すくつ廃人が少女をすくつに潜れるようになるまで鍛え上げるお話 作:ニカン
結局、あのあと一晩ゆっくり休んでから私は下落転生を行いました。
下落転生。
ある程度習得が高くなった状態でレベルを1まで下げ、そのままレベルを1上げて、また下げて……
それを繰り返すことで
とはいえ、1000服以上もある下落のポーションを一度に服用するのは無理があるので数日に分けて行いましたが。
……前に一度だけ会ったことがある
流石に私はそこまでする勇気も理由もありません。
ともあれ、下落転生で大量のBPを手に入れた私は暗記スキルをカンストさせ収穫ループをやってみたのです。
「……イリアスさんの金遣いがひどく適当な理由がようやくわかりました」
なるほど、確かにこうなってしまえばお金の使い方などどうでも良くなりますね。
私の前にはシェルターを埋め尽くすほどの金貨の山と、数百本の願いの杖が転がっていました。
一晩ほど収穫ループを繰り返しただけでこれです。
……私は願いの杖を一本拾い、使ってみました。
真田 雪音は願いの杖を振った。何を願う?「スキル魔力!!」真田 雪音は魔力の上昇を感じた。
あまりにあっさりと。今までの苦労は何だったのかと思うくらい。
魔力が少し、上がりました。
「最近は潜在能力のポーションを飲みながらキューブ工場でグレネード武器を振り回してても殆ど上がらなかったのになぁ……」
しかも、願いの杖はまだ何百本もあります。
……これなら、魔力カンストだって簡単にできてしまいます。
いえ、数日掛けて願いの杖をさらに集めればすべての能力をカンストさせることだって……。
…………。
私は、収穫ループを再開しました。
私は願いで主能力をすべてカンストさせたあと、願いの杖のついでに手に入れた金貨でブラックマーケットに行って装備を整え、金貨と一緒に降ってきた小さなメダルをミラルさんに渡して★ヘルメスの血と交換してもらい、祝福してそれを飲み干し、万全の状態でふたたびすくつの攻略をし始めました。
リベンジです。
ですが…………なぜか、あれほど苦戦したはずのすくつがやけに味気なく感じます。
一度、盾バッシュを食らいましたが問題はありませんでした。
音耐性はおそらく、正確には衝撃耐性というのが正しいのでしょう。
盾で殴られたにもかかわらず、せいぜい軽く押された程度にしか感じません。
問題は、何もありません。
潜って、潜って、潜って、潜って、潜って、ボスを倒して。
潜って、潜って、潜って、潜って、潜って、ボスを倒してまた潜って。
潜って、潜って、潜って…………そういえば今、何層ぐらいなんでしょう。
私は、何気なく階層を確認しました。
1058層でした。
「………………」
特に、感動はありませんでした。
称号も手に入れましたが、特に使う予定もありません。
そもそも、すくつに潜っていたのは自身の実力を確かめるためです。
主能力がカンストした今、そもそも潜る理由もなかったのかもしれません。
帰還するための魔法も、すでに完成が見えてきています。
何度か実験もしていて、向こうの物品を呼び寄せたり、逆に小さな物品を向こう側に送ったり、更にはその物品を再召喚することにも成功しています。
帰還する時間の指定にも成功しました。
とは言っても、現在時間から前後に20年ほどしかずらせないようですが。
これなら、私が消えてしまった日時から数年……条件と制約を突き詰めて行けば、あの瞬間から数ヶ月ほど経過した時間まで戻ることができそうです。
消費する魔力が膨大になりすぎて、かなり強烈な制約をつけなければ唱えられないものになりそうですが……それでも、レベル300程度まで強化した魔法強化生き武器と魔力を上昇させる生き武器があれば理論上、十分に発動・帰還が可能です。
さて。そうなると。
あと、しなければならないことは……魔力と、魔法威力を極限まで強化する生き武器を作ること、ぐらいでしょうか。
着々と、終わりが近づいてきました。
「……成功だな」
「ええ。この結果を見る限り、空間連結定義をおこなう式を拡張して世界間を横断可能とすることには成功したと見ても良さそうですね」
「となると、あと達成しなければならないのは……転移先の4次元まで含めた空間座標のアジャストを行う計算式の精度を高めることぐらいか?」
「ええと……はい、そのくらいですね。この前なんて転移先の座標設定を絶対座標系にしたせいで自転と公転の速度についていけずに宇宙の塵になっちゃいましたからね……」
「まあ、実験に失敗はつきものだ……理由がわかる失敗ならそれだけ先に進むことが出来るから問題はない」
「ですね理由さえわかっていれば、いくらでも……理由さえ…………」
理由がわかっていても。
排除できない問題は、どうすれば良いのでしょうか。
────ああ、いけませんね。
最近……こういう思考をすることが多すぎます。
私はもう、決めたではありませんか。
私は必ず、最初の願いを成就させると。
それでも、この思考をやめられないのは────未練が、できてしまったからでしょうか。
あなたを。愛してしまったからでしょうか。
それでも。
……それでも。
絶対に。私は必ず帰還すると。
私はそう、決めたのです。
「ネズミを使っての送還・再召喚実験も問題なし。日時指定、送還位置情報の調整もミスはないな……」
「私も何度か見直しましたが大丈夫だと思います。魔力の使用率は余裕を持って9割、不確定要素も可能な限り排除済み。帰る準備もバッチリです。年齢の調整もしましたし服装も……あの時のものをそのままです」
すべての準備が整いました。
…………整って、しまいました。
あと数分で帰還のために開発した、自身の願いを具現化する魔法……*成就*が発動可能になります。
やはり世界を超える、というのは非常に大きな力が必要らしく、かなり魔力消費が大きい魔法になってしまいました。
また、限界まで過去に飛ぶように設定したためその分の魔力消費を抑えるために制約もかなり強烈なものになっています。
ちなみに、制約は一度唱えたら50年の冷却期間が必要で、12月24日の、夜にのみ唱えられる、というものになりました。
「イリアスさん。今まで……本当にありがとうございます。あなたの手助けがなければここまで来ることができたとは……」
「なに、どうせ暇だったんだ……。それに、ここまでこれたのは9割がたお前の努力によるものだ。俺は効率的な方法を教えたに過ぎん」
「それでも、です。本当に感謝しています。本当に……」
………………。
時間が来ました。
もう、帰らねばなりません。
あの世界に帰りたいと叫ぶ、私の感情のために。
私の帰りを待っているであろう、両親のために。
そして何より。
私の……《廃人》たる私の、意思を貫くために。
「イリアスさん」
「何だ?」
「伝えたいことがあります」
「そうか」
イリアスさんは……最後までぶっきらぼうなままでした。
「今までありがとうございました。あなたのおかげでここまで来ることができました。……思えば、色々なことをあなたに教えてもらいました」
「バブル工場、収穫ループ。下落転生に……ああ、この世界の常識なんかも教えてくれましたね」
今までのことが……いくつも脳裏をよぎっていきます。
「本当に。本当に色々なことを教えて、見せてもらいました。……《廃人》としての、生き様も」
言葉に、力がこもっていきます。
力強く、私の意思を載せて。
「あなたが教えてくれました。 ……どんな手段を使ってでも目的を達成するのが《廃人》だと!」
もう、止められません。
「だから私は……私はッ! どんな手段を使ってでもッ! たとえ何があろうとも必ずッ! 『あの世界に帰ってみせる』と! そう、決めたんです!!」
止めるつもりも、ありません。
「私は……! あの世界に帰還します! 今までありがとうございました! …………愛しています! 好きでした! そして……」
さようなら。
真田 雪音は*
時空を捻じ曲げ強固な次元の壁に穴を開けて、真田 雪音は*帰還*した。
《廃人》の真田 雪音 女 16歳 155cm 51kg
種族 : 人 信仰 : 機械のマニ
職業 : 魔術師 所属 : 魔術士ギルド
レベル : 27506
残りBP : 0
金貨 : 2147483647
筋力 : 2205(2000) Superb++生命力 : 103(100)
耐久 : 2220(2000) Superb++マナ : 1266(1246)
器用 : 2256(2000) Superb++ 狂気度 : 0
感覚 : 2225(2000) Superb++ 速度 : 546
習得 : 2238(2000) Superb++ 名声度 : 0
意思 : 2205(2000) Superb++ カルマ : 0
魔力 : 22968(2000) Superb++ DV : 23
魅力 : 2205(2000) Superb++ PV : 680
武器1 : 3346% 3d17+22 x19298
射撃 : 787% 3d6+7 x133.6
回避 : 951%
軽減 : 92% + 27d11