政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第31話 リアスと眷属

義兄殿とリアス達との対戦の前日にリアス達が帰ってきた。

ソーナが報告に来てくれたので分かった。

全く、仕事は丸投げ、いや、そもそもしていなかったが、眷属とも連絡を取ってもいなかったし、帰ってくるのがいつなのかも言って行かなかった。

私が言うことでは無いが、もう少し何とかならんのか、そう思いため息を吐いた。

まあ、その辺りは今後は義兄殿に任せよう。

まあ義兄殿が負ければ、改善されないが現状での不利は如何ともし難い。

不死であり格上の強さを持つ相手にリアス達が勝てるとは思えない。

もう少し成長すれば対抗策もあるだろうが、今は無理だな。

可能性があるとすれば裕斗と一誠、あとはアーシアの三人がどれほどやれるか、それ次第だな。

それに義兄殿が負けた場合、私はリアスと関係を断つ、と言ってある。

どちらにしろ、このようなことは今日で最後だ。

裕斗や一誠はもう大丈夫だろう、後は経験を積めば強くなるだろう。

さて、帰ってきたならば、報告と引継ぎをしなくてはな。

明後日からの用意もしないといけないし、やることは多いんだ。

 

「レイヴェル、報告書はこれで全部だな」

「はい、ゲーティア様。そちらのファイルに全て保管してある分で全てです」

 

私はリアス達が留守の間の報告書を再度確認し、抜けがないことを確認し終えた。

 

「ありがとうレイヴェル。問題なしだ。では報告と引継ぎに行ってくる。留守は頼んだ」

「はい。お任せください」

 

 

side 姫島朱乃

「久しぶりのオカルト研究部ね。帰ってきたって気がするわ」

「うふふ、そうですわね」

 

私たちは放課後に合宿から帰ってきましたわ。

一週間ぶりのオカルト研究部の部室に懐かしいという気持ちになりながらお茶の用意をしていますわ。

 

「帰ってきたことをソーナに連絡しておかないとね。小猫、ソーナに連絡してきて頂戴」

「わかりました」

 

小猫ちゃんが立ち上がり、部室を出て行った。

 

「ゲーティア君には連絡しなくていいのかしら?」

「いいわよ。どうせソーナが言うでしょう。それよりも朱乃、裕斗、一誠、アーシアの三人を呼んできて」

「あらあら、分かりましたわ」

 

私は一誠君たちを呼びにオカルト研究部を出ましたわ。

 

 

私はリアスに言われた通り、他の眷属の子たちを呼んできましたわ。

そして、今三人がリアスと対面している。

 

「久しぶりね。三人とも」

「お久しぶりです、部長。今日お戻りでしたか。合宿は楽しかったですか?」

「あら、別に遊びに行ったわけではないのよ」

「そうですか‥‥‥その割にはさして変わったとは思えませんが?」

「そんな簡単に強くなれないわよ。だけど着実に強くなったと思うわ。貴方たちはどうかしら、合宿に誘った時には即答で断ったけど、強くなったのかしら?」

「ええ、とても。この一週間で壁を越えた気分です。今の僕と戦えるのはグレモリー眷属では一誠君ぐらいですから」

「!!」

 

裕斗君がリアスに返答すると、リアスがカチンと来たようですわね。

そう言うけど、一週間で劇的に変わるわけがありませんわ。

それに裕斗君とリアスの二人は最近険悪ですわね。

合宿に行く前にも口論していましたけど。

 

「まあいいわ。では早速始めましょうか、裕斗、一誠」

「僕も部活があるし、一誠君も風紀委員の仕事がありますので、手短に終わらせましょう」

「ああ、そうだな木場」

「あらあら、うふふふ」

 

私たちは転移陣を用意して別の場所に飛びました。

 

 

飛んだ先はグレモリー家が所有する練習施設、そこであれば全力を出しても壊れることはありませんわ。

 

「用意はいいわね。裕斗、イッセー」

「ええ、何時でも」

「こい、ブーステッド・ギア」

「ふふふ、楽しみですわ」

 

なぜこんなことをしているかと言うと、話は合宿の前にまで遡ります。

当初リアスはオカルト研究部、いえグレモリー眷属全員で合宿を行い、全体の力の底上げを行うことを考えていましたわ。

ですが、裕斗君と一誠君は残って、ゲーティア君の指導を受けると言って聞きませんでしたわ。

リアスはゲーティア君を毛嫌いしていましたし、何よりゲーティア君自身はレイヴェルさんと婚約しているフェニックス家の縁者ですので、指導してくれるわけがないと言いました。

でも裕斗君も一誠君も折れず、結局は認めることになりました。

リアスも二人が今度の戦いに参加しないと言い出すことだけは避けたかったようですわ。

でもリアスも置いて行って、怠けられると困るので一つの条件を付けました。

その条件は合宿後に私とリアスを裕斗君と一誠君が対戦すること。

ただ対戦したとき、裕斗君と一誠君が負けた場合、ゲーティア君とは縁を切ること、これを条件にしましたわ。

私はそんなことを言えばまた反発するだろうと、思っていましたが意外にあっさりと了承しましたわ。

その結果、今こうして向き合うことになりましたわ。

明日の事もありますので、軽く流す程度で相手をしてあげますわ。

 

side out

 

私は風紀委員室からまず生徒会室に向かった。

私がオカルト研究部に向かう旨をソーナに伝えるためだ。

 

「失礼する。ソーナはいるか?」

「ええ、いますよ」

 

私が生徒会室に入ると、すぐにソーナがいた。

どうやら出かけるようだった。

 

「どこかに行くのか?」

「オカルト研究部に行きます。ゲーティアはどうしました?」

「私もこれから向かうのでな、引継ぎの件とギャスパーの件で話してくる」

「やっぱりですか。そうだろうと思って待っていました。私も行きます」

「別に報告に行くためだから、大した話はないと思うぞ?」

「‥‥‥そうであることを願うまでです」

 

ソーナは覚悟を決めた顔をしている。

ただの報告だけだから、何もないと思うぞ‥‥‥たぶん。

 

 

オカルト研究部の扉の前に立つ私とソーナ。

ソーナが扉をノックすると、中から声が聞こえた。

 

「はーい、今開けます」

 

ん、この声はアーシアか?

扉が開くとそこにはアーシアがいた。

 

「失礼します。アーシアさん、リアスはいませんか?」

「あの、部長さん達は転移してどこかに行きました」

「どこに行ったか分かりますか?」

「私には分かりません、小猫ちゃんは知っていますか?」

「たぶん、グレモリー家が所有する練習施設だと思います。合宿が終わった後に部長と朱乃さん、裕斗さんとイッセー先輩の二組で戦うそうです」

「‥‥‥明日が義兄殿との対戦だというのに、随分と余裕だな。普通なら休養に入り、体調を万全に整えるべきだというのに。それに今の裕斗と一誠の二人を相手にリアスと朱乃程度が勝てる訳ないと言うのに」

「ムッ!リアス部長も朱乃さんも合宿で強くなりました。裕斗さんならともかくイッセー先輩では相手になりません」

「ハァ~‥‥‥腑抜けている。相手との力量差も測れないとは。猫妖怪が気配に愚鈍でどうする!」

「ヒィ!!!!!」

 

一誠と裕斗との鍛錬用の殺気を全方位にぶつけただけでこの様だ。

リアスと朱乃の合宿というのもたかが知れている。

本当に合宿だったのか?

ただの女子会旅行だったんじゃないのか。

怯えて、縮こまっている塔城に対して、ケロッとしているアーシア。

この差が如実に物語っている。

 

「ゲ、ゲーティア!いきなりなんですか。ビックリするじゃないですか!」

「ふむ‥‥‥」

「な、なんですか」

 

私は抗議してきたソーナと塔城、そしてアーシアを見比べて、言い放った。

 

「いや、どうやらこの中では一番アーシアが強そうだな。回復役でなければ確実にそうだったな」

「な、何故そう言い切れるんですか」

「殺気を全方位にぶつけた時の反応だ。殺気、威圧感というのは相手との力量差で反応が違ってくる。これは私の経験談だが、殺気で怯えている奴は戦うに値しない。足がすくむ程度なら見込みあり。そして平然としている奴は非常に優秀だ」

「そうですか、ちなみに一番いい反応は何ですか?」

「ワクワクしている奴らだ」

 

そんな話をしていると、転移陣が現れた。

どうやら帰ってきたようだ。

リアス、朱乃、裕斗、一誠の四人が転移陣から現れた。

四人の内二人はボロボロだ。

 

「ゲーティア部長!お疲れ様です」

「ゲーティア風紀委員長!お疲れ様です」

「ああ、二人ともお疲れ。」

 

裕斗と一誠はとても元気だ。

昨日から休養していて気力、体力共に充実しているようだ。

それに対して、リアスと朱乃は傷だらけだ。

どうやら、先程塔城から聞いていたことを行ったようだ。

その上で完敗したようだ。

聞かずとも分かるほどだ。

しかし、リアスと朱乃を見て思ったことが一つ。

やっぱり合宿したと言うのは信じ難い。

合宿前と後で、差が分かりにくい。

合宿前が100だとすると、合宿後が105くらいだ。

合宿前の力が大きくて、成長したのが5でも劇的な差、というならともかく、合宿前でさえ裕斗には言うに及ばず、一誠にすら神器込みとは言え、負けていたんだ。

その程度の力の5の上昇など、運動部の部活に体験入部した方がまだましだったんではないだろうか?

対して、裕斗の特訓前を200だとすると、現在は350くらいに成長しているし、一誠は110くらいだったのが現在は300くらいにまで上昇している。

2人の力の伸びの差は二人の神器の性質と当人の性質による差だ。

裕斗は魔剣創造は魔剣を創ること、一誠はブーステッド・ギアは強化と譲渡を行う。

裕斗自身の強さに神器は影響がしにくい。

最強の魔剣でも用意すれば、無用の長物となりかねない。

そのため神器は裕斗の戦闘スタイルである、剣を用いて戦う場合、予備を用意する程度の価値しかない。

地面から剣を生やす、空中から剣を落として攻撃するなどは、もう少し威力がないと牽制程度しか使えない。

だから今回の成長は戦闘技術の向上がほとんどだ。

対して一誠の神器は強化と譲渡だ、そのため自身を強化することで強さに直結する神器だ。

それに強化した力を仲間に上乗せすることで、チーム戦での要にもなる。

特訓前は元々の魔力量が少なかったので、伸び悩むかと思っていたが、アーシアとの魔力操作と量の向上を行い、着実に成長していた。

一度、一誠の魔力量を向上させるために神器を使って、魔力の塊を強化して、それを取り込んだところ、体の魔力が流れる血管みたいなものが破裂して、死にかけた。

あの時はフェニックスの涙とアーシアの神器で何とか生き残った。

それ以来、急激な量の増加ではなく、確実に向上させる道を選んだ。

ただ怪我の功名なのか結果として魔力の通りが良くなったのか、平均的な魔力量とは言えないが、下の下の中くらいまでは魔力量が向上した。

それに強化の回数も着実に増えている。

特訓前には13回で潰れていたのに、遂に20回の大台に乗った。

私にも明確にダメージを与える程度の威力になった。

だからこそ一誠と裕斗の差が詰まったのは努力の差ではなく、当人の神器の質だった。

そんな二人の成長を何故感じ取れない?

これほどに分かりやすい程に強くなっているというのに‥‥‥

リアスと朱乃がどうして二人と戦ったのか理由は分からない。

だが、その程度で成長と呼ぶなど烏滸がましいにもほどがある、ただの誤差みたいなもんだ。

まあいい、さっさと要件を済ませよう。

明日が終わると一度領地に戻る必要があるし、面倒事は早く終わらせよう。

 

「疲れているところ悪いが、引継ぎの話だ」

「ハァハァハァハァ‥‥‥なによ。少しは待って頂戴」

「そうしたいのはやまやまだが、今色々と立て込んでいるんでな。それに思いの外、待たされたのでな。明後日には冥界に戻るのでその準備に追われている。そのため今を逃すと、来週まで報告と引継ぎが出来ない。決めてくれ、今すぐ報告と引継ぎを行うか、来週まで待つか、ソーナに代理をしてもらうのでもいい、どうする?」

「ハァハァハァハァ‥‥‥分かったわよ。報告して頂戴」

「そうか、ではこれがリアスがいない間の報告書だ。被害状況はこれで、討伐状況はこれだ。後、私は明日の義兄殿との戦いを見届けた後に冥界に戻る。その間はレイヴェルが私の代理を行う。実行部隊の指揮は織田信長が行う。詳細は一誠も知っている」

「そう、分かったわ。ご苦労様」

 

これで引継ぎの話は終わった。

さて次はギャスパーの件だな。

 

「ギャスパー・ヴラディがコンピュータ研究部に入部した。私が薦めた」

「ハア!ちょっと、どうして貴方がギャスパーの事を知っているのよ!」

「裕斗が夕飯を届けに行くときに同行したのでな。それに一誠とアーシアにも説明していなかったのだろう、自分の眷属同士、顔合わせくらいしておけ。あと最近は6人で食事を共にしていた」

「何ですって!それにそもそもなんであんたがギャスパーに私の断りなく、会っているのよ。それに部活の事も私に断りもなく、勝手にして。私の眷属よ、勝手に手を出さないで!そもそもギャスパーの神器は危険だから封印されていたのよ!」

 

そうだな、部活に入れた件は少し性急に進め過ぎた。

そのことは私が悪かった、反省すべき点だ。

 

「ギャスパーに勝手に会ったこと、部活の事に関しては謝ろう。すまなかった。だが、そもそも何故ギャスパーは封印されている。会ってみても彼は危険でもない。神器そのものは危険だとしても、使うのはギャスパーだ。神器は思いの力で変わるものだ。一誠もアーシアも裕斗も神器を持っていても制御している。だからギャスパーにも出来る。だから危険はない。」

「悪魔界の上層部が危険だと判断したのよ。私が封印したわけではないわ」

「そうか‥‥‥ギャスパーを封印して以降、主であるリアスは何をしていた?」

「な、なによ!封印されたんだから、制御出来るようになるまで外に出せないんだから、放っておくしかないでしょう」

「‥‥‥そうか。眷属が神器持ちで強力な力を持っているならば、放置しておくのか。私は違ったがな」

「何ですって!」

「私のクイーンの楓は私の眷属唯一の神器持ちだ。楓の神器の強力さはギャスパーや一誠の神滅具の比ではない。神を殺すなどではない、世界を変える、それほどの力だ。私が楓を眷属としたときの対価は力の使い方を教える事、だから私は楓に力の使い方を全て教えた。その結果、とんでもないものを呼び出したとしても、その使い方まで教え込んだ。その果てに自分自身がどうなろうと関係ない。リアス、私とお前は違う。だから敢えて聞きたい、リアスにとって眷属とはなんだ。飾っておきたいコレクションか、取られたくない人形か、只の戦力か」

「家族よ。私は眷属と家族になりたいのよ!」

「そうか、言ってることは私と同じなんだな。やっていることは違うが‥‥‥ここ最近、あるはぐれ悪魔に出会って、色々と思うところが出てきた。彼女は元は猫妖怪だった。彼女は主を裏切ったと言われて、殺される事になった。だが、調べてみて分かった。元々悪魔になったのは妹を守るためだったそうだ。彼女には特殊な力を持っていたそうだ。当然妹もその資質を持っていた、だから姉は妹を守るために、その力を使わせないことを条件に眷属になることを了承し、悪魔になった。しかし、主の悪魔は眷属悪魔との約束を破り、妹にも姉と同じ力を使わせようとした、その力を使えば妹の身に危険があるため、姉の眷属悪魔は止めたが、主は止めなかった。そのため姉の眷属悪魔は主を殺すことになり、はぐれ悪魔認定された。だから討伐することになった。事の発端は主が眷属を裏切ったと言うのに、罰を受けるのは眷属だけだ。主にはなんの罰もない。この件、リアスはどう思う?」

「‥‥‥何が言いたいのよ」

「私は意見を聞きたいだけだ。リアスはどう思う?」

「‥‥‥眷属に裏切られた主が悪いと思うわ」

「‥‥‥そうか、私も同じ意見だ。だが正解は違う」

「なによ、正解って」

「主に罰はない。悪いのは眷属、そしてはぐれ悪魔は始末する。例え無実だとしても、始末する。それが正解だ」

「‥‥‥何が言いたいのよ」

「強い眷属、上層部が封印しようとするほどの強い眷属、その眷属が反逆したとき、今のリアスに止めれるのか。止められなければ、ギャスパーははぐれ悪魔認定される。その時は多くの悪魔に狙われることになる。彼がもし今のまま、外に出れば最悪精神崩壊するかもしれない、暴走するだけかもしれない。もしそうなれば、はぐれ悪魔になるんであれば、その時は‥‥‥私が消そう」

「!!そんなことさせないわ!」

「なら、もう少しギャスパーと話すべきだ。彼は外に出たくないんだ。リアスが会いに行け。そうでなければ距離は縮まらない」

「ふん、言いたいことはそれだけ。だったら出て行って!」

「では失礼する。一誠、裕斗、アーシア、今日の夕飯は私とレイヴェルは行けない。ギャスパーに伝えておいてくれ」

「ゲーティア部長!」

「ゲーティア風紀委員長!」

「ゲーティア先輩!」

 

私がそう告げると、三人が驚きの声を上げた。

だが仕方がない。

リアスの許可なく、封印されているギャスパーに会う訳にはいかない。

昨日までとは状況が違うんだ。

 

「では、失礼する。ソーナはどうする?」

「私も戻ります」

 

私とソーナがオカルト研究部を出て、それぞれの居場所に帰ろうとしていると、後ろから声が掛かった。

 

「ま、待ってください!」

 

声を掛けてきたのは‥‥‥塔城だった。

一体どうした?

 


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