もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら   作:ひきがやもとまち

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更新……になるのですけど、一昨日辺りから書き始めたはいいものの思うように書くことができなくて、今日の昼間に完成した分を書き直すべきか投稿すべきか今の今まで迷ってたのですが、ZERO本編の方が止まってから大分経ってましたので一先ずは更新してダメだった場合に書き直しという方式を取らせて頂きました。
時間置きすぎはやっぱりダメだと、つくづく思い知らされる昨今です…。


ACT20

 ・・・・・・セイバー・オルタが恥ずかしそうに頬を染めて俯きながら放った宣言によって、しばし座は静まりかえっていた。

 より正確に表現するなら、何ともいえないビミョー過ぎる空気に包まれていたのである。

 ライダーもアーチャーも、すぐには反応しようとはせず困惑顔で黙り込んでしまっていた。

 呆れたとか白けたと言うよりも、ただ単に相手の意図を計りかねて困惑しているだけなのだろう。

 何も言わずとも視線が明らかに、「なに言ってんだ? コイツ・・・」と言葉より雄弁に語られまくっていて、セイバー・オルタとしては地味に痛い・・・そして恥ずかしい。

 

 然もありなん、征服王でさえ我欲まみれの個人的な願いながらも聖杯を使って叶えたい願いはあったと言うのに、黒く染まった騎士王様に至っては『ない』である。

 これで恥ずかしく感じない方がおかしい状況だった・・・・・・。

 

「えーと、セイバー。余の聞き違いかもしれんのだが・・・今お前「ない」と言わなかったか? 聖杯に託す願いなど「ない」と」

「・・・・・・・・・そうだ」

 

 征服王からの問いかけに、余計恥ずかしさをかき立てられながらも肯定する黒く染まった騎士王様。

 臣下が死のうと、人々から恨まれようと何とも感じなくなった暴君だろうと、恥ずかしさを感じる心はなくせないのがプライド高過ぎな暴君って職業なんだよ文句あるか!?・・・と開き直りたくて仕方がないほどに屈辱的な状況。

 

「――が、より正確に言えば『聖杯に叶えて欲しいと強請る願いは無い』ということだ。

 聖杯を求めているのはマスターであって、私はマスターのサーヴァントとして召喚された。故にマスターが求める聖杯を勝ち取るため最善を尽くし、私のマスターと愛妻の帰りを故国で待つ幼子の元へ生きて返すという約束を守る。

 ・・・それだけで今生におけるサーヴァントとしての私の願いは十分すぎると考えている・・・」

「それはあるまい」

 

 セイバー・オルタの答えが終わった瞬間、一拍の間も置かずに今まで黙り続けていたアーチャーが反駁の声を上げてくる。

 どこか愉悦混じりの弄ぶような表情が勘に障る言い方でもって、どこかの坊主に先日も問うてやった矛盾に対して疑問の指摘を投げかけてやる。

 

「聖杯は、それを手にするに足る者のみをマスターとして招き、聖杯を望む願いがある英霊をこそサーヴァントして現界させると聞く。貴様の答えは、その理を外れているのではないのか? セイバーよ」

「そんな理屈は知らん」

 

 だが、どこかの答えを与えてもらいたがってばかりの坊さんと違って、黒く染まった騎士王様は他国の王の思惑に乗ってやる義理など些かも持ち合わせている訳がない。

 ハッキリとにべもない口調で問いかけの言葉を一刀両断してしまい、それに対する理由説明は相手よりさらに理不尽くさい。

 

「聖杯が私をサーヴァントとして招いた理由など私が知るか。聖杯に聞け、聖杯に。私は招かれた側であって、聖杯に自分を招くよう命令する権限など持っていた覚えはない。

 第一、セイバークラスで生前に魔術師だったことが一度もない私に、大儀式レベルの魔術の理屈などわかるわけがなかろう」

 

 セイバー・オルタ、物すっごいレベルの大正論。

 さしもの英雄王も、ここまでハッキリと己の無知っぷりを肯定してくる相手に言うべき言葉はすぐには思いつかず、あらゆる宝の詰まった倉の中にもストックが見つからなかったので再び黙り込んで酒を飲む仕草に戻っていく。

 

 ――よし、勝った。

 と、しょうもない意地の張り合い勝負でガッツポーズを心の中で取ってた黒く染まった心の狭い騎士王様に対して、征服王の方はもう少し真剣に悩んでくれてたらしい。

 

「えぇと、セイバー? これはあくまで可能性の話であって問答として問うてみるだけなのだが・・・・・・そのブリテンとかいう貴様の時代に滅んだ国のやり直しを願うとかは思ったりはしなかったのか?

 いや、余であったならまず願わん願いなのだが、聖杯から得られた貴様の逸話を見る限りでは、貴様ならばその手の願いを抱く可能性もあったのではないか? と、ふと今思ったのでな」

 

 そう言って、自分でも自分の発言がなぜ思いついてしまったのか釈然としない表情で黙り込む征服王。

 そんな彼に対してセイバー・オルタは、手に残っていた酒を見下ろしながら口をつけようとはせず、厳かな口調と表情で毅然として断言する。

 

「ない。

 ・・・・・・と言えば、嘘になってしまうのだろうな・・・」

 

 ――と。

 迷いながら悩みがら、先の時間に自分が沈黙し続けている側だった頃に考え続けてきた回答の理由を、そこに至るまでに捨て去ってきた選択肢の数々を思い浮かべ柄ハッキリと、自分にも迷いや悩みがあったことを正直に打ち明ける。

 

「・・・・・・正直に白状すれば、召喚された当初はそういう願いも考えない訳ではない。

 聖杯の力でブリタニアを民とともに蘇らせるか、時を戻して滅びを無効として民草に国の滅亡によるものではなく、天寿を全うして死ぬ道を用意してやることこそが、第二の生を得た王として果たすべき私の使命なのではないか・・・・・・と。そう考えないわけではなかったのだ。だが―――」

 

 杯を舐めるように一口だけ飲んだ後、先を続ける。

 

「だが、それでどうなる? そんな救済にいったい何程の意味がある?

 ブリタニアの兵も民も私の命令に従って、そして死んでいった。王の判断ミスで臣下も民草たちも全て死に絶え、王一人だけが仮初めの客人として国の滅びより数百年の後の当世に一時的に招かれただけの存在として今ここにいる。

 彼らは別に、私の支配を正しいから受け入れていた訳ではない。必要悪だからと隣村の同胞を見捨てて物資を徴発する暴君を称えていた訳でもない。

 ただ、私の言うことに従えば戦の渦中にあっても生きていけるから、異民族の侵略から自分たちを守り抜くため私の命令に従っていた方が生存確率が上がるから。それだけのエゴによって私の支配を我慢して耐え続けてくれていただけのこと・・・・・・」

 

 いくつかの考えをまとめた後、セイバー・オルタは二人の王に対してハッキリと宣言した。

 彼らとは違う自分の立場という意思表明を。彼らと自分は『立場が違うのだ』という自らの奉ずる正しき秩序と人事の法則を、今度は恥ずかしがらずに声を大にして断言してのけたのだ。

 

「民と兵たちに向かって、『私の命に従わなければ国は滅び、貴様らにも家族にも明日はない』と言って同胞を殺すことさえ正当化しておきながら、いざ自分だけが生き返った後には聖杯を使って国の滅びをなかったことにしようとする・・・・・・そこに一体どんな法があり、道理があるというのだ?

 そんな王道は間違っている。王だけが法の支配を逃れて、王以外だけを束縛する法律などあってはならない。

 国が滅び、民草が死に絶え、王一人だけが残っていた時点で、王もまた終わりなのだ。終わりにすべきなのだ。

 どのような経緯によってであろうと、自らの治める国の滅びは王自らの過失が原因、自らの責任。王だけが責任を取るべき問題。・・・・・・そう思えない者に、王たる地位に就く資格はない。私が絶対認めはしない。それだけだ」

 

 言い切って、杯の底に残っていた最後の酒を喉まで流し込み、セイバー・オルタは長話を終えて一息つく。

 

「「・・・・・・」」

 

 そして残る二人の王たちは、些か複雑な面持ちで彼女の顔を見つめながら微妙に異なる表情に異なる感情を浮かべ合っている。

 そこにあるのは明らかに賛同や理解ではなく『拒絶』の意思。

 そうなることは最初からわかりきっていたことだったのだから、発言者たるセイバー・オルタ自身に思うところは些かもない。

 

「――ハッ」

 

 先に声と悪意の感情を口に出したのはアーチャーだった。

 

「自ら王を名乗り――皆から王と称えられた身でありながら―――そんな輩が自らの行為の結果に対して“悔やみ”を口にするだと? ハッ! これが笑わずにいられるか! 傑作だ! セイバー、お前は極上の道化だな!」

「・・・・・・」

 

 もはや抑えが効かぬとばかりに笑い転げるアーチャーの横でも、ライダーが眉間に眉を寄せて、いつになく不機嫌になるべきなのか呵々大笑すべきなのか判断に迷うような風情でセイバー・オルタを見据えている。

 

「ちょっと待て―――ちょっと待ちおれ騎士の王。貴様、よりにもよって自らが歴史に刻んだ行いを否定するのか?」

「当たり前だ。その国の玉座にある者が自らの国の滅びを否定せんのでは、私の命を這いつくばって実行していた者たちの立場がなくなるだろうが、愚か者」

 

 そしてまた、セイバー・オルタの方でも不機嫌さが増しつつある。

 どうにもこの二人、自分と“自分たち”との違いがまだ今一伝わりきっていないようなので苛立ってきてたのだった。

 

「王として民草と臣下に、身命を故国のため捧げさせるのが王の勤めだ。ならば滅びの際には自らもまた、滅び逝く故国に身を捧げるのが王の最期の責務というもの」

「おいおい聞いたかライダー! この騎士王とか名乗る小娘は・・・・・・よりにもよって! “滅び行く故国に身を捧げた”のだと、さ!」

 

 爆笑し、笑い続けるアーチャーに応じることなくライダーは黙したまま、ますます憂いの面差しを深めていくだけであったが、どのみちセイバー・オルタにとってはどうでもよいことだった。

 どのみち、この二人に自分の考えは受け入れられない。受け入れられない理由を抱えているからだ。

 

「いいや違う、それは違うぞ騎士の誉れたる王よ」

 

 そして征服王はようやく、彼女と自分たちの違いがハッキリと分かりやすく示される主張を発するときが訪れる。

 これで―――終わりだ。

 

「王が国に捧げるのではない。国が、民草が、その身命を王に捧げるのだ。断じてその逆ではない」

 

 

「そうだろうな。―――貴様ら“侵略国の王たち”にとっては、間違いなくそれこそが正しい王道なのだろうよ・・・・・・ハッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバー・オルタが自分と、自分以外の二人との違いを明確に線引きする言葉を発したのと、ほぼ同じ頃。

 アインツベルン城より遠く、御三家の一つ遠坂家の邸宅にある地下室において、今ひとつ別の議題が話し合われていたことを今の彼女たちは知るよしもなかったが・・・・・・そこで下された結論自体は遠からぬ将来で分かりやすく示されることとなっていく。

 

 

「やれやれ・・・よりにもよって酒盛りとはな・・・」

『アーチャーは放置しておいて構わぬのでしょうか? 我が師よ』

「王の中の王にあらせられては、突きつけられた問答に背を向けるわけにもいかんかったのだろうが・・・・・・綺礼。

 ライダーとアーチャーの戦力差で見た場合、我らが誇る英雄王と征服王、どちらの方に部があると君は考える? 意見を言ってみたまえ」

『ライダーに【ゴルディアス・ホイール】を上回るような切り札があるか否か。そこに尽きると思われます。

 ・・・・・・僭越ながら、ここで一つ仕掛けてみる手も策の内かと』

「成る程な。私も君の意見に異論はない。やってみたまえ」

『はい。では―――』

 

 

 

「礼呪を以て命じる。アサシンよ。お前たちに――――――」

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・そして再びアインツベルンの森の中、再びの重い沈黙に包まれてしまった城の中庭にに踏ん反り返って集っていた三人の暴君たちが話し合う場においても、一つの結論にたどり着くため、“先に行われていた聖杯問答”は終わりの時を迎えていたようだった。

 

 正常な流れから外れすぎていない、聖杯を持つに相応しい者か否かを酒杯によって問いただすための聖杯問答は終わりを迎え―――いつも通りに暴君たちによる妥協し合う気が少しもない意地と我道のぶつかり合いが幕を開けようとしていたのである。

 

 

「そもそもにおいて、この問答は前提条件をはき違えている」

 

 セイバー・オルタは立ち上がり、二人の王たちを傲然とした態度で見下しながら、この問答の根本的な過ちを静かなる声で指摘する。

 

「何故なら私の国ブリタニアは、不当な侵略を受けさせられた国であって、貴様らの国のように他国を征服して版図に組み込んだ史実はなく、貴様らの国と違って他国人の手で滅ぼされた被征服者の国だからだ。断じて私は貴様らと同じ国の王などになった覚えはない」

 

 傲然と、静かな声音で断言するブリタニアの王にして、“ブリタニア一国の王にしかなれなかった暴君”そして最期は、たった一つの国さえ守り切ることの出来なかった祖国防衛戦に失敗した護国の英雄・・・・・・アーサー王。

 

 彼女が聖杯から得た情報を元に考えていた自分たち三人の相違点は、残る二人の王たちの考えていた部分とは論点がやや異なっているものだった。

 それは三者三様に治めていた国の状況が全く異なっていたという、国際情勢。

 

 イスカンダルの国マケドニアは、ギリシャ一帯を支配したコリントスの盟主国だ。

 彼の偉業の始まりの時分は別だったとしても、多数の属国を傘下におさめた後の盟主国にまで敵国が侵略の魔の手を伸ばせることなど軍勢の翼でも生えていなければ不可能事でしかない。

 少なくとも【征服王】にとって戦争とは攻め込むものであり、兵士や民たちもまた戦で敵国を攻め滅ぼして領土に組み込んでいく覇王の雄志に魅せられて付き従ってくれることが前提として存在している。

 

 黄金の英霊――黒く染まった騎士王はまだ真名を知らないままの英雄王もまた、ウルク王朝の支配者として古代メソポタミア文明の中心的役割を果たしていた都市を治めていた王だ。

 攻め込まれるとしても神話にあるような神々の軍勢ぐらいでしか不可能な位置にあり、少なくとも人の王が率いる侵略軍によって攻め滅ぼされる政治的状況にはなったことがない。

 

 

 翻ってセイバー・オルタの国ブリタニアはどうかと言えば、終始守ることばかりで、最終的に敵領土奥深くまで攻め入って和平を勝ち取ってから凱旋してきたところで反乱を起こされて滅んでしまっている。

 自国領内を攻められてばっかりで、他国の領土が欲しくても外征している余裕が与えられないまま、最期には長引く戦乱で疲弊しまくった国内経済絞り尽くすようにして行った大侵攻で勝った後に滅んでしまったブリタニア王国の王である黒く染まったアーサー王・・・・・・。

 

 そんな国の王様が、なんだって他国を侵略しまくってたばかりだった征服王や、自分の国が滅んでから数千年経って今も金に困ってそうにない成金国家のバカ王様に偉そうな口調で王道説教されて傷ついてやらねばならんのか!?

 そんな道理はない! 絶対にない! 私が認めん! 私の戦で死んでいった兵士たちも遺族たちも、戦費のために毟り取ってきた金貸し共だって絶対に認めてくれないからな!?

 

「然り。我らは己一人の我を張って他国を犯した暴君であるが故に英雄だ」

 

 ライダーがセイバー・オルタの言葉を否定することなく肯定して首肯する。

 間違ってはいないし、実際その通りだからこそ【征服王】という異名が奉られているマケドニアの若き暴君ではあるのだけれども。

 侵略されてばっかりだったブリタニアの王様としては、なんかムカつく。出来ることなら自分だってヨーロッパ全土を征服して各国の王たちにキャメロットで跪かせて忠誠誓わせてるタイプのアーサー王になりたかったという思いがある分だけ尚更だ。実際そういうアーサー王伝説もあることだし、そっちの方から派生したかったと本気で思う。

 

「だがなセイバー、自らの治世を、その結末を悔やむ王がいるとしたら、それはただの暗君だ。暴君よりなお始末が悪いわ」

「やかましい、征服王。貴様とて世継ぎに恵まれた癖して家臣に殺されてる上に、自らが死んだ後は帝国の支配権を家臣たちの中で勝った者勝ちで奪い合うよう遺言残して、自分の国を自分自身の判断で滅ぼした暗君に言われたくない。

 私はこんな体だったせいで、子宝にさえ恵まれたことないんだぞ!? もしいたら認知してもいない息子もどきに反逆起こされるような大義名分与えなくてすんだんだぞ! しかも何故かアイツも女だった癖して兵士たちは付き従ったし全くワケがワカランわ!!」

 

 セイバー・オルタ、またしても超がつくほどのド正論。・・・どうやら真面目な話し合いの中で自分と相手たちの違いについて考えてる内に、理不尽さが募ってきてしまって生前の恨み辛みを発散したくなってしまったらしい。

 

「それで? 貴様は正しさの奴隷になるという訳か?」

「それでいい。自らの決めた法に従ってこそ、正しき王の在り方だ」

 

 一部の迷いもなく頷きを返した若き騎士王に向かって、【人のまま人を超えた王になる道】を選んでいた征服王は溜息とともに何かを言いかけようと口を開く。

 

「――だが、それは私だけの話ではない」

 

 と、相手の言葉に続きがあったことを知らされて、ほんの少しだけ先ほどまで続いていたシリアスな雰囲気を和らげた普段通りの愛嬌のある表情が顔を出し、改めて座り直してあぐらを組む。

 

「ブリタニアの兵も民も、全ての者たちが私と同じく国のための正しさの奴隷なのだ。

 王とは国の頂点であり、国を動かすために最も重要な歯車の一つでしかなく、国全体のための奴隷だ。

 家臣を育て、適材適所の人事で配置し、必要とあれば親兄弟、乞食や百姓の別なく、たとえ“私自身であっても”使い捨てる」

 

 誇り高く、気高く、自らに恥じることなど一切ないと宣言するかのように、玲瓏とした声で言い切って見せる若き王。

 それは征服王の奉ずる王道とは斯くも異なるものであったが・・・・・・それもまた一つの王道だと思わせるに足る何かがあった。

 あるいは単に、先ほどストレス発散してスッキリしたから含むところがない気持ちを素直に言えて伝わりやすくなっただけかもしれなかったが、彼女の声には心に響く何かがあったのも事実ではある。

 

「国にとっての利益こそが王の喜び、国にとっての損失こそが王の悲しみ。

 たとえ民草を犠牲にしようとも、その犠牲によって多くの民たちが豊かになることが出来たのならば、私はその犠牲を受け入れよう。必要な犠牲であったと昂然と胸を張って断言しよう。

 たとえ国のために必要な犠牲が私自身の命であったとしても、その時は今すぐ黒く染まった聖剣で切り取って自らの首級を晒し首にした衆目に晒そう。

 ・・・・・・それが王だ。少なくとも私にとってはな。貴様らが奉ずる王道とは根本的に違う」

「・・・・・・成る程なぁ~」

 

 事ここに至って征服王も、ついでに言えば黄金の英霊アーチャーもまた、セイバー・オルタの言いたい言葉の意味を理解した。完全に理解した。

 三者三様「ニヤリ」と笑って、それぞれの個性と奉ずる生き方に応じて表情を形作る。

 

 最初から自分たち三人に、話し合わねば解らぬ事など何もなかったのだという事実を改めて心にしまって杯を掲げ合い。

 

「―――王とはな―――」

 

 宴の始まりを告げるのと同じように、征服王の声によって閉幕の訪れも厳かな声音で宣言される。

 

「誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する。清濁含めて人の臨界を究めたる者。そう在るからこそ臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に“我もまた王たらん”と憧憬の火が灯る。それこそが王!!」

 

「王とは―――」

 

 黄金の英霊もまた、癖のあるシニカルな笑顔を浮かべながらセイバー・オルタを見て、何の意思表示か杯を軽く傾けて見せながら好色な笑みを唇に閃かせ。

 

「天上天下に我一人だけが存在する唯一無二のものだ。我以外に王を名乗る輩は雑種に過ぎん。我こそが王だ。我の生き方こそが王道だ。我が認めた者なら、いざ知らず。それ以外の王を騙る雑種共など生かしておく価値すらもない」

 

 傲慢に尊大に、そう断言して―――三者の思惑は完全なる一致を見る。

 

 

 

『うむ! それ即ち―――――我らは互いに相容れん!!!!』

 

 

 

 ドバシャン!と、自らの持ってきた酒樽に今一度拳を叩きつけ、既に蓋を叩き割ってしまった後だった酒の水面を大きく撥ねまくらせながら征服王は、一目瞭然当たり前すぎる結論にしか行き着きようもなかった今夜の宴の結果に満足して心から愉しそうに大笑する。

 

 たしかに、最初から解りきっていたことではあったのだ。

 たかが話し合いや酒の酌み交わし合い程度のなれ合いで、何が変わるというわけでもなく。

 敵の心根や、尊んでいる王道が解り合ったところで自ら信じて突き進んできた道を曲げるような者に暴君を名乗る資格は微塵もないことぐらい子供でも解る当たり前なこと。

 

 それが正しく適用され、ただ己の信ずる者と違うと言うだけで、互いに互いを否定し合い、自らが正しく相手の方こそ間違っていると言い切れる存在同士で在ることが確認し合えただけで、それで十分。

 

 これで心置きなく、後腐れなく、戦うに当たって勝利した後に後味が悪くなるなど、この三者の中には一人としていないと言うことが解っただけでも十分すぎる成果というものだった。

 もとより戦とは、自分の信ずる正しさを互いに力尽くで押し付け合い、どうしても受け入れられぬ者は殺すつもりで行われるもの。どう綺麗事を並べようとも、それが戦の真実!

 

 そのことを解り合っている者同士だということが解り合えたならば、今宵の宴は無価値ではなかったと納得して家路につき、決着の日を待ち望みながら英気を養うことが出来るというもの―――

 

 

 そう思っていた、次の瞬間。

 

 

 

【戯れは、それまでにしてもらおう。暴君たちよ―――】

 

「「「・・・・・・あん?」」」

 

 

 

 周囲に広がり闇の中から湧き出すように、能面の白い顔色の骸骨面たちが次々と浮かび上がってきては数を増し。

 ウェイバー・ベルベットが素っ頓狂な声で「ア、アサシンッ!?」と驚いているのを無視しながら100体にまで膨れ上がったアサシンたち。

 その全員が怪しげな笑い声を響かせながら、夜のアインツベルン城中庭に集った三人のサーヴァントたちを完全に取り囲んで不吉な死の予感によって場の全員を押し包んだ気になっていき。

 

 そして!

 

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 

 三騎のサーヴァントたちは呆れかえったように、白けきったような表情を浮かべ合いながら互いに互いを見ることなくアサシンたちだけを見つめながら。

 深く深く深~~~く嘆息して・・・・・・ライダーが代表してボソリと呟く。

 

 

「こりゃあちょっと・・・・・・空気読めん輩が一人だけ混じってしまったようだな・・・。

 王たちの宴の場を台無しにした無粋は、相応の代価を略奪させてもらうことを知らんのか? この隠れ潜むだけの取り柄さえ奪われ尽くした子ネズミが如き英霊たちは・・・・・・」

 

 

つづく

 

 

オマケ【使いたかったけど使う機会が得られなかった、セイバー・オルタの戦う理由】

 

 

セイオル「我らは死人で、我らの時代は遠い過去だ。既に終わってしまった出来事に対してできることなど何もない。死んでしまった人間にしてやれることなど何一つとして存在しない。生き残った者がしてやれるのは、今も生きている人間に対して出来ることだけで、死んでしまった者の犠牲を生きている者のために有効利用してやるぐらいなもの。――だから私はマスターとアイリスフィールを生きて、イリヤスフィールの元へと帰すのだ。死人が生者の世界でしてやれる事など、それぐらいしかあるまいよ」

 

 

 

・・・・・・こんな感じのセリフを格好良く言わせたかったデス・・・・・・

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