政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第26話 領主失格と宣戦布告

どうも、ゲーティア・バルバトスです。

5月のとある夕方、いつものように剣道部の指導と文芸部の指導を終え、風紀委員長としての部下から報告を受けていた。

風紀委員室には私とレイヴェル、そして一日の報告に来ていた一誠がいる。

その部屋に突然の訪問者が現れた。

部屋に転移陣が現れ、その紋章はグレモリー家のものだった。

 

「突然の訪問失礼いたします。ゲーティア・バルバトス公爵様」

 

現れたのはグレイフィアさんだった。

 

「グレイフィアさん、ようこそ。先日は態々来ていただいたのに留守で失礼した」

「ご無事でなによりでした。いえ、実を言うと、そう悪くなるとは思っていませんでしたので、心配はしておりませんでした。ここに来たのはレイヴェルさんが不安だろうと思い、参りましたので」

「なんとそうでしたか。これは重ね重ねありがとうございます」

「グレイフィア様、以前はそのような事、仰られなかったではないですか!」

「あら、そうでしたかしら、フフフ」

 

以前来てくれたのはレイヴェルを心配して来てくれたそうだ。

それをからかわれて、レイヴェルは赤い顔をして、猛抗議だ。

その様子がかわいく、愛おしい。

だが、一誠の存在は邪魔だな、消すか。

 

「ヒッ!」

 

私は無意識に殺気を放ち、一誠は気を失った。

この程度で気絶して情けないと思うべきか、空気を読めてエライと褒めるべきか悩ましいところだ。

とりあえず一誠を近くの椅子に座らせ、本日はどうして来られたのか、尋ねることにした。

 

「グレイフィアさん、本日は如何なさいましたか?」

「ああ、そうでした。フェニックス家三男ライザー・フェニックス様とグレモリー家長女リアス・グレモリー様の婚姻の日取りが決まりましたので、ご報告に参りました」

「なんと!」

「まあ!」

 

私とレイヴェルは驚きの声を上げた。

 

「随分と早いですね。どうしたんですか?」

「はぁ~、最近の言動はあまりに目に余りまして‥‥‥その、こう言っては何ですが、ライザー様にお嬢様の後見人をしていただくのがいいだろうと言うことになりまして、こうなりました」

「そうですか。ですが、目に余る言動というのは一体?」

「‥‥‥解決した当人がそれを聞きますか。‥‥‥堕天使の一件の報告書は拝見いたしました。先の対応とその報告には不備がなく、それでいて肝心なところは領地の管理者に委ねたこと。この事は魔王様方も大層評価しておりました。ですが、相対的にお嬢様の対応の杜撰さ、報告の無さ、また領地内での住民の死亡、挙げれば切りがない程の失態の数々が浮き彫りになりました。そのため、リアスお嬢様ではこの領地の運営は不適格だと判断されました。ですが、一度の失態で取り上げることはやり過ぎではないかと、‥‥‥ルシファー様が言いまして、セラフォルー様はそれなら誰か、後見人になって頂くのはどうか、ということになり、旦那様もこの際リアスお嬢様と婚約関係にあるライザー様との婚姻を早め、ライザー様に後見人になって頂く考えに至りました。無論ライザー様がお嫌であれば、このようなこと進められる道理はございません。ですが、伏してお願い致しましたところ、ご承諾を頂き、このような運びと相成りましてございます」

「そうですか、義兄殿は受け入れましたか」

「はい、大変申し訳なく、恥じ入る思いです」

 

グレイフィアさんとしても不本意だったようだ。

リアスの失態を押し付けるようなことになったことに申し訳なさを感じているようだ。

 

「グレイフィアさん、そのことリアスは知っているんですか」

「いえ、これからです」

「‥‥‥揉めますよね」

「‥‥‥はい。確実に」

 

グレイフィアさんがここに来たのは、決意表明の意味もあったようだ。

これから揉めて時間が掛かるから先に簡単な方から連絡に来た、というところだろう。

 

「我々も同行しましょうか」

「いえ、結構です。できれば来ないでください」

 

即答された。

でも仕方がない。

私はリアスに目の仇にされているからな。

 

「では、これから参ります。お二人の御顔を見れて少し元気が出ました」

「グレイフィアさん、頑張って」

 

私とレイヴェルはグレイフィアさんにエールを送った。

グレイフィアさんも笑って、風紀委員室を後にした。

 

 

side グレイフィア・グレモリー

 

どうも、グレイフィアです。

ゲーティア君とレイヴェルさんの顔を見に、立ち寄ったところ、思いの外、気分がラクになりました。

少し思い詰めていたようです。

ここ最近のサーゼクスも相当思い詰めていました。

リアスのことで最近、魔王会議で立つ瀬がないようです。

リアスは領地の運営をバルバトス公爵に頼りきりだ、ソーナ・シトリーとゲーティア・バルバトスからは報告書が来るのに、どうしてリアス・グレモリーからは報告書が来ないのか、どうして領地内の堕天使との交渉をバルバトス公爵が対応する事態になったのか、等々、最近セラフォルーに相当言われているようです。

セラフォルーは最近、ゲーティア君にご執心だ、セラフォルー当人にそのことを聞けば納得するほどの功績だった。

堕天使との交渉も完璧だったこと、これからの悪魔の未来も真剣に考えていること、領地の運営も見据えて人材確保に動いたこと、それら全てを完璧にこなしている、そう言われたらぐうの音も出ない。

私はもとより、ゲーティア君の事を亡くなった彼の母の分も愛そうと思っている、実にかわいい、ミリキャスと同等の存在だ。

そんな彼の行動を嬉しく、頼もしく、誇らしく感じています。

セラフォルーが彼を魔王に推挙していることも只の戯言ではないと思います。

彼は力も知能も精神力も全て備わっています。

指揮能力も長けていて、人心掌握も出来る、正に魔王になるべき存在だ。

ただ残念なことに、彼を魔王にしたい、と言ったセラフォルーの案に魔王全員が乗ってしまったことが残念でありません。

自分が降りるから後は彼に任す、と大人3人で馬鹿な言い争いをしていました。

彼らは年若いゲーティア君に全て押し付けようとするダメな大人です。

セラフォルーも自身の妹を彼との縁組に出すため、魔王を降り、実家に戻るために私をレヴィアタンにしようとしていました。

何とか食い止めましたが、隙あらば同じことをしてきます。

油断なりません。

私は最近の疲れの原因がゲーティア君だとは思いたくはありませんが、彼が何かすると嬉しいようで、頭が痛い思いがします。

そして、これから会うリアスも私の頭を悩ませる原因です。

私はオカルト研究部の扉の前で、意を決して扉をノックした。

 

「失礼いたします。お嬢様、グレイフィアです」

「グレイフィア!!」

 

私の目の前で優雅にお茶を飲んでいる彼女を見て、ため息を吐きそうなのを我慢しました。

先程ゲーティア君のところを訪れた時、彼は仕事をしていました。

ですが、今の彼女はお茶飲んでリラックス中でした。

比較になりませんね。

私は気を引き締め、告げるべきことを告げよう。

そう心に決めた。

 

「お嬢様、本日は旦那様からの名代として参りました。お嬢様にはライザー様と婚姻して頂きます。期日は十日後。準備をこれから行いますので、急ぎグレモリー家にご帰宅ください」

 

私は一息に告げると、リアスは驚き言葉が出ないようだ。

でも、一度呼吸をすると、大音量で反応が返ってきた。

 

「どういうことよ!!私は何も聞いていないわ!!そんなこと認められるわけがないわ!!」

「お嬢様が認める認めないなど最早関係ありません。これは旦那様、奥様、サーゼクス様全員一致のお考えです。ですのでお嬢様一人が反対しても意味を成しません。お分かりになられましたか、では参りましょう」

「分かるわけないじゃない、一体どういうことよ。説明して頂戴!!」

「はぁ~、簡単に説明しますと、お嬢様がこの領地の主としてふさわしくないので、お嬢様を支える後見人を付けることになりました。その際、この領地に常駐して頂く必要がございます。そのため、旦那様方ではいけません、また他のご親族では適格な方はおりません。なので、ライザー・フェニックス様と婚姻して頂き、ライザー様に後見人になって頂くことになりました。お分かりいただけましたか?」

「な、な、な‥‥‥どういうことよ。私がどうして領主としてふさわしくないのよ!」

「ゲーティア様を見て、何も思いませんでしたか?」

「ゲーティアが一体なに!」

「‥‥‥対抗意識を持つこと自体は悪いことではありません。ですがそれで視野を狭めるなど、只の愚か者です。本当に何もわかりませんか?」

「だから何が!」

「ご自分の領地の事、どれだけ知っておりますか?」

「え?」

「この駒王町の事をどれ程ご存知ですか、そう聞いております」

「それとゲーティアがどういう関係があるのよ?」

「先程、ゲーティア様のところに赴いたところ、駒王町の現在の状況について報告を受けておりました。そして最近もはぐれ悪魔との交戦が報告されております。お嬢様は何をしておられましたか?」

「‥‥‥はぐれ悪魔の報告が誰からも来ていないわ。ゲーティアが止めているのね」

「はぁ~、お嬢様は誰かに報告、いえ相談や連絡はしましたか?」

「しないわよ。私はこの町の領主よ。なぜゲーティアにそんなことしないといけないのよ!」

「ゲーティア様ではなくともソーナ様でも宜しいですが、行いましたか?」

「‥‥‥していないわ」

「なぜ?」

「私の領地よ、ソーナの手を借りないわ。」

「そうですか、ならゲーティア様から連絡が上がらないのは仕方がありませんね」

「そんなの私の領地で好き勝手しているのよ。これは明確な協定違反よ、越権行為よ」

「ゲーティア様が何故そのように動いているのか分かりますか?」

「私の邪魔がしたいんでしょ!」

「‥‥‥既にお一人亡くなられているそうですね。セラフォルー様にゲーティア様が報告を上げておりました」

「何よ、そんなこと。私の領地で好き勝手やっていたはぐれ悪魔なら既に始末したわ。今更そんなこと‥‥‥」

「一人でも犠牲者を出した時点で領主として失格だと言っているんです。いえ、その失敗を糧とし、次に生かそうとしていない時点で最早言い逃れが出来ない程、領主失格です。領主にとって、土地に住む人は等しく財産です。その財産を守れない領主を貴方は領主だと認めることが出来ますか?どうなんですか、リアス!!」

「ヒッ!」

 

リアスは怯え、縮こまってしまいました。

ここまでですね。

元々この子に領主なんて無理がありました。

将来への箔をつけるために領主にしたようなものです。

貴族としての考えよりも自分の気分で考えて行動するこの子には無理だったのかもしれません。

私に言えたことではありませんが、領主として向く性格ではありません。

ソーナ様やゲーティア様であれば問題なくできることも、この子は自分の都合を優先する。

ですが、ライザー様の下で学び成長すればきっと立派な領主と成れるはずです。

今回の失敗を次に生かしましょう。

私は彼女が俯いている姿を見たくないので、せめて励ます意味で頭を撫でようと思いました、ですが‥‥‥

 

「私は結婚なんてしないわ!それにするなら自分で相手を決めるわ!これが私の決めたささやかな夢よ!」

 

リアスは勢いよく顔を上げ、私に宣言しました。

懲りない子です、心底そう思いました。

口で言っても分からないなら、仕方ありません。

力尽くしかありません。

私が魔力を込めると、この古い建物が耐えられないかも知れませんね。

少し弱めましょうか。

そう思い少し弱めて力を発揮しようとすると、転移陣が現れた。

この紋章は‥‥‥フェニックス家のもの。

 

「久しぶりだな、リアス」

 

ライザー・フェニックス様が現れた。

どうしてここに、いや今はまずい。

お嬢様が先程と同じ言葉を言えば、こちらからお願いした立場が。

私はお嬢様を止めようとしましたが、遅かった。

 

「なによ!ライザー、私は貴方とは結婚しないわ。結婚相手は私が自分で見つけるわ」

 

終わった。

私の苦労が、旦那様の苦労が、サーゼクスの苦労が、全て終わった。

私は旦那様になんと言えば、私がそう思っているとライザー様が予想外の言葉を口にした。

 

「リアス、俺もそんなことを言われて、はいそうですか、で済ますわけにはいかない。俺もフェニックス家の看板を背負っている。そんな俺に、お前がそう言ったところで最早何も感じない。俺も貴族の責務というものから逃げることなど出来ん。だからこそお前などと結婚することになったとしても、貴族に生まれた以上納得し、受け入れるしかない。だがな、俺が納得して、受けてやったというのに、何だこれは、ここまでコケにされた以上仕方がない。力尽くで納得させてやるしかないな。これは我が妻になるリアスに対する躾だ。リアス、俺と勝負をしろ。リアスの眷属全員と俺一人だ。ちょうどいいハンデだろ。どうせこのままだとお前は廃嫡されるんだ、俺に勝てば、俺から婚約破棄してやる。どうだ、いやもし断ればお前は家を追われるだろうな」

「何ですって、そんなことありえないわ」

「あり得るんだ、これが。元々お前の信用失墜のため、俺がお前の尻ぬぐいのために結婚させられるんだ。もしその話を断ればお前に居場所はない。魔王であるお前の兄、サーゼクス様も、お父上もお前をかばってはくれない。当然だな。お前が俺と結婚すれば、フェニックス家とそしてバルバトス家とつながりが出来る。お前よりも気に入っているゲーティア殿と関係が出来るんだ。おまえはゲーティア殿と関係を作るための駒として、その役目も満足に果たせないんだ。そんな駒、不要だろ。」

「何ですって!」

「だからこそ、優しい俺様がお前にチャンスを与えてやるんだ。俺様一人にリアスと眷属全員で掛かってきて勝てば、俺は潔く身を引こう。その際は俺から婚約破棄するんだ。お前に悪評は立たんだろう。だが、俺が勝てば潔く結婚してもらう。さあ、どうするリアス。受けるか、受けないか」

「受けるわ!」

「よし、では戦いは十日後だ。リアスが勝てば、婚約解消パーティ、俺が勝てば結婚披露宴だ。いいな」

「望むところよ!」

 

お嬢様がライザー様の言葉に乗った。

その後ライザー様は部屋を退席しようして、私を見て尋ねた。

 

「グレイフィア殿、我が妹レイヴェルと義弟殿はどちらにいるかご存じですか?」

「ええ、ライザー様、存じております。ご案内いたします」

 

それだけ言い、私とライザー殿はリアス達の前から去り、ゲーティア君がいた部屋まで向かった。

 

side out

 

風紀委員室にライザー義兄殿とグレイフィアさんが揃って現れた。

リアスの説得に義兄殿自らお越しになったのだろうか?

どうやらそうではないらしい。

 

「ライザー様、大変申し訳ございません。こちらからお願いしておきながらこのようなことになり、お詫びの言葉もございません」

「グレイフィア殿、頭をお上げください。どうせこうなるだろうと思ってここに来ました。もとより、あれくらい言うだろうと想像出来ていたので、この際挑発ついでに言いたいことも言っておいた次第です」

 

御二人は入ってきて早々に、グレイフィアさんが謝罪をし始めた。

それに義兄殿の対応から見て、リアスが拒否したんだろうな。

私は二人の会話からそう察した。

 

「あの~一体どういうことになったんですか?」

 

レイヴェルが二人に聞いてくれた。

私も大体は想像がつくが、聞いてみたい。

 

「端的に申せば、お嬢様が結婚を拒否して、そこにライザー様がお越しになり、お嬢様とライザー様が戦い、その勝敗で結果を出すということになりました」

「なんとも、まあ‥‥‥」

「‥‥‥」

 

私とレイヴェルは絶句した。

リアスの対応はなんだ!貴族であることの責務を放棄しているではないか、義兄殿を馬鹿にするのも大概にしろ!

私は言葉に出さないが、怒りに満ちている。

だが、そんな私以上にレイヴェルの方が怒りに満ちている。

 

「何ですの、何ですの、何なんですの!これがグレモリー家の対応ですか!」

「‥‥‥大変申し訳ございません。」

 

グレイフィアさんが謝罪をしている。

悪いのはグレイフィアさんではないことは分かっている。

だから、グレイフィアさんに当たるべきではない、そう分かっている。

だが、私たちの怒りは収まらない、だが一番怒るべき義兄殿が一番冷静だった。

 

「レイヴェルも義弟殿もそう怒るな。言いたい奴には言わせておけば良い。まあ、俺自身の過去の行いもあるから大きなことも言えんし、リアスが俺との婚姻を嫌がるというのも過去の俺の言動によるものだ」

「過去の言動、ですか」

「ああ、以前の俺はまあ、女を侍らす事にしか眷属の事を考えていなかった。まあ、困っていたところを助けた奴もいたが、まあ、言ってしまえば女にだらしない男だった。これは事実だ。だからリアスが俺との婚姻を嫌がるのも無理からぬところだ」

「ですが、貴族にとって婚姻とは家同士の繋がりを持つことこそ、目的です。個人の好き嫌い等、超越しています」

「そうだな、義弟殿の言うとおりだ。だが、誰もが正しいからと言って、それを選ぶことは出来ない、そういう奴もいるんだ。だからこその戦いだ。リアスに現実を叩きつける、何時までも子供のままではいられないことを思い知らせる、そのための戦いだ」

「そうですか、分かりました。部外者の私はもうなにも聞きません。存分に戦い、勝利なさってください」

「ああ、無論だ」

 

私と義兄殿は分かり合った、だが割り切れない者もいる。

妹のレイヴェルだ。

 

「お兄様!このような婚姻御止めになるべきです。お兄様が不幸になりますわ」

「ハハハ、レイヴェルは何を怒っている。何も怒ることなどないだろう。どうせ勝つのは俺だ。最初の決定通りに事が運ぶ」

「私が怒っているのは、リアス様にですわ!お兄様はどうして、このような態度を取られてどうして結婚されようとするんですか!」

「貴族だからだ。私はフェニックス家の三男として生まれ、その恩恵を享受してきた。ならば俺がフェニックス家のために結婚するのは当然だろう」

「ですが‥‥‥お兄様には幸せになって欲しいのです‥‥‥」

「レイヴェル‥‥‥いいか、俺が公爵家に婿入りすることはフェニックス家のためだけでもない。お前のためでもあるんだ」

「私の?」

「私は、ゲーティア・バルバトスを敵視している。私の妹の夫となるからだ。いいかレイヴェル、もし、ゲーティア・バルバトスに泣かされても、フェニックス家では戦えない、バルバトス家は公爵、フェニックス家は侯爵だ。位が違う、だが、グレモリー家は公爵だ。バルバトス家と戦える。私がグレモリー家、いや公爵家に婿入りすることはバルバトス家と対等でいるためだ。我が妹を守るためだ。妹を泣かしたら焼き入れてやるためだ。そのためなら俺が罵倒されようと、手酷い扱いを受けても構わない。リアスとでも結婚してやる。だからレイヴェル、諦めろ。俺は自分の妹が大事だ。その妹のためならなんだって利用する。それくらいのことはしてもらう必要がある。そうですね、グレイフィア殿」

「はい。致し方ありません」

「そういうことだ。レイヴェル」

「はぁ~、お兄様がシスコンだったなんて‥‥‥」

「お前を誰かに取られたくなくて、ビショップの駒を与え、眷属にしたんだ。シスコンとか今更だ」

「本当にお兄様は‥‥‥仕方ありませんわね。ですが一つだけ訂正しておきますわ、ゲーティア様は私を泣かせなどしませんわ」

「今はどうか分からん、先の事だ。もし来た時の備えだ。俺も義弟殿を信頼はしているが、俺も妹を泣かしたら焼く、といった手前、対等でなければならん。ならばどんな手段でも取る。それだけだ」

 

義兄殿は私を見据え言った。

 

「義兄殿、その備え私が無駄にして見せましょう。わが生涯をかけて」

「ああ、そうしてくれ。義弟殿」

 

ならば私もその決意に全力で答えよう。

義兄の信頼とレイヴェルへの変わらぬ愛を誓おう。

 

 

 

そうだ、先程の話で気になったことがあった。

 

「義兄殿、何故十日後にされたんですか?今すぐでも良かったんではないですか?」

「準備くらいさせてやる。それくらいの余裕が俺にはある」

「そうですか‥‥‥ところで義兄殿、私はリアスの眷属二人を指導しています。もし義兄殿が望むならその二人を戦いから引かせることも可能ですが、如何しますか?」

「義弟殿は俺が負けると思っているのか?」

「私が指導している二人ですよ。義兄殿に勝てますか?」

「当然だ!俺はリアスを、眷属全員を倒す。そのために修行を重ね、遂には元龍王タンニーン殿とも戦ってきたんだ。今更何がこようと負けはしない!」

「分かりました。そう答えてくれると信じておりました。一誠、今の聞いたな」

 

私は寝ている一誠に声を掛けた。

すると一誠は起きて、返事をした。

 

「‥‥‥はい、ゲーティア風紀委員長」

「折角のご厚意だ、義兄殿がお前も木場もまとめて相手してくださる。思う存分戦うがいい」

「はい!ライザー様、リアス・グレモリーの眷属、ポーンの兵藤一誠と申します、盗み聞きしてしまい、すいませんでした」

「別に構わん。義弟殿に遠慮して、全力を出さずに負けてもリアスはあきらめん。これで最後にするためにも眷属全員を俺の力で叩き潰すまでだ」

「はい。私も全力で挑ませてもらいます」

「期待している」

 

義兄殿が手を差し出すと、一誠が応え、握手をした。

義兄殿とリアスと眷属の戦い、か。

貴族として、というよりも純粋に楽しみだ。

十日後が楽しみだ。

 

 

 


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