政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第28話 特訓2

「ただいま戻りましたわ、ゲーティア様」

「ああ、お帰りレイヴェル。実家の様子はどうだった?」

 

裕斗の直接指導を初めて3日がたった頃、レイヴェルが人間界に戻ってきた。

実家の方で、今度の対決の話をしてきたようだ。

 

「ええ、お兄様が勝つと疑っておりませんでしたわ」

「そうか‥‥‥」

 

もう勝ったつもりなんだろう。

まあ、無理もない。

フェニックス家が戦闘で負けると思えない、一般的にそうだし、ましてや義兄殿は最近は元龍王のタンニーン殿と組手をして実力を高めているのは周知の事実。

ご実家の方々がそう思わないはずがない。

 

「ですが、グレモリー眷属には木場先輩と兵藤先輩がいらっしゃること、そしてそのお二人を鍛えていらっしゃるのがゲーティア様だとご存じではなかったようなので、教えてさし上げますと、上のお兄様方は大慌てしておりましたわ。ですがお父様とお母様は、それくらいの試練も越えられずにグレモリー家に婿入りなど出来ない、という風におっしゃってましたわ」

「そうか、義父上殿達にとっては不義理をしているというのに、大変申し訳ない思いだ」

「何を仰いますか、お兄様がそう望まれたんですわ。ですからゲーティア様も全力で戦いへの準備をしてくださいまし、それにどれだけ頑張っても勝つのはお兄様ですわ」

「ああ、ならば全力でお相手させていただこう。私が用意した最高の戦士たちが義兄殿の最大の試練となるであろう」

 

全く、器が大きいな義兄殿は、義父上殿達は。

裕斗と一誠の指導に手を抜くつもりはなかった。

だが特別に手を加えるつもりもなかった。

だが、気が変わった。

いいだろう、義兄殿のために私が用意できる最高の戦士を用意し、宴の花としよう。

それが結婚披露宴か婚約解消パーティか、どちらにしろ宴になるんだ。

ここまではリアスの眷属ということで加減していたが、この際仕方がない。

死んだ方がマシだと思うほどの特訓を課して、成長させよう。

そうでないと、武門の家柄バルバトス家の看板を背負えないんだ。

私が二人を高みに至らせよう、そう決意した。

 

 

 

side 兵藤一誠

 

俺がゲーティア風紀委員長にいつものように指導を受けるつもりで、風紀委員室に入ると、木場が来ていた。

 

「よう、木場。珍しいな、風紀委員室に来るなんて。今日も剣道部の練習があるんじゃないのか?」

「ああ、兵藤君。うん、剣道部の練習はあるんだけど、今日もゲーティア部長に直接指導してもらえることになっているから、ここに来たんだ。」

「そうか、俺も指導してもらえることになっていたから、ここに来たんだが‥‥‥ゲーティア風紀委員長はいらっしゃらないのか?」

「うん、さっき部屋を出ていかれたよ。後、兵藤君が来たら、少し待っていろ、と伝えるように言付かったよ」

「そうか。待つか‥‥‥なあ、木場に聞きたいんだけど」

「何?」

「今度のライザー様との戦い、勝機はあると思うか」

「リアス部長と僕たちグレモリー眷属全員とライザー・フェニックス様一人、数の上では圧倒的に優位だ。でも質は圧倒的に不利だ。ライザー様は君の教えてくれた情報だけでも元竜王のタンニーン様と戦い合えるということ、そしてフェニックス家の特性である不死だ。例え攻撃が当たっても不死だから無意味だし、あちらの攻撃は炎だ。当たらなくても熱での副次効果で体力を削られる。不利な条件しかないね」

「ああ‥‥‥俺の考えだと百回やって百回負けると思っている」

「足りないよ。百万回やって百万回負けるね‥‥‥兵藤君は勝ちたい?」

「俺か‥‥‥分からないな。勝ち負けよりも全力でぶつかりたい。俺の持てる力全てをライザー様にぶつけたい。ただそれだけだ」

「そう、僕は‥‥‥勝ちたい。なんとしてでも勝ちたい」

「木場‥‥‥」

「‥‥‥僕だけ知っているのはフェアじゃないからね、君にも教えておくよ。僕達はゲーティア部長の家の名を背負っているんだ。僕と兵藤君はゲーティア部長に、『ゲーティア・バルバトス』様に指導され、ここまで力を伸ばした。『ゲーティア・バルバトス』様無くして、僕らの力はここまで向上することはなかった。僕らの師は『ゲーティア・バルバトス』様だと言えるんだ。そんな僕たちが今度の戦いで無様を晒せば、『ゲーティア・バルバトス』の名に傷がつくんだ。指導した師の名前に、家に、弟子である僕らが傷をつけるんだ。そんな不義理、僕には出来ない。‥‥‥だから僕は勝ちたい!」

「木場‥‥‥サンキューな、教えてくれて。ああ、俺も勝ちたいぜ!ゲーティア風紀委員長の名に傷なんてつけられねぇ。一緒に頑張ろうぜ!」

「ああ、兵藤君」

「イッセー、でいいぜ」

「ああ、イッセー君。共にゲーティア部長に勝利を届けよう」

 

俺と木場は互いに拳を打ち合わせた。

なんかいいな、こういうの。

負けれねえ理由が出来た、とても重いものだ。

恩に報いる、口で言うのは簡単だ。

だけど男なら行動で示すんだ。

俺は手を強く握った、すると左腕が熱くなった、気がした。

 

side out

 

 

 

私はアーシアとレイヴェルを連れ、風紀委員室に戻ってきた。

今日は裕斗と一誠に地獄を見てもらう。

だが、アーシアがいれば何度でも回復できる。

何度でも地獄を見せてやれる。

頑張ってくれよ二人とも、簡単に壊れてくれるなよ。

私は湧き上がる衝動を抑えながら、風紀委員室の扉を開けた。

 

「二人とも待たせたな」

「あ、ゲーティア風紀委員長。お疲れ様です。」

「お疲れ様です。」

 

私が風紀委員室に戻ると一誠と裕斗が話し込んでいたみたいだ。

この二人が仲良く話しているところは初めて見たな。

まあ、義兄殿との戦いではこの二人以外にまともな戦力はない。

リアスの消滅の魔力なら、義兄殿を消滅させることもできるが、それはあくまで実力に差がなければ、という条件が付く。

二人の力の差は歴然だ。

不死が追いつく間もない速さで消滅させるか、義兄殿を完全に覆えるだけの大きさの魔力で覆えればに消滅出来るだろうが、そこまでの魔力がないのか出来ない。

後は朱乃と小猫の二人では‥‥‥何ともならんな。

奥の手でもあれば別だが、二人では相手にならん。

やっぱり、一誠と裕斗以外に義兄殿を相手にはできないな。

私は改めてそう思った。

 

「よし、今日は今度の戦いを想定して、二人まとめて指導する。準備はいいな」

「「はい!」」

「では、行くぞ」

 

私は転移陣で私を含めた5人で楓が用意した異空間に飛んだ。

 

「よし、早速始めるぞ。レイヴェル、アーシアは私の後ろにいてくれ。後、二人が怪我をしたらアーシアに渡すから、治療してくれ」

「分かりました」

「よし、では行くぞ。裕斗、一誠」

「「はい!」」

 

一誠と裕斗が私に向かってくる。

私は迎え討つ準備を整え、指導が開始した。

 

 

side 兵藤一誠

指導が開始してどれくらい時間が経っただろう。

今日はゲーティア風紀委員長はいつもの斧を持っていなかった。

何故かと聞くと、簡単に死ぬから、そう言われた。

俺はともかく、木場には、カチンと来たのか、雄たけびを上げながら斬りかかって行った。

でも、あっさりと剣を掴まれ、握りつぶされ、思いっきり殴り飛ばされて見えなくなった。

俺も倍化して殴りかかって行くと、受け止められて、思いっきり殴り飛ばされて、木場のところにたどり着いた。

その後も何度も殴り飛ばされ、何度もぶっ飛ばされ、何度も意識を失った。

目が覚めるとそこには泣きそうなアーシアの顔がいつも映っている。

今日の指導は今までとはレベルが違う。

今までは体の使い方などの練習を主にしてきた。

最近は魔力量を向上させる練習や魔力での身体強化をしていた。

でも、今日のは実戦だ。

それも今まで経験したことがない程、はぐれ悪魔との戦いなんて目じゃない程の強者との実戦だ。

何度も飛ばされたのは俺がただ弱いからだ。

現に木場は数える程しか、アーシアに回復されていない。

俺も負けていられない、その思いで足に力を入れ、立ち上がり、また向かっていく。

 

「うおおおおおおおお!!」

「その心意気は良し。だが‥‥‥ハァッ!」

「グボォッ!!」

 

ゲーティア風紀委員長の放った拳は俺の目に映らない速さで、俺の腹にめり込み、前のめりにへたり込んでしまう。

そんな俺の頭をまるでボールを掴むように、握り持ち上げる。

 

「どうした、一誠、裕斗。まだ戦えるだろう」

 

どうやら木場も俺と同じような持たれ方をしているようだ。

現在は俺が右手、木場が左手で頭を持ちあげられている。

さっきからミシミシ、という音がしていたのに、今はバキバキ、という音がしている。

だというのに、ドンドン痛みが無くなっていく。

そして目の前にはいつも以上に殺気に満ち溢れたゲーティア風紀委員長が鬼が泣きながら逃げ出しそうな形相をしている。

俺と木場は今日死ぬんだ、そうに違いない。

ドンドン意識が遠くなっていく中、そう思った。

 

「チッ!またか、行くぞ!アーシア!」

 

だけど、俺と木場は投げ飛ばされた。

時速160㎞を投げる、剛腕ピッチャーに投げられる野球ボールの気持ちになりながら、アーシアの下に飛んで行った。

 

「イッセーさん!、木場さん!」

「アーシア!!さっさと直せ!!」

「は、はいいいい!!」

 

俺と木場はアーシアの神器で傷を治され、そして立ち上がった。

 

「さあ、どうする。ここでやめてもいいぞ。私はこれ以後お前たちの指導をしなくて済む、その分を他の見込みのある者にその時間が使える。」

「ま、まだまだ、うおおおおおおおお!!」

「木場!くそ!早く溜まれ!」

『Boost!!』

 

俺の神器は10秒ごとに力を倍化させる。

だから発動までに時間が掛かる。

木場はゲーティア風紀委員長に食い下がっている。

俺も早く行きたい、だけど今の俺だとゲーティア風紀委員長に食い下がるには最短で12回、つまり120秒かからないとまともに戦闘も出来ない。

それ未満だと歯牙にもかけてもらえない程だ。

だけどもっとだ、もっと、もっと力が必要だ。

あの人に届かせるにはもっと必要だ。

だけど、自己最高の強化回数は13回、それも使った後で血管がキレて出血して倒れた。

俺の肉体強度が不足していて、限界を超えられない。

倍化するってことは負担も倍だ。

だから俺自身をもっと鍛えないと更なる強化に耐えられない。

魔力で体を強化、更に倍化でもっと強化、だけど届かない。

ゲーティア風紀委員長に届かせるために毎日アーシアの指導の下、魔力量を向上させている。

まだ3日目だと言うのに、以前のハエレベルから、芋虫レベルに成長出来た。

だけど、ゲーティア風紀委員長は太陽レベルだ。

だけど、ハエが4096倍の大きさになるより、芋虫が4096倍になった方がでかい。

そしてデカイ分、更に負担に耐えられる。

今こそ、13回目の強化に挑戦だ!

『Boost!!』

 

「いくぞ、ブーステッド・ギア!」

『Explosion!!』

「グッッ!」

 

ヤベェ!以前みたいに血管がキレたような気がする。

でも、我慢できるだろう、俺!

どうせ一発殴って、アーシアのところにぶっ飛ばされて、回復されて、もう一回やるんだ。

次は14回目に挑戦するんだ。

後が詰まってんだ。

ここで止まるな。

 

「ウオオオオオオオオオ!!」

 

俺の全力を貴方に届かせる。

俺は全力で地を蹴り、一気に距離を詰め、思いっきり殴りかかった。

 

「ゲーティア風紀委員長!俺の一撃、止めれるものなら止めてみろ!」

「面白い!」

 

ゲーティア風紀委員長は木場はアーシアの方に蹴り飛ばすと、俺に相対し、腰を落とし両腕を広げ、待ってくれた。

 

「こい!一誠!」

「ゲーティア風紀委員長!!」

 

俺は思いっきり左の拳をゲーティア風紀委員長に胸板に叩き込んだ。

ゲーティア風紀委員長は両手を広げたまま、微動だにしない。

くそ!俺の一撃じゃ、やっぱり届かないのか‥‥‥

 

「いい一撃だ、この私を微弱だが動かすとは、成長したな一誠」

「え?」

 

少し、本当に少しだけど、後ろに下げられた。

やった!俺の一撃はちゃんと届いた。

 

「だが、この程度では勝敗に影響を与えん。いくぞ一誠!」

「うわあああああああああ!」

 

俺を掴み、またもアーシアのところに投げられた。

俺の落下地点近くにアーシアが駆け寄り、待ってくれているのが見えた。

 

「イッセーさん!」

「ア、アーシア回復、頼む」

 

俺は意識が飛びそうになるのを気合で耐え、さっきの一撃の感触を思い出している。

俺の左手に残るゲーティア風紀委員長の胸板の感触、岩いや山のような感触、衝撃を受けた。

動くことがない、ただあるがままに飲み込む自然のような大きさを感じた。

でも‥‥‥俺が動かした、動かせた。

そのことが涙が出る程、嬉しかった。

だけど、まだだ。

もっと、もっと、もっと力が欲しい。

―――赤い龍帝さんよ、聞こえてるなら答えてくれよ。俺にもっと力をくれ!

俺は左手を握り、語り掛けた。

 

「俺に力を貸しやがれ!ブーステッド・ギアッ!」

『Dragon booster!!』

 

まだだ、もっとだ、もっと輝け、こんな力じゃゲーティア風紀委員長に勝てねぇ。

お前は二天龍なんだろ!神だって殺せるんだろ!だったらこんなもんじゃねえだろ!

 

「まだだ!もっと、もっと、もっと輝けぇぇぇぇぇ!!」

『Dragon booster second liberation!!』

 

聞いたことのない音声が聞こえ、籠手が光輝き、それが終わると形が変わっていた。

新しい形と共に新しい力が備わった。

宝玉が俺にその力の使い方を教えてくれたようで、頭に力の使い方が浮かんでくる。

新しい能力は『譲渡』の力。

俺自身の力を他の者に『譲渡』する能力だ。

俺自身の力を倍化で強化して、他の者に譲渡することで、他者に俺自身の力を上乗せすることが出来る。

 

「これだ!」

 

新しい力、これなら、ゲーティア風紀委員長に勝てる。

後は木場だ。

俺は木場の方を見ると、飛んできた。

ゲーティア風紀委員長に投げ飛ばされている。

おい、木場。

お前は俺よりもゲーティア風紀委員長に食い下がれる。

だけど一撃の力が足りなくて押し負けてやがる。

だったら俺の力も持っていけ。

俺一人でも、お前一人でもゲーティア風紀委員長に勝てねえ。

だけど俺達二人なら、俺の力と木場のスピードならあの人に勝てるかもしれねえ。

行くぞ、木場。

俺達の力を、あの人が育てた力を、その身に叩き込んでやれ。

俺は木場に声を掛ける前にもう一度強化に入った。

『Boost!!』

 

side out

 

ふむ、先程光ったのは一誠の神器か。

神器が禁手に至ったのか?

‥‥‥いや、そうではないようだ。

少し形が変わっただけで禁手ではないようだ。

以前楓が禁手に至ったときはとてつもないもので、その禁手の前に私は敗れた。

楓の神器は特別だとしても一誠の神器も神滅具と呼ばれるほどの物だ。

禁手がこの程度のはずがない。

さて、どうする一誠。

わたしは一誠達の動きに注目していると、一誠が裕斗の下に駆け寄って、何か話をしている。

おそらく新しい力を使う、という内容だろう。

ならば、それがどういうものか見極めさせてもらおう。

私は二人が次の手を打つまで、手を出すことを止めた。

‥‥‥さて、どうやら相談が終わったようだ。

時間にして約2分程か、先程から一誠が倍化に入っていたところを見ると、先程と同じ倍率だろう。

一誠自身の限界がおそらく先程使った13回だろう。

それも無理をしていたのは分かっていたので、躱すことも防御することもせずに受けてやることにしたが、実に良い一撃だった。

鍛錬だからと言って、手を抜くなど微塵も考えていない魂のこもった一撃だった。

まだまだ伸びる、一週間後には何処までいけるか、想像できない。

私の想像を超える成長速度だ。

これからが本当に楽しみだ。

義兄殿、対決の時を楽しみにしていてください。

私の鍛えた者達は紛れもなく強者だ。

 

「行きます!ゲーティア風紀委員長」

「今度こそ、貴方に一撃を!」

 

どうやら2人掛かりのようだ、全然かまわない。

これは実戦だ。

お前たちが二人で力を合わせるもよし、一人で向かうもよし、だ。

 

「さあこい、裕斗、一誠、恐れを捨ててかかってこい!」

 

二人はスピードのある裕斗が前に、一撃の破壊力がある一誠が後ろに控え、突っ込んできている。

裕斗が私の攻撃を捌き、一誠の一撃に繋げようというんだろう。

良い考えだ、即席にしては最適解だと褒めておこう。

だが、そんな作戦、裕斗が力負けをする時点で意味がない。

 

「ハァッ!」

 

裕斗が魔剣を振りかぶり、攻撃の体勢に入っている。

一誠はまだ、裕斗の後ろか。

ならば、裕斗を先に潰すか。

私は今までと同じく、拳で魔剣をへし折りついでに優斗を殴り倒そうとした、だが‥‥‥

 

「ブーステッド・ギア!第二の力!ブーステッド・ギア・ギフト!」

 

一誠が裕斗の背中に左手を当てて、神器の宝玉部分が光った。

すると裕斗に大きな力が流れ込んでいき、私の拳を止めた。

 

「いける!ゲーティア部長!」

「やるな、裕斗」

 

どうやら、一誠の新しい力は他人に力を与える能力のようだ。

裕斗が私と打ち合えるだけの力とは‥‥‥一誠の強化の度合いが影響するようだ。

速さの裕斗、力の一誠、その二人が力を文字通り合わせた結果が私と打ち合えるレベルに達した、ということか。

 

「面白い!いいぞ、裕斗、一誠。足りないなら他から持ってくればいい。簡単だが本来ならば不可能なことだ。それがまさか神器で可能となるとは、実に面白い」

「ゲーティア部長、今日は手の薄皮だけでは済ませませんよ!その腕、もらい受けます」

「いいだろう!ならば‥‥‥もう一段レベルを上げよう。フンッ!」

「え!」

 

私は二人の頑張りに胸を打たれた。

いいぞ、これなら一週間後の対決までに予定していた段階を超えられるだろう。

ならもう少し目標を高く設定しよう、力をもう少し引き上げられるだろう。

だから私は少し力を入れてみることにした。

簡単に壊れてくれるなよ、裕斗。

 

 

その後、力の強化時間を過ぎた裕斗を私は勢い余って飛ばし過ぎた。

裕斗が耐えられる力を超えていたので、アーシアの治療では間に合わず、フェニックスの涙を使用した。

何とか死ななかったが、これ以上の鍛錬は無理だと判断して今日のところは終了した。

風紀委員室に転移で戻ってきてすぐに、裕斗と一誠をそれぞれ別のソファーに寝かせた。

 

「すまんな、裕斗。」

 

私は風紀委員室のソファーで寝ている裕斗に謝っていた。

 

「いえ、むしろ嬉しいくらいです。ゲーティア部長に思わず力を出させることが出来て」

「そうか、まあ私の想定を超えてきたのは間違いない。明日も今日以上で行くからな」

「はい!」

 

力強い目で、返事をしたがその声は大きくはない。

裕斗は疲労困憊の様で、大きな声を出せないようだ。

ゆっくり休むといい。

さて、風紀委員室に戻ってきて、今は9時くらいだろうか。

悪魔なのでこれからが仕事の時間だ。

はぐれ悪魔の出現はないのか、生徒から陳情はないのか、気になっていた。

私は自席の書類を確認しようと裕斗の傍を離れようとしたとき、裕斗から声を掛けてきた。

 

「あの、ゲーティア部長。大変申し訳ありませんが、僕は旧校舎に行かないといけないんですが、一誠君を呼んでくれませんか?」

「どうした、裕斗?今の旧校舎に何か用があるのか?私で出来るなら、その用事、私が解決しようか?」

「いえ、そんな。恐れ多いことです。これはグレモリー眷属がしないといけないんで‥‥‥」

「なにかあるのか?」

「‥‥‥グレモリー眷属のもう一人のビショップに食事を届けないといけないんです」

「リアスにアーシア以外にビショップの眷属がいたのか‥‥‥ああ、学園に入学する前にビショップが一人いると言っていたな」

「ええ、訳あって封印されています。いま旧校舎に封印されていて、夜の間だけ封印が解けます。その時は旧校舎内は移動できるんですけど食事を自分で用意できませんので‥‥‥それにリアス部長達が合宿に行ったのでその間、彼の食事を誰かが用意しないといけないんです」

「そうか、おーい一誠。少しいいか」

「は、はい」

 

私は一誠を呼んだところ、こちらも傷はないが、疲労困憊の様で足がブルブル震えている。

歩くのもやっとのようだ。

アーシアが支えて、一誠を連れてきてくれた。

 

「なんでしょうか、ゲーティア風紀委員長」

「裕斗が話したいことがあるそうなんだが、声が出そうにないんだ。悪いが近くによって聞いてやってくれ」

「はい、木場どうした」

 

先程私に話したのと同じ内容を裕斗が一誠に言っている。

 

「ええ!アーシア以外にビショップの眷属がいたのか!」

「ビックリです」

 

どうやら2人は初耳だったようだ。

リアスはどうして眷属の事を教えてなかったんだ?

私が疑問に思っていたが、まあいい、と気にすることを止めた。

だが、裕斗がしようとしていたことを一誠にお願いしているが、初対面の眷属に合わせるとなると相手も警戒するだろう。

それに今の一誠はアーシアが支えて、漸く歩いているようなものだ。

よし、私が連れて行こう。

 

「裕斗、私が裕斗を運ぶからその眷属のところに行こう。」

「で、ですが‥‥‥」

「この中でその眷属の事をしているのは裕斗だけなんだろう?だったら裕斗が行かないと相手も警戒するだろうし、さっきの話、封印という話だが、何か問題があるんだろう?今の疲労している一誠に頼むのは酷だ」

「ああ、封印の話は彼の能力が強すぎて制御できないからです。彼自身には‥‥‥少しだけ問題がありますが悪い子ではないですよ」

 

裕斗が言い淀んだ、何かまずいんではないだろうか。

やっぱり私が行かないと、何かあったときに大変だ。

裕斗をこんな状態にしたのは私だし、近くまで運ぶくらいはしてやろう。

 

「裕斗、行くぞ」

「へ?う、うわあああ!」

 

私は裕斗を担いで、立ち上がる。

 

「ゲ、ゲーティア部長!」

「すまんな裕斗、だが裕斗をそんな状態にしたのは私のせいだ。とりあえず旧校舎の中までは私が運ぶ。あと、ついでだ。」

「うわぁぁ」

「一誠行くぞ。レイヴェル、アーシアもついてこい」

 

私は歩きにくそうな一誠も担いで、風紀委員室を出た。

 

「裕斗、彼は何を食べるんだ?」

 

まずは近場のコンビニにでも行って、食料を買いこもう。

 


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