政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第21話 供養と交渉

どうも、ゲーティア・バルバトスです。

 

魔王レヴィアタン様が堕天使の本拠地グリゴリに直接文句を言いに行こうと言い出し、私は急ぎ、出発の準備を整えている。

堕天使の本拠地を行く以上、手土産の一つでも、持っていくのが礼儀というもの。

手土産を包んで準備をしていく私にレイヴェルが心配そうに声を掛けた。

 

「ゲーティア様、お気をつけ下さい。まだ私、未亡人になるつもりはありませんわ」

「ハハハ、まだ結婚もしていないのに、何を言っているんだい」

「・・・・・・心配なんです。堕天使の本拠地に行くだなんて」

「・・・・・・まあ彼方も魔王様がいる前でいきなりはやり合わないだろう」

 

そう言ってもレイヴェルは暗い表情だ。

レイヴェルは意を決したように、私に抱きついた。

 

「・・・・・・絶対、絶対に帰って来て下さい。絶対に」

「・・・・・・ああ、大丈夫だ、レイヴェル。必ず帰ってくるから」

 

私はレイヴェルを抱きしめ、約束した。

そろそろ行かないと不味いな。

私は名残惜しいがレイヴェルを放し、顔を見つめた。

 

「では行ってくる。後は任せた」

「・・・・・・はい、お任せください。ゲーティア様」

 

私は魔王レヴィアタン様の下に転移した。

 

 

「お待たせして申し訳ありません。レヴィアタン様」

 

俺はレヴィアタン様の下に転移をして、直ぐに謝罪の姿勢を取った。

いくら急に言われたと言っても、目上の者に対して、お待たせしたことに違いはない。

ここは謝罪一辺倒が一番だ。

 

「ああ、ゲーティア君、いらっしゃい。待ってたよ~」

 

にこやかに出迎えてくれる我らが魔王様。

先程映像で見た限りだと、キラキラの魔法使いみたいな恰好だったのに、今はフォーマルな恰好になっている。

良かった、悪魔の外交スタイルが魔法使いルックじゃなくて。

 

「大変お持たせして申し訳ありません。堕天使の本拠に向かう以上、手土産が必要だと思いまして、用意しておりました」

「うんうん、そういうのは大事だね。ところで何を持ってきたの?」

「こちらです」

「・・・えっ!・・・本当に手土産だね」

 

私が持ってきたものに驚き、そして呆れていた。

 

「いけませんでしたか?」

「いいよ、うん。面白そう!」

 

私が持ってきたものは魔王様に喜んで頂けたようだ。

これなら堕天使たちも驚くだろう。

私と魔王レヴィアタン様の二人は堕天使の本拠に向かった。

 

 

side 秋野楓

 

「さあ、私たちもはぐれ悪魔の探索を急ぎましょう」

 

私はゲーティア様が魔王様の下に行かれた後、眷属たちを率いて、二手に分かれて、はぐれ悪魔の探索を開始した。

私と幽助、一護と戸愚呂の二手だ。

もう事件が発覚してから、数日経ってしまった。

ここまでに被害に遭った駒王学園の学生はただ一人だけ。

でも、数じゃない。

1人でも出した以上、最悪なんだ。

私もお父さんとお母さんをはぐれ悪魔に殺された。

だから絶対に許さない。

絶対に見つけて報いを受けさせてやる。

私は強い覚悟で、探索を行っていく。

だけど、どうしても見つからない。

私の神器は戦闘に特化しすぎている。

後は時間を操る魔剣もそれほど長い時間を戻すことは出来ない。

時間を超えることは出来るけど、そうすればもうこの時間ではない並行世界が出来る。

そうすればこの世界は崩壊する。

だから犠牲者を時間を超えて連れてくることも、死ぬ前に戻すことは出来ない。

だからせめて・・・・・・

 

「楓さん、気配が違う。何か、いんじゃねーか」

 

幽助が声を掛けてきた。

助かった、少し考え過ぎていて、周囲の探索が疎かになっていた。

でも、確かに周囲の気配が違う。

血生臭い、匂いがする。

私は周囲の音に肉を咀嚼する音がしたので、そちらに向かうと、そこにいた。

 

「どうやら、当たりの様です」

 

私の言葉で幽助も頷いた。

 

「さて、ゲーティア様から言われた通り、リアスさんに引き渡しましょう。ですがその前に・・・・・」

 

私は自分の神器から、武器を取り出した。

私が取り出した武器は・・・・・・ハリセンだ。

 

「幽助、私が相手をします。リアスさん達への連絡、お願いします」

「ええ~、俺がやりてーよ。楓さん、代わってくれよ」

「また、今度です。それとも後で私が相手をしてあげましょうか?」

「・・・・・・・いいえ、いいです。どうぞどうぞ」

 

幽助が素直に譲ってくれた。

助かります。

 

はぐれ悪魔に対して、私は少し思うところはあります。

主を裏切った悪魔、それがはぐれ悪魔だ。

でも、裏切られる主にも問題がある場合もある。

そこには同情しよう、憐れみも持とう、貴方の不幸を悲しもう。

でも、越えてはいけない一線もある。

誰かに迷惑をかけた場合、掛けざるを得ない場合、状況は色々だと思う。

でも、誰かの命を奪った場合は許されるだろうか・・・・・・否、私は許さない。

私は特に自分が正しいとも、正義だとも思わない。

親が殺されたから許せないのか・・・・・・それもある。

だけど、これ以上私の目の前で誰かの命を奪う存在を生かしておく理由はない。

はぐれ悪魔、一つだけ言っておきます。

私は、ゴキブリは全力で始末する女です。

ムシすら容赦なく殺す女です。

だからはぐれ悪魔でも容赦なく殺します。

 

「死ね、はぐれ悪魔。慈悲はない」

 

さあ、狩りの時間だ。生き残ってください、リアスさんに引き渡すまで。

 

side out

 

side リアス・グレモリー

「はぐれ悪魔が見つかったって本当なの、ソーナ」

「ええ、そうです。ゲーティアの眷属が連絡してくれました。この場所の廃工場にいるようです。急いでください。あまり長くは持たないかも、と言っていました」

「ふーん、ゲーティアの眷属も案外だらしないわね。たかがはぐれ悪魔に苦戦しているなんて」

「・・・・・・とりあえず急いでください。・・・・・・たぶん別の意味だと思いますけど」

 

私はソーナから聞いた場所に眷属を連れて向かった。

裕斗も何とか小猫が連れてきた。

裕斗自身は黒崎一護もはぐれ悪魔の探索に行ったので、自分も探しに行こうとしていたらしく、私たちの情報で都合がいいというふうだった。

そういえば、イッセーとは初対面だったわね。

仲良くなって、剣道部から戻ってきてくれるといいのだけど。

でも、無理ね。

イッセーが裕斗を敵視してるし、裕斗もイッセーに興味を持っていない。

はぁ~、私の眷属たち、もう少し仲良くしてくれないかしら。

私は少し憂鬱な気分になった。

でも、ゲーティアの眷属が苦戦しているはぐれ悪魔を私があっさり倒せば、私の評価も上がるわね。

そう考えていたけど、目の前の映った光景に息を呑んだ。

 

「なによ、これ」

 

目の前にはぐれ悪魔、これは間違いない。

その上に立っているのは、秋野楓。

ゲーティアのクイーン。

普段は物静かな気の利く女性の印象だった。

でも今の姿はなに!

 

「ヒャハハハハハハッハ、オラオラオラオラ、ヒャハハハハハ・・・・・」

 

全身に血を浴び、その身を真っ赤に染め、口元には大きな三日月のような笑みを浮かべ、戦いを、蹂躙を楽しんでいる。

その身は真っ赤で両手の武器も血に染まって、真っ赤だ。

ボロボロなはぐれ悪魔を更に痛めつけ、延々と両手の武器で叩いている。

その武器から異様な、スパーンという音が鳴り響いている。

おそらく彼女の武器だと思うけど、両手でそれぞれからスパーンという音が鳴っている武器なんて私は知らない。

裕斗なら何か知っているかしら、私は久しぶりに裕斗と会話が出来ると思い、話しかけた。

 

「裕斗、彼女の武器、何かわかる?」

「ああ、あれですか。あれ、心が折れるんですよ」

「心が折れる?」

 

何かしら?そんな精神にダメージを与える武器なんて私は知らないわ。

 

「裕斗、知っているなら教えて。あの武器は何なの?」

「・・・・・・ハリセンです」

 

ハリセン?・・・・・・確かツッコミとかに使う、あの、ハリセン?

私の動きから理解したようで、裕斗は頷いた。

 

「ハリセン!」

 

今の目の前の状況がハリセンで起こっていることに、私は開いた口が塞がらない。

今彼女ははぐれ悪魔を両手のハリセンで滅多殴りにしている。

所々空中に浮かせながら、彼女自身も飛びあげり連続で斬りつけている。

空中に上げてから、地面に叩きつけ、叩きつけられた反動でバウンドしたら、それを掬い上げ、また空中に押し上げ、連続で斬りつける。

あまりにスキのない連続攻撃と慈悲のなさに全員が言葉を出せない。

 

「それくらいにしておかないと、そのはぐれ悪魔死にますよ。ゲーティアさんの命令に背きますか?」

 

私たちが唖然としている間に二人の男が集まっていた。

ゲーティアの眷属の様ね。

 

「黒崎先輩、戸愚呂さん。お疲れ様です。」

「おう、裕斗。お前も来ていたのか」

「久しいな、木場」

 

裕斗は二人を見つけると、足早に向かっていき、直立不動の体勢から直角にきれいなお辞儀をして二人に挨拶をしている。

 

「ああ、そうでした。少し感情が昂ってしまいまして、まだ生きてますよね?」

「ああ、大丈夫だ。かろうじて息はあるぜ」

「そうですか、ああ、そうでした、はぐれ悪魔、この写真の子に見覚え、ありませんか?嘘を言えば、もう一回ですよ」

「ああ、ああ、あ、ある」

「そうですか、もういいです。リアスさん、コイツ早く滅してください」

 

楓は私に命令してきた。

私はキッと睨むと、彼女の真っ赤な返り血まみれの姿で両手に持つハリセンが血に染まって、アンバランスな印象でありながら狂気に満ちている雰囲気に呑まれてしまった。

 

「え、ええ、分かったわ」

 

私ははぐれ悪魔の前に立った。

 

「貴方がはぐれ悪魔のバイザーね、言い残すことはないかしら」

「こ、殺して、くれ」

 

凄く切実な声で頼まれた。

悪魔よりも悪魔な楓に恐怖を抱き、早く死にたくなったのね。

何だろう、すごく助けたくなった。

でも仕方がないわ。

私がラクにしてあげるからね。

私は今までにないくらい優しい気持ちではぐれ悪魔を滅した。

 

「これで、彼女も救われます。」

 

楓がそんな言葉を発している。

 

「はぐれ悪魔に同情しているの?」

「いいえ、全然。私が言っているのは、殺された駒王学園の生徒の事です。せめてもう少し前にはぐれ悪魔を消せていれば、こんなことにはならなかったんですが・・・・・・無念です」

 

そう言って、楓達ゲーティア眷属は去っていった。

 

side out

 

side 黒崎一護

 

「一護、ここですよね」

「ええ、そうです」

 

俺達ははぐれ悪魔を滅した後にとある場所に来ている。

ここははぐれ悪魔に殺された生徒の最後の場所。

俺達はせめてもの慰めに、彼女の場所に花を供えに来た。

俺と幽助、戸愚呂、楓さん。全員一度は死後の世界に旅立ったことがある。

そんな俺達に言えることがあるとすれば、死後の世界も悪くはない、ということだろう。

そして、もう一つ言えることは、貴方の死を忘れない、と言ことだけだろう。

俺達には力があったのに、助けれなかった。

全部を助けるなんて、傲慢な考えだと言われるかもしれないが、俺達は悪魔だ。

傲慢で何が悪い。

ここには一番来たかったのはゲーティアさんだろう。

誰よりも責任を感じていた。

亡くなった生徒は、女子剣道部の斎藤さんの友達だった。

だから、斎藤さんが泣いていた時、ゲーティアさんも悔しかったんだろう。

俺も悔しかった。

 

「もうこれ以上、犠牲を出したくないな」

 

俺は自分に言い聞かせるように呟き、彼女に手を合わせた。

 

side out

 

俺とセラフォルー様は堕天使の本拠地にたどり着いた。

どうやら、ここがそうらしい。

本拠地というより、研究所のような外見だ。

 

「さあ、行きましょう」

「はい、分かりました」

 

私はセラフォルー様に続いて、中に入っていった。

すると対応役の堕天使が迎えてくれた

 

「ようこそ、セラフォルー・レヴィアタン殿、そしてそちらは・・・・・・・」

「お初にお目にかかります。私、ゲーティア・バルバトスと申します」

「これはご丁寧に・・・・・・え、バルバトス、もしかして、バルバトス公爵家の・・・」

「ええ、バルバトス公爵家の現当主でございます」

「現当主!?、先代は、あの男はどうしたんですか!」

「父は亡くなりました。もう10年近く前になります」

「・・・・・・そうですか、残念です。彼とは大戦の時に戦いあったんですが、得難い好敵手を失いました」

「いえ、父もそのお言葉が聞けて幸せでしょう」

 

私の父が堕天使にも知られていることに少し嬉しかった。

だが、そんな私を見て、堕天使は私に非常に失礼な言葉を言ってきた。

 

「あの、本当にバルバトス公爵家の方ですか?今までの当主ならこんな理性的な対応しなかったはずですが・・・」

「私は歴としたバルバトス公爵家の当主です。一応武門の家柄であることの心構えはセバスから受けております。ですが、ここは外交の場、そのような態度不要でしょう。」

 

私はバルバトス公爵家の当主の正当性を説いた。

すると、堕天使は震え出した。

 

「セ、セバス!!まだ生きてたんですか!あのバケモノ!あわっわわわわわわっわ・・・・・」

 

この堕天使、相当失礼だな。

だけど、セバスがバケモノなのは認めるが。

堕天使が痙攣しておかしくなったようで、どうしようかと悩んでいた。

 

「ああ、下の者が大変失礼しました。ここからは私が対応させていただきます」

 

出てきたのは男の堕天使だ。

気真面目そうな男だ。

 

「お久しぶりです、セラフォルー・レヴィアタン殿。そして初めまして、ゲーティア・バルバトス殿。私はシェムハザ。グリゴリの副総督を務めております」

「お久しぶりです、シェムハザ殿」

「よろしくお願いします。シェムハザ殿」

 

私たちはシェムハザ副総督に連れてられ、応接室に案内された。

 

「どうぞ、おかけください」

「失礼します」

 

シェムハザ副総督に席を促され腰を掛けた。

 

「本日はどのようなご用件でしょうか。火急の事態とは」

「シェムハザ副総督、堕天使が悪魔の領地に無断で侵犯していることはご存知でしょうか?」

 

シェムハザ副総督にセラフォルー様が尋ねた。

シェムハザ副総督は困った顔をしながら、答えた。

 

「残念ながら、私は存じていませんね。お恥ずかしい話ですが、下級の堕天使達の動きまで、こちらでは管理しきれていないのが実情です。ですので、そのような事情も存じていないのです。」

「そうですか、では管理できていない以上は領土侵犯したということはお認めになられるということですね」

「いいえ。そうは言いません、堕天使の管理は出来ておりません。ですが、だからと言って証拠もないのにあらぬ疑いをかけられるというのは、いかがなものかと」

「では堕天使達が領土侵犯したことに明確な証拠があれば、お認めになられると言うことで宜しいですか?」

「ええ、そうです。明確に領土侵犯した証でもなければグリゴリとしては関与を認めかねます」

「そうですか、こちら手土産なんですが、どうぞ」

 

私はこのタイミングで手土産を渡した。

変なタイミングで渡したことにシェムハザ副総督は訝しんだが、とりあえず受け取ってくれた。

 

「はあ、一体なんですか?」

 

包みを開けて、驚いた。

 

「なあ!」

「そちらが攻撃してきた堕天使の手です。そして、その堕天使の最終消滅地点には足が埋まっています。そちらでお調べ頂ければ、何処で亡くなったか、分かると思いますが、如何ですか。これは領土侵犯した証にはなりませんか?」

 

私が出した手土産にシェムハザ殿は驚かれたようだ。

まあ、いきなり手が出てくるとか、前世ならケンカ売っているようなもんだ。

だが、この世界ではこのくらいは常套手段だ。

相手のクビを送るなんてこともある。

この世界、前世で言うDNA鑑定もなく、誰か特定することが出来る。

なので、手から誰かなんていうのも分かる。

だからこの手は誰が襲ってきたかわかっているぞ、ということを示している。

 

「シェムハザ殿、今回の一件、私たちは拡大を求めません。収束を求めています。こちらとしても、ここで終わりにしたいと考えています。如何でしょう、お認めいただけませんか?」

「・・・・・・なると認めましょう」

「寛大な対応感謝致します。ですが宜しいんですか?調査なさらないで、こちらからの情報を一方的に受けていいんですか?」

「わざわざ、堕天使を解体して、こんな手の込んだ捏造はしないでしょう。それにそちらの要求を聞いてから、対処を考えさせていただきます」

 

シェムハザ殿はこちらの要求を聞いてから対応を考えると言った。

交渉のテーブルに着いた、これでこちらの要求が通るかもしれない。

急がないと、リアスが動く前に交渉を終えないと。

セラフォルーを見ると、私に頷いた。

決めておいた内容をそのまま使おう、これは向こうとしても願ったり叶ったりだろう。

 

「こちらから要求は今回の一件、こちらで解決させていただく。堕天使側は今回の首謀者、レイナーレ及び配下の3名はグリゴリとは関係ないという証文を頂きたい。また、賠償も不要です」

「・・・・・・・それでよろしいんですか。」

「ええ、追加事項は盛り込まないと言うこともその証文に書きましょう。悪魔は契約第一ですので」

「分かりました。こちらに異論はありません。すぐに証文を作成します、少々をお待ちください」

 

そう言って、シェムハザ殿はどこかに連絡して、一人の堕天使がやって来た。

そこには契約の用紙を持っている。

シェムハザ殿はそれを受け取り、契約内容を記載していく。

 

「では、こちらで如何でしょうか?」

 

そこには今回の一件を悪魔側に一任する旨が記載されている。

問題ないな。

俺とセラフォルー様が内容に不備がないことを確認し、そこに一文を追加した。

今後この一件に追加事項を盛り込まない、そう追記した。

シェムハザ殿はその一文を確認し、満足したようだ。

 

「では最後に署名を」

 

シェムハザ殿が先に自分の名前を記載し、次にセラフォルー様が記載していく。

 

「ほら、ゲーティア君も」

「え?私もですか?」

「もちろんです。今回の発端は貴方です。今回の件に関して、見届けた証をお願いします」

 

私も促され、署名を行った。

 

「では、これを悪魔側に、写しを我々堕天使が保管致します」

「はい、ではこれで今回の一件は正式に悪魔側での対応と相成りました」

 

最後にシェムハザ殿とセラフォルー様が握手を交わし、今回の一件の決着を見た。

私とセラフォルー様が立ち上がり、退席しようとすると、シェムハザ殿が声を掛けた。

 

「セラフォルー殿、今回の一件は珍しいですね。いつもならこういう対応ではなく、直接堕天使を始末してから、亡骸を持ってきていたと記憶しておりますが」

「今回はこちらのバルバトス公爵、たっての希望です。私も今回の一件、対応するつもりはありませんでした。ですが、兼ねてからの件に支障が出ないようにしておきたかったので、この対応を取りました」

「そうでしたか。バルバトス公爵、今回の一件、私個人として礼を言います」

「シェムハザ殿?」

「先の大戦から3大勢力は回復しておりません。その状況で、小競り合いとはいえ、争いが起これば煽る者も現れ、その結果激化します。今回の一件、先に手を出したのがこちらだとしても、そちらからの歩み寄りは大変助かりました。ですので、私個人として礼を申します」

「シェムハザ殿、感謝します。矛を収めたのはこちらもそちらも同じです。今回の一件で再度の大戦を起こすわけにはいきません。先の大戦で亡くなった多くの命のためにも」

「ありがとうございます。」

 

私とシェムハザ殿は握手を交わし、外に送られ、帰路に就いた。

 

 

 

side シェムハザ

私はレヴィアタン殿、バルバトス公爵殿の両名を見送り、今回の報告を総督に行うため、奥へと足を運んだ。

 

「アザゼル、入りますよ」

「おう、セラフォルーの件、終わったか」

 

前髪が金髪で顎鬚を生やした、いわゆる「チョイ悪オヤジ」的な外見の男が待っていた。

堕天使総督アザゼル、私たち堕天使のリーダーだ。

 

「ええ、全て終わりました。こちらが証文です」

「証文?珍しいな、いつもなら適当に済ませてんのに・・・・・・おい、これがか?」

 

アザゼルが今回の証文を見て、驚きの表情を浮かべている。

私が彼の立場でも同じ顔をしている。

 

「ええ、今回の発端となる、バルバトス公爵が提案し、それに乗りました。問題ないですよね」

「そりゃ、問題ないが・・・・・・この内容こちらに有利過ぎないか?」

「ええ、ですが彼は先の大戦をもう一度起こすことを何より、嫌ったようです。本来、下級の堕天使の始末にグリゴリに来てまで、今回の一件が大戦に発展しないようにするなど、誰が考えますか?ミカエルでもここまでしませんよ。断言できます。」

「だろうな、天使でもこんなことしないだろうな。それを悪魔がやるとか、どんな奴だコイツ?」

「バルバトス公爵、といいましたよ?アザゼル」

「・・・・・・おいおいシェムハザ、バルバトス公爵って、あのバルバトスだろ?あのバルバトスが力押し以外の方法を覚えたとか、俺はサルが飛行機の操縦を覚えたって方が信じられるぜ。」

「その例えはどうかと思いますが、まあ概ね同意します。ですが、先の大戦で暴れた方ではなく、息子の息子です。その二人はもう亡くなっているそうです」

「・・・・・・そうか、親父の方は死んだのは知っていたが、息子の方も死んでいたのか。だが、その息子の息子がいたんだな。どんな奴だった、親父の方に似て、ねじが全部吹っ飛んだ奴だったか、それとも爺の方に似て、ねじが付いてない奴だったか?」

「それが、とんでもない。とても理性的で今回の提案をしてきたような、誠実な悪魔でしたよ」

「悪魔が誠実って、なんだそれ。やっぱりバルバトス家は誰も理解できないわ」

 

アザゼルが面白そうに笑っている。

まあ、あのバルバトスからあんなまともなのが生まれたとか、どんな冗談だと言いたいですね。

実際会った私も驚きましたし。

 

「だが、まあ俺達と同じ考えを持ってくれた奴がいるのはいいことだな。それも若い世代に」

「ええ、本当に。折角、対外調整をしてきたというのに、今回の一件でご破算になるわけにはいきませんでしたし。」

「ああ、もう少しだ。最近はコカビエルの動きも怪しい。可能な限り急いでくれ」

「・・・・・・そう言うんだったら、仕事してください」

 

堕天使の総督の実力もカリスマ性も信じていますが、この性格だけは信用できません。

 

side out




楓が使用した武器ハリセンについて説明を記載します。
出展作品::テイルズオブシンフォニア

二刀の一種。
斬り攻撃力+850、突き攻撃力+750、命中+30、幸運+30。
復興後のルインの武器屋で40000ガルドで買える。

ネタ武器なのにシンフォニア主人公ロイドのシナリオ上最強武器、マテリアルブレードを超える強さを持っている。

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