青い空。斑の鳥が暢気に飛んでいく。奴等ぁいいよ。実に暢気だ。毎日おまんま探しまくって、それぁ大変だろうさ。けど暢気なのよ。見っけたら食う。それか食われる。単純でいいね。人ってのは複雑でいけない。けどそれよか羨ましいのはあたしの後ろのやっこさんさ。あーあ、この武蔵って奴あぁ、まったく羨ましいや。寝てるだけでいい。寝てるだけでこれからもずっと英雄だ。それを本人が知らないってのがまたいい。嫉妬しちゃうね。
「加古、またこんなところで」
開けたまんまにしてた扉から古鷹が入ってきた。
「古鷹ぁ、あんたもこっちおいで。今ちょーうどいい感じで陽が入ってきててさぁ。ぽかぽかあったかいよぉ?」
「あったかいよぉ、じゃなくて、所長に言われた仕事、まだ終わってないでしょ?」
「仕事仕事って、昨日一昨日と本土回りさせられて、ちったぁ休ませてもらわないとぉ」
「午後はずっと観光して遊んだじゃない」
「遊びと休みは別よぉ。それにジメジメした地下は嫌いでさぁ」
「ここの地下は全然ジメジメしてないでしょ?」
「所長ちゃんよぉ、ジメジメしてんのはさぁ」
「……今のは聞かなかったことにする。早く戻ろ?」
「眠いなぁ」
すぅーっと、晴れ静かの空を吸う。こりゃ天然の麻酔だ。純度百%。身体は倒れ、意識は空に溶け込んでいく……。
「加古! 加古聞いてるの!?」
声と共に陽射しが遮られる。古鷹に、左手を伸ばす。
「ほら」
あたしの左手を掴んだ古鷹の手を、さっと右手で掴み、引いた。
「あわっ」
古鷹があたしの上に倒れ込む。
「少し休んでからでもいいじゃないの」
「いいわけないよ」
古鷹が起き上がろうと。あたしは古鷹の身体に抱き付き、無理矢理、自分の上へと引き倒した。
「加古!」
古鷹の怒り顔だ。でも本気で怒ってる顔じゃない。あたしはそれに甘えちまう。けどなんだって、この子はこんなに真面目さんしちまうんだろう。
「あいつはまともじゃないよ。ねぇ古鷹、あたしら勝手に造られてさ、それも人間と深海の戦いの為に。でもさぁ、いったいそんな義理、本当にあんだろうかねぇ?」
「私達は艦娘。だから戦う。人間の為に働く。兵器なんだから」
「そんなんはさぁ、あっちの勝手な都合じゃないの」
「造ってもらったんだから、その恩はあるでしょ」
「あたしは頼んだ憶えないよ。あたしを造ってくれなんて、言った憶えはさ」
「……きっと加古、艦娘じゃなくても同じようなこと言ってるよ」
「えぇ?」
「いつもぐーたらしてばっかり。それが好きなのはわかる。でもそれだけじゃ……それだけだからつまらないこと考えるんだと思うよ。今この世界にいる理由、自分で見つけないといけないと思う。そしたら、きっと造ってもらえて良かったとも思えるし、それが、戦う義理っていうのに、なるんじゃないかな」
「……古鷹と一緒にいられれば、あたしはそれでいい」
「ううん、それじゃ十分じゃないから、加古は自分の存在に疑問を持っちゃってるんだよ。まず見つけようとしないと、ダメ」
面倒臭いよぉ、そう、言おうと思ったけど、きっとそれはあまりにも、真剣に言ってくれてる古鷹に失礼だと思って。それにそんなあたしの内心、古鷹にはきっとお見通し。
「古鷹は、見つけたの?」
「見つけたよ。加古と遊ぶの、凄く楽しい。だから造ってもらえて良かったって、思ってる」
「……」
あたしは、中途半端な笑みを漏らして、思わず顔をそむけた。普通に聞かされて嬉しい言葉だったし、きっと古鷹今、割と思い切って気恥ずかしい言葉言ったんだろうなって。でもそれと同時に、古鷹と同じように、二人一緒にいることを今自分が存在している理由にできていないことに、申し訳なさを感じた。申し訳なさを感じる自分も、嫌だったし。何より古鷹に対して、なんて失礼な奴だって。あぁ自分は。本当にクズなんだ。
「もう、しょうがないな」
古鷹の手が、あたしの肩に。そして吐息が、首筋に当たる。
「ちょっとだけお昼寝、付き合ってあげるから。そしたら戻るよ」
「うーん」
古鷹の手を握る。あたしはクズだけど、古鷹の期待だけは裏切っちゃいけない。そう思った。