政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第22話 悪魔界の将来の問題

どうも、ゲーティア・バルバトスです。

 

堕天使の本拠地からの帰り、堕天使領を越えたあたりで私はようやく安堵したのか、大きく息を吐いた。

その様子が可笑しかったのか、セラフォルー様に笑われてしまった。

 

「アハハハ、疲れちゃった☆でも今回は良く頑張りました☆お姉さんが褒めてあげます☆」

「ありがとうございます。レヴィアタン様」

 

セラフォルー様が私の頭を撫でている。

いいのだろうか、魔王様にこんなことしてもらって。

でも、振りはらうのは不敬だし、このまま気の済むままにしておこう。

私はセラフォルー様が満足するまで、身を任せた。

すると気が済んだのか、手を止めた。

そして私の顔を見て、聞いてきた。

 

「ゲーティア君、今回の件、何時から考えていたの?」

「はい、最初の襲撃の時、尋問として腕と足を切り落としました。その後情報を入手後に始末しましたが、ソーナに顛末を報告していた時、上層部への報告を失念していたことを思い出しました。そのため、犯人を引き渡した方が確実でしたが、私の独断で始末してしまいました。大変申し訳ございません。」

「ああ、そのことは全然問題ないよ~。それに基本的にそういうことで報告を上げてくれないから、こっちもたまに困ったことになっちゃうんだけど、そこはこのレヴィアタン様が何とかしてあげてたんだから。もっとみんな私に感謝してよね。でも、ゲーティア君はそういうところもちゃんと報告してくれたから、お姉さん感心しちゃった。だから思わず一緒に連れてっちゃいました☆」

 

そうだったのか、悪魔界に報・連・相の概念はないのか。

ルールに縛られた悪魔ってイメージが違うような、でも悪魔って契約にうるさいから、ルールにはうるさそうなのに、どっちが多いんだ?

私がそんなどうでもいいことを考えていると、セラフォルー様が尚も質問してきた。

 

「でも、よかったの?堕天使への要求、あんな内容で済ませて。もうちょっと吹っ掛けても問題なかったのに」

「今回の一件は偶発的な遭遇戦でしたし、私に被害はなく、また相手を殺めたのは私ですので、それが原因で、大戦の火種を作るわけにもいきません。それに、早めにケリをつけておく必要があります。交渉が纏まる前に誰かが暴走してしまえば、それこそもっと大きなことになりかねません。あちらが飲みやすく、こちらの条件をクリアしていれば後は素早く纏めたかったので、落としどころはあれで良かったんです。」

「そうなんだね。うんうん、ゲーティア君、今後は一緒に外交に行かない?君が一緒に来てくれるとお姉さん、とっても助かるんだけどな~」

「いえいえ、ご冗談を。私のような若輩者が出しゃばるようなこと、恐れ多いことです。まして、悪魔界の外交を担うほどの知性も教養もございませんよ。」

 

私はセラフォルー様の冗談に明るく返した。

でも、セラフォルー様もあきらめない。

 

「そうなことないよ~。今回もちゃんと出来てたし、お姉さん的には花丸だったよ~。だから一緒に外交頑張らない?」

「学生生活が今年で終わりですが、来年からは領地の運営を本格的にしていく必要がありますので、そのような重責を担うことなど、とてもとても」

「うーん、そうか。ゲーティア君はもう公爵だもんね、現当主だもんね。ごめんね、無理言って。でも、ソーナちゃんと同い年でこんなにキチンと対応できたから、お姉さん手伝って欲しかったんだ」

「レヴィアタン様、私に過分な評価恐れ入ります。魔王様の命であればこのゲーティア・バルバトス、粉骨砕身ご支援させていただきます」

「本当☆、ありがとう。どうしても手が足りなくなったら手伝ってね☆」

 

外交か、私に出来るだろうか?

でも、魔王様にお願いされて、断るわけにはいかないし。

最悪の場合、惣右介を外交に回すか。

でもこういうことばかりしていたら、惣右介がはぐれ悪魔にならないだろうか?

その場合、私に反逆しても仕方がないだろうな。

誰だって、いやな上司の下にいるのはつらいものな。

私が惣右介の将来を心配していると、セラフォルー様が別の質問をしてきた。

 

「そうだ、ゲーティア君は、フェニックス家のレイヴェルちゃんと婚約しているんだよね。今度映画になるんだよ、二人の出会い」

「映画ですか?私とレイヴェルの婚約が映画になるんですか?」

「そうだよ、知らなかったの?サーゼクスちゃんが書いた小説を元に映画が作られるんだよ。そ・し・て、レイヴェルちゃんの役は私なんだよ☆」

「なんと、そうでしたか。私は知らなかったのですが、魔王様が作られたのならば私に否やはありません」

 

どうやら魔王様が作られたとは、知らなかった。

セバスは何か知っていたんだろうか?

 

「そうだ、ゲーティア君が主役をやらない?この世で一番ピッタリだし、外交デビューの次は俳優デビューとかどう?」

「いえいえ、私に俳優などとてもとても、それに自分役をやるなんて、とてもやりにくいです。そういうのはむしろ見るほうが気が楽ですよ」

「もう、ゲーティア君は若いのにチャレンジ精神が足りないぞ☆もっといろんなことをやらないと折角の時間が勿体ないぞ☆」

 

さすがにこういうことはチャレンジ精神と言われるのは違うと思うんだが、流石に言い返すのはまずいので、あいまいに笑ってごまかすことにしよう。

私がそうやって対応していると、セラフォルー様がさらに質問してきた。

 

「そうだ、ゲーティア君、うちのソーナちゃんのこと、どう思う」

「どう、とは?」

「もちろん、かわいいとか結婚したいとか、そういう感じのどうだよ」

「私はレイヴェルと婚約しておりますが?」

「でも、別に悪魔界の場合、一夫多妻制だし、そんなの気にしないとしたらどうかな?」

「私はあまり器用な男ではありません。結婚相手全員を平等に愛するなど、そんな器量も持ち合わせておりません。私は御家の存続を第一に考えております。気の早い話ですが、多妻である場合、後継者問題が起きれば御家の存続も危ぶまれます。そのようなことでは本末転倒です。それに、ソーナはシトリー家の跡取りです。私はバルバトス家の当主です。もし万一にも結婚した場合、どちらかの家がつぶれる事になります。」

 

そう、子供が多くいると御家騒動にもなる。

だが子供が多いに越したことはない。

まあ、今は捕らぬ狸の皮算用だ。

私はそう考えていると、セラフォルー様がソーナを更に売り込んできた。

 

「ゲーティア君、例えばソーナちゃんとゲーティア君の子供がシトリー家を継げばいいし、バルバトス家はレイヴェルちゃんの子供が継げばいいと思うよ。」

「ですが、そのようにうまくはいかないでしょう。悪魔の出生率は極めて低い、純血悪魔が減少したのは先の大戦で多くの命が失われたこともありますが、現在に至るまでに数が回復していないのは、その低い出生率が原因だと思われます」

「じゃあ、ゲーティア君はどうすれば改善すると思う」

「それは出生率ですか、それとも人口数ですか」

「どっちもかな。ゲーティア君の発想で役に立ちそうならすぐにもやるし、そうでなくても意見がもらえる。どっちもありなんだよ。」

「そうですか・・・・・・出生率の改善につながるかは分かりませんが、思いつくことはあります」

「ほうほう、何々。言ってみてよ」

「認識の改善だと考えます。悪魔の場合、寿命の長さが人間とは圧倒的に違い、一生の考え方が違うことにあります。人間は大体20~40歳くらいの間に子供を作ります。またそれ以上の高齢で作ることはありますが、このくらいを基準と考えると、人間の寿命を80歳までと考えます。すると、人間の四分の一~二分の一の間に子供を作ることになります。ですが悪魔の場合、寿命を1000歳と考えると、250~500歳までの間となります。そうなると子供が生まれるまでに最短で250年かかることになります。まして、悪魔の寿命が10000歳だと仮定すれば、250年どころか2500年かかります。ですが、そもそもこの考え方が間違っているんです」

「どういうこと?」

「まず、人間が子供を作れる期間を先程の20~40年くらいと仮定しているのは、この期間にしか作れないのが前提です。ですがそれは種族的な考えです。ですが悪魔は違います。子供を作れるのは人間と同じ20歳からとすることも、人間の寿命の80歳からともすることが出来ます。先程の最短の250年よりもずっと早いのです。だから悪魔の出生率が低いのはただ作らないだけです」

「・・・・・・・認識を変えるにはどうすればいいと思う?」

「・・・・・・・ありきたりですが、教育とか、啓発キャンペーンとか、そういうのでしょうか?」

「ねえ、ゲーティア君、君、私の右腕やらない?」

 

side セラフォルー・レヴィアタン

「ねえ、ゲーティア君、君、私の右腕やらない?」

 

私はゲーティア君をヘッドハンティングしようとしている。

でも仕方がないのよね。

彼のようにどうして悪魔が増えないのか、どうすれば変えられるか、そういう考えが出来る子はとても貴重なの☆

だっておじいちゃん達はその内増えるからって特に気にしていないし、純血悪魔が貴重という考えから純潔悪魔同士での婚姻を積極的に結ぼうとしているのに、子供が増やし易い環境作りをしようともしていない。

それに、他の魔王のみんなも、それぞれがしたいことをしているだけだし、まあ、私もだけどそれはそれ☆

だけどここにいるゲーティア君なら、その辺りちゃんとやってくれそうだと思うの☆

サーゼクスちゃんにゲーティア君のことを聞いていたけど、魔王に忠誠を示すために、領地の経済を破綻寸前にしてでも忠を示してくれたし、信頼できると思うの☆

それに、今回の外交もちゃんと対応してくれたし、報告してくれたし、後を任せやすいと思うの☆

そうなれば、私がシトリー家に戻って、ソーナちゃんをお嫁に出せるし、そうなればゲーティア君のお嫁さんにしてあげられるの☆

あ、でもレヴィアタンは女性悪魔の役職だから・・・・・・グレイフィアに代わってもらおう。サーゼクスちゃんがルシファーをゲーティア君に代わってもらう、というのはどうかな?

帰ったらサーゼクスちゃんと相談してみよう☆

アジュカやファルビーも巻き込んでみよ☆

魔王にしてしまえば、きっとゲーティア君がいろいろ仕事してくれて、私たちも晴れて自由の身かも☆

よーし、みんな任せて☆

みんなの願い、自堕落に好きなことがしたいという悪魔らしい生活を取り戻すために外交担当セラフォルー・レヴィアタンの交渉力を見せてあげるの☆

 

「ゲーティア君、私の右腕をやってくれたら、色々優遇出来ると思うの☆例えば、財政支援とか、他家どころか他勢力との技術交流なんかで他の領地に差をつけやすいと思うし、そうなると誰もがゲーティア君に一目置くと思うの☆これならバルバトス家も安泰だと思うの☆どうかな、私の右腕やってみない☆ああ、ごめんね、今すぐじゃなくていいよ、全然急がないし、やってくれたら嬉しいな、てくらいだから、それに一度やってみるお試し期間を設けても全然いいし、それにさっきも言ったけど、チャレンジ精神を磨くいい機会だと思ってくれていいからね☆」

 

ゲーティア君に全力でメリットを伝えて、でも二の足を踏むことも考えて、お試し期間でも引き受けやすい状況を作って上げたんだし、これならゲーティア君も受けてくれるはず☆

そうすれば、私たちの仕事も減るし、将来の人材を育成できる、一石二鳥なの☆

さあ、受けてゲーティア君、私たちの明るい未来のために君の力を貸して☆

 

「レヴィアタン様、大変ありがたいお話だと思います」

 

よし来た!

いいよ、いいんだよ、受けていいんだよ☆

悪魔だもん、おいしい話にはちゃんと食いつこうね☆

私は次の言葉を待った。

でも、きっと彼なら答えてくれる、私は確信していた。

 

「ですが、それはもう少し先になるかと思います」

 

んんん?

期待した答えとは違うけど、まあいいとしよう☆

あまり、押し過ぎて嫌悪感を持たれるのはダメだから、ここは一度引こう☆

 

「そうか、残念☆でもいつでも言ってね、ゲーティア君ならいつでも待ってるよ☆あ、そうだ何か困ったことがあったらいつでも連絡してね☆将来の人材育成も魔王の立派なお仕事なんだから☆」

 

今回はゲーティア君と仲良くなれたことだけでも十分な収穫☆

個人的な連絡先を交換して、親しみを持ってもらって、困ってる助けて連絡をして、助けに来てもらって、後はお願いね、ここまでの流れの第一段階が完了したの☆

待ってて、ソーナちゃん☆

ソーナちゃんを魔王のお嫁さんにしてあげるからね☆

お姉ちゃんにお任せ☆

 

side out

 

セラフォルー様と連絡先を交換してもらった。

個人的な連絡先だそうだけど、困ってるときは連絡して、と言ってくれた。

本当にありがたい。

権力者でありながら人格者なセラフォルー様に伝手を作ることが出来た。

これだけでも今回来たかいがあった。

それにまさか、私をセラフォルー様の右腕に推薦していただけるとは、恐れ多いことだ。

まだ悪魔として18年の若輩者をそのような要職に着ければいらぬ厄介を招くかもしれないから、受けにくかったが、それでも、最後まで対応を変えず、ましてや将来の人材育成も仕事だと言ってくださった。

いや、何というかさすが魔王様、見えているものが違うな。

私も剣道部や風紀委員を人材育成の一環で育ててきたという自負があるが、一種族の長ともなると、ここまで懐が深いとは・・・・・・私もまだまだだな。

これからも精進せねば。

私が決意を引き締めているとどうやら、首都ルシファードに到着したようだ。

 

 

堕天使グリゴリの本拠地からルシファードまで、人間界で言うと入国手続きなどを含めて延べ一週間程掛かった。

少し疲れたな、でも人間界の様子はどうなっただろうか。

さすがに一週間では、はぐれ悪魔はともかく、堕天使には手を出していないだろう、早く帰るか。

 

「レヴィアタン様、これで私は失礼いたします。堕天使の件はこちらで対応致します。吉報をお待ちください」

「うん☆待ってるよ、頑張ってねゲーティア君☆」

 

セラフォルー様が手を振って見送ってくれた。

私は人間界への直通ルートを通って人間界に飛んだ。

 


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