すくつ廃人が少女をすくつに潜れるようになるまで鍛え上げるお話 作:ニカン
今、私の目の前には神々の休戦地でもないというのに神々の祭壇がずらりと並んでいます。
メジャーな7神のものはもちろん無のエイス、さらには相当マイナーな財のイナリや水のダナリンの祭壇まであります。
……そういえば。
今まであまり気にしたことはなかったですが……。
「……あの、イリアスさん? ちょっと聞きたい事があるんですが」
「何だ?」
「黄金騎士のマーレスさんと黒天使のダルノさんって……」
「…………俺は可能ならすべての神を信仰したいんだが一度に信仰できる神は一柱だけでな?」
「それもどうかと思いますが、年末年始に除夜の鐘を鳴らしてクリスマスと初詣を一度にやる日本人の私が言えたことではないですね……ん?」
「どうした? どの祭壇もちょっと前に使ったから問題はないはずだが」
「この祭壇、全部盗品みたいなんですが……」
「………………」
「目を逸らさないでください。……盗みましたね?」
「若い頃は、その……少しばかりヤンチャをしていた時期もあってな?」
「……そのうち、天罰が下りますよ?」
「知ってるか? 天罰はホーリーヴェイルで防げるんだ。……魔法強化の割合が10000%ほど必要だがな」
「………………」
「どうした? 道端でうっかりゲロゲロを踏みつけたような様な顔をして」
「いえ……忘れかけていましたがイリアスさんも廃人と呼ばれる人でしたね、そういえば……」
「……今は俺のことはどうでもいいだろう。とにかく、マテリアルを大量に集めるためにはマニの信仰が必要だ。雪音はまだ信仰をしていなかったな?」
「はい。必要性を感じなかったので」
「あともう一つ聞いておく。……元の世界では信仰をしていたか?」
「うーん、どうなんでしょう。信仰していたとも、してなかったとも言えますね……」
「さっきも聞いていて思ったが、お前の世界の神はどういう神経をしているんだ? 話を聞く限り、お前の世界ではどうも民族単位で3つほど信仰を掛け持ちしているように聞こえるのだが」
「こちらの世界の神様は、影響力が弱いと言うか……居るかどうかもわからないので」
「全く、とんでもない世界だな……」
「いえいえ、イルヴァに比べたらそれほどでもないですよ。……話が長くなっちゃいましたね。どうすればいいんですか?」
「祭壇の前で祈れ。特に形式とかはないから気楽にやればいい」
「やっぱりこっちの神様ってすごく身近な感じがしますね……では早速」
私は手を合わせて目を閉じ……神に祈りました。
────「入信者か。私の名を貶めないよう励むがいい」────
そんな声が聞こえたかと思うと、周りの空気が──世界が変わったように感じました。
なるほど、これが……
「これが信仰、ですか」
「ああ、どうやら問題なく信仰できたようだな」
「はい。キャラクターシートも問題なく機械のマニを表示しています……何も起こりませんでしたね」
「ああ。
「ええ、
……私達は、信仰をするにあたっていくつか問題が起こる可能性があると考えていました。
なぜかと言うと、
普通なら信仰が表示され、どの神も信仰していない場合でさえ『無のエイス』と表示されるはずなのです。
しかし、私の信仰は『????』と表示されていました。
こうなった原因はいくつか考えられます。
1つ。
私の世界の信仰を、この世界のキャラクターシートが認識できなかったから。
1つ。
この世界のルールにおいて、同時に複数の信仰をすることは想定外だったから。
……世界自体が違うのです。問題の1つや2つ、起こることは仕方がないでしょう。
問題となるのは
私がこの世界に来てから、研究に10年、鍛錬に10年……すでに20年以上が経過しましたが、問題は何も起こっていません。
ですが、たとえ今大丈夫だとしても、明らかになにか問題が起こっているであろうところを下手にかき回したら何が起こるかわかりません。
それゆえ、必要性を感じなかったこともあって神を信仰しないようにしていたのですが……そうも言っていられなくなりました。
別にペット式マニマテリアルマイニングをしても良かったのですが……研究の方も思いつく限りのことはやってきたのでそろそろ新たな切り口が欲しかったこともあり、私達は……私は、マニを信仰することに決めました。
とはいえ、全くの無策ではありません。
可能な限りの対策……突然の大ダメージを受けたときのためにダメージを完全に無効化にする盾を貸してもらい、何らかの事故が起きて更に別の世界に行ってしまったときのことも考えて帰還の魔法や巻物、懐かしいルーンなどを用意し、焼け石に水かもしれませんがホーリーヴェイルや契約の魔法まで掛けました。
そこまでの用意をして、万全の状態でマニを信仰してみたのですが……何も起こりませんでした。
「天罰でも下れば私の世界へのアクセスルートを観測できるかもしれないと思ったんですが……そう甘くはないようですね」
「だが、一番無難なパターンだ。特に良いことも悪いことも起こらないというのはな……無事で良かった」
「ふふ……心配してくれたんですか?」
「それはそうだろう。それなりに長い付き合いだ」
そういう言葉がほしかったわけではないんですが。
イリアスさんはシュナックさんやダルノさん、マーレスさんとも結婚しているので仕方がないのかもしれませんね……。
「はぁ…………いずれにしても問題なくマニ信仰はできたので当初の予定通り、マニマテリアルマイニングをからの下落転生、収穫ループを目指しましょう」
そうすれば、すくつ1000層……それだけでなく全能力カンストまでが見えてきます。
そうすれば………………。
……………………。
………………私は最初に決めたのです。
必ず、《願いを成就させる》と。
「地雷が落ちたら分解術。地雷が落ちたら分解術。地雷が落ちたら分解術……」
私は今、かれこれ35時間ほどシェルター内で地雷犬に乗馬して地雷を解体し続けています。
なぜ私はこんなことをしているのでしょうか。
確か……そうそう、マテリアルを手に入れるためでした。
特に下落のポーションの材料になる混沌の石は一番出てこないのでその数だけ見ていればいいとも言われていたのでした。
今、いくつぐらいあるんでしょう……。
「1458個……」
どうなんでしょう。
まだまだ足りないような気もします。
それにしてもさっきから妙にクラクラします。
なんででしょう。
体の動きもなんだかにぶい気がしますし、心臓の音がやけに大きく聞こえ、て……!
「
あ、危なかった……! 危うく餓死するところでした!
今日はもうここまでにしたほうが良さそうです……。
私は
「……ナイス、タイミング」
「あ……シュナックちゃん」
シュナックちゃんの手には湯気を上げる大きな肉の大葉焼きが乗った皿がありました。
「これ……ご主人様が。そろそろご飯忘れて餓死しかけてる頃だろう、って」
「……! ありがとうございます。わざわざ持ってきてくれて……イリアスさんにも後でお礼、言わなきゃいけませんね」
何でしょう。
なんだか、涙が出そうになりました。
少しはしたないですが、もう限界なので立ったまま大葉焼きを口に運びました。
「おいしい……」
嬉しいです。
嬉しい、ですが。
……このままだと、揺らいでしまいそうです。
たとえ揺らいだとしても……やめるつもりも、ないですが。
「ところでこれ、何の肉なんです?」
「……大丈夫。毒はない」
「…………まあ毒がないなら問題ないですね」
除夜の鐘を鳴らしてクリスマスと初詣:
寺と教会と神社はすべて別の神の施設である。
elonaの世界なら天罰が2回は下っている。
マニの分解術:
機械のマニを信仰していると使えるようになるスキル。
足元にある罠を解体してマテリアルに変えることが出来る。
SESTでは強化され、あらゆるマテリアルを入手できる非常に有用なスキル。
ただし、
罠 解 体 ス キ ル に 経 験 値 が 入 ら な い 。
畜生これだからマニは!