政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第2話 初めてのレーティングゲーム

私はゲーティア・バルバトス、歳は15だ。

 

楓を眷属としてから2年経ち、すべての眷属を揃えることが出来た。

眷属を集めるために色々な世界を渡った。

私の武器ディアボロスは楓を見つけた時のように強い者を探す力があった。

だが、次元を超えることまで出来るとは思わなかった。

ただ、時間を超えることは出来なかった。

ディアボロスが反応しているので、強者がいるのは分かっているのに手が出せないのは悔しかった。

そこで楓が思い出した。

自分の武器に時間を超える武器があることを。

そこからは私と楓の二人で時間、空間、次元と様々な壁を越え続け、眷属を集めた。

彼らを時に力で屈服させ、時に願いを叶え、眷属を増やしていった。

 

皆、頼もしい仲間たちだ。日々訓練が楽しくてしょうがない。

これで私も立派な上級悪魔だ。

これなら縁談が来るかもしれん。

もし来ていなくても、それは私の頑張りが足りないだけだ。

もっと頑張ればいい。

一度セバスに聞いてみるか。

 

「セバス、今いいか?」

「はい、何でしょうか?ゲーティア様」

「私の婚約者の件、どうなっている。」

「今だ、他家から縁談の話はございません。」

「そうか。」

「申し訳ありません。私の不徳の致す限りです。」

「いや、セバスは十分にやってくれている。全ての責任は当主である私にある。」

 

まだ、駄目だったか。

お家復興、結婚、この両方を成すために一番政略結婚がいいんだが、やはり我がバルバトス家の復興状況が良くないからなんだろうか?

当主となり7年、新しい産業は今だ出来ないが、バルバトス家自慢の軍団は私の眷属たちのおかげで半分までは揃えられた。

だが、このままではまずい。

何か手を打たねば。

 

「セバス、何か現状を打破する方法はないか。」

「それでしたら、レーティングゲームに参加されてはいかがでしょうか。」

「なに?だがいいのか、武門の家柄であるバルバトス家が参加して、万一、成果が不調であれば挽回が効かんぞ。」

「ゲーティア様、ご自分を御信じください。ゲーティア様とゲーティア様が見込んだ眷属が負けるはずがありません。」

「そうか、そうだな。よし、セバス、そのレーティングゲーム、参加するぞ。」

「はい、ゲーティア様。手続きは私が行います。」

「よろしく頼むぞ。では眷属たちに伝えてこよう。」

「その必要はありません。楓。」

「は、ゲーティア様、レーティングゲームの件、眷属全員に伝え終わりましてございます。」

「そうか。ご苦労。」

「は。」

 

まさかレーティングゲームに未成年の内から参加できるとは思っていなかった。

今の未熟な私でどこまで通用するか分からないが、武門の家柄バルバトス家の当主として恥じない戦いをしなくてはな。

眷属たちもここ最近は仕事を頼むことが多くなっていて申し訳ないと思っていた。

これで、少しでも気晴らしになればいいのだが。

よし、眷属たちを集めて集中トレーニングだ。

今こそみんなで一致団結し、勝利をもぎ取るぞ。

 

「楓。」

「はい、お呼びでしょうか、ゲーティア様」

「眷属たち全員を集めろ。レーティングゲームまで集中トレーニングを行う。」

「は、直ちに招集致します。」

 

楓が転移でみんなを集めに言った。

楓も2年で随分と成長した。

眷属が増えるたび、力関係を示し続けてきた。

楓こそ我が眷属最強だ。

ここまで強くなってくれて私は毎日楽しい。

楓に引っ張られて、他の眷属たちもどんどん強くなっている。

私もうかうかしていられない。

 

「ゲーティア様、我ら眷属一同集結致しました。」

「よし、ではこれより集中トレーニングを行う。楓。」

「は、起動せよ『空想世界の武器(テイルズオブウエポン)』来い『エターナルソード』」

 

楓の神器から刀身が紫の剣が現れた。

この剣、ハッキリ言って、私ではどうしようもない。

楓にこれを使われたら、勝ち目がない。最強の魔剣だ。

 

「時の魔剣よ、時間の影響を受けない場所を創れ。」

 

楓の一振りで次元に穴が開いた。

この中は時の干渉を受けない、私と眷属たちの訓練用の場所だ

私が中に入ると、眷属たちが続々と入ってくる。

この中ならどれほど暴れても影響はない。

さあ、始めようか!

 

「では行くぞ、いつも通り、最後まで立っていた奴の勝利だ。『ブルアアアアアアア!!』」

「次元斬」

「北斗剛掌波」

「喝」

「いでよデリオラ」

『ジガディラス・ウル・ザケルガ』

「爆砕牙」

「破道の九十 黒棺」

「天将奔烈」

「霊丸」

「火竜の咆哮」

『バオウ・ザケルガ』

「爆流破」

「月牙天衝」

 

いいトレーニングだった。

今日は私が最後まで立っていた。時の魔剣は厄介だが大分勝率が上がってきた。

最近は楓と私が最後に戦って決着をつけることになるな。

全体的に底上げをする必要があるな。

こういう時はこの二人に聞くのが一番だ。

 

「清麿、デュフォー、質問だ。眷属全員の実力の底上げをするにはどうすればいい。」

「答えは簡単だ。もっと殴り合えばいい。生命の危機に陥れば、自ずと強くなる。」

「清麿と同意見だ。」

「よし、ではもう一回だ。」

 

切磋琢磨できる仲間がいるというのはいいものだ。

 

 

side レーティングゲーム参加者

「こんなとこ来るんじゃなかった。」

 

私は今回初めてレーティングゲームに参加している。

そして、後悔している。

目の前の惨状に。

 

「お前はもう死んでいる。」

「アベシ」

 

私の眷属がポーンの一人に肉片に変えられた。

 

「爆砕牙」

「ぎゃあああああああああ!」

 

ナイトにまた一人、肉片に変えられた。

 

「30%でいいだろう。」

「グシャ!」

 

ルークにミンチに変えられた。

 

「こい、エクスカリバー」

「!!!!(消滅しました)」

 

クイーンに跡形もなく消された。

 

「一瞬で終わる。耐えぬほうが身のためだ。」

 

そして目の前にキングがいる。

あまりの威圧感に私は後退りした、してしまった。

 

「男に後退の二文字はねえ!『絶望のシリングフォール。』」

「うわああああああ!!」

 

私は打ち上げられた岩に襲われた。

その攻撃を何とか耐えた私は支給された『フェニックスの涙』を使おうとすると、

 

「アイテムなぞ使ってんじゃねえ!『シャドウエッジ』『ブラッディクロス』」

「ぎゃあああああああああ!ぐおおおおおおお!!」

 

地面から魔力でできた槍に貫かれて、追撃として飛んできた魔力弾を受けて十字を描かされた。

十字にされたダメージにも襲われた。

こんなの勝てるわけがない。

俺はリザイン(投了)しようとした。だが、

 

「今死ね、すぐ死ね、骨まで砕けろ『ジェノサイドブレイバァァァァァァァァ』」

 

目の前に迫る紫の魔力を見て、心底思った。

 

「あ、俺死んだ。」

 

私は気づくと、医務室にいた。

あの魔力を食らったのか、食らわずにリザインが間に合ったのか、分からない。知りたくもない。

もし、あれを食らっていて、もし、直されていたとしても、そんなこと知りたくない。

今の医務室にいる私には今回の戦いで学んだ、たった一つのことがある。

それだけあれば他は何も知らなくていい。

 

「一生レーティングゲームに参加しない。明日から農業やろう。自然が厳しくてもあんなのよりはましだろう。ハハハハハ・・・」

 

医務室に私の笑い声が響いた。

何故農業をやるのかって、

答えてくれる眷属はみんな、肉、になっているからさ。

食事はバランスよく、てね!

 

side out

 

今回のレーティングゲームに優勝することが出来た。

これも普段のトレーニングと眷属全員の頑張りのおかげだ。

これで、我がバルバトス家も武門の家柄としてアピールできたことだろう。

これで、他家も政略結婚を考えてくれることだろう。

やったぞ、セバス。

 

「今回の優勝者のゲーティア・バルバトス様、一言お願いいたします。」

 

ああ、マイクパフォーマンスか。

ここで印象を良くしておこう。

今回の戦いは必死だったから、ここは余裕を持った振る舞いをすべきだな。

よし決めた。これでいこう。

 

「今日の俺は紳士的だ。運が良かったな。」

 

決まった。

これだ。

今回の最年少ながら、余裕を持った戦いぶりを見せた。

これは高評価間違いない。

そして、縁談が舞い込んでくること間違いない。

 

 

side 観戦していた上級悪魔

「今日の俺は紳士的だ。運が良かったな。」

 

私はレーティングゲームを観戦していた。

そこに真の悪魔が降臨していた。

相手の眷属を全て再起不能にしていた。

リザインの意志を見せていた相手に一方的に攻撃をした。

確かにレーティングゲームにおいて、眷属が死ぬことも少ないことながらある。

リザインの意志を見せたタイミングが攻撃を放った直後だった、というやむにやまれぬ状況もある。

だが、今回の状況はそんなものでは済まされない。

全ての眷属の再起不能。

戦闘継続が困難な相手に過剰ともいえる攻撃。

挙句の果てに紳士的だと言った。これで、紳士的だと。

まさに悪魔の中の悪魔の所業だ。

私も娘を持つ身、何時か誰かに嫁ぐことになるだろう。

家の力関係や大きさも重要だ。

だが、こんな家には絶対に娘を嫁にやらん。

絶対にだ。

 

 


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