どうも、ゲーティア・バルバトスです。
私には許せないことがある。
それは卑劣な行いである。
女子剣道部の斎藤さんが私に助けを求めてきた。
私は彼女達女子剣道部に恩がある。
そんな彼女達が困っているなら助けに行かず何が男だ。
「の、覗きよ!」
もう一度言おう、私の許せないことは、卑劣な行いである。
覗きは卑劣な行いであるか、イエスだ。
ならば、私はどうするべきか、簡単だ。
「場所はどこだ、案内を頼む。一護、あとは任す。」
「う、うん。」
斎藤さんに案内されて、駆けていく。
side 兵藤一誠
「でへへえへへへへへ」
俺の名前は兵藤一誠。
駒王学園の一年だ。
親しい奴には『イッセー』と呼ばれている。
この学校は最近共学になったばかりで、女の子がスゲー多い。
それにかわいこちゃんもスゲー多い。
馬鹿な俺がこの高偏差値の学校を選んだのは、それが理由だ。
「おい、イッセーそろそろ変われ。」
「そうだぞ、お前ばっかズリーぞ。」
この二人は松田と元浜だ。
俺とは中学時代からの付き合いで親友だ。
だが、それとこれとは話は別だ。
「何言ってんだ。お前らさっきまで覗いてただろ。今は俺の番だ。」
「チッ、早く変われよ。」
「ああ、ここにはスゲー怖い先輩がいるらしいぜ。見つかったらやべーだろ。」
「スゲー怖い先輩?」
「ああ、何でも駒王の魔王って呼ばれているらしいぜ。」
「へぇー・・・--っ!」
俺は元浜の話を聞いていたが、覗き穴から見える光景に全ての神経を集中させた。
ちょうど生着替えが、それも巨乳の先輩の生着替えを拝めているのだ。
俺の様子に気付いた二人も見ようと覗き穴に群がってきた。
「ああ、邪魔だ。今は俺が見てる番なんだ。」
「いいだろ、イッセー。俺達、親友だろ。」
「そうだぞ、イッセー。親友は分け合うものだろ。」
「調子のいいこと言うな。」
俺達がポジション争いに夢中になっていると、俺の肘が立て掛けてあった板に直撃し、大きな音が鳴った。
「だ、誰、キャァァァァァァァァァァァ!!!!覗きよ!!!」
「「「--!」」」
俺達は急いで逃げた。
必死で、脇目も振らず。
「イッセー!お前のせいだぞ!」
「そうだ、イッセー。お前が悪い!」
「はぁー!ふざけんな!お前らが俺の邪魔したからこんなことになったんだぞ!」
俺達は互いに責任のなすりつけ合いをしながら、必死で走って逃げた。
「ゲーティア君、あいつらよ!捕まえて!」
後ろから声が聞こえた。
援軍を呼んだのか。でもこんなに離れていれば隠れるなんて訳ないぜ。
「まずい、駒王の魔王だ!」
「え!」
元浜がさっき話してたスゲー怖い先輩か。
俺は好奇心に負けて後ろを振り返ってしまった。
そして恐怖した。
「ブルアアアアアアアアアアアアアア!!!」
鬼がいた。
あまりの迫力に泣きそうになった。
いや漏らしそうだった。
二人も同じだった。
俺達の心は一つだった。
「「「捕まれば命はない」」」
その思いで必死で逃げて、隠れた。
さっきまでは命がけの鬼ごっこ、ここからは命がけのかくれんぼだ。
俺達は息を殺し、必死で願った。
「「「見つけるな!!」」」
だが、その願いは神に届かなかった。
「貴様らぁ…、こんなところで何をしているぅ?…鼠のように逃げおおせるか、この場で死ぬか、どちらか選べぇぇぇぃ!!!」
俺達はあまりの迫力に失神した。
side out
覗き魔3人は私を見て、気絶した。
こいつらを制裁するのは私ではなく彼女達だ。
いくら卑劣なことをするこいつらといえど、直接殴る蹴るをしていいわけがない。
私は部外者だ。寝ているこいつらを全力でぶん殴りたいと思っていても。
私は怒りを抑え、連行し、彼女達に引き渡すことにした。
坊主頭と眼鏡を右腕に乗せ、左手で茶髪を掴んだとき、妙な気配を感じた。
俺は小規模の結界を張り、ディアボロスを呼び出した。
茶髪に向けると反応した。
「こいつ、力を持っている。」
昔、楓を見つけたとき、ディアボロスが反応した。
この茶髪からも同じような物を感じる。
神器か。
かなり奥深くに感じる。
強い気配だ。でもまだ目覚めにはまだ遠い。
楓は既に神器が目覚めていた。
遠くからでもディアボロスで位置が分かるほどだった。
でもこの茶髪には触れて初めて分かった程だ。
目覚めにはまだ時間が掛かる。
どうするか。
一度リアス、ソーナに伝えておくか。
だが、まずは制裁が先だ。
覗き魔3人を女子剣道部に引き渡した。
怒りの声と嘆きの声を上げながら思いの丈をぶつけていく。物理的に。
私は彼女達の鉄拳制裁を黙認した。
その痛みは彼女たちの心の痛みだ。
彼らには自業自得と思って、その痛みを甘んじて受けなければならない。
今回悪いのは覗き魔の方だ。
だが、そろそろ止めるべきだな。
やり過ぎれば彼女達の方が罪に問われかねない。
被害者から加害者に変わりかねない。
「斎藤さん。彼らを一度、学校側に突き出そう。警察に付き出すより、まず先に学校側から処罰を与えて貰おう。」
「うん、あの、ゲーティア君も一緒に来てくれる?」
「もちろんだ。任せてくれ。」
だが、彼らが鉄拳制裁を受けたからと言って、それで許された訳ではない。
社会のルールに従って裁かれなければならない。
ましてや性犯罪者だ。慈悲はない。
□
私と斎藤さんは職員室に着き、今回の事情を説明し、覗き魔3人を生徒指導の先生に引き渡す。
「バルバトス、今回は色々助かった。ここからは俺の仕事だ。こいつらは俺が徹底的に指導してやる。」
「先生、私は大したことはしてません。それよりも女子剣道部の子たちのケアもお願いできますか。」
「ああ、もちろんだ。」
「あと、覗きが出来たと言うことは、何かしら構造上の欠陥もしくは老朽化があるのかもしれません。女子剣道部の使う更衣室を変えることは出来ませんか?」
「出来ると思うが、代わりの場所はどうする。」
「斎藤さん。第二剣道場の更衣室を使ってくれ。男子剣道部は外でも構わない。」
「ええ、でもいいの?」
「さすがに真冬だと厳しいかもしれないけど、男だから気にしなくていいよ。外から見られないようにブルーシートでも取り付けておけばいい。」
「うんわかった。ごめんね。」
「それにこれは学校施設の問題だから生徒会に掛け合って修復若しくは対策をとって貰うことになる。そうなると修復のために工事が発生するだろう。遅かれ早かれ、代わりの場所を用意する必要がある。」
「そうだな。私からも上に上申するよ。急いで対応するべきだな。」
「でしたら生徒会には私が報告に行きます。先生は上申の用意をお願いします。」
「ああ、分かった。バルバトス、そちらは頼む。」
「ええ、おまかせください。斎藤さん、すまないが生徒会までご一緒願えないか?」
「ええ、もちろん行きます。」
「では、先生失礼いたします。」
「ああ、本当にありがとう。」
私と斎藤さんは職員室を出て、生徒会を目指すことにした。
□
生徒会にたどり着き、生徒会長に事情を説明した。
「なるほど、事情は分かりました。」
「はい、ご対応の程宜しくお願い致します。」
「もちろんです。私も同じ女性として覗きなどという卑劣な輩を許すことは出来ません。それに男子剣道部がそれほど協力してくださているんです。私も自分の職務を全うするだけです。」
「生徒会長、よろしくお願いいたします。」
「ええ、お任せください。ソーナさん、宜しいかしら。」
「はい、何でしょうか生徒会長。」
「急ぎ建物の修復工事を業者へ依頼してください。」
「はい、お任せください。」
「よろしくお願いします。バルバトス君もありがとうございます。しかし・・・」
「どうしました、生徒会長?」
「いえ、・・・男性の前で言うことでは無いのですが・・・駒王学園が共学に成り、男子生徒が増えていくとこういうことが増えていくのでないかと不安に感じています。」
「生徒会長、同じ男として申し訳ありません。」
覗き魔のような卑劣な存在は周囲の同種の存在まで価値を落とすことになる。
この場合、彼女達女性陣たちからしてみると男とは覗き魔だ、と同一視されるようなものだ。
女子校から共学に成れば、元々いた生徒からすればそういう偏見も持たれるかもしれない。
前世でも女性専用車両などが作られたとき思ったが、男性全員が痴漢をするわけではない。
一部の卑劣な者のせいで、全体の品位を落とす、それが私には我慢ならない。
「いえ!バルバトス君のような方がいることは私は知っています。ですが・・・」
「生徒会長、私に一つ考えがあります。風紀委員の設立は如何でしょうか。」
「風紀委員ですか?」
「はい、これまでは生徒会が学園の風紀を取りしまってきました。ですが、このようなことが起きた以上、その対応に人員を割く必要があります。生徒会役員だけでは手が足りなくなると思います。ですので、私は風紀委員を設立を提案致します。」
「分かりました。議題を提出してみます。もし、風紀委員を設立した際には、バルバトス君にもお手伝いいただきたいのですが・・・」
「ええ、もちろんです。言い出したのは私ですので。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
私たちは生徒会を出ようとして、もう一つの要件を思い出した。
「斎藤さん、先に女子剣道部に伝えてきてくれないか。男子剣道部には私の方から連絡しておくから。」
「うん、分かった。ゲーティア君、本当にありがとう。」
「男子剣道部に協力してくれた恩を少しでも返したかったから、このくらいはさせてほしい。」
「ゲーティア君・・・本当にありがとう。」
斎藤さんは女子剣道部に向かったようだ。
これで、もう一つの要件を行おう。
「ソーナ、業者に依頼するにあたり、建物の現状を見てもらいたいが、来てもらって構わないかな。」
「ええ、分かりました。生徒会長、行って参ります。」
「ええ、ソーナさん。お願いします。」
私とソーナは生徒会室を出て、あるところに向かった。
「ソーナ、第一剣道場に向かう前に寄りたいところがある。少しいいだろうか。」
「ゲーティア、分かりました。何かあったんですか。」
「ソーナとリアスに報告しておくことがある。覗き魔の一人について。」
「説明は一度に済ませたほうがいいですね。なら、オカルト研究部で聞きましょう。」
私とソーナはオカルト研究部の部室まで足を運んだ。
「あら、珍しいわね。ソーナとゲーティアがここに来るなんて。」
オカルト研究部の部室にはリアスと朱乃がいた。
「実は女子剣道部で覗き事件が起こった。実行犯は3人いた。その内1人に妙な気配を感じた。」
「妙な気配?」
「はっきりとは分からない。だがおそらく、神器を持っている可能性がある。」
「神器!それ、本当なの!」
「まだわからない。力が目覚めていないから正確なところは分からない。」
「そうですか。それは厄介なことになるかもしれませんね。」
ソーナの言う通り、厄介なことになるかもしれない。
堕天使の総督、アザゼル殿は神器の研究を行っているらしい。
もし彼が気づけば、手を出してくるかもしれない。
そうなればこの領地の管理者であるリアスにも無関係ではない。
「そう、ありがとう。ゲーティア、報告感謝するわ。」
「ああ、ではこれで失礼する。」
「では、リアス、私も行きますね。」
私とソーナはオカルト研究部を退出し、当初の目的地である第一剣道場を目指すことになった。
□
覗き魔事件から1週間が経過した。
今私は生徒会室に来ている。
「ゲーティア・バルバトス君、貴方を風紀委員長に任命致します。」
「謹んでお受け致します。」
私は今、生徒会長から風紀委員長の任命を受けている。
生徒会長と生徒指導の先生が積極的に動いた結果、これほど早くに設立された。
学園としても、警察沙汰になるような事態は避けたいようだ。
悪魔が運営しているとは言え、あまり事態が大きくなると収集に苦労するようだ。
風紀委員の設立に関して草案の段階で参加しており、その際にいくつか権限を貰えるように交渉した。
・生徒会長は風紀委員長の任命権を持っている。
・風紀委員長は風紀委員の任命権を持っている。
・風紀委員は学園外から任命してもよい。
・風紀委員は生徒会の下部組織ではなく、独立した組織であるため、生徒会が干渉することは出来ない。
・風紀委員長の解任は生徒の三分の一以上の署名が必要である。
風紀委員長を生徒会長が任命し、風紀委員を風紀委員長が任命する。
また学園外から任命というのは大人でもいいことを含ませている。
子供では危険があることもあるので大人の協力も出来るようにした。
生徒会長が任命したとはいえ、生徒会のご機嫌伺いをしていては意味がない。
また、風紀委員長が権力を持つ以上、暴走する可能性がある。
その暴走を抑えるのは生徒であるべきだ。
その際、生徒全体の何割にすべきかで揉めた。
私は四分の一でいいと思ったが生徒会長、生徒指導の先生は二分の一という意見が出た。
私は生徒が変えやすくするべきと主張したが、生徒指導の先生としてはあまり変えやすくすると、悪ふざけやノリで変えてしまえ、という意見に飲み込まれかねないという意見だった。
また生徒会長の意見は今は良くても、その内男女比が変わっていった際、生徒会長が信頼した人物が生徒にとって嫌いだから変えてしまえ、という意見が出た時、低すぎる敷居では抑えられないという意見だった。
結局、間を取って三分の一という結果になった。
「ではバルバトス君、風紀委員長としてよろしくお願いしますね。」
「はい、全力を尽くします。」
さて、まずは風紀委員の任命からだな。
楓、一護は当然として、男子剣道部も組み込もう。
人手は多い方がいい。
木場も組み込んでいいだろうか、後でリアスに聞いておこう。
それに学園外から任命してもいいから、戸愚呂と幽助を入れておこう。
剣道部が夏の合宿や大会のときにはいなくなるので、代わりになる存在は必要だ。
これで、学園の秩序が保てるだろう。
□
生徒会長から任命されてから1週間が経った。
私は生徒会に用意された風紀委員室にいる。生徒会と隣の部屋を用意してもらった。
私はこの一週間、風紀委員としての仕事に重きを置いていた。
風紀委員の任命も完了し、ようやく平穏が訪れた。
剣道部の指導をここ最近は一護に全て任せていた。
もうすぐ部内対抗戦が始まる。
それまでには全員に指導を行いたいと考えている。
文芸部の方は楓が取り仕切っている。
だが、新入部員が入ってきているのでぜひ来てほしいと言われた。
昨年の私の絵に感銘を受けた、という子たちが集まったらしい。
一度は顔を出さないとな。
私がそんなことを考えていると電話が鳴った。
「風紀委員長、覗き事件です。」
あの覗き魔3人組は前回の一件で厳重注意を受けていた。
あれから2週間、鳴りを潜めていた。
だが再び犯行が起こった。ならば容赦しない。
では行こう、風紀委員長の最初の仕事だ。
side 兵藤一誠
俺は兵藤一誠。
2週間前、覗きがバレて女子剣道部にボコボコにされて、生徒指導の先生にはしこたま怒られた。
だが、俺は諦めない。
そこに女子の着替えがあるなら覗く、それが俺だ。
松田と元浜も同じ気持ちだ。
やっぱり俺達は親友だな。
「女子剣道部は覗きが出来なくなったが、バレー部にこんなベストスポットがあったなんて。」
「ああ、よく見つけたな。」
「フフ、感謝しろよ。俺が毎日せっせと探したんだ。」
俺達はベストスポットで着替えを覗いていた。
以前みたいなヘマはもうしない。
そして今度は3人一緒に仲良く覗いている。
俺達は親友だ。楽しみは分け合わないとな。
「見つけたぞ!」
ヤバい!見つかった。
何でバレたんだ。イヤそれよりも逃げないと。
俺が逃げようとして親友二人を見ると、遠くの彼方にいる。
あいつら俺を置いて行きやがった!
「おい、待てよ」
「イッセー、すまない。俺達の犠牲になってくれ。」
「イッセー、墓には俺の秘蔵のエロ本を備えてやる、だから成仏してくれ。」
「ふざけんな!あとついでに秘蔵のエロ本はください。」
俺達は馬鹿なやりとりをしながら、逃げていた。
後ろから、男子生徒が追いかけてくる。
「おい、もしかしてアレ・・・」
「ああ、あの腕章は・・・」
「なんだ、一体」
松田と元浜が何か話している、腕章になにかあるのか?
「イッセー、お前知らないのか?」
「なにが!」
「あの腕章は風紀委員の証だ。」
「風紀委員!まさかあの・・・」
「ああ、あの時の魔王の手下だ。」
俺は思い出した。
2週間前、魔王に追われたことを。あの恐怖を。
だが手下たちだ、魔王じゃない。
なら俺は逃げきってやる!
だけどその希望は潰えた。
目の前に魔王がいる。
いや、
風紀委員長のゲーティア・バルバトス先輩とそれに従う男子剣道部。
うちの男子剣道部は創部一年で全国制覇を成し遂げた。
その部を作ったのがゲーティア・バルバトス先輩だ。
先輩が魔王と呼ばれるのはその剣道部を支配下に置いているからだ。
その先輩が今度は風紀委員長になって男子剣道部を風紀委員にした。
その結果、魔王の軍団、魔王軍が組織された。
「おい、魔王だ・・・」
「ああ、それにオレンジの死神に、男子剣道部主力だ。」
「うしろも追いついてきた。」
俺達は囲まれた。
逃げ場はない。
最後に見た光景は魔王と魔王に指揮された軍団に蹂躙される仲間たちだった。
side out