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どうも、ゲーティア・バルバトスです。
早いもので、5月に入りました。
駒王学園もはぐれ悪魔の件と堕天使の件が解決し、平和が戻ってきた。
はぐれエクソシストを警察に引き渡したことで、殺人事件の犯人が逮捕された、ということになり、事件が解決という運びになった。
ただ、犠牲になった人のことを思うと、胸が苦しい。
私も犠牲になった生徒の墓を訪問した。
罵倒が飛んできても受け入れる決意で伺ったのだが、むしろ感謝されてしまった。
「娘のために来てくれてありがとう」と言われることになってしまった。
私がもっとしっかりしていれば防げたことだと、悪いのは私だ、と言いたかった。
でも、言えなかった。
悪魔だから、言えなかった。
いや、ただ自分の保身に走っただけだった。
なんと醜い、なんと浅ましい、なんと愚かなんだと自分を責めた。
彼らは知らないから、私に感謝している。
私は言えないから彼らに感謝されている。
ならば、その感謝を無駄にしない、と嘘も突き通せば真実になる、そう思い、更なる職務に邁進した。
先の事件以来、悪魔のことは信頼できる一部には伝えることにした。
これ以上の犠牲を出さないように、注意喚起として伝えた。
だが、伝えた者悉くが私の話を信じ、変わらぬ忠誠を誓ってくれた。
私は、彼らに危険が及ばないよう、これ以上私に関わらないように話したというのに、変わらぬ態度で接してくれた。
嬉しいことだ、本当に得難い友を得た、心からそう思った。
□
side 織田信長
我は織田信長、剣道部序列一位にいる者だ。
二年前にゲーティア部長、黒崎副部長に剣道部に誘われた。
あの時の我はひ弱で、剣道に及び腰だった。
だがそんな我をお二人が共に戦おう、とお声を掛けてくださった。
晴れて、剣道部の設立メンバーとして名を連ねることが出来た。
あの時以来、我は設立メンバーとして、また最初に誘われた者として、他者より強く、他者より先へ、他者より上へ、その道を歩んできた。
誰よりも、ゲーティア部長、黒崎副部長に近いと自負している。
だが、あの日ゲーティア部長の言葉は何よりも衝撃的で、何よりも嬉しく、そして何よりも心躍る言葉だった。
「私は人間ではない、私は悪魔だ」
ゲーティア部長のお言葉に最初は困惑した。
だがすぐに納得した。
ゲーティア部長の強さは人間では、不可能な領域だと思っていた。
私自身が人間の最高位を極めたわけではない。
だが、そんな私でも分かることがある。
『これには勝てない』
私はライオンや熊と向かい会っても、数秒で殺すことが出来る。
武器などなくても、この身で問題なく殺せる。
これは自慢ではなく、只の事実として。
最初はゲーティア部長の強さが分からなかった。
あの日、出会ってから二年の月日で強くなったと思う。
もしあの頃の私がライオンや熊と向かい合ったら、死ぬ。
去年の私なら、苦戦しながら倒せた。
今の私なら、秒殺だ。
では、ゲーティア部長の強さは?
未だ分からない。
強くなればなるほど、分かることがあった。
この方の力は人間の領域ではない、と常々思っていた。
だからこの言葉にようやく打ち明けてくれた、と信頼を得たという嬉しさを感じた。
態々、集めて話す内容ではないでしょう。
何故なら、例え貴方が神でも悪魔でも悪鬼羅刹であってもついて行くまで。
ここに集まる、剣道部古参の8人、貴方と共にあるために2年、共に居たんだ。
最初のきっかけは強引だったかもしれない。
だが今はあの出会いこそが運命だったと心からそう思う。
「ゲーティア部長、貴方が何者であっても我々はついて行くまでです。我々はただ付いて行きたい、ただ共に居たい、それだけです」
「悪魔でもか?」
「無論です。私たちは悪魔だから付いてきたのではありません。貴方だから、『ゲーティア』だから付いてきた。ただそれだけです」
「私だから、か」
「ええ、我々は貴方の行動についてきた。貴方が剣道部を作り、貴方が指導し、その指導を受けた我々が勝利を重ねた。その行動と結果に我々はついてきた。今更悪魔だからと言って、態度を変えるような者はここには誰もいますまい」
「そうか、すまないな。今の今まで黙っていて」
「お気持ちは分かります。例えどれ程偉大な者であっても、一人では生きていけません。嫌われることなど誰でも嫌です。ですが我々は、少なくとも私は、最後まで貴方と共に在りたい。」
「織田、貴様だけではないぞ。ゲーティア部長、この豊臣秀吉、貴方に憧れ、この筋肉を得たこと、生涯決して悔いなし。貴方に生涯付いて行きます。たとえ振り払われてもついて行く所存です」
「私もです、ゲーティア部長。貴方の剣が黒く染まるその佇まいに憧れ、私も自己流で光輝くことが出来ました。ですがまだ遠い、貴方に少しでも近づくため付いて行きます。この命果てるまで」
我の言葉に続く様に、7人の同級生たちが声を上げた。
誰一人として、ゲーティア部長を見限る者などいない。
「我らの心はゲーティア部長と共に在り、オール・ハイル・ゲーティア」
「「「「「「「オール・ハイル・ゲーティア」」」」」」」
我の声掛けに皆が応じ、大号令となった。
皆同じ気持ちだ、例え普段は序列を争うライバルであっても、我らは共に有った仲間、
「静まれぇ」
ゲーティア部長の一声で、全員が静まった。
ゲーティア部長は我々に背を向け、我らに一言だけ言った。
「好きにしろ!」
はい、好きにします。
我らは言葉に出さずとも皆同じ思いだった。
この身果て、魂尽きるまで共に。
side out
私が悪魔だと打ち明けて以来、剣道部の精鋭がはぐれ悪魔討伐に加わるようになり、このところは被害がない。
風紀委員の中でも対はぐれ悪魔特別編成チームを結成出来た。
表向きは荒事専門の武闘派集団としたが、これが思いの外すんなり通った。
この部隊は戸愚呂を筆頭に剣道部の最上級生が務めている。
だが、そこに一人参加したいと言った男がいた。
私が彼の事が頭に浮かんだところ、その男が現れた。
「ゲーティア風紀委員長、本日の報告書をお持ち致しました」
「ああ、ご苦労。兵藤一誠風紀委員」
そう、リアスの眷属である兵藤一誠だ。
彼はアーシアを助けたことをえらく感謝していた。
アーシアの件はリアスに任せたが、リアスの眷属としたようだ。
報告をソーナから受けた時、思うところはあった。
私としては神に仕えた彼女が悪魔に、信仰を捨てることは無理だと思った。
だが、私では彼女を支援して生活させてやる、財力はない。
シトリー家やグレモリー家ならともかく、バルバトス家は経済の立て直し中で、あまり金はない。
人間界の拠点も、土地代が安く、家が築80年ほどの家をリフォームして、それなりにしただけで、人一人支援できるほどの財力はない。
彼女は天使陣営から捨てられ、堕天使陣営に利用され、残ったのは悪魔陣営だ。
だが、私では彼女を養う財力が無いので、リアスに任せたところ、リアスの眷属にしたというのだ。
無理矢理であれば、リアスと事を構えることも検討したが、彼女は友達の一誠といることを望んだため、現状に不満はないそうだ。
ならば私が言うことは何もない、そう思っていたところ兵藤一誠とアーシア・アルジェントが現れた。
□
「ゲーティア先輩、アーシアの事を助けてくれてありがとうございました」
「あの、ありがとうございました」
まず驚きがあった。
風紀委員室に彼らが現れ、私に礼を言いに来た。
次に感心があった。
態々礼を言いに来たことに、彼らの義理堅さに感心した。
最後に申し訳なさがあった。
「なに、あれは私の行動が遅かったから君に苦しい思いをさせた。すまなかった」
私がもう一日早く終えていれば、彼女に苦しい思いをさせずに済んだことを申し訳なかった。
だが、そんな私を彼女は許してくれた。
「そんな、私がああなったのに、今こうしていられるのは、ゲーティアさんのおかげだと思っています。だからあの時助けてくださって、ありがとうございます」
「そうか、そう言ってくれるなら、もう私からは何も言えない。君が無事でよかった」
そんなやりとりの後、彼らは何かお礼がしたいと言い出した。
お礼と言われても、何かしてほしいわけではない。
だが、一つ希望があった。
「兵藤一誠、お前、もっと強くなりたくはないか」
私はもっと強くなった赤龍帝、いや兵藤一誠と戦いたかった。
side イッセー
俺はオカルト研究部の兵藤一誠。
今は風紀委員の見習いをやっている。
俺が風紀委員の見習いになったのはゲーティア先輩が俺を強くしてやると言ってくれたので、参加している。
俺はあの時アーシアを助けれなかった。
ゲーティア先輩が来てくれなければ、アーシアが死んでいた。
あんなのはごめんだ。
それにゲーティア先輩は剣道部を全国最強に育てた人だ。
先輩の指導を受けたくて全国から集まるほどだ。
そんな先輩から直接指導を受けれれば強くなれる。
だけど俺は過去に覗きをして捕まった、それ以来風紀委員の監視の下、生活してきた。
だから俺が風紀委員になることはゲーティア先輩が許しても生徒たちが許さない、そう思っていた。
「兵藤、いくぞ。ついてこい」
その言葉に自然とついて行った。
何故かこの人には自然と従いたくなる。
悪魔になる前にはなかった、でも今は同じ悪魔だからか、従ってしまう。
まるで王に従っているような感じだ。
俺がゲーティア先輩について行くと、まず生徒会室に入った、その後の行動に俺は己の過去を恥じた。
「兵藤一誠を風紀委員にする。今後の行動は全て私が責任を持つ。だから頼む、認めて欲しい」
全く関係がない、ゲーティア部長が俺のために頭を下げてくれた。
それは生徒会室だけでなく、全教室で行った。
職員室でも、だ。
俺もその後を付いて、同じように頭を下げた。
でも俺が下げていることとゲーティア先輩が下げていることはその質が違う。
俺は罪を犯した罪人として謝罪のため、ゲーティア先輩は俺の信用の代わりに頭を下げてくれている。
築いた信用を俺のために使ってくれている。
俺は涙を流した。
過去の己の行動を恥じたこと、現在の己の信用の代わりに下げさせている情けなさに、未来の己がこの信用に応えるなければならない重圧に、涙を流した。
全ての教室を巡り、風紀委員室に戻ったときは日が暮れていた。
ゲーティア先輩は自分の机から腕章を取り出し、俺の前に立った。
「では、兵藤一誠、君を風紀委員に任命する。共に学園の風紀を守ろう」
「‥‥‥はい、ゲーティア風紀委員長」
俺はその腕章を受け取り、腕に通した。
重い、そう思った。
さっき、ゲーティア風紀委員長に頭を下げさせた重みがあった。
俺達がやってしまったことでこのような委員を作らせてしまった。
本来なら、俺に入る資格などない。
だけど、ここまでさせたんだ。
ここで引くわけにはいかない。
俺は覗き魔だ、嫌われ者だ、そんなの重々承知だ。
開き直り、ああそうだ。
だからこそ、この人だけは裏切れねぇ、裏切ればただの外道だ。
そこまで落ちれねえ、この人と友達だと言って信じてくれたアーシアだけは裏切れねぇ。
ならば、この腕章に誓うだけだ。
アーシアとゲーティア風紀委員長、この二人は絶対に裏切らねぇ、裏切るぐらいなら死んでやる。
心にそう決めた。
□
あれから、もう一月近く立つ。
見習いとなって思い知った。
学園の風紀を守ることの大変さを。
俺がしてきたことがどれほど愚かだったか、思い知った。
学園内では問題が起こらない、俺達が起こさなければ、だ。
松田と元浜の監視を俺は買って出た。
二人は監視がないことを理由にまた覗きを行おうとしていた。
「俺は風紀委員だ。二人ともやめろ。もし行うのであれば、お前たちを捕まえなければならない、頼む、俺にお前たちを捕まえさせないでくれ」
俺は二人に頭を下げて頼んだ。
今までの俺とは違うことを二人は感じとった。
「なんでだ、イッセー。お前彼女が出来て付き合い悪くなったんじゃないか!」
「そうだぞ、彼女が出来たからって、俺達を裏切るのかよ!」
二人からしたら、そう見えるんだろうな。
彼女が出来たから、覗きをしなくなった、二人にはそう見えたんだろうな。
俺が逆の立場でもそう思う。
だからこそ、俺が止めなきゃいけないと思った。
俺のために頭を下げてくれた人がいる。
俺の代わりに信用を賭けてくれた人がいる。
「お前らからしてみれば裏切り者だ。その通りだ、今更善人ぶって、良いことしたからって、過去が消える訳じゃねえ。でも、未来は変わる。俺はあの人に頭を下げさせて思い知った。過去は変わらねえ、今で、未来で塗りつぶすしかない。ならお前たちを全力で止めて、これ以上、悪いようにしたくねえだけだ。塗りつぶす過去が増えるのを止めてやることだけだ。友達だから、裏切り者だから、これしか出来ねぇ」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
二人はため息をついて、俺に言った。
「はぁ~、イッセーの奴、えらく熱血になっちまったな」
「まあ、元から熱血みたいなやつだったし」
「‥‥‥俺さ、最近バイト初めてさ、そこの子、学校が違うから俺が真面目だと思ってるんだ。もう覗きも出来そうにないな」
「‥‥‥俺もさ、後輩からおはようございます、て言われてさ、かわいい子だったな、あの子、俺が覗きをしたこと知らないみたいなんだ。さすがにあの子の事、裏切れねえわ」
松田も元浜もこの一年、監視下に置かれていた結果、あれ以上酷い結果にならなかった。
本当にゲーティア風紀委員長には感謝しかない。
「俺達、イッセーが風紀委員になったこと知ってたからさ、まあ、あんな大声でイッセーを風紀委員にする、って言って回ったんだ。学校中みんな知ってる。だから、就任祝いに俺達のこと捕まえて手柄を上げればさ、イッセーの事、みんな信じるんじゃないかと思ってさ」
「まあ、俺達にはあんな頭下げてくれる人に出会えなかったからさ、うらやましいぞ、イッセー」
「松田、元浜‥‥‥だったら尚のことだ。もし俺のことをまだ、友達だと思ってくれるなら、俺がいるうちは問題を起こさないでくれ」
「手柄はいらないのか?」
「いらん。ゲーティア風紀委員長が言っていたことだ、平和なのが一番いい、事件なんかない方がいい、って言ってたからな。だから俺が風紀委員になって、事件が起こったら、全部俺のせいだ」
「じゃあ、仕方がない」
「ああ、仕方がない」
二人は笑いだした。
その上で、俺の肩を叩いて約束してくれた。
「イッセーがいる間は問題起こさねえよ。だから退学すんなよ」
「ああ、イッセーが退学したら覗き魔生活に逆戻りだからな。俺達がちゃんと卒業できるように風紀委員続けろよ」
「なんだよ、自分でちゃんとする気ないのかよ」
「「ない」」
そう言って三人で顔を見合わせて笑った。
□
強くしてやると言うゲーティア風紀委員長の言葉は、本当だった。
風紀委員としての仕事終わりに秋野先輩と共に風紀委員室で待っていた。
「楓、集中トレーニングを私とイッセーで行う。場を用意してくれ」
「はい、ゲーティア様。時の魔剣よ、時間の影響受けない場所を創れ」
俺とゲーティア風紀委員長は秋野先輩の力で創った場所で戦った。
結果は大惨敗だった。
ただ向き合うだけで気絶した。
力を使え、と言われて神器を出して、時間をかけて強化し、思いっきり殴ったら、腕が折れた。
ゲーティア風紀委員長が呆れていた。
その視線が最も心にきた。
だが、ゲーティア風紀委員長はそんな俺を見捨てずに指導してくれた。
まず基礎体力をつける事、次に魔力量を増やす事、それからコントロールと技を教えてくれた。
一か月前より、向き合って気絶することはなくなった。
時間をかけて強化して、殴っても、腕が折れなくなった。
魔力量も一か月前に比べて、ミジンコがハエくらいに成長した。
ここまで時間を掛けてもらったのに、これくらいしか成長できなかった。
だが、そんな俺にゲーティア風紀委員長は言ってくれた。
「千里の道も一歩からだ。初めから出来る者はいない。少しでも成長しているなら、それでいい。退化しなければそれでいい」
その言葉で俺は安心した。
必死でやっている、つもりだった。
ゲーティア風紀委員長に直接指導してもらっているのに、少ししか成長していない。
だけど、そんな俺を、こんな少ししか成長していなくても、褒めてくれた、はげましてくれた。
なら、もう少し頑張ろう、この人の信頼に応えるために。
side out