もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら 作:ひきがやもとまち
「切嗣・・・」
アイリスフィールは作戦会議の後、夫の背をおって城のテラスへやってきていた。
セイバー・オルタから指摘を受けたとき、彼の態度が普段とまったく異なる追い詰められた子供のように見えた気がしたからだった。
「切嗣、あなたは――」
「・・・怖いんだ・・・」
城の前庭を望む小高いテラスで、誰の目も憚る必要のなくなった切嗣は愛する妻の前でついに本音を曝け出す。
「奴が――言峰綺礼が僕を狙ってる。僕は負けるかもしれない。君を犠牲にして戦うのに、イリヤを残したままなのに、僕は・・・いちばん危険な奴が、もう僕に狙いを定めてる。決して逢いたくなかったアイツが!」
そう、それが衛宮切嗣という隠れ潜んで不意打ちするしか能のない臆病極まる暗殺者の本音。
勝てる戦いしかしたくない。確実に殺せると確信できる賭けにしか乗りたくない。五分の条件で互角の勝負なんて冗談ではない。
最低限のリスクで方程式通りに相手を追い詰めることに特化した暗殺者としての必勝法。
それが言峰綺礼には、これから戦う相手には通用しないかもしれないのである。
・・・いや、自分が死ぬだけなら良い。今までたくさんの人の命を殺めてきた人間だ。世界のための犠牲になる覚悟はとうの昔に済ませてある。
だが、今回の戦いは自分の目的のため妻の命を捧げて、娘の将来がかかっている戦いなのだ。負けるわけにはいかないし、娘を残して死ぬだけでも自分にとっては敗北になってしまう。
互角の勝負どころではない。ハンディキャップもいいところだ。不利すぎる態勢で劣勢の中、強敵相手に挑まなければならなくなってしまったのである。
ならばせめて愛する妻を可能な限り戦闘に巻き込まずに済むよう戦わなくてはならないだろう。舞弥は残すが、それでも実力差的には一対一の決闘に近い状態に陥るのはほぼ確実。
慣れてない戦場。場数の少ない決闘。必勝の方程式が構築できない魔術師殺し衛宮切嗣にとっての鬼門を強制してくる相手――言峰綺礼。
そんな天敵に狙われていることが判明したばかりなのだ。普段は冷静沈着を己に義務として課している彼だって誰かに縋らなければ正常な判断能力を維持できなくなるときだって希にはある。
「切嗣・・・あなた一人を戦わせはしない。
私が守る。セイバーが守る。それに・・・舞弥さんも、いる。
今までのあなたはそうだったとしても、今のあなたは一人じゃないのよ・・・」
そう言って夫を優しく抱きしめながら、子供をあやすように優しく頭を撫でてくれるアイリスフィール。
召喚されたセイバーがオルタ化してたことによる微妙な世界観の変化に影響されたものなのか、アイリスフィールの母性は本来の世界線より向上しており夫に対して子供を守る母親のような行動に出るときがこの世界の彼女には希にある。
――いや、ただ単に手間のかかる大きな子供が一人増えただけが原因なのかもしれないけれども・・・・・・。
「戦場でラブロマンスか・・・結構なことだ。生きて帰ったら結婚する等という話をしていた歩卒はたいてい死ぬらしいからな」
前庭を望めるテラスを望める城の一角にある廊下の柱に寄りかかりながら、セイバー・オルタは主夫婦のラブシーンを見物していた。
アインツベルン城は魔術師の住まう城とは言え、あくまで人間の魔術師が造らせた城であり、ホムンクルスが管理している拠点である。人間の限界を遙かに超越した身体能力と視力を持つサーヴァントを基準に建てられている建築物ではない。
だからアーチャー程ではなくとも、セイバーの目から見れば丸見えで、人間の視力では魔術で強化してやっと見えるぐらいの距離や配置や位置を計算して造られたテラスなど、出歯亀するのに大した障害にはならなかったのである。
「・・・セイバー、覗き見はあまり感心しませんが?」
「なにを言う、マイヤ。私は覗いているのではない。マスターが愛する妻と後顧の憂いなく抱擁し合えるよう無防備な背中を守ってやっているのだ。女を抱く瞬間ほど男が油断する時間はこの世にないことを忘れたか?」
一理ある。舞弥はセイバーの発言内容に“だけ”納得して頷いた。本音が別にあるだろうことは承知の上だったし、切嗣を完成させる機械でしかない自分には他人の真偽など問う意思は端から持ち合わせていない。
実際問題、愛する女性と仲良く伽をしている最中や、伽を終えてグッスリ眠っている事後に寝首をかかれて死んだ英雄豪傑というのは意外なほど多いのである。
極端な話、神話上の怪物でさえ似たような死因で殺された奴は大勢いる。酒とか宝石とか女とか。特に最強の幻想種ドラゴンなんかはこれらが理由で死にやすい。
人間とあんまし変わらない気がするが、黄身のない卵で殴られて死ぬことは、竜に出来ても人間には出来ない。一体どういう理屈で死んだんだろうか、エレンツェル・・・。
話それてきたので閑話休題。
ちなみに舞弥は主夫婦のラブシーンを出歯亀するために来ているのではなくて、セイバーが切嗣を直接見ながら奇襲を警戒してくれるらしいから、自分は敵が狙撃してきたら狙撃ポイントを発見できるよう城の周囲を索敵するため着いてきただけであり、さっきから赤外線カメラでテラスとは逆方向ばかりを凝視し続けている。決して覗き魔などしておりません。
「仮にも、誇り高き騎士道の祖たる騎士王が他人の恋路を覗き見するのは野暮というものではないかと思うのですが・・・」
「もはや王も騎士もない。私はマスターを守り、勝利をもたらすためのサーヴァントだ。主を狙う不定な輩からの奇襲を警戒する義務がある」
一理ある。・・・けど、なんか釈然としない。言い訳臭い。
そう思わなくもなかったけど、自分を切嗣を完成させるための機械の一つと定義している彼女には確信が持てなかったため黙っておいた。基本的には切嗣の言いなりで余計なことは言わない性質の女性であり、必要不必要を考えるのも切嗣がメインなので慣れてないことには適切に対応できないことが彼女の欠点とも言えた。
「それにアイリスフィールが言うには、私も貴様もマスターを守り、共に戦う同士の一人ということになっているらしい。
寂しがり屋で泣き虫なご主人様を一人きりにしないのも、サーヴァントでありメイドでもある私の義務であり使命なのだ。この役は断じて譲れんな」
「・・・・・・」
そう言われてしまうと舞弥としても反論しようがない。
特に。――未だに変な改造メイド服から着替えていない騎士王様の英霊から断言された日には、何言っても無駄な気がするから何ひとつ反論なんて不可能だったから・・・・・・。
「・・・・・・っ!!」
そして、その次の瞬間。
彼女とアイリスフィール、そして衛宮切嗣の魔術回路に白熱した波動が感じられた。
それは主と認識の一部を共有しているセイバー・オルタにも届けられ、騎士とマスターの主従は期せずして異口同音に同じ言葉を同じタイミングでつぶやくのであった。
「「――早速か(い)。舞弥が立つ前で幸いだった(な)。今なら総出で迎撃が出来る。
アイリ(マイヤ)、遠見の水晶球を用意してくれ(できるか?)」」
ふたたびサロンに集結し直したアインツベルン陣営、切嗣、舞弥、セイバーを前にしてアイリスフィールはアインツベルン城を覆う森の結界が捉えた侵入者の映像を水晶球に投影して見せた。
「こいつが、例のキャスターかい?」
「ええ。間違いないわ。お城に来る途中で出会ったヘンタ――いえ、キャスターのサーヴァント ジル・ド・レェで間違いないわ」
初めてその姿を目にする切嗣に問われて、アイリスフィールは頷いて答える。
なんか途中で変な単語が混ざりかけてた気がするけど、事情を知らない初見の切嗣と舞弥にはなんのことだか分からないし、事情を知ってるセイバー・オルタは漢字を言い間違えただけで統治者の資格無しと騒ぎ立てる日本人ではなくケルト人なので、投影されている敵キャスターのことしか今は眼中にない。
考える前にまず戦う。悩み惑うのは戦の後に生き残っていた者のみに与えられる特権である。
故に戦え!戦え! 戦って悩み惑う権利を勝ち取るのだ!・・・それがケルト流です。
なんか戦国日本の英霊にも似たようなのがいそうな気がするけど、所詮は極東の島国民族と極北西の島国民族だから似てる所もあったんだろうきっと。
・・・とは言え、気になる点がないわけでもない・・・。
「でも・・・何のつもりかしら?」
アイリスフィールが訝ったのは、キャスターが先日と違い一人ではなかったことに対してだ。
彼が連れてきたのは十人ばかりの子供たち。いずれもが年端もいかぬ幼子で、みな魔術で操られているのか夢遊病者のように覚束ない足取りでフラフラしながらキャスターの後ろを付いてきている。
まず間違いなく、監督官から通達のあった冬木市近隣から拉致された子供たちであろう。
だが、戦闘用ホムンクルスでもない普通の子供たちを戦場となる場所へ連れてきたのは何の故あってのことなのか? 戦場経験がなく、中世期における戦争の有り様を聖杯戦争に携わる英霊に関連してしか調べていないアイリスフィールには皆目見当が付かない。
だが、壁により掛かって腕を組んでいたセイバー・オルタには大凡の見立てはついているらしく、溜息を吐きながらナニかを諦めるように頭を振って仮初めの主の疑問に答えてやる。
「見ていればすぐにわかるだろうさ。コチラに分からせなければ戦闘の邪魔になる者たちを連れてきた意味もないだろうからな」
使用方法は何であれ、敵陣の前に連れてきたからには敵を倒すために使うつもりなのは明らかであり、城に立てこもる敵に攻める側が行う戦術の基本は城から引きずり出して出戦を強制することである。
ならば、敵に見えない所で策謀をめぐらしてもあまり意味がない。
仮にキャスターとして喚び出されたのが、自分の恋敵ごと敵城を焼き払ったという伝説の魔女、神代の時代を生きたコルキスの王女でもあるなら話は別かもしれないが、近代化が始まった比較的新しい時代のフランス軍人の英雄ジル・ド・レェにそこまでの芸当が期待できるわけも無し。
「まぁ、最初は定石通りに口上から始めて来るのだろうし、吠えるのに飽きたら勝手に動き出すだろう。どう動くかは・・・外れているに越したことはないが、だいたい予測はついている」
『昨夜の約定通り、ジル・ド・レェ罷り越してございます。我が麗しの聖処女ジャンヌに、今一度お目通りを願いたい』
セイバー・オルタの呟きに答えたわけでもないのだろうが、硬い水晶玉の表面が振動して監視先の景色から音声を拾って伝達してきた。
一応、アイリスフィールの顔を見やると出るべきかどうか決め倦ねているらしく、唇を結んで脂汗を浮かべている。
仮とは言え主君から出陣の下知が出されてもいないのに臣下が独断で仕掛けるわけにも行くまいと、彼女は離しかけた背中を再び大理石の壁へと押しつけた。
彼女の中では“今さら行っても手遅れだろう”と、敵の姿を見たときから結論は出されている。結果が同じなら出るのも待つのも同じことでしかない。
子供たちを巻き込みたくない優しい母親アイリスフィールの逡巡を非難する謂われを彼女は持ち合わせていなかった。
だが、キャスターの方では勝手が違うらしい。
彼は侮蔑も露わに鼻で嗤うと、独り芝居のような口上を勝手に再開し始める。
『・・・まぁ、取り急ぎはごゆるりと。私も気長にまたせていただくつもりで、それなりの準備をして参りましたからね。
なに、他愛もない遊戯なのですが――少々、お庭の隅をお借りいたしますよ?』
キャスターがわざとらしく許しを求めながらも返事は待たず、指をパチンと鳴らすと子供たちに意識が戻って我を取り戻す。
まるで夢から覚めたようにたじろいで、途方に暮れた様子のまま周囲を見渡す子供たちは自分たちが何処に連れてこられたかも理解できていないらしい。
そんな子供たちの一人にたいして、キャスターは笑顔で頭に手を乗せて、
『さぁさぁ坊やたち、鬼ごっこを始めますよ。ルールは簡単。この私から逃げ切ればいいだけです。さもなくば――』
グシャッ!!!
『――こうなってしまいます。怖い鬼さんに捕まって殺されないよう、精一杯大きな声で助けを求めて泣き叫びながら逃げ回りましょうね?』
割れ砕ける頭蓋の音と、飛び散る脳症と目玉の放物線。それらは先ほどまで見ていた夢の国から、現実の悪夢の世界へ子供たちを引きずり込もうとする悪魔の音色。
痛ましい悲鳴を上げて逃げ惑う子供たち。その中心に立つキャスターは愉快そうに哄笑しながら、血まみれの手を舌でゾロリと舐め上げる。
『さァお逃げなさい。100を数えたら追いかけますよ? ねぇジャンヌ。私が全員捕まえるまでどのぐらいかかりますかねェ?』
勝ち誇った笑みを浮かべて、残忍に冷酷に非情に嗤うキャスターのサーヴァント、狂気の英霊ジル・ド・レェ。
青髭の異名を持つ英仏百年戦争時代に最低最悪を極めた快楽猟奇殺人鬼が、罪なき子供たちの無垢なる魂を刈り取るため死神の鎌を振るい始める!!!
――が、しかし。
「「・・・・・・」」
セイバー陣営のマスターとサーヴァントは冷静だった。静かな瞳で投影された悲惨な映像を眺めながらアイコンタクトを取り、無言の内に対策協議を推し進めていく。
切嗣にとっては、見慣れた光景だ。基本的にエゴイストで一般人の命など魔術研究の材料としか思っていないヒトデナシ連中が魔術師なのだから、そいつらの中で一際ヒドいのを優先的に狩り殺してきた彼にとっては大して珍しくもないレベルの凄惨さ。
対してセイバー・オルタにとっては別の意味で見慣れた光景である。
近代戦と違って戦時条約のない中世の籠城戦では、攻城する軍がしばしば使う常套手段でしかなかったからだ。
戦が始まる際、付近の村に住む村民たちは戦いに巻き込まれないよう城に逃げ込むか、近くの山地や近隣の村に親戚を頼ってすがる場合が多かったのだが、堅牢な城を攻めあぐねた敵軍は人狩りをおこなって何十人かを捕らえて縛り上げ、城門前まで引き出してから首を斬り、『付近の村々をコイツらのように殺されたくなければ城を出て俺たちと戦え!』と大声で嘲笑しながら叫んで挑発してくるのが、セイバー・オルタの生きたとされる時代では常だった。
籠城する道を選んだ以上、城の付近に住む村人たちは見捨てなければならない。
それがイヤなら最初から籠城戦など選ぶべきではない。――それが黒く染まった騎士王による合理的判断の仕方であった。
この場合、彼女がおこなわせてきた手段は一つ。弓兵に矢を射かけさせて、敵に殺される前に自分たちの手で捕らわれた民たちを殺してやることだけだった。
それによってそれ以上の苦しみを味わわなくて済むよう終わらせてやる、それ以外に取れる手段は籠城を選んだ側に存在していなかったから。
無論、助けられるものなら助けてやりたいと思う。
だが、そもそも住人を巻き込まずに戦うためなら接近してくる前に出撃して迎撃してしまえばよいだけであり、それが出来ない不利な情勢下にあるからこそ城に立てこもって亀のように守りに徹する籠城戦を選んだはず。
犠牲を覚悟で選んだ選択肢を貫徹できもせず、半端な形で自ら立てた戦略を崩壊させてしまう指揮官に、人の上に立って人を殺させる資格はない。
――自分の力ではどうしようもなかったから選ばざるを得なくなった悲劇を前に、善意や努力だけでどうにか出来るなどと増長して思い上がった末、救えたはずの者まで死なせてしまう無能な人殺し武将なら死んでしまえ!
・・・所詮は祖国を救うため、臣下が死のうと人々が苦しもうとなにも感じなくなる暴君となる道を選んだ女である。ましてや他国人の子供が何人死のうと泣き叫ぼうとも痛む心などとうの昔に捨て去ってきている・・・。
と、思っていたところ。
「セイバー、キャスターを倒して」
「・・・・・・は?」
割り切ってるが故に、映像を見て悩むのをやめたアイリスフィールからの命令に対する黒く染まった騎士王の返答は愚鈍だった。
有り体に言って『何言ってんのコイツ?』と言い足そうな瞳で見返し、仮初めの主からの指示だったこともありマスター(真)に正式な下知を求めて視線を投げかけてみたけど無言のまま息を詰めて水晶玉に映る様相を眺めているだけ。
(・・・まさか!? 先ほどのアレか!? アレなのか!? アイリスフィールに支えられて戦ってることを教えられたから彼女の意思を尊重したい気持ちになってるとかなのか!?
そう言えばコイツ、悪ぶってる割に超がつくほどの子煩悩だったな確か!!)
オルタの予測があってるかどうかは分からないが、少なくとも切嗣にセイバーが出撃するのを止める意思はないらしい。
「早く行ってセイバー! 子供たちが一人でも多く助けられる内に! 速く!!」
「しょ、承知した・・・」
ようやくアイリスフィールの指示に従って動き出し、遅れを取り戻すため大急ぎで駆けだしていたので了承の声が仮マスターの耳に届いたときには既にサロンから城の外へと飛び出し、夜空の宙を舞っていた。
風邪をまとわせ地面に降り立ち、逆巻く突風のごとき勢いで森の中を疾走する。
こうして夜の森の中、裁きの刃と狂笑との第二ラウンドが開始される!!
つづく
『オマケのような次回で使いたい会話シーン紹介』
キャスター「ようこそジャンヌ、お待ちしておりましたよ。さあ坊や、お喜びなさい。敬虔なる神の使いが君を助けてくれるそうだ。はやく聖女様の元へお行きなさい」
幼い子供「びえーっん!!」
ズバッ!!!
・・・・・・コロン。
キャスター「・・・これは、どういうことですかな? ジャンヌ。人々を慈しみ、救済するため我が身も省みず全てを捨てて戦った聖処女である貴女がこのように無体なことを――」
オルタ「私には昔の知り合いに、知り合いたくもなかった性悪で阿婆擦れで執念深くてネチっこいクズ女魔術師がいてな。貴様からは似たような気配が感じられる。あの性根が腐りきったオバサンが掠った子供を元の人間のままでいさせたことは一度もない。相手がキチガイで行動原理が理解できない以上、過去の事例をあてにせざるを得んのは当然のことだ」
キャスター「・・・・・・」
オルタ「それにな、変態キャスター。私は彼らを人として死なせてやっただけのことだ。お前の偏執によってバケモノにされ、もしかしたらという私の希望で藻掻き苦しみながらバケモノとして殺されたのでは、あの子供たちも死に切れまい。殺してやることが唯一残された救済という状況を私は何度も経験している。このような子供だまし黒い私には通じんよ」
キャスター「・・・そうなったかもしれません。ですが、魂は救われたかもしれませんよ? 彼ら報われることなく命を奪われた哀れな幼子たちを神が哀れんで慈悲を与え、魂を天国とやらに導いてくれたかもしれません。そうしていたら彼らは無駄死に―――」
オルタ「はっ! 天国などない。神父どもの言う地獄など何処にも存在せん。もし神が子供らの魂を天界へと誘拐し、天使とやら言うバケモノに変えてしまうと言うのであれば、私が殺す。アーサー・ペンドラゴンが剣によって人としての死という救いを与えよう。それが地上の国を統べる者、王として私が人々に与える最後の慈悲である。異論反論は一切認めない! 神だろうと絶対にだ! それがブリタニアを統べる私の敷いた法だ! 文句があるなら貴様の剣で私を倒して否定して見せろぉぉぉっ!!!」」