もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら 作:ひきがやもとまち
ちなみにボツにした理由は『予想外に長くなりすぎてしまったから』だった次第です。
Aバージョンと、Bバージョンの2パターンありますので最初の出だしが同じでも間違って出したわけではありませんので指摘はしないで頂けると助かります。
『1話Aバージョン』
「あんた誰?」
抜けるような青空をバックに座り込みながら少年が発した、自らの召喚者へ問うための言葉を耳にした瞬間、キリツグ・アインツベルン・エ・ミヤ・ユスティーツァは愕然とさせられた。
(・・・・・・日本人ッ!?)
豊かな草原が広がる中央に石造りの巨大な城がそびえ立ち、その中庭に黒いマントを上から纏って古風な学生服を身につけた少年少女たちが、杖を片手に一人の美しい少女と、この世界では風変わりな現代風の衣装を纏った少年を中心におき円を描くように集まっている。
ヨーロッパのファンタジー映画にでも出てきそうな、そんな風景。
そんな中で聞かされた今の言語は、この世界の人間たちには『只一人の例外』を除いて意味不明な言語により紡がれたモノ。
キリツグがまだ切嗣だった頃の民族的な意味における母国であり、一応は国籍を有していた祖国でもある国の言葉。
そして―――あの忌まわしいイカレタ魔術儀式を何百年も前から行い続けてきた“魔術師殺し”衛宮切嗣にとっての終焉の地にして、衛宮士郎の義父としての始まりと終わりを迎えた土地で使われていた懐かしくも忌々しい言葉の一つ・・・・・・。
それは、キリツグだった頃の彼女が犯してきた失敗人生の中で最たるモノを思い出させられるイヤな言語だ。訳もわからず座り込んだまま平和ボケした間抜け面で相手を見上げてきている日本人らしい反応が、尚更にあの『おめでたい騎士道バカ王様』を連想してしまって思わず苦虫を噛む思いを味あわされてしまいそうになる。
相手にも自分が生きた時代と立場があることは重々承知していたし、だからこそ「合わない」と感じて最初からコミュニケーションを断ってきた相手であったが、やはり彼の名高き『男装した美少女騎士王さま』の考え方と思想はキリツグとなった今の彼女にとっても不快感をそそられてしまう戦争賛美論の一種のように感じられて仕方がなかったから・・・・・・。
まぁ、そんな感じで幼馴染みと一緒に入学してから数年が経過していたトリステイン魔法学院での進級に必要な儀式として、『使い魔召喚の儀』である【サモン・サーヴァント】によって喚び出された使い魔が予想してたのと違いすぎる姿形をしてたからキリツグも揃って驚く、かつてのアインツベルン城での一幕を知らず知らずのうちに再現してしまったせいで思考が完全に異世界チキュウへ飛んでいってしまっており。
死んだ後だけどサーヴァントじゃないから、本体が今の自分で影だけ派遣するとかできないキリツグちゃんはフリーズしたまま色々聞き流してしまったことに気づくことなく。
「ねえ」
「はい?」
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
気づいた時には既に、『どうしようもなくなっていて』手遅れになった後だった。
こうして彼は再び守れることなく、失ってしまう―――。
―――チュッ。
実の愛娘のように思って大切にしていた少女(の純潔)を。
どこの馬の骨ともわからない男に奪われてしまうという悲劇(逆位置解釈)を見ていることしか出来なかった自分自身の過ちを、再び繰り返してしまうことしか出来なかったのだ―――
「な、なにするんだよお前! いきなりキスなんかしやがって!」
「・・・し、仕方ないじゃないの! 使い魔と契約の方法がキスって決まってたんだから!」
「知るか!」
「私だって、ふぁ、ファーストキスだったんだからね!」
「なっ・・・!?」
何かしら相手の少年の方でも思うところか事情があったらしい、この異世界的に重要なルイズの発言だったわけなのだけれども。
生憎と、世界の非常さを覆すためにそれ以上の非常さを志した己の過去を呪い、大切に思った愛しい誰か一人の命を世界全てを滅ぼしてでも守りたい道を選ぶようになった元男の、再び同じ過ちを繰り返してしまった慟哭と比較すれば。
世界の意思など、常識を逸した天命を帯びた聖者の類いの使命など。
汚染され尽くして呪われた泥のように価値のない、殺すしかないゴミのような存在と等価値にしか思えなくなっていたのだから・・・・・・
「なんなんだあんたr―――」
ゴリッ。
「え・・・?」
負けん気が強く、ムカつく相手には勝てないと思っても刃向かってしまう生意気な性格を持つ現代日本人の少年・平賀才人は、一瞬前まで理不尽な境遇をいきなり押しつけられて怒鳴り散らしていた怒りを、どこか遠くの世界へ永久追放させてくれそうな不吉すぎる音を耳にした瞬間に一先ずだけでも棚に上げて押し黙る。
そして、青ざめる。
・・・いや、まさかそんな、ありえないって。今の音は刑事ドラマとかでよく聞く音ににてるけど、それはないだろ。ないない絶対ありえない。この人たちだって、ただの金目的な新興宗教の人たちで、俺をワナにはめて眠らせて誘拐して親父から金取りたいだけに決まっているんだ間違いないって絶対に。
そうだよな? そうなんだよな!? 嘘じゃないって言ってくれ本当に! まさか本当にこの平和な日本で、アレいきなりぶっ放しにくる人なんているはずがないって、俺に信じさせてくれ現代日本の平和な常識ぃぃぃぃぃッ!!!
「あっはっはっは。君、今の対応はちょっと良くなかったなー。ボクから見てさえ、男として恥ずべき行為だったと言わざるを得ない程にだ。
少なくとも、女の子の唇を強引に奪った男がしていい態度じゃあなかった。そうは思わないのかな君は?」
「い、いやあの・・・俺がキスされた側であって、被害者はむしろ俺の方なんじゃないかと・・・」
ゴリッ。
「黙れ。自分を殺されたくなければ、声を立てずに後ろも向くな。大人しく頭を垂れて分際を弁えて、自分の犯してしまった罪を謝罪して悔い改めろ。
こんなにも可愛いボクのルイズから純潔を強引に奪っていった男を今すぐ殺さないでいるのは、とてもとても難しい・・・っ」
「は、はい! 了解しました! イエス・サー!!」
――間違いない、この人たちは新興宗教の人たちじゃなくて・・・ヤクザだ。このままだと自分は殺されてしまう・・・!!
深刻な死の危険がすぐ後ろまで迫ってきていることに、才人はようやく自分のしでかしてしまった考えなしの行動に際限ない後悔が湧き上がってくるのを実感させられる。
戻りたい・・・! できることなら修理したノートパソコン片手に家に帰っている途中だった自分の目の前に突然現れた光る鏡みたいな超常現象に、平凡な毎日の中でのちょっとした刺激を求めて好奇心からくぐってしまった少し前の自分を撃ち殺してでも入れ替わって元の東京に戻りたい! 悪夢なら早く覚めてくれー!
そう心の底から願望を抱かずにはいられない大ピンチな状況にある才人だったけど、残念ながらこの異世界で彼が無慈悲な銃弾により心臓を穿たれてもたぶん助かることはなく、助けてくれるハーフエルフとか近くにいなかったら普通に死ぬと思うので、冗談じゃなく誰か助けてあげてください本当に。
「・・・だいたい君はなんなんだ・・・? 」
『1話Bバージョン』
「あんた誰?」
抜けるような青空をバックに座り込みながら少年が発した、自らの召喚者へ問うための言葉を耳にした瞬間、キリツグ・アインツベルン・エ・ミヤ・ユスティーツァは愕然とさせられた。
(・・・・・・日本人ッ!?)
豊かな草原が広がる中央に石造りの巨大な城がそびえ立ち、その中庭に黒いマントを上から纏って古風な学生服を身につけた少年少女たちが、杖を片手に一人の美しい少女と、この世界では風変わりな現代風の衣装を纏った少年を中心におき円を描くように集まっている。
ヨーロッパのファンタジー映画にでも出てきそうな、そんな風景。
その中で聞かされた今の言語は、この世界の人間たちには『只一人の例外』を除いて意味不明な言語により紡がれたモノ。
キリツグがまだ切嗣だった頃の民族的な意味における母国であり、一応は国籍を有していた祖国でもある国の言葉。仮にも生国ではあったから、どこの国より従来に馴染んで紛れ込むのが容易かったことを、吸い慣れたタバコの銘柄と共に思い出す。
そして―――あの忌まわしいイカレタ魔術儀式を何百年も前から行い続けてきた“魔術師殺し”衛宮切嗣にとっての終焉の地にして、衛宮士郎の義父としての始まりと終わりを迎えた土地で使われていた懐かしくも忌々しい言葉の一つ・・・・・・。
それは、キリツグだった頃の彼女が犯してきた失敗人生の中で最たるモノを思い出させられるイヤな言語だ。
訳もわからず座り込んだまま、自分が何処に“どんな身分”で喚び出されてしまったのかも解らないまま考えようともしていない顔で相手のことを見上げてくる平和ボケした日本人らしい反応が、尚更に『おめでたい騎士道バカ王様』を連想してしまいそうになって苦虫を噛む思いを味あわされてしまっていた。
相手にも自分が生きた時代と立場があることは重々承知していたし、だからこそ「合わない」と感じて最初からコミュニケーションを断ってきた相手でもあったが、やはり彼の名高き『男装した美少女騎士王さま』の考え方と思想はキリツグとなった今の彼女から見ても不快感をそそられてしまう、戦争賛美論の一種のように感じられて仕方がなかったから・・・・・・。
「・・・・・・」
そんな理由で昔の世界に記憶と意識をトリップさせていたキリツグ・アインツベルン・エ・ミヤ・ユスティーツァは、遠い世界の今と昔と自分が死んだ後のことまで思いを馳せていたのだけども、英雄には成れなかった切嗣さんの魂は英霊の座ではなく異世界に飛ばされただけでサーヴァントにも成れてないから、本体と今の自分は同一人物のままで影にも現し身にもなれていない。
要するに、心だけ地球という遠い宇宙の彼方にある座へ飛ばしている間は、こちらの異世界に生まれ変わっている彼女の肉体と思考はフリーズ状態で固まったままで、ただ呆然としたまま事の成り行きを見守ってるだけな野次馬の一人と化してしまっていて、危機に気づいた時には既に“どうすることも出来なくなってしまっていた”
「ねえ」
「はい?」
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
――だからこそ彼は、再び守ると誓った少女を守れることなく失ってしまう羽目になる。
実の愛娘のように想い、『この身を犠牲にしてでも守ってみせる』と誓いを立てはずの大切な少女を。
その大切な少女―――の“純潔”を。
彼は再び、他人の勝手な都合に巻き込ませてしまって奪われてしまい(注:キリツグの主観。本当は逆です)
どこの馬の骨ともわからない得体の知れない少年風情に大切な娘を奪われる父親の気持ちを穢され尽くしてしまう羽目になったのであった・・・・・・(注:キリツグの主観過ぎます)
生まれ変わったキリツグさんは生前の行いにより保有スキルに【精神汚染錯乱:(笑)】が追加されてたりなかったり(笑)
チュッ。
「な、なにをするんだよ! いきなりキスなんかしやがって!」
「・・・うっさいわね。ただの使い魔召喚じゃないの。貴族からこんなことされるなんて普通は一生ないんだから、むしろ感謝しなさいよね」
「美人局かよ!? あと、照れるな! 照れるのはファーストキスを奪われた俺の方だ! お前じゃない!」
地球から使い魔としてハルケギニアに召喚されてしまった少年、平賀才人はついにキレた。
一体まったく、なにがどうなっているんだと、ここにいる奴ら全員に説明を要求したくて仕方がない。むしろさっきから聞いているのに誰も教えてくれないまま、訳のわからないことばかり言ってくる始末。
(やっぱりコイツら新興宗教か何かだ!)
と、才人は心の中で決めつけた。より正確には“そういうこと”にして安心を得たかっただけだった。
――こいつらは、ちょっと街を散歩してただけの俺をなんらかの方法で眠らせて、こんな所に連れてきたんだ。あの鏡みたいなものは、そのためのワナだったんだ! そうに違いない! そうじゃないと説明がつかない!
―――と、現実では有り得ない現状に整合性を持たせるために自分の尺度を無理矢理にも適用させて、現実では有り得ない屁理屈のゴリ押しによって可能事であるかのように思い込もうとしただけなのである。
・・・・・・人は自分にとって理解不能な現実を目の当たりにすると、なんとか自分の中で折り合いをつけるため、自分の今までの人生で見聞きしてきた情報を元に辻褄合わせをすることで、自分の理解できる範疇にまで自体を矮小化させ、解ったような気持ちになることで安心を得たい本能を持っている。
誰しも今までの自分が信じてきた『正しい世界』が“本当は違っていたのだ”と思い知らされ、既存の世界観が壊されるのは怖いものなのだ。自分の今までが否定されるかのような未知への恐怖は誰にとっても共通するものなのだ。
それは表側に広がる常識の世界で生きる一般人も、彼らを魔術研究のための素材としか考えていない神秘と人智の中間に位置する者と信じて疑わない魔術師たちとて例外ではない。
一般人は自分たちの住む世界である表側の光あふれる平和な社会のすぐ裏側に、狂った百年戦争時代の英雄という異形が住み着いて殺戮に酔っていたことなど当時も今も知りはすまい。
一方で魔術師たちは一般人より多くの裏側を知るが故に優越感に依存して、魔術よりも一部分ながら一般人の技術が上回ってしまった事実を知っていながら認めたがらず気づかないフリをするようになって久しい。
結局はどちらも共に、自分たちの住んでいる世界の常識こそが上なのだと、より正しいのだと信じ込みたいだけのこと。
それ故にこそ、『魔術師殺し・衛宮切嗣』は成り立っていた。その驕慢な油断につけ込んで、相手の固定概念を逆用して必殺の魔弾を撃ち込み自滅させる。
外道を行いながらも正統派を自称している魔術師たちから『外道な戦い方』と罵られ見下され続けた彼が、ロード・エルメロイをはじめとする格上の魔術師たちを相手に勝利を収めてこれた理由もまさにこれにあった。
「あんた、なんなのよ! 貴族の私が使い魔とはいえ平民相手にキスしてあげたのよ!? 平民が貴族にそんな口利いていいと思ってるの!?」
「お前こそなんなんだ! ここはどこだ! お前たちはなんなんだ! 俺の体に何をした!」
「・・・ったく、どこの田舎から来たか知らないけど、説明してあげる必要がありそうね・・・」
「田舎? 田舎はここだろうが! 東京はこんなド田舎じゃねぇ!」
「トーキョー? なにそれ。どこの国?」
「日本」
「なにそれ。そんな国、聞いたことない」
「ふざけんな!」
才人は際限なくブチ切れ続ける。
まぁ、彼の置かれた現在の立場と境遇、そして突然に落とされてしまった“身分”を思えば理解できなくもない怒り具合ではあるのだったが・・・・・・。
ただ、彼の側にも落ち度がなかったかと言えばそうとも言い切れないのが、神様視点で見た聖杯が存在していた場合の性悪麻婆神父的な評価になってしまうのが彼にとっての微妙なところ・・・。
――平賀才人。高校二年生の十七歳。
運動神経は普通で、成績は中の中。彼女いない歴は年齢と同数の17年で、賞罰はナシ。 親からの評価は、『もっと勉強しなさい、ヌケてんだから』
そんな彼は、ほんの三十分前まで地球の東京の町中を歩いていた。
ノートパソコンを修理して、これで登録したばかりの出会い系で彼女が見つかるかもしれないとウキウキしながら家に帰る途中だったのだ。
その帰宅途中に突然、光る鏡のようなものが現れたのを好奇心が騒ぎ、くぐってしまいたいという願望に抗えなくなってしまった結果が今の彼が置かれた現状だったのだ。
ある意味では不運だったのだろう。ただ平凡な毎日に刺激を欲していただけの彼にとっては、本当にただの好奇心から出た行動でしかない、日本の若者なら誰でもやりそうな軽挙妄動の一つでしかなかったつもりだったのだから。
ましてヌケた性格をしているだけにアクシデントに動じることが少なく、それ故に危機感にも乏しい。割と何でも受け入れてしまえるから、何かあっても自分なら平気だろうと自体を甘く見すぎて楽観論に走りやすい。
そんな平凡極まる彼が、『女の子との出会い』と『平凡な毎日にちょっとした刺激』を求めて飛び込んでいった鏡の向こう側に広がっていた、“異世界に一人だけしかいない地球人の少年”という特別性―――
“喜ぶがいい、少年。君の願いは、ようやく叶う”
「・・・・・・ッ!?(ゾクゾクゥッ!!)」
「?? どうしたのよあんた? 急に顔色悪くなって寒がりだしたりして・・・。変な格好してるから風邪でも引いたの? バカは風邪引かないって迷信は嘘だったの?」
「なんか急にイヤな感覚に襲われただけよ! あと着ている服が変なのはお前らの方だから! 俺じゃねぇから! なんなんだよそのヘンテコな格好! コスプレなんかしやがって!」
「こすぷれ?」
目の前の少女含む、その場にいる(ほぼ)全員が首をかしげる。
実際問題、この異世界ハルケギニアにおいて只一人でパーカー姿をしている才人こそが、完全に異端者であり圧倒的超少数派の例外事項に過ぎない立場に落とされたというか、自分から飛び込んできたのだけども。
相手の姿格好や風景からそこまで深く洞察できるなら、こんな状況に自分から陥ってはいなかっただろうし、『自分だけが例外=特別性・特殊性』という解釈の仕方をできていたなら平凡な日常への刺激として、一目見ただけで一目瞭然な超常現象などを求めてしまう見た目のインパクトに弱い思考法にはならずに済んでいただろう。
良く言えば、あまり物事を深く考えない性質。
悪く言えば、考えなしな自分の性質に甘えて思考停止しやすい性格の持ち主。
それが平賀才人という日本人少年が持つ性質だった。
そして今この場において彼にとっての不幸だったことは、異世界に突然召喚されて、いきなり唇を奪われた挙げ句に使い魔にされてしまったこと―――“ではなくて”
本当の不幸は、今背中から音もなく忍び寄ってきていた人物の性格が相性最悪だったことであり。
良く言えば、『本を正せば優しい人。優しすぎたせいで世界の残酷さを許せなかった人』
悪く言えば、『優しすぎるから救おうとした全ての命を等価値の単位として扱った人』
そして今は、『自分の犯してきた過ちを後悔して、泥と一緒に麻婆ごと撃ち殺してきた記憶を持つ、逆方向に人生やり直し中の人物』だったことであり。
まぁ、早い話が。
――元正義の味方志望だった少年の成長した姿が、かつてのバカだった自分と直接であって殺したいと思ってしまったのと似たような心境で過去の自分を見ているとでも思ってくれればそれでよし。
「だいたい、なんなんだよ! ここも! お前らも! 早く俺を元いた場所に戻せ――」
ゴリ―――。
「え・・・?」
負けん気が強く、ムカつく相手には勝てないと思っても食ってかかっていきやすい性格の持ち主らしく、一瞬前まで雄弁に相手の非を鳴らし続けていた