すくつ廃人が少女をすくつに潜れるようになるまで鍛え上げるお話   作:ニカン

10 / 19
《廃人》

「…………行ったか」

 

黒髪少女の……いや、《廃人》の真田 雪音は目標を達成し、自らの世界へ*帰還*した。

 

…………今回の『暇つぶし』は思ったより長く、楽しめた。

およそ20年ほど。少女騎士団から雪音を引き取ったときはここまで長い付き合いになるとは思っていなかった。

 

正直、どこかで諦めるか埋まるかするだろうと思っていた。

 

なぜか。

 

……俺に教えを請うた者が皆、そうだったからだ。

 

 

餓鬼に触れられ続けてハーブを食べ続ける鍛錬すら、完遂できるものはそう居ない。

何日も食事を取らなかったような極限の飢餓の中。いくら食べても解消されない飢餓感とハーブの山に、減り続ける体力(HP)が本能的な焦燥と恐怖に火をつけてしまうのか。

 

 

どいつもこいつも1時間もしないうちに音を上げて、誰も彼もが諦める。

体力は俺が回復するから死ぬこともないし、無限に思えるハーブの山も一晩ほど食べ続ければ終わるというのに。

 

 

……そして、そういう奴らは決まって最後にこう言うのだ。

 

 

────私はあなたのように才能に溢れた人間じゃない、と。

 

 

ふざけるな。

この程度……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あるいは。

それこそが……絶対に諦めない意思こそが、この世で最も尊い才能なのだろうか。

 

 

そういう意味では。

真田 雪音は、煌めくような才能にあふれていたと言えるだろう。

 

 

 

俺が教えた鍛錬を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()3()()()()()()()()()()()()()()()()()()4()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

だから……雪音が《廃人》の領域までたどり着けたのは必然だったのだろう。

 

 

 

自らの可能性を極限まで鍛え上げ、

立ちはだかるあらゆる困難を突破し、

たとえどんな障害にも折れることなく、その『意思』を貫いた。

 

 

 

 

恐れも諦めも未練も、そしてついには愛さえも。

一切合切を振り切って。

 

雪音は、限りなく遠い目標を達成したのだ。

 

 

 

 

 

「…………」

しかし、最後の最後でこう来るとはな……。

 

「忘れることは……できそうにないな」

あるいは、それさえも計算づくだったか。

 

 

 

 

 

 

 

………………いずれにしても。

暇つぶしは終わったのだ。

また新しい暇つぶしを見つけなければ。

 

とりあえず願いの杖で全能力をカンストでもさせようか。

ハンマーも鍛えねば。まだ+1程度にしか鍛えていない。

 

やることはまだまだ────いくらでもある。

 

さあ、まずは何から始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真田 雪音は*成就*の魔法を唱えた。

時空を捻じ曲げ強固な次元の壁に穴を開けて、真田 雪音は*帰還*した。

 

 

 

「………………」

「………………」

 

「…………おかえり」

「…………ただいま、です」

 

「……里帰りは、どうだった?」

「……色々、ありました」

 

「そうか」

「はい」

 

少々の沈黙を挟んで、雪音は今までのことを語り始めた。

 

「色々……本当に色々ありました」

 

「帰ったあと、心配させてしまった両親に謝って、普通に高校を卒業して。そのあたりまでは普通の生活をできていたんですが」

 

 

「トラックに轢かれてそのトラックを逆に跳ね飛ばしてしまったあたりからだんだんおかしくなってきてしまいまして。色んな国の特務機関やらオカルティックな秘密組織やらに追われて手持ちの金貨を換金しながら逃げたりたまに戦ったり会社を立てたりここ以外の異世界帰りの勇者様やらが出てきたり……」

 

 

 

「本当に……本当に色々あって、最後はなんとか親孝行もできましたし、あまり大きな後悔もなく90歳ぐらいで大往生できたと思ったんです。思ったん、ですが。その……」

 

 

 

「……這い上がれて、しまいまして」

 

 

 

「そのまま首を吊るのもどうかと思いましたし、そういえば*成就*の制約ってこっちでも大丈夫なようにできてるな、って思って、それで……」

 

「……帰ってきたと。そういう訳か」

「はい……」

 

 

「あんな事を言って帰ってしまった手前、こういうことはいいづらいのですが……」

 

 

 

「……ここに居させてもらっても、いいでしょうか?」

 

「いいぞ。……あいつらも喜ぶだろうしな。それに……」

 

 

俺はつい最近届いたばかりの()()()を投げ渡した。

 

 

「それに、お前が来たならなかなか面白いことになりそうだ。見ろ」

 

 

 

雪音はその招待状に目を通し……盛大に、顔をしかめた。

 

 

「……なんですか? このふざけた内容の招待状は」

 

「暇を持て余した廃人共がとうとう痺れを切らしてな。『面白い暇つぶしがないなら作ってしまえ』と言い出したバカが出た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

この頃、すくつのモンスターが弱く感じる?

最近、ハンマーで皮を叩くのにも飽きてきた?

 

そんなあなたに!

 

 

突撃!廃人バトルロワイヤル!!!!!

 

ルール無用!

 

呪い酒も!

魔法強化生き武器も!!

カオスシェイプ13刀流も!!!

あらゆる手段でもって敵を倒せ!!!!

ダメージ完全無効だけはカンベンな!!!!!

 

君も、最強の《廃人》の称号をかけて共に闘おう!!!!!!!!!

 

 

~詳細なルール、並びに開催日時は裏面をご覧ください。奮って参加お待ちしてます~

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

雪音は裏面を見た。

 

招待状の最後に、実行委員会の名前が書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

企画・発案:ザ・メテオ イリアス

 

 

 

 

 

雪音は呆れたように……いや、完全に呆れきった表情でこちらを見て、言った。

 

 

 

 

 

「…………バカじゃないですか?」

 

 

仕方ないだろう。

 

暇だったんだ。

 

 




第1部・完!!!

さあ!!!!!!
まだまだ終わらないでおじゃるよ!!!!!!

第2部!
突撃!廃人バトルロワイヤル!! ~ぼくのかんがえたさいきょうのはいじん~ 編!!

しばらく書き溜め期間を挟んで始めていくでおじゃる!!!!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。