すくつ廃人が少女をすくつに潜れるようになるまで鍛え上げるお話   作:ニカン

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第1部:少女が願いを成就するまで
初手盗賊団遭遇は転移系なろう小説のマナー


神様、私はなにか悪いことをしたのでしょうか?

 

 

 

確かに、私は品行方正というわけではありませんでした。

 

学校をサボったことも何度かありますし、ゲームばかりで勉強しないことなんて日常茶飯事でした。

でも、その程度はみんなやっている程度のことではないでしょうか?

 

そうなると、私がこんな目に遭っているのはひとえに運が悪いからなのでしょうか。

 

 

 

「おまえさん、ついてないな!」

 

 

 

────私は今、何もない草原で盗賊団に襲われています。

意味がわからないでしょう? 私もまるで意味がわかりません。

 

 

始まりは、唐突でした。

学校からの下校途中に……なんというか、私の周囲の大気がざわめきだしたと思ったら次の瞬間には草原の真ん中に立っていたのです。

 

あまりにも意味不明な状況におろおろしていた所、幸いなことに近くを通りすがった少女騎士団のセスルートという方に保護してもらえました。

 

少女ばかりの騎士団というのも随分変わっていますがここではそれが普通なのでしょうか。

 

……ええ、ここが地球ではないことぐらいは私も理解しています。

皆さん当然のように魔法を使ったりしますし人間業とは思えないような身体能力してますし。

これはいわゆる異世界転移というものなのでしょう。

流行っていた小説やアニメをいくつか見たことがあります。

 

 

 

 

ともあれ、彼女たちの拠点がある王都パルミアというところに一緒に連れて行ってもらえることになりました。

ですが、後一日ほどで到着するというというところで……

 

 

「おまえさん、ついてないわ…。自分たちは泣く子も黙る冷血な盗賊団、その名もうめきすぎた剣士パーティよ…。命が惜しければおとなしく荷車の積み荷と金貨420185449枚を渡すがいい…。」

 

「全く、バカにしているの……? 私達がそんな量の金貨を持っている様に見えるのかしら! ────少女騎士団、抜剣! 盗賊団を返り討ちにするわよ!」

 

「いい度胸ね…。…しかし、賢い選択とは言えないわ…。ここがおまえさんの墓場ね…!」

 

「ミンチになったあとじゃ聴くことはできないだろうから先に言っておくわ……さようなら」

 

 

私達は盗賊団に襲われました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。正直に言います。

少女騎士団の威勢がいいのは最初だけでした。

 

「きゃあー」

「くっ……こいつら、強い……!」

 

 

 

 

別に少女騎士団のみなさんが弱いというわけではないのです。

道中、出会った雑魚のヤドカリや狼男のような姿のコボルドを目にも留まらぬ速度で瞬殺し、一度だけ現れたワイバーンさえもほんの数分で倒すほどには強いのです。

 

その動きはあまりにも素早く、私の目には最後の一瞬の交錯でワイバーンがミンチになったようにしか見えませんでした。

 

セスルートさんは「ワイバーンにとどめを刺すのに4回も斬らねばならなかった」と言っていたのでどうやらあの一瞬で4回も斬っていたようです。

 

そんな、私からすれば超人としか思えないようなセスルートさんが、押されています。

 

 

「もうすぐ殺してあげるよ」

 

「まだだ……私は、絶対に負けるわけには……!」

 

 

盗賊団の頭領が振り回す大槌と、セスルートさんの振るう長剣と盾が異常な速度で火花と金属音を奏でます。

しかし、傷が増えるのはセスルートさんのみ。

 

どうすればいいのでしょう。

このままでは少女騎士団は壊滅し、私もただでは──

 

 

 

「イヒヒヒヒ!」

 

──いくら何もできないからと言って、ただただ立ちすくんでいるのが悪かったのでしょうか。

いつの間にか私のすぐ近くに黒いマントとシルクハットを身につけた盗賊団の一味が走り寄ってきていたのです。

 

 

「かわいそうに、ウヒャ」

 

あ、死んだな、と思いました。

同時に妙に冷静で、なんで盗賊団なのにこんな怪盗みたいな格好してるんだろう、なんて事も思っていました。

 

そう思っている間にもう盗賊団の殺し屋はもう目の前。

ああ、神様、私は──

 

 

 

 

 

 

 

 

盗賊団の殺し屋のミソークは破壊された。

 

 

「……へ?」

 

それはあまりに唐突でした。

パン!と何かが弾けるような音がしたかと思ったら。

目の前まで迫ってきていた盗賊団の殺し屋が、私の直ぐ側で破裂したように血を撒き散らして粉々になったのです。

 

「あ……服、汚れちゃった」

そんなこと気にしている場合じゃないのになんでそんなこと気にしているんでしょう、私。

 

 

「ミソークがやられた!?」

「魔法使いだ!ヤバイぞ……今の威力は魔力の集積(クリスタル スピア)かもしれん!」

「一体どこから狙ってきて……!」

 

 

私が最初に気づいたのは多分、偶然でした。

隠れるつもりがまるでなかったのもあるでしょう。

 

「いたぞ!」

「たった二人だ!いくら強かろうが一人は魔法使い!囲んじまえばこっちのもんだ!」

「ミンチにしちまえ!」

 

 

人影は、二つ。

 

一つは、こちらに向けて人差し指を向けている黒い髪の男の人。

遠くてよく見えませんが軽装で、魔法使いのようなとんがり帽子をかぶっているように見えます。

 

 

 

もう一つは……鈍い金色に輝く鎧を身にまとった、大剣を背負った戦士でした。

見るからに重そうな重装鎧と兜を身に着け、顔さえわかりません。

 

 

私を助けてくれたであろう人たちはしかし、動こうとしません。

このままでは囲まれてしまいます。

 

 

盗賊団の反応から相当強いのでしょうが、この状況は……。

 

 

 

 

 

「……面倒だな。シュナック、やれ」

本当に。本っ当に面倒くさそうな声色で魔法使いの男がそう言った次の瞬間。

 

 

盗賊団の用心棒のイオノートは燃え尽きて灰になった。盗賊団の術士のガンダワーツは発狂して死んだ。盗賊団の用心棒のイルザは闇に蝕まれて死んだ。盗賊団の殺し屋のドデオスは溶けて液体になった。盗賊団の用心棒のナゾーフィーは朦朧となって死んだ。盗賊団の用心棒のイブロックは雷に打たれ死んだ。盗賊団の殺し屋のピロックは朦朧となって死んだ。盗賊団の用心棒のズガは混沌の渦に吸収された。盗賊団の術士のフレオファーは朦朧となって死んだ。盗賊団の殺し屋のローメスは冥界に墜ちた。盗賊団の用心棒のアネホースは氷の彫像になった。盗賊団の術士のフレオリーツはミンチにされた。盗賊団の殺し屋のセサーロフは溶けて液体になった。盗賊団の殺し屋のライオオードは毒に蝕まれて死んだ。盗賊団の殺し屋のライアガンは神経を蝕まれて死んだ。少女のシュナックは《罰に苦しむ患者》を誇らしげに構えた。

 

 

 

 

周りにいた盗賊団は、嵐のように連続で鳴り響く轟音と共に消し飛んでいました。

まるで、パラパラ漫画のページを飛ばして読んでしまったかのように一瞬で。

 

気がつくと、金色の鎧の戦士は私を守るかのように背中を見せて私の直ぐそばに立っていました。

この一瞬であの数の盗賊を蹴散らして、私のすぐ近くまで来たと?

一体どういう速度で動いたらこんな事ができるのでしょうか。

 

……? 今気づきましたが、近くで見ると随分と背が小さいです。

155センチあるわたしと大差ないぐらいです。

鎧がなかったらもしかしたら私より背が低いかもしれません。

 

 

「ひぃぃ、こいつ強い」

「命だけは!」

 

さて、当然のことながら8割以上が消し飛んでしまった盗賊団はもう総崩れです。

バラバラに逃げていきますが魔法使いの男が指先を向けると空気が破裂するような音がして、盗賊団は一人また一人と粉々になっていきます。

 

「ば、馬鹿な!魔力の集積をこんなに連射して魔力が持つはずが……!」

「イヤだぁ!死にたくねぇよぉ!」

「ぐわー」

「こんなことをして、ゆるさないでおじゃる」

 

……あっという間に盗賊団の頭領以外は全滅してしまいました。

 

 

 

 

 

 

魔法使いの男はひとり残った盗賊団の頭領へ悠々と近づいていき、指先を向けて告げました。

 

「……さて。なにか言い残すことは?」

「たちけて」

 

 

盗賊団の頭領のドハードはミンチになった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、私は危ういところで助かりました。

 

……ただ、あとになってこの時のことを思い返すとこう思うのです。

あのまま埋まっていたほうが、楽に死ねたかもしれないと。

 

 

そしてこうも思うのです。

この出会いを後悔することは絶対にないだろうな、とも。

 

 




魔力の集積(クリスタル スピア)
英語版の名称はCrystal Spear。
魔法の矢の上位互換で確かに強いのだが威力だけなら魔力の嵐のほうが、使い勝手の良さでは魔法の矢のほうがいいのであまり使われない魔法。
ましてや、廃人クラスともなるとまず間違いなく『必ず紳士』やそれに準ずる武器を持っているのでなおさら魔法の矢しか使われない。

魔法の矢(マジックダート)
英語版の名称はMagic Dart。
ストック消費が少なく魔法属性であるため(極まった)魔法使いの通常攻撃代わりに用いられる。
序盤から終盤まで使える基本の魔法。

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