艦娘会話劇ー(天)ー特別完全版   作:司薫

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エピローグ

 大本営に到着した俺達は、総司令官に全てを話した。流石に俺は後からの登場となったが、総司令官は話の分かる男だ。かつて前任の総司令官の命を守った龍田の付き添いということもあり、艦娘として、俺は受け入れてもらうことが出来た。そして、阿戒の秘匿と企みについても。確かにあの日、大本営を深海棲艦の群れが襲ったあの日、阿戒とその取り巻きに関していくつか不審な点はあったという。しかしその証拠、そして何より、具体的に何を行ったのかという部分が不明であった。しかしもう不明は不明ではない。カースィッド・ソングの返上と共に阿戒の更迭は決まった。今後艦娘建造施設及び艦娘解体施設、艦娘糧食製造施設は独立した部署の管轄ではなく、人類軍直属の管轄となる。もう非人道的な実験等は行われない、はずだ。

 俺達自身はそのまま、大本営直属の遊撃部隊となることになった。いや全員じゃない。鈴谷と熊野は陸に上がることに。ほとんど何も知らずにいたからな。退役理由については、明石がいくつか細工した。陸での生活もそれはそれで楽じゃあないが、あの二人なら、二人一緒なら楽しくやっていけるだろう。

 それからまるゆだが、頭の中の爆弾は明石によって除去され、同時に全記憶の電子化、自動転送能力を失う代わりに、その分のリソースを短命の克服に回した。これは全て終わった後にはそうしようと始めから決めていたことだ。おかげでいよいよ何の力もない艦娘になっちまったが、いや、何の力もないなんてことはないな。まるゆは気が回るし、それに、海に潜って貝類を拾ってくるのが得意だ。それだけで十分さ。

 あとそうだ、明石の奴、深海棲艦との和解を諦めるのはまだ早いと、そんなことを言っていた。なんでも、阿戒は試していないだろう方法があるとかなんとか。もしまだ和解の道が残っているなら、次は総司令官の指揮の下、和解作戦を実行できることだろう。

 さて……チスイ、おまえはまだいるのか? そう、あれからチスイの意識は一度も上がってこない。ただ、消えたとも思えない。あいつを通じてなら、もっとよく深海の奴等のことが理解できるのかもしれないが……あるいはだからこそ、チスイは黙り込んでいるのかもしれない。この身体は、深海棲艦の脅威になると考えて。俺が奴等のことを知りたいのは、和解の道を探る為なんだが……自分がそれになっても、深海棲艦のことはわからないことだらけだ……深海棲艦のことだけじゃないな。もう一人の俺の行方さえ……そいつが天龍なのか、木曾なのか、最早わからない。けど行ってしまった。いや、俺の中に溶け込んでしまったと言うのが正しいか。それなら、俺は誰なんだ……わかっている。俺は、天龍にしろ木曾にしろ、かつての俺では既にない。どちらにせよ、俺は自分自身と決別してしまった。別れも言えず。自分自身を喪失すること。友を失うことに似ているようで、ある部分では、それ以上に寂しい。一番長く共に過ごした存在は、紛れもなく自分自身なのだから。それがわかった。深海棲艦のそれが。深海棲艦の在り方故の、途方もない孤独。この孤独を知る奴等を倒すのは、やはり一筋縄では、いかないと思う。

「天龍ちゃん」

 声に振り向く。鼻を潮風がくすぐる。妹が靡く髪を抑え立っていた。その瞳には、懐かしい友の姿が映っている。おまえの目は真実を見ないことに決めたらしい。けどそのおかげで、俺は失ってしまったかつての自分を……俺の半分はまだ天龍だと、錯覚することが出来る。嬉しくて、悲しくて、涙が出そうになった。

「泣かないで」

「泣いてねぇよ」

 龍田が俺を抱き締める。俺は、抱き返し、そっと……頬を濡らした。

 偵察機が雲を引いていく。人々の住む陸から、遠く、海へ。いつかきっと、平和な時代は訪れる。その時まで踏ん張るんだ。そうして……毎日バカやって生きていこう。

「龍田」

「なぁにぃ~?」

「あのさ……やっぱいいや」

「えぇ~? 言ってよぉ~」

「言わね。絶対言わね」

「えぇ~、やだぁ~」

 笑いを漏らす。龍田がいる。だからきっと、もう何も怖くはなかった。




エピローグ、あとがきです。

皆さんここまで長々と、勝手な妄想を読み進んでくださり本当にありがとうございました。人によってはなかなか受け入れられない描写も多々あったかと思いますが、それでも、どのキャラクターも全て大好きなキャラクターです。二次創作でたくさん触れてきたし、なにより、ゲーム内で一緒に戦ってきたからね。ある種の戦友です。艦これ好きの全ての人も皆戦友!ハラショー!

 ……さてでは次回、第31話「アザミ顔の夢見る方舟」。23時間59分後、投稿いたします。
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