!?」

「それってまさか」

 加古が砲を放つ。しかし砲弾は空を切り、赤城さんの姿は消えていた。

「くそ、なんだあれ。艦娘の身体能力じゃないね」

「加古、ちゃんと説明しろ」

「オーケー。けどたぶんあの鬼、萩風の方に引き返したよ。説明は向かいながら。行くよ!」

 加古が燃える林の中に突っ込んでいく。

「どういたします?」

 熊野が連装砲を手に俺に尋ねた。

「どうって、とりあえず行くしかないだろ。行って話を聞こう」

「そうね」

 龍田も薙刀を手に取る。俺達は加古を追った。

.

 しばらく行くと加古が木の陰に隠れて「止まれ」の合図をしていた。

「はえーよ、向かいながら説明する気ねーだろ」

 俺の抗議に、加古は口元で人差し指を立てる。そしてしゃがむようにジェスチャーし、俺達がしゃがむと小声で話しだした。

「いいかい、改めて今回の任務を伝えるよ。今回のこれは、赤城抹殺任務さ」

「は?」

「あいつはそうは言わなかったけどさぁ、そういうことでしょうよ。鬼ってのは赤城の罪だわ。鬼が出なけりゃ今回の任務は何もなし。けど赤城は萩風に手を出した。鬼は出た。だからもうやるしかない。しかないってところが味噌だね。あいつらしいや」

「待てよ、証拠はあるのか? それに何も抹殺だなんて」

「んじゃあ萩風かこの中の誰かが食われるのぉ待つかい? まぁ聞きなよ。用を足すって言って場所を離れた萩風を、赤城はこっそりつけて襲ったんだ。で萩風は気絶させられたけど、食い千切られる一歩手前であたしが赤城を撃ったわけ。当たらなかったけど。でしばらく交戦したんだけど、さすが第二期艦娘の英雄だわ。強いのなんのって。あたし一人じゃ無理。そもそも逃げ専なんでね、あたしは。でぇあんたらに助太刀願ったわけよ」

「……どう思う龍田?」

 俺は龍田に判断を仰いだ。正直俺は加古を信用していいのかどうかよくわからない。

「うぅん、さっき赤城さん、お茶がどうのって言ってたけどぉ~、加古ちゃんあれはどういうことかわかるぅ~?」

「クワンソウ茶ね。ああいや、あんたらにはそうは言ってないか。赤城は毎日、寝る前に睡眠薬代わりにクワンソウ茶を飲んでてね。いや正確には、クワンソウ茶という名目で普通に睡眠薬を飲まされてたんだけど。まぁそういうわけで、赤城はせいぜい安眠効果しかないクワンソウ茶に強力な睡眠効果があると思ってるわけでさ、それをあんたらに呑ませたんだわ。だのに普通に起きてきたもんだから、ああ言ったわけね」

「なるほど、そういうことでしたか」

「うぐっ」

 加古の背後から細く白い腕が現れ、加古の首を締め上げた。赤城さんの顔が半分、木の裏から覗き出る。

「皆さん、私の話も聞いてください。これは罠なんです。先に攻撃を仕掛けてきたのは萩風さん。帰りが遅いので見に行くと、萩風さんが倒れていました。それで近づいたところ、急に連装砲を向けられ、肩を撃たれたんです。私は萩風さんを落ち着かせるため一旦気絶させ、皆さんの下へ運ぼうと。そうしましたら加古さんが撃ってきたんです。仕方なく反撃したところ、私の艤装、どれもすぐ壊れるよう細工されていたではありませんか。偵察機が鈴谷さんと熊野さんにしか積まれていなかったのでその時まで気付けませんでした。全部、私を消すために仕組まれたことなのでは? そう思いませんか?」

 赤城さんは落ち着いた声で、しかし俺達に強く訴えかけるように話した。

「赤城さん、わかったから一回手ぇ放せ。加古が死んじまうよ」

「この手、ですか? 放したら私が危険なのでは?」

「お茶で深い眠りにつかせようとしたことは弁明しませんのね」

「私はただ疲れた皆さんに熟睡してもらおうと。それにまるゆさんがちょうどクワンソウを植えていたのですよ? もしかするとそこからもう罠だったのかもしれません」

「赤城さん、自分で何言ってるか、わかってないんじゃん?」

 鈴谷が赤城さんに連装砲を向ける。

「鈴谷」

「だってそうっしょ? そもそも出撃前から眠らせようとなんて思わなければ、わざわざその日植えたばっかのを引っこ抜いてきたりしない」

 確かに。ん? 待て。鈴谷、なんで昨日植えたのを、覚えてるんだ?

「信じてもらえませんか」

 赤城さんがもう片方の手を出す。その手には折れた弓矢が握られていて、肩は確かに負傷しているが、ほとんど気にしている様子はない。矢尻が加古の首に突き付けられ、そこから細く、赤い線が伸びていく。

「赤城さん、それ以上したら、もうわたし達もあなたを見逃せないよ?」

 龍田の薙刀を握る手に力が入る。

「見逃せない、は、私の台詞ですよ」

 とその時、砲撃音が響いた。加古の背後の木に後ろから砲弾が命中し、爆発する。衝撃で加古が吹き飛ばされ、俺の前に倒れ込んだ。赤城さんはいない。

「ちきしょー!」

 怒声と共に、草むらの奥から萩風が姿を現した。表情が昼間とまるで違う。辺りを見渡すその目には、憎悪の嵐が満ちていた。

「萩風、無事だったんだな」

「ああ。加古さん、大丈夫かい?」

「大丈夫、だけど、ゴホッ、荒いよあんたぁ」

 咳き込んでいるが加古もどうやら無事だ。

「すまねぇ。くそ、萩風が二度も食われちまった。絶対許さねえ」

 萩風が右腕を擦る。その二の腕からは血が流れ出ていた。

「萩風さん、何があったのか、あなたからも話してくださいます?」

 熊野が救急箱を手に萩風に歩み寄る。

「話? んなもん、鬼は相変わらず鬼だったってだけっすよ。どっちにしろ俺はあいつを始末するだけっすけどね。皆さん、協力してくれますか?」

 萩風が俺達を順に見る。きっとこいつは、一人でも赤城を始末するつもりなんだろう。そんな目をしていた。しかしこいつはいったい。

「おまえさ……誰なんだよ」

 俺の問い掛けに、そいつは口を横に結んだ。鋭い目で、辺りを見渡す。そして、口を開いた。

「もう、隠すこともねぇな。天龍さん、皆さん、改めて自己紹介させてもらいます。俺の名は、嵐。かつて赤城に殺された仲間達の、その無念を晴らす、憎悪の復讐者だ」




第15話あとがきです。

 天龍ちゃんの記憶が戻りました。そして悲惨な事件の真相も。全ては危険薬物ラダーによるもの。そしてさて、ここらでパロディ明かしを。敵襲でなく薬物によって同士討ちし轟沈してしまった仲間達のシーン、見慣れぬ不気味な通路を担架で運ばれるシーン、記憶が長く戻らなかった天龍、これらは映画ジェイコブス・ラダーのパロディです。第一話の雲間から漏れる光、薄命光線も天使の梯子やヤコブの梯子と呼ばれるものですね。ジェイコブス・ラダーはサイレントヒルの元ネタになったものの一つと言われていて、いや、この映画本当に好きなのだ。そちらの結末を知ってからこちらを読んでいくと、また別の見え方がしてくるかもしれません。

 では次回、赤城さんとの交戦が本格的に始まります。果たして何隻の艦娘が生きて帰ることが出来るのか。艦娘対艦娘の戦いが今、始まる!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。