もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら 作:ひきがやもとまち
書き直す前の分はとりあえず『ボツ案』って付けておきますけど、邪魔だったら言ってください。即座に削除しますので。
「愚かだな、キャスターよ。実に愚かだ・・・。数的に劣勢な軍が、大軍相手に勝利するには奇襲と騙し討ちが基本であることを忘れたか?
敵がいたぶられる姿を見物するためノコノコ前線まで出張ってきてしまった指揮官としての貴様の甘さが最大の敗因。用兵の基本を学び直してから出直してくるがいい、フランス軍の元帥殿よ」
殴り飛ばして藪に頭から突っ込ませ、未だピクピクと痙攣する以外に動きらしい動きを見せないキャスターに止めを刺すため近づきながら静かな声で終わりを告げるセイバー。
さっき全力投球デッドボールしてしまったばかりだから手元に聖剣はないが・・・たかが魔術師の英霊如き首を掴んで180度ほど回してやれば容易に殺せる。剣がなければ敵を殺せないと言うのでは戦士として話にもなるまい。
あるものは何でも使うは、古来より続く戦場の習いである。近代の戦争は本国からの補給線なくして戦線は維持できないが、それは使用できる弾丸が限定された銃火器が兵器の主力を担うようになったからであって、本来人類の戦争における補給は孫子にもあるとおり『現地調達』こそが基本中の基本だった。
当時をリアルタイムで体感して知っているセイバー・オルタにとっては、人の道を外れた殺し方でも騎士道に悖る行為でも何でもない、当たり前の概念だったから躊躇いはなかったのだが、しかし――――
「む? ・・・なッ――!?」
「・・・どうかしたのか? ランサー」
背後から聞こえてきた驚きの声に、『直感スキル』で嫌な予感を感じて振り返りながら足を止め、こういう行為が嫌いなように設定されている騎士道バカのランサー ディルムッド・オディナに確認を取るセイバー・オルタ。
その血相を変えた表情と、現状に至るまでの我が身を振り返れば何が起きたかは一目瞭然であったが『最悪のタイミング』でもあったため一応の確認は必要不可欠だったのである。
「我が主が危機に瀕している・・・どうやら、俺を残してそちらの本丸に斬り込んだらしい」
言いにくそうに告白された内容は案の定だった。
それにより現時点で何が起きているかたちどころに理解したセイバーは、苦い感情に囚われる。
(まだ止めを刺してなかったのか! あのヘナチョコマスターは・・・ッ!!)
表には出さず、心の中で舌打ちせざるを得ないセイバー・オルタ。
完璧主義者で、確実に相手の息の根を止められる殺し方でなければ安心できないのが自分のマスターが持つ欠点の一つだと彼女は常々感じさせられていた。
それは暗殺者という名の『殺しの専門家』として生きてきた衛宮切嗣だからこその徹底したリアリズムなのだと理解してはいるのだが、戦場を駆け抜けてきたセイバー・オルタから見ると余りにも小綺麗すぎる人の殺し方でしかなかったからである。
要は、殺せれば良いのである。
結果的に敵が死ねばそれで良く、確実な殺し方だろうと不確実な殺し方だろうと、殺された側の死体にとっては何の関係もなく、今日死ぬことと明日死ぬこととの間に『命日が1日ズレる』以上の違いなど生きている間の当人と生き残った者たちにしか存在し得ない。
物語と違って、中世期の歩兵同士がぶつかり合う戦場というのは基本的に敵味方入り乱れて行う乱戦である。一々敵を殺したどうか確認している余裕は滅多にない。
確実に殺すには時間の掛かる状況なら、毒だろうと何だろうと今逃しても後で確実に死ぬように仕向ければ済む話であり、確実に『相手を殺したという確信』が得られなければ安心できない切嗣の臆病さは黒く染まった騎士王から見ると、ハッキリ言って自己満足に類する個人的感情から来る行動に過ぎない。
それがセイバー・オルタから見た、『暗殺者・衛宮切嗣』の持つ致命的な欠点。
だいたい、手段を選ばず相手を殺すと決めた人間が、今さら確実に殺すも何もないと思うのだが・・・・・・そこが世界を救うために心を捨てた機械になりきれないが故に今まで苦しみながら孤軍奮闘してきた切嗣らしい人間性ということなのだろう。
そういう所を気に入っているセイバー・オルタとしては、不本意ながらキャスターを見逃してでもランサーの前に立ちはだかざるをえない。
「では、貴様には悪いが同盟はここまでで決裂だな。私はマスターのサーヴァントとして、マスターの手に入れた貴様のマスターの首級をなんとしても守り切らねばならん立場にあるのだから・・・」
そう告げてランサーの前に立ち、聖剣のない両手で拳を構えざるを得なくなるセイバー。
ここで下手にランサーを通させてしまうと、タイミングによっては厄介なことになりかねないからである。
彼の性格的に、今ここで見逃してマスターが生きていた場合には切嗣のことも見逃してやる気になってくれる可能性は高い。
だがもし切嗣が、ランサーのマスターを殺した直後に到着してしまったらどうなるのか? 全く予測がつかない展開になる以上は確実性を取らざるを得ないのが現状のセイバー・オルタの置かれた立場であった。
一見しただけなら、先程言っていたことと矛盾するように見えるかもしれないが、結局のところ聖杯戦争で敵を殺すのは単純に『聖杯を顕現させる条件として最低6騎の英霊の魂を捧げる必要があるから』でしかなく、マスターやサーヴァントを殺すこと自体は目的でも何でもない。
極端な話、7つの聖杯を集めれば何でも願いを叶えてくれる大聖杯とかが出てきてくれるのであるなら7騎のサーヴァント全員が一致団結して事に当たっても問題なければ矛盾もしない。
それが聖杯戦争という名の『単なる魔術儀式』の実態であった。
過程なのである、こんなものは。
願いを叶えてもらうために必要だからやってるだけの、単なる道程。目的に着くためどうしても通らなければいけない関所を死守している兵士がいるから倒して進むしかないのと全く同じ事。
「・・・セイバー・・・やはり、こうなってしまうのか・・・ッ!!」
「言うな、ランサー。此度の戦はマスターたちの戦であり、我らサーヴァントはただの決闘代理人に過ぎぬはず。もとより我ら自身の栄誉を競う戦いではないのだからな」
「く・・・ッ!」
「貴様とて、この時代の主のためにその槍を捧げた身なのだろう? ならば自分で決めた事への筋を通せ。都合のいいときにだけ騎士道を謳い、サーヴァントの役目を口にするような騎士崩れに自ら成り下がって私を失望させてくれるなよ、ランサー」
挑発して敵の憎しみを自分に集中させるセイバー・オルタ。
「騎士王・・・・・・ッ! 俺は貴様と――ッ!!」
「いいから来い。マスターを救うためにも時間は惜しいだろう?」
「く・・・ッ。ウオオオオオオオオオオオッ!!!」
こうして真夜中のアインツベルンの森で始まる、第三戦目の死闘であったのだけれども。
・・・実のところ話し始めた最初の辺りから、セイバー・オルタは切嗣に警告と緊急事態の到来と避難指示と撤退とを心の中で色々伝えまくってたから精神的に余裕がなく、あんましランサーに自分が何言ってるのか意識していたわけではなかったりする。
とりあえず『いつも通りに敵の悪口言いまくってりゃそれで多分OK!』程度の感覚で痛いところ突かれまくってたランサーとしては堪ったものではなかっただろうけど、この場合悪口言いまくってる側も楽ではなかったりはする。
「・・・終わりだな、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。捨て置けばいずれ絶命するだろうが、倒した相手には確実にとどめを刺すのが僕の流儀だ。
悪く思うなら、自分の傲慢さと思い上がりにでも思っておいてくれ・・・」
アインツベルン城で行われていたケイネスとの戦いに《起源弾》で決着を付けた切嗣は、敵にとどめを刺すため、確実に相手を殺せるよう至近距離から頭に一発撃ち込もうと生ける屍となっていたケイネスへと歩み寄ろうとしていた。
まさにその瞬間こそ、セイバー・オルタから頭の中へ直接警告が届けられた瞬間でもあったのである。
『危機管理―――――――――――ッ!!!!!!』
「うおわぁっ!? な、なんだセイバー!? 何があった!? そして今の意味不明な一言は何だ!?」
『解らん! 貴様に危機を伝えようと強く願ったら何故か聖杯が当世風の適切な言葉として教えられたから使っただけだ! 言葉自体に意味はない! 気にするな!』
驚く切嗣と、急いでいるから気にしないセイバー・オルタ。
――時代差を超えて集まる英霊たちが現代日本で戦えるように必要最低限の現代知識を与える聖杯翻訳システム発動。
尚、泥で汚染されてるから正常に起動せず、異常起動してしまいましたとさ。
『言葉の辞書的な正しさなどどうでもいい! そんなことよりマスター! 緊急事態が! もうすぐ貴様のところへランサーが行く! もし未だ敵に止めを刺せていないなら急いで撃て! 少しでも時間が掛かるようなら今すぐ全速力で逃げ出せ! 私が足止めして時間を稼ぐが長くは保たんぞ!!』
「なんだって!? だ、だがセイバー、お前がちゃんとランサーを足止めしていてくれれば僕は安心して敵にとどめを刺せるんじゃないのか!?」
『アホか!? 向こうは7騎中最速のランサーで霊体化可能で、こっちは若干遅くて敏捷性Aの霊体化不可能セイバークラスだ! 本気で走り出されたら追いつけるか!
そういう策はセイバーじゃなくライダーとして召喚したときのステータスを前提に考えておけぇぇぇぇっい!!!!』
「む、むぅ・・・・・・」
一言呻いて、自分はどうするべきか本気で悩み出す切嗣。
なんとも皮肉な話だが、自分のサーヴァントと妙な信頼関係が結べていた一方で、敵のサーヴァントによりもたらされる危機を彼女の力では絶対乗り越えられない事実を教えられる羽目に陥ってしまっていた。
やはり自分のサーヴァントはもっと慎重に選ぶべきだった・・・・・・そんな悔恨も一瞬だけ頭を過りはしたけれども、そんな余計過ぎることに思考を割いてる余裕は1ミリも存在しない状況だったため、すぐさま忘れ去って消えてしまっていた。
もうすぐここへランサーがやって来るという。セイバーが絶対に間に合わない以上、最悪の場合は自分一人でランサーを相手に逃げ延びて生き残らなければならない状況に陥る可能性が出てきたと言うことである。
・・・もはやこの場はどう足掻こうとも無駄と割り切るしかなさそうだった。真っ向からランサーのサーヴァントに立ち向かって自分に勝機がないことなど考えるまでもなく切嗣にも解っていることであったから、彼が悩んだのは『逃げるか否か』ではなく、『逃げ切るための手段について』である。
今から退却したところで無事に逃げられるかどうかは、かなり危うい。
黒く染まった聖剣ぶん回しながら追いかけてくるセイバーから逃げ回されるのに慣れてしまっている切嗣であっても、セイバーより早い最速のサーヴァント・ランサーから逃げおおせるかどうかと言われたら自信は全く湧いてこない。
何か手段を講じる必要があったのだ。ランサーの追撃を阻むための足止めくらいにはなる、何かの策が・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
そして思いついた策を実行するため、切嗣は右手に保っていたキャレコを倒れて動かぬケイネスへ向け、一発だけ撃ち、そして逃げ出す。
「主よ! ご無事ですか!?」
切嗣が逃げ出した次の瞬間にはランサーが窓ガラスを突き破って城内に侵入し、自分の大切なマスターの悲惨な姿を確認すると、
「ぐぇはっ!?」
「主!?」
突然、ケイネスが痙攣したように体を跳ねさせて血反吐を吐き、助けを求めるように虚ろな瞳で宙を見つめて震える指先を視力の回復していない瞳で見えない誰かに向けノロノロと伸ばされる。
――心臓マッサージの応用だった。心肺停止状態にある相手の心臓に衝撃を与えることで無理矢理にでも再起動させる、戦場を生き抜く過程で切嗣が身につけた特殊技能の一つである。
一般人相手には不可能な力業だが、魔術師相手ならギリギリのところで実現可能なことを彼は『今まで試した結果』から知っていた。
たとえ魔術回路が暴走して魔術師としては再利用できなくなった身体であっても、『少し前まで魔術師だった“物”』としてなら使用可能にできる方法を。
相手の状態に合わせて、どこに何発撃てば即座に、だがその後どうなるかまでは知るよしもない心肺機能の一時的回復方法を彼は熟知していたのである。
何故ならば―――
「・・・ぐぇほッ!? げへッ!? ぐぁわッ!?」
「主! しっかりしてください! 我が主よ!」
敵を足止めするには、重傷を負った味方から助けを求めさせるのが一番だからである。
まず助からない状態であるなら断腸の思いで見捨てることが出来たとしても、助からないかもしれないが、急げば助かるかもしれない・・・! そういう状態にある同胞を見たときには思わず手を差し伸べたくなってしまうのが人間であり人情というものだろう。
まして敵ではなく、親しい人間ならば尚のことだ。
敵であれば非常に徹せられるヒトデナシな魔術師であっても、たった一人の例外にだけは心動かされ、この手に掛かって切嗣に殺された外道魔術師は数知れない。
このとき重要になるのは、重傷者に悲鳴を上げさせることである。そうすれば追っ手は悲鳴を振り切って、『自分は助かるかもしれない味方を見捨てて敵を追うのだ』という精神的圧迫感を与えることが出来るからである。
直接言葉を交わした経験はなくとも、スコープ越しに切嗣から見たランサーの英霊ディルムッド・オディナは相当におめでたい性格と価値基準をもった騎士道バカタイプのサーヴァントである。
守るための騎士道を、救うための騎士道を尊ぶご立派な騎士サマたちには、この手が一番有効だろうと切嗣は予測した。だから使った。
自分には理解できない精神構造をした相手だからこそ、切嗣は完全に計算だけでランサーの次なる動きを予測し切ることが可能だったのである。
「ぐぇはッ!? おぇはッ!? うぇッほ!? うぇッほ!?」
「主よ! お気を確かに! 今ソラウ様の元へお連れいたしますれば、どうか今しばらくお待ちください! 必ずや! 必ずやこのディルムッド・オディナが我が主をお救いして見せます! ですからどうか! お気を確かにお保ちくださいませ!!」
傷だらけの主を抱え、与えるダメージを最小限度に押さえながら可能な範囲で最大速度を維持しつつもランサーは全力疾走でアインツベルンの森を駆け抜けていく。
主を救うために。治療魔術を使うこの出来る主の妻の元へお連れするために。
――皮肉にも、自分と同じだと感じている存在が同じ手で窮地を脱していることを“この男”に伝えてくれることなく全速力で、その場を走り去っていったのだった。
「さて、女よ。ひとつ問おう。
お前たち二人は衛宮切嗣を護るために私に挑みかかってきたようだが・・・それは誰の意思だ? お前たちは誰の意思で戦った?」
「「・・・・・・」」
「女というものは往々にして利己的な生き物だ。それが一人ならず二人までもが衛宮切嗣という一個人のために自らを犠牲にしてでも私に挑みかかってきていたのだとしたら・・・それはつまり衛宮切嗣はお前たちから理解され、全面的に肯定される存在だと言うことになってしまう。
――そんなことは、あり得ない・・・・・・断じて在ってはならない矛盾だ。そんな衛宮切嗣を知らない。まるで理解できない存在だ。
衛宮切嗣は誰にも理解されず、肯定されない、世界と隔絶した魂の持ち主でなければならないのだから・・・・・・」
「――そう在ってくれなければ貴様が困るからだろう? 生臭坊主。
そういう存在で在って欲しいと願うから、其れはそういうものだと信じたがっている。
要は貴様の都合のいい脳内妄想の産物ではないか。実に下らん。
結局のところ、“信じたいこと”を“真実”だと思い込んで、自分が納得したいだけのこと・・・変わらんな、いつの時代も民衆というものは何一つ変わっていない。
自分の不幸を世の中のせいにして、勝手な理屈ばかりを言いたがり、与えてもらうことしか考えようともしない。その愚かしさは時代が変わっても何一つ変わることが出来ていない。
ああ、そうとも。私はお前のような奴が嫌いだ。
お前のような求道者ぶった救いようもなく、救う価値もない、自分の意思で自分の人生を生きなくなったブタ以下の“愚民”は、殺したくて殺したくて仕方がないほど私は大嫌いで大嫌いで仕方がない!!!!」
次話、セイバー・オルタ初めて大激怒する?のかもしれませんね~(*´▽`*)
オマケ『何故オルタがアイリスフィールたちの救援に間に合ったのかの理由説明』
オル「ランサーに横すり抜けられた瞬間に追いつけるはずないと割り切って諦めたので、さっき聞こえた馬鹿デカい爆音の方に来てみたら、アイリスフィールたちが倒されてたから魔力ブーストダッシュして来た。いくら離れていても、大木を蹴りでへし折る轟音は流石に聞き逃せんからな」
アイリ「ま、まぁ、あの大音量だとさすがにね~・・・・・・」
「・・・・・・(明らかに幸運値低そうな、後に地獄から蘇ってくる麻婆神父)」