もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら 作:ひきがやもとまち
本当だったら綺礼とギルガメッシュの件も入れる予定だったんですけど、文字数的に長くなりすぎたので今度にする事になりました。
今まではスポット控えめだった、遠坂時臣さんとキャスター陣営のZERO版を楽しんでもらえたら光栄です。
「ライダーの・・・・・・宝具評価は・・・・・・」
薄暗がりに包まれた、重苦しい沈黙の中。遠坂時臣が苦々しい声音で水晶玉へ問いかけていた。
今し方アインツベルン城で脱落させられたアサシンのマスター・言峰綺礼に確認のため、通信機に向かって、さも聞きたくなさげな重い口調で――。
『ギルガメッシュの【ゲート・オブ・バビロン】と同格・・・・・・つまり評価規格外、です』
答えた者にも、尋ねた者にも溜息しか出ようのない回答だった。
時臣が目論み、綺礼が実行させた作戦通り目的は達成され、ライダーの奥の手である最終宝具の情報を得られた。
その為にこそ、アサシンを四方に配して実体化させた。
数多く出現させても、一カ所に集めてしまえば【ゴルディアス・ホィール】で蹂躙すればいいだけである。直線軌道のライダーだったからこそ、周囲を敵に囲まれた状態で使える奥の手があるかないかを調べておく必要性と意味があったのだ。
その目論み通りに得られた情報は、アサシンを犠牲にして余りあるものに時臣には思われたが・・・・・・只一つだけ、遠坂師弟の目論見から外れていた点があった。それが問題だったのである。
判明したライダーが持つ、最終宝具の格だ。
あれ程の威力では、事前に知っていた程度のアドバンテージで対処できるとは思えない・・・。
(・・・あるいは、致命的なミスを犯してしまったかもしれない・・・・・・)
時臣は心の中で、滅多に抱くことのない“後悔の念”が、ジワジワと浮き上がってきて、自分の思考を締め上げ始めていることを自覚させられた。
現時点でアサシンを捨て駒にしたのは失策だったかも知れないと、今更に思い始めていたからである。
あれほど強力な宝具を持つライダーを真っ向から衝突するのは愚策。むしろ策謀によって精神的に追い詰め、ライダーのマスターがサーヴァントと別行動を取るように仕向けた後、アサシンによって暗殺させてしまう等の案を――。
「・・・・・・馬鹿な。その様な策略など、遠坂の当主として余裕とも優雅さとも縁遠い」
己の狼狽を諫めるように時臣は、【自分が勝利者となれたかも知れない選択肢の一つ】を、かぶりを振りながら断言することで否定する。
そこまで万事が絶望的な状況ではないと、前向きな要素を見つけ出し、運気は間違いなく自分に味方していると己を奮い立たせ。
椅子に立てかけてあったステッキを手に取りながら時臣は、静かな決意と共に魔導通信機の向こう側にいる魔術師の弟子としての言峰綺礼に決意を口にした。
「アサシンを捨てた今となっては、綺礼。君の力を出し惜しみしておく必要もない」
『はい。承知しております』
予定通り、ここから第二局面が開始されるのだ。
アサシンによって収集した情報を元に、ギルガメッシュを動員して敵対者たちを駆逐していくため、時臣自身が工房を出て遂に冬木という戦場に立つときが訪れたのだ。
―――【常に余裕を持って優雅たれ】―――
遠坂家の家訓を忠実に守り続けたことで、凡庸に生まれながら完璧なまでの練度を持った手練れの魔術師へと成長した遠坂家の当主として、一族の悲願である聖杯成就を成し遂げるためにッ!!
・・・・・・だが、遠坂時臣は気づいていない。
自分自身が抱える矛盾に気づいていないのだ。
彼の人生の中で【貴族として過ごした経験】など、一秒たりとも存在したことなどありはしないという事実をである
そもそも彼は魔術師であり、日本人なのだ。二百年前に西洋魔術を取り入れて大成した一族として、元をたどれば陰陽道の家系に連なる者だったかもしれないが、彼が屋敷中で演出している『中世ヨーロッパ貴族』だった歴史など、遠坂家には一度もない。
生まれついて、“その身分”に生まれなかった者ほど、その身分に相応しい行動や思考を心掛けようと努力する余り、現実に実在する“その身分の者たち”とは懸け離れた自分だけの存在になってしまうことが、歴史上には希にある。
遠坂時臣は、まさにその典型だったかも知れない。
何しろ今次聖杯戦争には、生前に『本物の貴族だった者たち』がサーヴァントとして参戦しているものの、誰一人として時臣のあり方を『貴族らしい』と評したことなど一度たりともなかったのだから・・・・・・。
明らかな形式主義に陥りまくっていた己自身に気づいていなかったらしい遠坂時臣。
あるいは彼が己の内弟子だけでなく、その裏切りにサーヴァントまで加担されてしまったのは、そういう『賢しさ』につまらなさしか価値を感じてもらえなかったからかも知れない。
この戦いが始まった序盤でケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、切嗣によって爆破されて消滅した冬木市最高の高級ホテル『冬木ハイアット・ホテル』に宿泊した際に、街の夜景を見下ろしながら胸中に抱いた感想がある。
【生まれついての貴族】であるケイネスは、冬木の町並みとホテルを、こう評していたのだ。
「この部屋を誂えた俗物共は、“贅を凝らす”という意味を全く理解していない。
ただ闇雲に広い部屋、ただ高価なだけの家具、華美なばかりの調度品。
歴史もない、文化もない、俗物ならではの“庶民像”を演出するためだけに借り物のセンスで表面だけを飾り立てた醜悪な豚小屋に過ぎぬ。
あの猥雑な香港ですら、土着の風俗に対する執着とポリシーがあった。そういう異国ならではの情緒が、この街からは欠片もない。
いったい何処の国の、どういう街なのか判じうるものが何一つ見当たらない。
辺鄙な漁村のままで純朴な暮らしを保っていれば、まだ趣もあるというものを・・・・・・」
―――兎にも角にも。
“遠坂時臣による第四次聖杯戦争への本格参戦は決定された。
“貴族”としてではなく、貴族“らしく”在ることを行動方針として、“エセ”貴族・遠坂時臣は、泥臭い冬木市という戦場に最初の第一歩目を歩み出す日が遂に訪れてしまったのだった・・・・・・。
そして、その翌日。
空も白み始めた早朝のこと。
「ひ、ヒデェ・・・・・・あんまりだ・・・・・・ッ!!」
雨生竜之介は、灰燼と呼ぶに相応しい惨状を前にして、惜しみなく慟哭と涙を垂れ流し続けていた。
昨夜アインツベルン城の中庭で行われた、王の格を示す宴だったのか、単なる仮装パーティーが途中から乱闘に変わっただけの乱痴気騒ぎだったのか、定義が難しくなってしまった姿格好で暴君たちが一堂に会する切っ掛けとなった出来事である、ライダー陣営によるキャスターの「胸くそ悪い工房」の発見と破壊が行われた現場後に帰ってきた、昨夜も遅くまで幼児誘拐に勤しんでいた彼と彼のサーヴァントは、明け方になってから帰宅してきた自分たちの塒が徹底的に壊されている光景を見せつけられ、膝を落として悲しみに暮れていたのである。
「精魂込めて俺たちが仕上げてきたアートが・・・・・・酷すぎる! こんな、こ、これが人間のやることかよォッ!!」
事情を知らなければ誰もが同情したくなるほど、悲嘆に暮れて泣き叫ぶ竜之介の肩を、キャスター・ジル・ド・レェ元帥は、優しく子供をあやすかのようにそっと抱いて、慰めるように言葉をかける。
「リュウノスケ・・・、貴方は人間性というものの中に潜む真の醜悪さについて、まだ理解がなかったのですね。ならば嘆くのも無理はない・・・」
キャスターとしても無論、居城を荒らされたことへの憤怒はあったが、一方で謎の襲撃者の手で壊滅させられた下水道内の海魔たちと工房内の苛烈なまでの破壊を見量れば、正面から戦うには危険すぎる相手であったことを理解せずには済まされない冷静な戦略眼こそ、生前は一国の軍勢を率いる元帥だったジル・ド・レェ個人が持つ側面だった。
「ねぇリュウノスケ、本当の美と調和というものを理解できるのは、ごく一握りの人間だけなのです。むしろ大方の俗物は、芸術の聖性に触れた途端、嫉妬に駆られた獣と化す。連中にとって美とは破壊の対象にしかなり得ないものなのです」
「だ、旦那・・・・・・」
「私たちの創造は、常に愚昧なる破壊との相克という試練に晒されているのですよ。
・・・なればこそ、被造物に過度の愛着を抱くのは禁物だ。ひとたび形を与えられた物は、いずれ壊れゆく運命にあるのです。むしろ我々創造者は、創作の過程にこそ喜びを抱くべきなのですよ」
「・・・・・・壊れた分だけ、また造りゃあいい、ってこと?」
「その通り! いつもながらリュウノスケ、その端的なる理解は貴方の美徳ですよ」
朗らかに破顔して、自分のマスターを絆すキャスター。
・・・・・・余談だが、彼らの塒をぶっ壊して今の話題が行われる切っ掛けを作った男が、この工房に攻め込んできた理由の一つと犯人は、
『とりあえずブチ当たるだけ当たってみよう。案外何とかなるかもしれんから』
という、割とテキトーなノリと勢いでアジアの果てまで家臣たちを引っ張り回してた征服王だったりするんだけれども。
果たして、その事実を知らされた時、自分の主張が一部だけでも当たってたと言えば当たっていた、獣じみたと言うかゴリラみたいな見た目の男だったことに、キャスターは自分の先見の明を自画自賛する気になるのか否か? 微妙に判断が別れそうな真実を知られずに済んでるのは、たぶん彼らにとって幸運だったんじゃないかという気もしなくはない・・・・・・。
「オレたち、あんまり楽しみすぎたせいで――もしかして、バチが当たったのかなぁ?」
龍之介が純朴な口調で何気なく、そう呟いた瞬間。
一瞬前まで穏やかだった、キャスターの態度は一変した。
「――これだけは言っておきますよ、リュウノスケ。・・・・・・神は決して人間を罰しない! ただ玩弄するだけ!!」
悄然と下がっていた竜之介の両肩を鷲掴みにして、荒々しく自分と正面から向き合わせると、燃えるような眼差しに今まで彼が現したことのない位相を宿しながら、彼は自らのマスターに己が信仰のなんたるかを語りかける。
「かつて私は、およそ地上にて具現しうる限りの悪徳と涜神を積み重ねた。リュウノスケ、あなたの為した邪悪など、私のそれと比べれば子供の手習いも同然だ。
だが殺せども穢せども、この身に下るはずの神罰はなく――気がつけば邪悪の探求は八年に及んで放任され、看過され続けた。千の幼子の嘆きと悲鳴は、すべて虚しく闇に消えた!!」
「だ、旦那・・・?」
「結局、最後に私を滅ぼしたのは神ではなく、私と同じ人間どもの欲得でした。
教会と国王が断罪の名目で私を縛り、処刑したのは、とどのつまり私の手中にあった富と領土を簒奪したいがためだけの奸計でしかなかったのです!
我が背徳に歯止めをかけたのは、裁きなどとは程遠い、ただの略奪! 我が罪よりもなお輪をかけて浅ましいヒトの悪徳だったのですよ!!」
「・・・・・・」
今まさに自分は、この恐ろしい悪魔そのもののような男の逆鱗に触れてしまっているらしい・・・・・・その事実を理解しながらも、雨竜竜之介の心は、このときヒドく澄んでいた。
むしろ、その心に湧き上がってきていたのは恐怖ではなく、寂しさと痛ましさの念い。
キャスターの弁舌を解した結果としての理性ではなく、何か大切なモノが根こそぎ欠落したかのような面持ちによって、竜之介の感性は理解したことが、その理由だった。
この偉大なる狂人が胸に秘めた、底知れぬ深い慟哭を抱えているという理解を・・・・・・。
「でも、旦那・・・・・・それでも、神様はいるんだろう?」
「・・・・・・何故、リュウノスケ? 信仰もなく、奇跡も知らぬ貴方が、そのように思うのです?」
「だってこの世は、退屈だらけなようでいて―――だけど探せば探すほど、面白オカシイことが多すぎる!」
そう言って竜之介は両手を拡げ、天地の全て抱きしめようとするかのように掻き抱く。
「昔から思ってたよ。こんなにも至る所に愉快なことが仕込まれまくってる世界ってヤツは、出来過ぎてるぐらいな代物だって。
ちょっと見方を変えれば気づく、知恵を巡らしゃ探し出せる伏線が満載だ。いざ本気で楽しもうと思ったら、この世界に勝るほどのエンターテインメントは他にねぇよ!
きっと誰かが書いてんだよ。脚本を。登場人物50億人の大河小説を書いてるエンターティナーがいるんだよ。
・・・そんなヤツについて語ろうと思ったら、こりゃもう、神様としか呼びようがねぇ」
キャスターは竜之介の言葉を聞いた後、しばし無言だったが、虚空に視線を彷徨わせてから再びマスターを見据え返して、低く厳粛な声で問いを放つ。
「――ではリュウノスケ、はたして神は、人間を愛していると思いますか?」
「そりゃもう、ぞっこんに。この世界のシナリオを、何千年だか何万年だか、ずっと休まずに書き続けてるんだとしたら、そりゃ愛がなきゃやってられねぇでしょ」
何ら気負うことなく、陽気な殺人鬼は偉大なる狂人からの問いかけに即答する。
「うん、きっともうノリノリで書いてんだと思うよ。
自分で自分の作品を楽しみながら、愛とか勇気とかに感動してさ、愁嘆場にはボロボロ泣いて。
んでもって恐怖とか絶望とかにはハァハァ目ぇ剥いて、いきり勃ってるわけさ」
自ら語る内容を確かめるように竜之介はいったん言葉を切る。
・・・・・・一見すると若者らしい斬新な意見と聞こえなくもなかったが、内容的にはヘンタイ親父臭さと、引き籠もり男の妄想垂れ流してるだけにも聞こえなくもない、これまた判断に困る持論を展開した後。
雨生竜之介は確信も新たに、自説としての結論を満面の笑みと共に口に出す。
「神様は勇気とか希望とかいった人間賛歌が大好きだし、それと同じぐらいに血飛沫やら悲鳴やら絶望だって大好きなのさ。
でなけりゃぁ―――生き物のハラワタが、あんなに色鮮やかな訳がねぇ。
だから旦那、きっとこの世界は神様の愛に満ちてるよ」
竜之介の長話を聞き終えたキャスターは、まるで一葉の聖画を前にした敬虔なる信者のごとく静粛さを持って己がマスターの言葉を受け止め、その顔を上げたときには既に悲しみも慟哭もなくなって、静かな至福に表情は満ち溢れたものになっていた。
「・・・この時代、もはや民草に信心はなく、為政もまた神意を捨てた最果ての地と思っていましたが・・・・・・まさかこんなにも新しく瑞々しい信仰が芽吹いていようとは!
信服しました、リュウノスケ。我がマスターよ・・・・・・」
「いやそんな、照れくさいって」
「しかし――貴方の宗教観に依るならば、我が涜神も茶番に過ぎないのでしょうか・・・?」
「いやさ、汚れ役だってきちっと引き受けて笑いを取るのが一流のエンターティナーってもんでしょ?
旦那の容赦ないツッコミには、きっと神様も大喜びがボケを返してくると思うけど?」
自分から向けられた最後の問いかけに返答された内容に、もはや愉快で仕方がないと腹を抱えて笑い転げるしかない狂気のサーヴァント。
「涜神も! 礼賛も! 貴方にとっては等しく同じ崇拝であると仰せか! あぁリュウノスケ、まったく貴方という人は深遠な哲学をお持ちだ!
あまねく万人を愛玩人形とする神が、自身もまた道化とは・・・・・・成る程! ならばその悪辣な趣向も頷ける!!」
そういう結論に至って納得したらしい。
成る程―――さっぱりワケガワカラナイ。解釈の仕方がぶっ飛びすぎてて、ご都合主義で受け入れているようにすら見えるほどである。
そこはやはり、精神汚染されたサーヴァントだからこその部分でも持っているのだろう。
なにしろ、この狂ったサーヴァントとして現界しているジル・ド・レェ元帥。
セイバー・オルタと初めて会ってジャンヌ・ダルクと勘違いし始めた頃から、自分に都合のいい解釈しかしたがったことが一度もない上に、都合の悪い事実に耳を傾けたことだって一度もないという、ある意味では四六時中いつでもどこでも自慰に耽り続けていると言えなくもない行動しかしてこなかった訳だし・・・・・・今回だけ特別というのも微妙な気がするため、まぁそんなもんであろう。神秘の具現たるサーヴァントにとってさえ現実なんて。
「宜しい! ならば一際色鮮やかな絶望と慟哭で、神の庭を染め上げてやろうではないですか。
娯楽の何たるかを心得ているのは神だけではないということを、天上の演出家どもに知らしめてやらねば!
そうと決まれば前祝いです、リュウノスケ。今日の宴はとりわけ趣向を凝らして愉しむとしましょう」
「合点承知だ! 何かまたスゲェことやるんだね旦那!? う~~ッ、COOL!!」
狂人たちが、何やら自分たち自身にとってだけ都合のいい解釈と理解を得て、答えに行き着きボルテージを上げ続けていく狂態を見せつけ続けながら。
昨晩の内に浚われてきた新たな被害者たちは声もなく震え上がり、互いに身を寄せ救いを求めて、ただ祈る。
だが、呪われた求道者たちが新たな趣向に目覚めてしまった今となっては、罪なき彼ら幼き被害者たちに一片の救済すら期待できることは未来永劫訪れることはないのだろう・・・。
ただ、何の救いにもならぬ余談にしかならぬ事ではあったが。
キャスターと竜之介たちが言うところである『芸術品』が壊され尽くした惨状は、確かにキャスターの言うとおり『神が人を罰した天の裁き』ではなく、竜之介が懸念した『自分たちが楽しみすぎたせいでバチが当たった』という解釈は、完全に的外れな間違ったモノであったことだけは確かな事実ではあったのだ。
彼ら二人が『神の実在と愛』について語ることになった切っ掛けとなった破壊がもたらされた原因。
それは彼らが為した、悪徳と涜神の結果でもなければ、神が記した50億人用の大河小説の1ページでいきり勃っていたという訳でもなく。
ただ―――そうなった理由として―――――
「まぁまぁ、アレクセイさんったら朝から健啖ですねぇ。うちのウェイバーは食が細いモノですから、もう少し見習って欲しいぐらいですわぁ~」
「いやいや奥さん! 私の方こそ朝からこんな美味い朝食を馳走してもらって感謝しとるのですよ! なにしろ昨晩は知人の家の宴に招かれながら、飲んでばかりで何も食べとらんかったのをスッカリ忘れてましてなぁ~!
折角ご子息が見立てて買ってくれたズボンを見せびらかしに行ってやったというのに・・・・・・どうです!? 格好いいでしょう!!」
「・・・・・・・・・(もぐ。もぐ。もぐ・・・)」
・・・・・・ただ町歩きたかったパンツ一丁の巨漢が、ズボンを買ってもらう条件として、鄙びた川っ縁で水汲みやって持ってきた水を、ダメ元で時計塔の初等部でやってた単純作業を繰り返してたら、キャスターが碌な偽装もせぬまま工房の水を下水に垂れ流してたのを発見してしまっただけである。
それがホントに今回の破壊が行われた遠因だったのだ。
果たして、この事実を知ったとき、世界に仕組まれた伏線を尊び、こんな理由で自分たちの芸術をこんな目に遭わせて壊させる脚本を書いた天上のエンターティナーを、雨生竜之介が変わることなく信仰し続けられるかは判断が別れるところになりそうな部分になっていた・・・・・・。
何というか、判明したライダーの最終宝具に纏わる出来事が、知らず知らずの内に色々なところへ影響を与えてしまっていた、王たちの宴が終わった翌日の昼は過ぎていく。
騒ぎが起きるのは夜からで、その騒ぎは聖杯戦争の根幹そのものさえ揺るがすほどの大事件に発展してしまうほどに大規模でインパクトを持つ出来事だったのだが。
キャスターによって、それが起こされる夜の時間帯までは、ライダーの影響によって振り回されるだけで、ほぼ全ての陣営が終始して終わりとなる。
東と西を繋げた、『略奪は王道』と断言できてしまう征服王は・・・・・・やはり色々な意味で、一つの国だけに止まる人物たちとは器が違ったようであった・・・・・・
また、今ひとつ行われていた別の幕間劇として。
「どう? セイバー、運転の感想は・・・・・・って、どうしたの?
なんだか難しい顔をしているけれど・・・」
「――いや、大したことではなく、理由や根拠がある訳ではないのだが・・・何故だろうな。
私は昨晩、征服王たちと宴をして、その宝具に内心で動揺を禁じ得なかったはずなのだが・・・・・・」
「・・・・・・何故だか、その想いが遙か遠い理想郷のごとく、古い記憶のような気がするのだが・・・・・・この現象は一体・・・?」
「・・・・・・・・・ええ、それは私も感じていた部分なのよ。いったい何故なのかしら・・・? なんだか昨晩のことが半年以上前に起きたことのように感じられてしまっている―――やはり私の体が限界に近いことと関係が・・・・・・(ボソボソ)」
完全に死ぬ寸前に世界と契約したせいで、中途半端に英霊化して、前回の召喚された記憶継続系サーヴァントになってたアーサー王の黒く染まった暴君バージョンと、体の感覚が衰えてきてる若くして寿命が間近のホムンクルスコンビだけは、別の意味で他の人たちと同じ時間を生きることが出来ず、どっか別の世界のリアルタイムを体感していたようでしたが、余談です。
幕間劇とは、余談のことなのです。
決して本編に影響を及ぼすことはあり得ないのが余談ですので、誤解なきよう願いたい。
本編の続きに、つづく