よろしくお願いします。
私の名はゲーティア・バルバトス。
種族は悪魔、バルバトス家現当主だ。
バルバトス家は序列8位の公爵家だ。
歳は・・・・・・8歳
8歳の私が当主なのかというと先代、つまり私の父親が死んだ結果、他に候補がいないから、私が成ることになった。
だから、私が現当主だ。
親が死んだにしては冷静だ。
だがそれも仕方がない。
私にはどうやら前世の記憶があるようだ。
所謂転生と言うやつだ。
記憶と言っても、私の自我を奪ってしまうような意志を持っているわけではない。
ただの外付けハードディスクの様に記録がある、という感じだ。
生前の私は普通に生きて、77歳で死んだようだ。
商社でサラリーマンとして働き、定年まで勤めあげたようだ。
それなりの経験をいろいろ積んで、それなりの人生だったようだ。
だが私はあることを経験したことがない。
結婚だ。
私は未婚のまま、前世を終えた。
だから、今回は結婚というものを経験してみたい。
貴族というなら、政略結婚というものがあるそうなので、それでいいからしてみたいと思っていた。
「なに、婚約者はいない。」
「はい、ゲーティア様の婚約者はおりません。」
「何故いない。」
「誠に申し上げにくいことですが、当家と縁を結ぶ利点が乏しいからです。」
「利点?」
「はい。旦那様、奥様が亡くなり当家の先行きは不透明となりました。何か産業があればよかったのですが、特になく、また当家は武門の家柄でありましたが、それも先の大戦で多くを失い、いまだ回復しておりません。ですので、当家との縁など不要と他家に思われております。」
答えているのは執事のセバスだ。
父の父、私の祖父の代から仕えてくれて、先の大戦にも軍団を率いて戦った歴戦の戦士だ。
その彼は私に厳しい。いや、唯一厳しく教えてくれる存在だ。
前世を経て、今に至り厳しく指導してくれる存在のありがたみを晩年は痛感した。
しかし、我が家の情勢は非常に切迫しているようだ。
何とかしないといけないが、よくわからない。ここはやはりセバスに聞くしかないな。
「セバス、どうすれば我が家を立て直せる。俺にはよくわからない。何でもいい。教えてくれ。」
「ゲーティア様・・・このセバスにお任せください。」
俺が頼むとセバスが教えてくれるようだ。
やはりセバスは頼りになる。
前世を経験して分かったことの一つは、『分からないことは聞く』だ。
一度も経験したことがないことをやろうとしてもうまくいくわけがない。
だから、年長者に聞くのが一番だな。
「ゲーティア様、早速ですが、やっていただきたいことがあります。」
「分かった。何をすればいい、セバス。」
「まず・・・勉強です。」
「そうだな。勉強が必要だな。よし、頼む。」
「は!」
side セバス
バルバトス家の執事セバスでございます。
私は先々代の当主様にお仕えして、大戦を経験致しました。
先々代様を大戦で亡くし、先代様が跡を継がれました。
ですが、先代様も先日、事故にてお亡くなりになりました。
残されたのは8歳のゲーティア様だけです。
これで、バルバトス家も終わりだと思いました。
ですが、ゲーティア様は聡明なお方でした。
バルバトス家を立て直すことを真剣にお考えになり、自分にできることを懸命になさろうとしております。
この御方に付いて行こう、心底そう思いました。
まるで、先々代様を見ているようです。
このセバス、身を粉にしてバルバトス家の発展の礎になってみせます。
私が支える間に是非ともゲーティア様にはたくさんのことを知っていただきます。
そのためにはまず勉強です。
領地のことも、社会情勢も全て学んでいただきます。
全てお任せください、ゲーティア様。
side out
~5年後~
あの日から5年経った。
私が今何をしているかと言うと、
「ブルァァァァァァァァ!」
戦っている。
「ゲーティア様、遅いですよ。」
セバスと。
勉強をし続けた私はある程度の悪魔界の常識と知識を得た。
だがバルバトス家は武門の家系だ。
当然当主である私が弱いなど許されない。
毎日セバスと戦いを繰り返している。
だが、今だセバスにまともに攻撃を当てることもできない。
これではダメだ。当主として執事に負けるような当主など飾り物にも劣るわ!
「ブルアアアアア!!」
「はっはっは、愚鈍、あまりに愚鈍。ゲーティア様その様では折角の魔戦斧ディアボロスが泣きますぞ。」
「黙れ!ブルアアアアアアア!!」
「はい。それまで。」
俺の首元にセバスの手刀が当てられている。
今日も完敗だ。
まだまだ、体が出来ていないからか、ディアボロスに振り回される。
もっと鍛えなくては、俺は当主だ。
弱音を吐く暇などない。
「ゲーティア様、お疲れのところ申し訳ございません。ゲーティア様は上級悪魔でございます。もうそろそろ眷属をお探しになられた方がよろしいかと思います。」
「眷属か。今の弱い私に誰かなってくれるであろうか。」
「眷属とは王を守護するものでございます。ですので、王が眷属より強くならねばならない理由はございません。」
「だが、それでは私のプライドが許されない。」
「でしたらこうお考え下さい。眷属とは最も近くで競い合う仲間、だと。」
「そうだな。私より強い者を迎え、共に競い、最後に私が眷属を超えればいい、そう言いたいのだな、セバス。」
「はい。その通りでございます。」
「分かった、ならば眷属を探してくる。留守は任せた。」
「はい。お任せください。」
セバスに言われて今まで眷属の一人もいなかったことを思い出し、急ぎ探してみることにした。
だが、どういうのを眷属にすべきか。
ドラゴンや悪魔を眷属にしても何か違う気がする。
私は強者を求めている。
ドラゴンは強者だが決して学べる強者ではない。ドラゴンは体が強者だ。
ドラゴンの体を得れるわけではないので学べない
悪魔は鍛えることをしない。学ぶことはなく生まれで強さが決まるため、これも学べない。
そうだ、人間だ。
前世が人間であったというのに忘れていた。
人間であったとき、体を鍛えていたことがあった。
空手を、柔道を、剣道を、様々な格闘技を学び強くなる実感を得ていた。
人間ならば貪欲に強さを求める、いや貪欲に何かを学び成長する存在であれば是非とも眷属として招きたい。
よし、人間界に行こう。
~人間界~
ここが人間界か。
現世で初めてきたというのに懐かしい。
私の魂が覚えているのだろう。まさに魂の故郷だ。
さて、感動に打ち震えている暇はない。
眷属になってくれる者を探そう。
最初の眷属だ。これは大事だ。
誰よりも強大で俺を圧倒してくれる存在、それを私は最初の眷属にしたい。
ん?ディアボロスが反応している。
こっちか。
まさかディアボロスに強者を感じ取る力があるとは、やはり武門の家柄の当主が持つ武器だ。
戦場で最も強い者と戦えるような機能を持っていても不思議ではない。
ん?ここか。
普通の家だ。だが、血の匂いがする。
side 楓
私は秋野楓。転生者です。
前世ではOLをしていました。
死因は心不全でした。残業が100時間越えていたにもかかわらず、コミケの作品を作っていたのが原因でしょうか、それともコミケ当日に休日出勤になった怒りで血管プッツンしたんでしょうか。
前世の歳は言いたくありません。結構痛い年なので。
死んだ後に神様に出会いまして、転生させてもらいました。
転生させるけど、すぐに死なれたら困るから力をくれると言いました。
私は後先考えず大好きなゲームの武器を希望しました。
神様が武器だけでいいの、力とかはいいの、て聞いてくれました。
親切な神様でしたけど、実物を見てみたいだけなので、力はいらないと答えました。
無事に転生し、今まで普通に暮らしていました。
転生特典の武器のちゃんと使えました。
初めて使った時はビックリしましたけど、かっこよかったです。
このために転生したと言って過言はなかったです。
そんな私も今日12歳になりました。誕生日です。
ケーキとプレゼントをもらって上機嫌な私に終わりが訪れました。
平穏の終わりです。
家のチャイムが鳴り、お母さんが出ると悲鳴が上がりました。
私とお父さんがその声を聞き、玄関に行くと化け物がいました。
お母さんの足が化け物の口から出ていて、化け物がゴックンとすると見えなくなりました。
私はこれは誕生日のドッキリだと思いました。笑えないよ。
そう思っていると、お父さんも食べられました。
アレ、お父さんもドッキリ。だってお父さんのクビが転がっているんだもの。
今度は私も食べるのかな。でも痛くなければいいな。
「ブルアアアアアアア!!」
また家に誰か来ました。
今度は私と歳が変わらなそうな男の子でした。
筋骨隆々でデカイ斧を片手で振り回しています。
化け物を真っ二つにしているその姿と雄たけびに何故だか見覚えがありました。
化け物は消え、私と男の子の二人だけになりました。
「貴様、何故力を使わない。」
「え、ちから?」
「とぼけるな。それほどの力を持ちながら戦わぬとは、腰抜けが。」
「私の力、使えば、あの化け物、倒せた?」
「当然だろう。私ですら倒せそうな力がありながら、それを聞くか。」
ああ、やっぱり。
男の子が言う力は私が神様にもらった力だ。
あの武器ならきっと勝てた、いやお父さんとお母さんを助けられた。
でも、私は見ることしか興味がなかった。
使うなんて発想、そもそもなかった。
神様に警告されたのに、危ないことも知っていたのに、なんで私は・・・
「ああああああああああああああああああああ!!!!!お父さん、お母さん。ごめんなさい。
私は助ける力を持っていたのに、この世界が危険だって聞いていたのに、力の使い方を知ろうとしなかった。
知っていれば、助けれたのに・・・・」
「・・・力の使い方が知りたいか?」
「ーー!」
「知りたいか?」
「し、知りたい!教えてください!」
私は力一杯、彼の腕を掴み、彼に迫った。
彼は私の腕を歯牙にもかけず、ポケットからチェスの駒を取り出し、私に見せた。
「お前に力の使い方を教えてやる。代わりに私の眷属になってもらう。これは契約だ。受け入れれば、お前は人間をやめ、悪魔になる。お前の願いは人間を辞めてでも成す必要があるのか。」
「・・・私には何もない。お父さんとお母さんだけ。それ以外は・・・どうでもいい。今はただこの力の使い方を知りたい。」
「後悔しても知らんぞ。」
「どうせこの世界は危険なんだから力がないと結局死んじゃう。もう死ぬのはイヤ。」
「よかろう。ここに契約を結ぼう。我が名はゲーティア・バルバトス、我は汝に力の使い方を教える。対価は其方が我が眷属となること、相違ないか。」
「はい。私の名前は秋野楓、力の使い方を教えてもらうこと、対価はゲーティア・バルバトス様の眷属となること。」
「ではここに契約を結ばん。」
チェスの駒が輝き、私に入っていく。
「これで契約は完了した。どうだ?」
「なんだか、力が溢れてきます。」
「其方に使った駒はクイーンだ。その駒は力を、速さを、魔力を強くする。弱い其方にはちょうどいい駒だ。」
「はい。ありがとうございます。」
「では早速その力を使おう、だがここでは色々まずい。我が領地でなら、存分に使えるであろう。」
「では、早く行きましょう。」
「・・・ここをこのままにしていくのは忍びない。それでもいいのか?」
「・・・申し訳ありません。少しお時間いただけますか?」
「構わん。私も手を貸そう。」
「・・・ありが、とう、ござい、ます。」
お父さん、お母さん、私はもう人間ではありません。
今日、新たに悪魔に生まれ変わりました。
私は二人を助けれなかった不出来な娘です。
力があったのに、二人を助けれる力があったのに使えなかった不出来な娘です。
でも、私はこの力の使い方を知ります。
二人を助けれる力を使えるようになります。
もう二人を殺すことはないようにします。
だから、悪魔になったこと、許してください。
最後に、こんな不出来な娘ですけど、産んでくれてありがとう。
大好きです。ずっと永遠に。
side out
全て終わり私と楓は家を後にする。
「いいのか、本当に。」
「はい、思い出は胸の中にあります。」
「そうか、では我が眷属楓よ。最初の命令だ。この家を焼き尽くせ。」
「はい、我が王、ゲーティア様」
楓は自分で武器を生み出せる。
いや、どちらかと言うと呼び出す、というのが近いらしい。
すでに空想にて作られた武器を呼び出し、その力を使える、という能力だ。
人間には聖書の神が作った
楓の能力もそれのようだ。
「起動せよ、我が
楓は一振りの剣を呼び出した。
「楓、それがお前の力の一端か。」
「はい。私は生前の記憶がありました。この武器はその生前にあったテレビゲームの武器です。他にも色々ありますが、燃やすのであればこの『ソーディアン・ディムロス』で適任です。」
「そうか。では見せてみろ。その力を。」
「はい。晶術発動『ファイアストーム』」
楓が起こした炎の竜巻は瞬く間に家を焼き尽くしていく。
楓を見ると、涙をこらえて見送っている。
仕方がない。
「ここには主である私しかいない。泣きたければ泣け。」
「・・・でも・・・」
「なら、命令だ。『泣け!』」
「・・・はい・・・う、う、うえええええええええええええええん」
私の命令で泣く楓が倒れないよう、支えてやった。
やれやれ、最初の眷属がこれでは先が思いやられるな。
そう思っていると炎が収まっていく。
燃やすものがなくなったんだろう。
「もういいか。」
「・・・グス・・・はい、ありがとうございました。ゲーティア様」
「では我が領地に帰る。楓、私についてこい。」
「はい。ゲーティア様。・・・・・・・行ってきます、お父さん、お母さん。」
私と楓は一度、領地に帰ることにした。
最初の眷属だ。
教育もしなければな、セバスに頼もう。
さて、それが終われば、また眷属探しだ。
次はどんな奴がいるか、楽しみだ。
ありがとうございました。