デイジィとアベル(一)決戦前の蜜月   作:江崎栄一

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デイジィとアベルの旅路
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続編
(続編案内)デイジィとアベルの旅路


 その人は、涼しくなり始めた夕暮れどき、僕の前に颯爽と現れた。

 明るいブラウンのロングヘアー。整った顔立ちに、鋭い眼つき。引き締まった首。青いドレスに包まれた身体は、女性らしい、細い流線形をしているが、露出している肩や腕は筋肉質で、よく鍛えこまれていることがわかる。スリットからは太腿の白い肌が覗いていた。

 一見すると気が強そうなだけの、綺麗な若い女性だ。でも、その人は只者ではなかった。僕を恫喝していた三人の屈強な男たちをあっという間に蹴散らしてしまったのだ。

 それは、僕が一人で道具屋の店番をしていたときのことだった。

「シバ、俺は腹ごしらえしてくるから、しばらくの間一人で店番を頼むぞ」

 店主のおじさんは、僕にそう言って店を出て行った。多くの人が行き交う繁華街に構えた店。ここでは薬などの日用品の他に、武器や防具など旅人向けの商品を扱っている。そんなに多くの旅人が来るわけではないので、基本的に客は顔見知りの住民ばかりだ。だから僕のような子供が一人で店番をしていても困るようなことはないはずだった。

 この平和なカザーブの町は、幸いにもまだ魔王バラモスの襲撃を受けていない。バラモス誕生前と変わらず、平和な日々が続いていたが、それにも徐々に変化が現れていた。

 自分の町を破壊されて、行き場を求めてカザーブにやって来る人たちが増えた。それはいいのだが、町中に眼つきの悪い連中がたむろしているのをたびたび見るようになった。そして、強盗や窃盗などの被害が増えてきた。町の自警団が犯人を捜索してみると、大半は外部からやってきた人間の仕業だった。

 旅人相手の商売となると客層は様々で、時には外部から来た荒くれ者の相手もしなければならない。ここにもそういう連中が来て、無理な値切り交渉を仕掛けてきたり、使い物にならない武器や道具を押し売りしてきたことがあった。しかし、店主のおじさんはそういう輩のあしらい方も心得ているので問題なく追い払っていた。

 タイミング悪く、そういう連中がおじさんの留守中に来なければいい。たったの二十分程度の間だし、僕にも大抵の連中は追い払うことができる。

 僕は道路に面したカウンターに座り、人びとの往来を漫然と眺めていた。このカザーブは、アッサラームのような大きな町とは違い人口は多くない。そう頻繁に客も来ない。

「おい、坊主」

 低い声がした。ぼけっとしていて気が付かなかった。顔を上げると、背が高くて筋骨隆々の男がカウンターの向かいに立っていた。

 

 

続く




『デイジィとアベルの旅路』へ続く

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