どうも、ゲーティア・バルバトスです。
レイヴェルが我が領地に到着したので、眷属、いや家族たちを紹介した。
家族たちが彼女を迎え入れて我が家に火が灯ったように明るくなった。
特にセバスは大層な張り切りぶりだった。
近年見たことがない程の張り切りぶりだ。
先程まで枯れる寸前の老木のような雰囲気が、青々とした成木のような力強さに満ちている。
デュフォーはその様子を見て、俺に耳うちをしてきた。
セバスは昨日倒れたということだった。
私はデュフォーに掴みかかり、何故だ、と全く関係のないデュフォーに強く当たってしまった。
ただセバスが倒れたと聞いただけで反応してしまった。
デュフォーは答えを教えてくれた。
過労だと。
その答えの原因はすぐに分かった。私だ。
私に代わって今までずっとバルバトス家を支えてくれたセバス、私に勉強を教えてくれたセバス、私に戦い方を教えてくれたセバス、私の眷属に仕事を教えてくれたセバス、何処に行くのも、何をするのもセバスに頼ってきた私のせいだ。
私がレイヴェルに出会えたのも、今日の日を迎えられたのも全てセバスのおかげだ。
そんなセバスの体調に私は気付かなかった。
私の人生全てを支えてくれたセバスの異変に気付かなかった。
私は浮かれていた。
人生最大の出会いで人生を支えてくれた家族の存在を忘れてしまった。
そのような私にセバスは歩み寄ってきた。
「何を暗い顔をしていますか!折角来てくださったレイヴェル奥様の前でしていい顔ではありません!そのような貴族に育てた覚えはありませんぞ!」
恐ろしい程の剣幕で捲し立ててきたセバス。その迫力に私は思った。
何処が過労だ。何が枯れる前の老木だ。
目の前にいるのは我がバルバトス家随一の古強者ではないか。
私は再度デュフォーを見ると、気まずそうに言った。
「さっきまでは本当に死にそうだった。あと一週間程の命だった。それは私と清麿が答えを出したから間違いない。」
「ではなぜここまで元気なんだ?」
「さっきフェニックスの涙を飲んだな。あれで体の不調が治った。」
「な!確かにさっきレイヴェルがくれた、あれが!」
「それとさっき主が言った言葉で気持ちが生き返った。」
「さっき?私は何か言ったか?レイヴェルに会った時、セバスのことも家のことも忘れた酷い主だと謝ったことだけだぞ。」
「・・・・それがセバスさんには一番嬉しかったことなんだろうな。」
デュフォーの呟きが聞こえなかったので、聞き返そうとすると肩に手を置かれ、振り返らされた。
「ゲーティア様、どうやら再教育が必要なようですね。レイヴェル奥様、我が武門の名門バルバトス家のお出迎えの儀、とくとご覧くださいませ!では行きますぞ!ゲーティア様!」
「いいだろうセバス。バルバトス家当主として挑まれた戦いから逃げるわけには行くまい。何よりレイヴェルの前で無様は晒せん。」
私とセバスを距離を取り、私はディアボロスを取り出し、セバスは手を手刀の型に変え、互いに一気に距離を詰めた。
「「ブルアアアアアアアアアアアアアア!!!」」
私のディアボロスとセバスの手刀がぶつかり合い物凄い衝撃を生み出した。
「キャア・・・あれ」
「主の奥様に怪我をさせるわけにはいかんのでな。」
レイヴェルに結界を張って守ったのはゼオンだった。
助かった。いきなりセバスが戦いを挑んできたので、咄嗟に応えてしまった。
しかし、何という力だ。
今までここまでの力はなかったはずだ。私が知る限りでは。
もしかしたらこれがセバスの全力なのではないだろうか。
今まで私のせいで苦労を掛けてきた。
だからそのせいで、全力を出せる程、体を休ませることが出来なかったんではないか。そう思った。
だが、そんな考えをしている暇はない。
今も全力で私に攻撃を仕掛けてくるセバスに私は防戦一方であった。
「どうしました、ゲーティア様!折角のレイヴェル奥様の前でその様は!これではバルバトス家の主としてふさわしくありませんぞ!」
セバスの言葉に応えることが出来ない。
セバスの攻撃が鋭すぎる。
これまで、このような強者と戦ったことはない。
私の戦い方を熟知している、私以上の力を持った強者。
勝ち目がないな。
だがそれがどうした。
勝ち目がないから逃げるのか。
逃げることは恥ではない。
だが強者との戦いを楽しまず、何故バルバトス家当主が名乗れるか!
「ブルアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ディアボロスの一閃にセバスは思わず距離を取る。
「ほほほほほほ。実にいい。ここまで体が動くのは先の大戦以来です。そしてこれほどの強者と相対するは先々代の当主様に戦いを挑んだとき以来です。」
初めて見るセバスの顔。
嬉しそうに獰猛に笑う。
嬉しいか、セバス。
私も嬉しいぞ。
「今ここでお前を超えよう、セバス。私がお前を倒し、楽隠居させてやるぞ!」
「ゲーティア様・・・・・身の程を知れ!小僧ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「今死ね!、すぐ死ね!!、骨まで砕けろ!!!、全力全開ジェノサイドブレイバァァァァァァァァァァァ!!!!」
「ほほほほほほ、言ったはずだぞ、小僧。」
私の全力のジェノサイドブレイバーが眼前に迫るまでセバスは動かなかった。
私の目の前を埋め尽くす私の魔力光が一閃と共に消え去った。
私の晴れた視界の先にセバスはいない。
「まだまだですな、ゲーティア様。」
私の首に手刀を当てたセバスが背後にいる。
完敗だ。
「さてこれでは私が楽隠居できるのは何時になることでしょうか。」
「・・・・すぐにでも楽隠居させてやる。」
「ほほほほほ、楽しみにしておきましょう。ですが私もまだまだやれそうですな。後で眷属全員を再教育しましょう。久しぶりに血が湧きたっておりますので。」
この化け物爺、私より長生きするんじゃないか。
□
私とセバスの戦いの後、レイヴェルが帰宅することになった。
元々婚約したので、顔見せに来ただけだったそうだ。
「レイヴェル、今日は来てくれたのに色々すまなかった。」
「ゲーティア様、私楽しかったですわ。また遊びに来ますわ。その時は色々なところに連れて行ってください。」
「ああ、もちろんだ。」
「そうですわ、もう一つのお願い、当家にお越しになるのは何時に成されますか。」
「できればすぐにでも、そちらの都合が良ければだが。」
「言いましたわね。ならば一緒に行きましょう。セバス。」
「はい、奥様。」
レイヴェルの呼びかけにセバスが対応する。
あれ、何時の間に主、変わった!
私が驚いているうちにセバスに車に押し込まれた。
「では行きましょう、ゲーティア様。」
レイヴェルの掛け声とともに車が発進する。
後ろを見るとみんなが見送りをしている。
知らなかったのは私だけか。
□
私とレイヴェルを乗せた車はレイヴェルの自宅、フェニックス家に到着した。
車の中でもレイヴェルには家族の話をしてもらった。
義父上、義母上、義兄上達が3人、すべて覚えた。
これから家族になるんだ。
失礼は出来ない。
だというのにいきなりお伺いするなど失礼ではないのか?
私がそんなことを考えていると、レイヴェルは察したのか、小さく笑いながら教えてくれた。
「ゲーティア様、実はお父様から命令されていたのですわ。ゲーティア様を当家にお連れするようにと。」
「レイヴェル、それを早く言ってくれ。もし私の都合が悪くて、ダメだったらどう謝るべきか。」
「あら、ゲーティア様は私のお願いを聞いてはくださらないのですか?私は悲しいですわ・・・うっうっうっうっうっ・・・ちら」
レイヴェルは面白がっている。
私が慌てふためくのが愉快なのだろう。
だが断れない。惚れた弱みという奴だ。
「ああ、降参だ。レイヴェルのお願いなら何をしてでも叶えなくてはな。」
「それでこそ、ゲーティア様ですわ。」
まだ会って2日目、2度しか見ていないその顔が変わる様を見るのが私は嬉しいのか、楽しいのか分からないが幸せだとわかる。
□
レイヴェルの住む、フェニックス家に到着した。
大きな屋敷と出迎える使用人の数はグレモリー家に劣らない。
「おかえりなさいませ、レイヴェルお嬢様。」
「いらっしゃいませ、ゲーティア様」
盛大な出迎えを受けながら、家の奥から誰か出てきた。
「おかえりなさいませ、レイヴェルお嬢様。」
「ええ、ただいま帰りましたわ。そしてこちらが私の婚約者のゲーティア・バルバトス公爵様ですわ。」
「ゲーティア・バルバトスだ。」
「お待ち申し上げておりました。私当家の執事、ジェバンニと申します。今後とも長いお付き合いを宜しくお願い致します。婿様」
執事のジェバンニに先導され、屋敷の奥に進む。
大きな扉を開くジェバンニに感謝し、部屋の中に足を踏み入れる。
そこには義父上、義母上、義兄上が3人とフェニックス家のフルメンバーが勢ぞろいしていた。
side ライザー・フェニックス
「おお、待っておりましたぞ。婿殿。」
「義父上、本日はお招きいただきありがとうございます。」
「何を堅いことをいう。私たちは家族だ。その家に招くなどど言ってくれるな。私は悲しいぞ、婿殿」
「ははは、申し訳ありません。義父上。」
父上は上機嫌にレイヴェルの婚約者をもてなしている、いや絡んでいる。
昨日、魔王様直々の縁談に行って、帰ってきてからずっとこの調子だ。
随分気に入ったようだ。噂のバルバトス公爵を。
バルバトス公爵、この名は今この家の中にいる中で最も高位な名だ。
その経歴は驚愕の一言だ。
8歳で公爵位を継ぎ、15歳で旧魔王派の一斉捕縛から魔王様への引き渡し。
その褒美を魔王様直々に与えたいと言わせたほどだ。
そのあっという間に解決させた手腕は周囲の貴族に衝撃を与えた。
わずか15歳であれほどならば成長すればどうなるか・・・
周囲はその公爵家の事情を調べ、婚約者を送り込もうとした。
まだ15歳、周りの貴族家とは先の事件解決まで交流がなく、婚約者がいなかったので、自分の勢力に取り込めると考えた。
だがその考えも、先んじて潰された。15歳の公爵の一手で。
公爵は魔王様に褒美に縁談を願い出た。
これには周りの貴族も慌てた。手を出せなくなったからだ。
もし無理に進めてそれが露呈したら、魔王様に弓弾く行為に値する失態だ。
そしてこの策は魔王様がその縁談を斡旋した、つまり魔王様公認の婚姻というお墨付きを与えた。
これでは周りはなにもできない。
公爵とその相手の一族を攻撃できない。
ともすれば魔王様、悪魔界に対する重大な裏切りとなる。
そこまでの一手を打った15歳にだれもが驚愕した。
つい先日、魔王ルシファー様とグレモリー公爵が当家にお越しになった。
俺の婚約者、リアスの関係者であるので、用があるのは俺だと思った。
だが違った。レイヴェルに用があった。
なんとその公爵との縁談をレイヴェルにお願いに来たというのだ。
後で父上に聞いた限りだと、公爵に最もふさわしいのはレイヴェル以外いない、ということだった。
さすが魔王様だ、当然だ。
レイヴェル以上の相手はいない。例えリアスでも、その考えは変わらない。
だがレイヴェルは縁談を受けた、受けざるを得ない。
魔王様とグレモリー公爵、それに父上の3人に頼まれたら断れるわけがない。
またその時は相手がだれか明かされていなかったらしいので、レイヴェルはどこかの貴族の後妻か、と身構えたそうだ。
当人が笑いながら言っていた。
その相手が分かり次第、レイヴェルは相手の事を調べ出した。
俺も気になったので、調べたらさっきのことが分かった。
レイヴェルは過激なことをやる人ということ、レーティングゲームに参加した映像からパワータイプという印象から、縁談に行ってもすぐに結果が出そうだと判断した。
見事にその通りになったそうだ。
なんと出会って早々プロポーズから入ったらしい。
これにはレイヴェルも唖然としたらしい。
断ることなど決してできない状況を作りだした上で、全力でプロポーズされたら、断る方が無理だったようだ。
そんな状況を作り出すとは妹の頭を上回る知恵者かと俺は聞くとレイヴェルは大笑いして、超が付く正直者でしたわ、レイヴェルの嬉しそうな笑顔でそう言った。
そして今も、嬉しそうに笑っている妹の姿に思わず涙が出そうになった。
そして、俺の義弟になる男にどうしても言いたかった。
「ゲーティア・バルバトス公爵。」
「あなたはライザー殿。」
「あなたに一言だけ言う許可を頂きたい、これはレイヴェルの兄、ライザーとして言わせていただきたい。」
「どうぞ、何なりと。」
真っ直ぐな目で俺を見る。
ただそれだけで俺を圧倒する。
ただそこにいるだけで、ひれ伏したくなるオーラを感じる。
魔王様と対峙するような圧倒的な威圧感を感じるのは俺が弱いからなのか。
だが、これだけは言わなくてはならない。
不死鳥フェニックスを冠する一族、ライザー・フェニックスの全力、とくと見ろ。
「妹を泣かしたら承知しないぞ!その時は俺の炎でお前を焼いてやる!」
「その言葉しかと胸に刻みます、義兄上。」
こんなのが妹の旦那になるのか。
レイヴェル、お前、これから苦労するな。
俺は自分の義弟に屈しない様に最後まで必死で立ち続けた。
義弟がいなくなると、俺はその場に倒れこもうとした。
だが、兄貴たちが俺を支えてくれた。
「ライザー、お前強くなったな。」
「ああ、俺達は圧倒されたぞ。ゲーティア君じゃなくて、お前の迫力にな。」
俺は力なく笑い、そのまま兄貴たちに身を預けた。
薄れゆく意識の中で願った。
幸せになれよ、レイヴェル。
side out