もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら 作:ひきがやもとまち
『プリズマ☆ロード』もいい加減、更新したいなぁと願望中…。
未遠川において制御を失った状態で召喚された巨大海魔と、一時的に対キャスター軍事同盟を結んだ三サーヴァントたちとの攻防は、始まって早々に泥沼の様相を呈しつつあった。
セイバーは岸から河中へと身を躍らせ、輝く足甲が銀の飛沫を飛び散らしながらも、爪先が沈むことなく疾走を続けて、湖の精霊に祝福された王のみが可能となる奇跡を見せつけ。
ライダーは牛車に鞭をくれ、大神に供物として捧げられた逸話を持った雄牛は、雷鳴高らかに虚空へと駆け上がり、巨大海魔めがけて一直線に突進していく。
まさに神代レベルの加護を受けた者たちだけが可能となる、神話の大戦を描いた壮大なるサーガを一部だけでも切り取って、神秘が薄れた現代の時代に再現させたが如き紛れもない死闘であったのだ。
死闘ではあったのだが、しかし。
・・・・・・具体的にサーヴァント同盟たちがやっている行動を具体的に描写した場合には――
「ふんッ! てやッ!! ハァァァァァァァァッッ!!!」
「ずおぉぉぉぉぉぉりゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
モォォォォォォッン!!!
・・・・・・とか叫び声あげながら、斬って斬って斬りまくり、雄牛の蹄で蹴って蹴って潰しまくる!
そして、倒した端から燃費効率のいい宝具で完全再生されるを繰り返してるだけで、技も戦術もヘッタクレも何もなく、ただただ近くにある触手をブッ殺しまくって殺しまくるバーサーカーじみた戦い方し続けるしか他に出来ることが何もなかったというのが、この死闘を局所的に見た実情ではあった。
なにしろ今までに行われた海魔たちの戦術でさえ、セイバーたちは同じ戦い方しか出来たことは一度もないのである。
アインツベルンの森で行われた戦闘では、セイバー・オルタとランサーが対キャスター二サーヴァント同盟組んで戦ったけど、使い魔として使役してる状態の時点でも海魔たち相手には今と同じ状況に陥っていたほどなのだ。
ライダー1騎が増えただけで、一気に状況が改善できるものでは残念ながらなかろう。
一応ながら、途中で空から観戦していたアーチャーが時臣にせがまれ、義理として程度の攻撃ではあっても援護射撃を放ってくれて、他のサーヴァントのどれより大きなダメージを与えられはしたのだが、その傷も他の攻撃と全く同じように即座に完全回復されてしまったのでは何も変わらない。
「ちぃッ! あの出不精王め! 結果が同じでは何の役にも立たんではないか!
こういう数が必要なデカ物の駆除こそ、宝具の無駄撃ちしまくりたがる浪費好きなキンピカには似合いの仕事だろうに! あんな奴に少しでも期待した私が愚かだったと言うことか!!」
「確かにな! やはり彼奴、浪費好きな割にケチなだけだったようだ! 今度会った時には盛大に文句言ってやるわい!!」
そして苛立ち紛れに、英雄王の悪口言いまくりな暴君コンビ共。
基本的に他人のこと悪く言いまくるのが、反転したサーヴァントと暴君の基本スタンスではあるんだろうけれど、戦闘中で上手くない戦況で、時間稼ぎするのが精一杯で追い込まれつつある状況だと更に口の悪さが悪化する傾向にあるタイプの奴らだったらしい。
まぁ、空の上から見下ろしてる方の暴君も、相手に聞こえないだけで悪口言いまくりだったんだから、どっちもどっちで済ませるべき問題ではあるのだろうけれども。
多分どっちとも相手の暴言だけは許さないで、自分だけ許すよう求めそうな連中同士ではあるにはある。つくづく暴君というのは面倒くさい。
「なんて再生能力なの・・・・・・セイバーたちが共闘してさえ、上陸を阻むだけで精一杯だなんて・・・」
そして、黒く染まってもいなければ暴君でもない、礼儀正しい深窓の令嬢として育てられてる魔術名家のホムンクルスと、騎士道主人公のオリジナルそのままで召喚されてる美男騎士は、他人の悪口で気を紛らわせてモチベーションを維持する必要はなかったものの、焦りを強めてはいたらしい。
「アレでは・・・キャスターが討ち取れない・・・っ」
ランサーが左手に握った呪いの黄槍を握りしめる手に、思わず力が入ってしまそうになる。
表情と口調と態度こそ冷静なままだったが、なればこそ左手一部分だけの変化に彼の心理が現されていたと言うべきでもあった。
青くない姿で喚ばれた騎士王と異なり、騎士道を奉ずるディルムッド的にはキャスターと戦うための戦場に参戦したくて仕方のない気持ちではあったのだが、彼の役目はセイバーたちが切り開いた敵陣の隙間を塗ってキャスターを投擲し、宝具の《プレラーティーズ・スペルブック》を術式破壊して海魔を消滅させることにこそあった。
あのような混沌とした乱戦の最前線に入ってしまったのでは一瞬の好機を見逃す恐れがあり、戦局を広く把握するためにも後方からの狙撃ポイントに待機せざるを得なかったのだ。
また、アイリスフィールの護衛という役目もある。
セイバー・オルタとしては彼女が真のマスターでないとはいえ、下手に死なれてしまったり危害が加えられたら絶対に真のマスターが冷静さを失って感情的に暴走しかねない恐れがありすぎてたので一人だけで放置するわけにもいかないのだ。
一方で、後方を気にしながら戦って勝てそうな相手とも考え辛く、海魔たちの一部が勝手に襲い掛かってこない保証など、単細胞生物の思考でも理解できる人間でもいない限りは誰にも出来ようがない。
それら二つの理由が一致していたため、ランサーとしては自らの手で葬りたい下郎であるキャスターとの戦いを他者に委ね、自分は後方から督戦しているという本人からすれば全く気分の良くない立ち位置に置かれてしまうしかなかった槍兵の英霊ディルムッド・オディナ。
更には現実的な問題として、海魔のサイズが大きくなり過ぎてしまい、全体像を見るためには後ろに下がって見るしかなかったという事もある。
そもそも英霊ディルムッド・オディナは、水の上だと沈んでしまって戦えないので、陸に近づくまでは白兵戦の仕掛けようがない。
何重にもある戦いに参加できない理由によって、ディルムッドの苛立ちは加速度的に増していくしかない窮状へとサーヴァント同盟たちは陥らされつつあったのだった。
――そして、一つの狭い戦場だけで複数の出来事が、同時並行して別々に行われていたのが、この未遠川決戦だけが持つ特徴の一つでもあった。
今までもコレからも、第四次聖杯戦争では同時にいくつかの出来事が発生していく事態は多く起きていくことになるのだが、未遠川での決戦ほど混沌としていて、全く異なる理由と事情で別々の出来事が複数起きる事態というのは聖杯戦争全体を通して見た場合でさえ類似例が少ないほどだ。
特に、『聖杯と関係が乏しい人物の出来事』が聖杯戦争中の決戦時に、場外戦闘のようにして複数行われていた例は、すべての平行世界を見渡してさえ多数派にはなれないかもしれない。
『・・・何だ? あれは・・・六時方向にも妙な光が浮いています。ヘリじゃない・・・UFOか何かですか? あれって』
航空自衛隊に所属している2機のF15戦闘機のコクピットから未遠川の状況を睥睨して目撃する役目を仰せつかってしまっていた仰木一等空尉は、相方の小林三等空尉から報告を聞かされて我が目を疑うことしか出来なくなっていた。
領海を哨戒飛行中に冬木市警察から要請を受けて、『怪獣対策のための観察』に呼ばれてしまったアホらしさに冗談半分以上の軽口を相方と通信し合っていた先程までの会話内容が、生々しく思えてくるほどの常識から外れすぎた眼下の光景。
河面から巨大な肉塊が迫り出して、きらめく光が肉塊の周囲で点いたり消えたりしている。
それは映画などで見る、巨大怪獣相手に自衛隊の戦車や戦闘機が発砲して着弾した時に生じる爆発光か、あるいは架空のレーザー兵器を搭載した戦車からの攻撃を受けた怪獣のエフェクトに近いものがあったかもしれない。
『コントロールよりディアボロⅠ。状況を報告されたし。繰り返す、状況を報告されたし』
『報告は――いや、その――』
『・・・? どうしたディアボロⅠ。目標地点には到着したのだろう? ならばありのままの報告を』
『ありの・・・ままの・・・・・・』
そう言われても、こんなモノが展開されている地上の光景を報告できる符丁を、正規の訓練を受けた自衛隊員の彼らが持っているわけもない。
錯覚という可能性もあったし、自分が正気を失ってしまっている可能性も、この光景が『事実である』という認識よりかは検討する余地があると思ってもいた。
だが、今し方告げられた小林三等空尉からの通信によって、自分が見ている光景が自分だけに見えている幻覚ではないことが教えられてしまっていた彼には、現実逃避すら許されない窮状にまで追い詰められてしまう羽目になっていたからである。
人は自分の見たモノを、自分の知っている範囲内の現象として理解したがる性癖を持つ。
自分の常識の範囲内に物事を押さえ込んで、理解することによって『安心を得たい』という欲があるのだ。
あるいは、『理解できた』と思い込んで安心できれば、それでいいのかもしれない。
『・・・もう少し高度を下げて接近してみます』
『ま――待て小林! 戻ってこい、ディアボロⅡッ!』
小林三等空尉がおこなった、軽挙とも命令墨守とも受け取れる行動の動機も、あるいは自分の不安を押さえ込むため『安心』を得ようと、分からないものを理解しようとした、理解できたと思える理由付けや理屈を欲しての行動に過ぎなかったのかもしれない。
そういう感情や欲望が、大昔には自然を『魔術』や『精霊』『神の奇跡』という解釈を生み出させ、現代では科学によって解明された理論が広く一般に知れ渡り、新たな信仰を形作りつつある時代に今日ではなっている。
だが―――そんな『分からないのは怖いから安心するため理解したい』という“人間の都合”を、真性の人外が考慮してやらねばならぬ道理など世界中のどこにもない。
『もっと間近からの視認なら、あれが何なのかが―――ヒッ!? ひぃやああああッ!!!??』
『小林っ! 小林ィィィィィィィッ!!??』
霧で視界が見えづらかったせいもあろう。
だが、何よりもディアボロⅡのコードネームを持つF15戦闘機のパイロットだった小林三等空尉は『敵からの攻撃』を想定していなかった。
反撃してくる危険性は考慮していたものの、向こうから先手をとって触手を伸ばし、近づいてきたモノを無差別に絡め取って捕食してしまおうとする『攻撃行動』に出てこられるとは考えていなかったのである。
それが油断になった。近づきすぎたのだ。
相手の巨体から見て、十分に距離をとって偵察するつもりであったようだが、『敵』が『自らの敵』に対して、自分の射程や間合いを偽るのも、騙して攻撃して一方的に殺そうとしてくるのも至極当然の敵対行動でしかない。
その『敵対関係』における当たり前を、小林空尉は失念してしまっていた。
『自分が相手を理解して安心すること』を優先した結果、『理解など必要なく食べ物は皆食べ物』という発想しか持たない『自分と異なる相手』を完全に誤認してしまって―――そして食い殺されてしまったのだ。
機体ごと。巨大海魔に絡め取られて、貪り食われるようにボリボリと。
【ふ、ふふふふふ、フハハハハハハハっ!!
ふはははははははははははははッッ!!!!】
キャスターの哄笑が、巨大海魔の腹の中から響き渡る。
バケモノが食事に喚ばれてから始めて食した獲物に、至高の美味と歓喜を叫んでいるのか。それとも鋼鉄の巨人戦闘機を丸ごと食い破り、腹の中へと飲み込んでしまった自分たちの所業に対して、より恐怖と嫌悪感を抱かせるようための演出だったのか。それは分からない。
ただ一つ言えることは、食事に赴くのを邪魔されている側にとって、食べたい獲物が自分の方からやってきてくれるよう仕向けるのは、食べたい側にとって当然の行動でしかないという事だけだ。
『コントロールより、ディアボロⅠ! いったい何が起こってる!? 報告をッ!』
『目だ・・・目がある・・・・・・。そこいら中に、びっしりと・・・・・・』
『“メ”? メとは何だ! ディアボロⅠ、説明を!』
距離を隔てているにも関わらず、仰木一尉の視界には自分の相方を食い殺した『敵』の詳細が手に取るように分かった。分かってしまった。
あるいは、分かったと思い込んだだけかもしれないし、思い込まされただけだったかもしれないが、それでも彼は『分かった』と信じた。そして動き出す道を選んだのだ。
ギョロリ、と。
巨大海魔に合体してから海魔の体に新たに現れ出した部位が、ふいに仰木一尉の乗るF15戦闘機を見上げてくる。
肉塊の表面に疣のように現れまくっていた眼球たちが、一斉に見開かれて上空にいる自分の方を凝視してきたのである。
その全ての“視線”が、言葉ではなく目で語ってきていた。
―――お前を食いたい―――
『!! こ、この俺も食らう気なのか・・・っ!?』
その視線に見つめられ、射すくめられた仰木一尉は桁外れの恐怖を感じさせられる。
そして恐怖を感じさせられたからこそ、彼はスロットルレバーを押して怒りを込めた攻撃行動へと打って出たのだ!
『お、仰木一尉!? 待て仰木一尉! いったい何が――』
『ディアボロⅠ、交戦開始ッ!! 食われる前に、殺すッ!!』
激しすぎる恐怖に引き寄せられるようにして、仰木は恐怖の源へと急速接近して、恐怖の根を絶つため全弾ありったけ叩き込むつもりでセーフティを解除していく。
あれほどの恐怖を感じさせられた存在を、このまま放置し続けることは出来ない。――怖いからだ。
アレに襲われて、いつ食い殺されるかという恐怖に怯えながら生き続けるなど、恐怖以上の恐怖でしかない。
だから終わらせるのだ。アレに恐怖させられる状態を。人生を。
自分を怖がらせる存在が、完全に世界から消えてなくなったと確信できたなら――それこそ本当に『安心して生きていける未来』が得られるという事ではないのか・・・・・・。
一説によると、原子爆弾という超兵器は特定の敵を想定して使うために造られた物ではなく、将来的に現れるかもしれない『自分たちを脅かす脅威』への恐怖心が、その時に備えようと対処するため造らせた物だったという。
その節の真偽は定かではないが、少なくとも今の仰木一尉はその説に心から賛同する一人になっていたかもしれない。
『小林の仇だ・・・全弾を叩き込んでやるッ!!』
自らの恐怖心を振り払うため、恐怖する対象を完膚なきまでに破壊し尽くすため。
目の前に聳え立つ、巨大な敵に意識と視線を集中させて、敵を倒すことだけに心を研ぎ澄まさせていく彼。
だが、それ故に彼もまた忘れていた。
―――敵は、『目の前に立ち塞がってきた存在』とは限らない。
『目の前にいる敵以外の敵』がいる可能性も、戦場で考慮すべき戦争の常識ではあるのだから。
【Aaaa・・・ッ、Saaaa・・・・・・ッ!!】
そして、巨大海魔めがけて空中の道なき道を突き進んでいくF15戦闘機の頭上に、いつの間にか姿を現していた、陽炎のような気配を纏って影のような色の鎧に身を包んだ黒騎士の英霊。
そして、自らの特殊能力によって早速F15戦闘機を自分の宝具へと変質させていき、乗っ取ってしまう理性を失ったバーサーカーのサーヴァント。
「ほほう? またしても、あの狂犬か。・・・面白い」
そんな戦闘機の変貌させられた姿を見て取った黄金の英雄王が空中で、空飛ぶ船に乗りながら冷酷な笑みを浮かべ。
「ハァッ! ――なっ!? アレはまさか、バーサーカーか!? こんな時に!」
「この期に及んで、また奴か! 今夜は一体なにをする気で介入を・・・!」
「何しに現れたんだ!? アイツっ」
地上の二サーヴァント同盟と、一機だけ空中に戦力分けていた1サーヴァント別働隊が、それぞれの立場と視点から予期せぬ乱入者の登場に不愉快そうに顔をしかめて独語する。
漁夫の利を占めるため勢力同士が争う戦場への介入ならば、勝敗が決する寸前まで待たなければ自分が滅びる危険があるし、バーサーカーにそこまで理性的な反応など求められるか否かがよく分からない。
こんな混沌とした、敵と味方が入り乱れまくってる戦場にバーサーカーのクラスを投入など正気の沙汰とは思えなかったが、それが理性失ってる英霊と嫉妬に狂ったマスターだと言われたら反論の余地はなく、言い返す気にも余りなれない。
「フフ、こういう趣向の戯れ合いは久しぶりぞ。
たかが獣如きの分際で、ずいぶんと興じさせるではないか。雑種」
だからこそ、英雄王から評された狂った英霊に対して、強いて言いたいことが地上のサーヴァント同盟側にあったとするならば。
「・・・よし! なんか理由はよく分からんが、アーチャーの方を目当てに突っ込んでいってくれおったわ! これでしばらくはデカブツを相手取るのに集中できそうだわい!」
「ああ、全くだ! どーせ戦わないのなら、せめて狂犬を引きつける囮役として役立てば良しとしてやろう! 奴のように目立つ色には似合いの役目だ!!」
やっぱり悪口言いまくって、やる気出すのに利用したがる暴君連合サーヴァント共たち。
空でも地上でも、キャスターを攻撃したサーヴァント同士が悪口言い合いながら、対キャスター戦は徐々に3サーヴァント同盟の劣勢に――そして決着へと向かっていくことになる。
そしてまた、聖杯戦争とは関係の薄い、もう一人の当事者も、この時から介入を再開することになっていたのを、彼らサーヴァントたちは誰も知らない。気づいてすらいなかった。
「――痛つぅぅ・・・・・・なんっか頭フラフラすんだけど・・・・・・何かあったっけかな? よく覚えてねェ・・・」
セイバー・オルタによって、なんの証拠もなく『なんとなくの勘だけ』を理由に罰せられ、今の今まで気絶していた連続殺人鬼の美青年マスター雨生竜之介が、ようやく意識取り戻して未遠川の一角で立ち上がっていたのである。
「えーと・・・ア~・・・そうそう、青髭の旦那がスッゲェことやってくれるって言ってたし、見に行かないとな――よいしょっと」
「ヒッ!? いぃぃ・・・っ!!」
「ん? え、なに? ねぇ何? お姉さん、俺の顔に何かついてたりすんのかな?」
「ひぃッ!? じ、ジェイソン! いえ、ゾンビ!?」
「フラケンシュタインが動き出したー!? バケモンだー!」
「やっぱり今夜の橋は呪われてるのよ! お化け屋敷よーッ! きゃ―――ッ!?」
「・・・・・・??? え、なに? なにかビックリするようなスッゲーことが、オレの知らないうちに起きてたりしたのかな。うわ、スッゲー残念。マジ見たかったわァ」
他人事のつもりで他人事として語りながら――セイバー・オルタによる《Aランク腕力断罪パンチ》を食らわされた一般人として、自分の顔がヒッデー状態になってることに気づくことなく。
痛みが一定量以上を上回ったせいで痛覚切れてたらしい状態で、自分の顔こそホラーお化けのバケモノ仮面になってる姿で、竜之介はフラフラと川が見える位置まで橋の上を歩いて行く。
「わぁ・・・っ♪」
そして、子供のように目を輝かせて、それを見上げる。
まるで自分だけの綺麗な宝物を始めて見つけたような、無邪気そのものの表情に歓喜を浮かべながら、サーヴァント同盟たちが必死に上陸を遅らせている巨大海魔の異形を、目覚めてから始めて目の当たりにすることになる。
「・・・く、くっくっ、ははは、アハハハハハッ!!
凄ぇ! マジ凄ェ! マジ凄すぎるぜ青髭の旦那ァッ!!!」
そして嗤う。笑う。
河面で暴れ狂う大怪獣と、上空で花火を散らし合うUFOと自衛隊機というスペクトラルを見上げながら。
「もう退屈なんてサヨナラだ! 手間暇かけて人殺しなんて、することもねェ!
放っておいてもガンガン死ぬ! 潰されてっ! 千切られてッ! 砕かれてッ!! 食われてっ!! 死んで死んで死にまくルっ!!!
まだ見たことない腸も、次から次へと見られるんだぁぁぁッ♪♪」
異常すぎる光景を目前にしながら、その光景に負けず劣らずの異常なセリフを大声で、愉しそうに叫びまくる彼の狂態に、周囲にいる人間たちも恐怖の色を浮かべて竜之介を遠目にして距離を置きながら見つめてくる。
・・・・・・ボコッと凹んだ顔で、訳わかんないホラー映画セリフみたいな言葉を叫んでる、関わったらダメな怖い人を見る視線で遠巻きに。
今の自分がどんな顔をしているか、自分の顔だから自分だけは分からなくなってる状態で―――
「毎日、毎日・・・・・・世界中っ! そこいら中でェッ!!
ひっきりなしの終わりなし―――ブフッ!?」
雨生竜之介の人生は通常弾2発だけで、アッサリと終わりを迎えさせられる事になるのであった。
つづく