政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第13話 家族です

どうも、ゲーティア・バルバトスです。

 

私の全力の告白を受け取ってもらえて、レイヴェル・フェニックスさんと婚約致しました。

あの後は全員大爆笑だった。

サーゼクス様もジオティクス殿もグレイフィア殿もフェニックス侯爵殿もみんな大爆笑だった。

私とレイヴェルさんも顔を真っ赤にしてしまった。

だが、悪い気はしない。

その後はジオティクス殿とグレイフィア殿は私を抱きしめ、大泣きしてくれた。

フェニックス侯爵殿は婿殿と呼んでくれた。私も義父上と呼んでいる。

 

私とレイヴェルさんの二人で話していないことに気付いた、サーゼクス様の計らいで、レイヴェルさんと二人きりにしてもらいました。

ありがとうございます、魔王様。

 

「・・・・・」

「・・・・・」

 

何を話せばいいのか分からない。

さっき勢いで言ってしまって、彼女が受けてくれた。

でも、まともに彼女を見れない。

彼女の金髪が、白い肌が、青い瞳が全てがキレイだ。

だから直視できない。

前世でもこんな思いは終ぞなかった。

だが、このままでは彼女が気まずいだろう。

私は男だ。男は度胸だ。つまり私は度胸だ。

 

「レイヴェルさん、初めましてゲーティア・バルバトスです。よろしくお願いします。」

 

私は全力のあいさつと握手の構えを取った。

これしか浮かばなかった。

だが、それを見て彼女は笑ってくれた。

 

「クスクス、ごめんなさい。先程あんな大胆な告白をされたのに・・・でも、そうですわね。ゲーティア様、初めましてレイヴェル・フェニックスと申しますわ。これから宜しくお願い致しますわ。」

 

それから打ち解けるのに時間は掛からなった。

レイヴェルには呼び捨てにしてほしいと言われた。

彼女の趣味がケーキ作りであることや家族のことを聞いた。

レーティングゲームに兄の眷属として参加していることも聞いた。

彼女は私の話も聞きたがった。

人間界の学校に通っていること。

趣味の話、でもそれには苦笑いされた。

レーティングゲームに参加したことも話した、それにもまた苦笑いされた。

家族の話も誤解を与えないように全て包み隠さずに話した。

彼女との話は時間を忘れる程だった。

あまりに戻ってこない私たちを魔王様が呼びに来ていただいた。

でも、少し前から全員で隠れてみていたようで、ジオティクス殿とグレイフィア殿はまた大泣きしていた。

彼女と別れる前に二つ、お願いをされた。

一つは私の領地を見せてほしいと言われた。

私は是非とも来てほしいと言った。

その結果、次の日にやってきた。

中々行動力がある娘だ。

 

side セバス

バルバトス家の執事、セバスでございます。

当家の主、ゲーティア様が昨日、ご婚約致しました。

知らせを聞き、私は立つ力が無くなりました。

もろい体です。

やっと、やっと・・・この日を迎えたというに。

原因は過労でした。

清麿、デュフォーの二人が答えを出した結果です。

間違いありません。

 

私も老いたものです。

先の大戦では先々代様と共に戦場の最前線を駆けた大戦の生き残りです。

大戦が終わり先々代様が亡くなられた後、先代様を支えました。

ですが先代様は旧魔王派によってお亡くなりになりました。

先代様の奥様もお亡くなりになり、ゲーティア様お一人だけ残されました。

バルバトス家はもう終わりだと思いました。

たった8歳の子供に何が出来るというのですか。

無理な期待は身を滅ぼすことになります。

私の望みはせめてゲーティア様が安全に暮らせること、それだけでした。

この絶望的な状況にただ一つの希望がゲーティア様でした。

ゲーティア様は8歳の時、公爵位を継がれました。

 

「セバス、どうすれば我が家を立て直せる。俺にはよくわからない。何でもいい。教えてくれ。」

 

ゲーティア様はこの絶望的な状況をご存じなかった。

当然です。何も教えていなかったのですから。

 

「まず・・・勉強です。」

「そうだな。勉強が必要だな。よし、頼む。」

 

勉強して頂きました。

当家の絶望的な状況を理解していただくために。

ですが、ゲーティア様は天才でした。

圧倒的な理解力でどんどん知識を吸収されていきました。

 

私は希望を抱いてしまいそうになりました。

私が勉強をしていただいたのは絶望的な状況を理解していただくこと、そして・・・一人でも生きていって欲しかったからです。

私はゲーティア様より早く死にたかった。

これ以上、主が死ぬのを見たくなかった。

でも、もっと生きたくなった。

後一日だけ、後一日だけ、この方を見ていたくなった。

惜しくなった。

私は初めて自分を知りました。

主が死んでも生き続けたいと思う不忠者、それが私でした。

それから、力が溢れて必死で働きました。

一日、一日、強く、たくましく、かしこくなっていく主の姿が私に力を与えました。

 

それから7年、眷属を全て揃えたゲーティア様が初めてレーティングゲームに参加したときは心が躍りました。

まるで先々代様が戦っているようでした。

その眷属たちと共に戦う姿に・・・・・嫉妬しました。

あそこで戦うのは私だ。

私はゲーティア様の眷属全員に嫉妬しました。

最初に眷属になった楓は神器を持っていましたが、それだけでした。

物覚えの悪い娘で何度も何度も何度も・・・・教えました。

やっとゲーティア様のクイーンとして、スタートラインに立てた程度です。

他の眷属も一癖も二癖もあるような連中ばかりです。

そんな者たちを集めるなんて・・・・・・先々代様のようではないですか。

私も同じでしたから良く分かります。彼らはいずれもゲーティア様だから眷属となった扱いにくい者達です。

だからこそ、大戦の時代を思い出し、共に戦った仲間を思い出し、主と共に戦う姿に私も共に戦いたかった。

 

そして、領地の大掃除では旧魔王派を一斉捕縛し、魔王様に引き渡しました。

その中には先代様と奥様を殺した者が居りました。

この手で殺したかった。

ですがゲーティア様は引き渡しました。

一番苦しんだのはゲーティア様です。

だというのにその苦しみを現政府への忠誠に変えました。

この一件は先代様と奥様の名誉回復を実現し、魔王様への忠誠を誓われたことで、周囲の状況が一変されました。

それからです。バルバトス家の状況が改善したのは。

犠牲にした産業の代わりに清麿が推し進めた、魔法と人間界の機械技術の融合を実現した、魔科学を作り上げ、当家の財政は先の大掃除以前の数字を大幅に上回りました。

近い将来、冥界の産業革命が起こり、当家に莫大な富を与える、と清麿とデュフォーの二人が答えを出しました。

そして、周辺貴族との関係も大幅に改善されました。

惣右介が中央から地方までありとあらゆる貴族に親交活動を行い、今現在のバルバトス家を知っていただけているようです。

もう、旧魔王派に組みした、という過去から変わったことを理解いただけているようです。

そして、治安に関しても大掃除以降の犯罪率はほぼ0パーセントに近い数字を叩き出しており、領民が皆、笑って暮らせる安全な場所に生まれ変わりました。

 

昨日、遂に、遂にゲーティア様がご婚約成されました。

お相手はかねてより当家の理想とされる御家、フェニックス家のご息女、レイヴェル・フェニックス様。

以前から当家にはない経済力と他家に嫁げる背景がある、当家の理想の政略結婚のお相手でした。

それを魔王様からの斡旋という形でご婚約されました。

これは魔王様が選んでくださったことという栄誉、当家に足りないものを全て満たす理想の相手、という当家の最良の結果となりました。

 

ゲーティア様がどこまでもバルバトス家のために己を殺されてきたのか、私は全て存じております。

恐れ多いことですが、私はゲーティア様のことを息子のように思ってきました。

そのゲーティア様がご婚約成されたことで、もう私の役目は終わったと思いました。

ゲーティア様にもう私は・・・・必要ない。

これからは眷属たちがいます。

主と共に領地を改善させた、主に忠を尽くす、屈強な者たちが居ります。

これで安心して後を追えます。

先々代様、先代様、私も・・・・もう疲れました。

最後に出来るならば、ご婚約者様の御顔を見てから死ねたら本望でございます。

 

なんと、ご婚約者のレイヴェル・フェニックス様が当家にお越しになられました。

昨日ご婚約を成されたばかりで、すぐ来ていただけるなんて、本当にありがたいことでございます。

このようなときに寝てなどいられません。

どうせあと少しで尽きる命、ここで燃やさず、いつ燃やすというのです。

幸い私が過労で倒れたことを知っているのは清麿とデュフォーの二人の二人だけです。

今日だけでいいので黙っていてほしいとお願いし、レイヴェル・フェニックス様をお迎え致しました。

 

「ゲーティア様」

「レイヴェル。ようこそ、バルバトス領へ。」

 

レイヴェル・フェニックス様が当家にお越しになられました。

なんと可愛らしいお嬢様でしょうか。

ゲーティア様がお出迎えになると、笑顔でお応え頂けました。

・・・誠に恐れ多いことですが、私はゲーティア様が笑ってくださるお相手ならばそれで良かったのです。

政略結婚などでなく、ただ自分の御心のままに選ばれるのが良かったのです。

バルバトス家は政略結婚をしてきた家ではありません。

先々代様も先代様も自分の御心のままに選ばれました。

だからゲーティア様だけが無理に政略結婚をすることはなかったのです。

ですが、ゲーティア様が当家のために選ばれた方ならば私には何も言えません。

 

「レイヴェル、当家の執事のセバスだ。」

「セバスと申します。」

「レイヴェル・フェニックスと申します。これから宜しくお願い致しますわ。・・・・・・・つかぬ事をお聞きしますがお疲れではありませんか?」

「ーー!いいえ、そのようなことは・・・」

「こちら、お飲みください。きっとすぐに良くなるはずですわ。」

 

レイヴェル様は小さなビンを取り出され、私にお与えになられました。

これは、フェニックスの涙。

 

「そのような高価な物、恐れ多くて頂けません。」

「何を言うのです。これからは家族になるのですからそのような遠慮無用ですわ。」

「ーー!家族!」

「ゲーティア様が仰っておりました。執事のセバスは家族だと。ならば私ともいずれ家族となるのです。だからお飲みなさい、セバス。」

 

私は歓喜に打ち震えながら、フェニックスの涙を飲みました。

全身から力が漲るようです。

それは決してフェニックスの涙だけではありません。

ゲーティア様に家族と思われていたことの歓喜が私に力をくれました。

 

「セバス、実は昨日レイヴェルに婚約を申し込んだとき、セバスやこのバルバトス家のことも全部、頭になかった。私はただレイヴェルが欲しかった、それだけしか頭になかった。だからすまないな、セバス。お前のことを忘れてしまって。」

「---!」

 

なんと、ゲーティア様がご自身で選ばれたとは。

当家のことも考えずにご自身の御心のままに選ばれた方だとは。

これほど嬉しいことはございません。

どこまでもこの老骨の心を捉えて止まぬお方だ。

 

ただ申し訳ございません、ゲーティア様。

私は不忠者でございます。

主を変えたいと願う不忠者です。

先々代様、先代様の御二方には申し訳ありません。

御二人に捧げた忠誠を取り下げさせていただきます。

ゲーティア様こそが私の唯一、忠誠をささげる主でございます。

そして私はとても欲深い願いを抱いてしまいました。

主よりも生きたいと、主の最後を看取りたいという願いです。

ゲーティア様の成しうる全てを見届けたい、ですので主が死ぬまで私は死ねません。

なんと強欲な願いだ。とても口に出せません。

ですが私も悪魔です。欲望に忠実な悪魔です。

忠誠でもなんでもこの老骨に捧げられるものならば何でも捧げます。

ただこの欲望だけは抱かせてください。

 

side out

 


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