私とサイラオーグは移動しながら話をしている。
「サイラオーグは今日の戦いをどう見ている?」
「俺は‥‥‥やはりライザー殿が勝つと思っている。ここにいる貴族たちも同じことを思っているだろう」
やはり、リアス側不利という見方がされているようだ。まあ、私も同意見だ。勝率は0だと思っている。だが、それが0.1%でもあるとすれば裕斗と一誠の二人しかいないだろう。
「サイラオーグはリアスの眷属について、何処まで知っている?」
「リアスの眷属か‥‥‥知っているのは雷の巫女と呼ばれる、雷使いがいることだけだな」
「ほう、朱乃は有名なのか。それは知らなかったな」
「ゲーティアは何か知っているのか?」
「サイラオーグ、私はリアスと同じく人間界の学校に通っている。だからリアスの眷属は全員知っている。その中に二人、私が戦いの手ほどきをした者がいる。今回の戦いのカギを握るのはその二人だ」
「なに!そうなのか。一体誰なんだ!」
サイラオーグが興奮気味に聞いてくる。随分と気にかかるようだ。
「落ち着け、リアスのナイトの木場裕斗とポーンの兵藤一誠だ。その二人はこの10日前から先日まで指導をしていた。」
「なんと実にうらやましい。ゲーティア程の男から指導を受けられるとは。俺も一度指導を賜りたいものだ」
「ハハハ、冗談はよせ。サイラオーグ程の男にあれくらいの指導は必要ないさ。ただの打ち合いだ。それに最後は私が打倒して終わりの、な」
「だが、うらやましいぞ。うーむ俺も人間界の学校に通えばよかったな」
私とサイラオーグはそんな話をしながら通路を歩いて行く。その後ろを楓が付いてくる。すると通路の突きあたりに行きつき、私達は大きな扉の前に到着した。扉の前にはドアマンが立っており、私達の到着に合わせ、扉が開けられた。私達は中に入ることになった。
「これはゲーティア・バルバトス公爵様、サイラオーグ・バアル様。ようこそお越しくださいました」
中で出迎えてくれたのはグレイフィアさんだった。今日はグレモリー家の一員として歓待役を担っているようだ。
「グレイフィア殿、10日ぶりです」
「ええ、バルバトス公爵様、その節はお世話になりました。皆様方をお席までご案内いたします。どうぞこちらへ」
私達はグレイフィアさんにそれぞれ席まで案内された。
「ではゲーティア、試合の後にまた話がしたいものだ」
「そうだなサイラオーグ、では試合の後で」
どうやら各家の陣営で分かれているようだ。私と楓はフェニックス家側の席に案内され、サイラオーグはグレモリー家側の席に案内された。なので、試合の後に会う約束をして別れた。
「婿殿、よく来てくれた」
「義弟殿、お久しぶりです」
「義父上殿、義兄殿、本日はお招きいただきありがとうございます」
フェニックス家の当主である義父上殿と次期当主である長兄ルヴァル殿が私を出迎えてくれた。
「いやいや、それよりも会いたかったぞ。最近の活躍ぶりはレイヴェルからも聞いているよ。はぐれ悪魔の討伐や堕天使との交渉など幅広い活躍だとな。しかし、堕天使との交渉と聞いたときは肝を冷やしたぞ。魔王レヴィアタン様と共に、堕天使の本拠地に乗り込んでいくなど、愕然としたものだ」
「その節はご心配をおかけしました」
「ハハハハハ、だが流石は婿殿だ!見事交渉を纏め上げて、堕天使との戦争を回避させた。婿殿の行動が悪魔界の未来を救ったんだよ」
随分と上機嫌な義父上殿に抱き着かれるなどして、ひどく大喜びだ。いくら何でも、そんなに喜ばなくても、と思うがここまでお褒めいただくと悪い気はしないな。父上との記憶がないでもないが、懐かしい思いだ。もう少しこのままにしておくのものいいかな。
「お父様、そのくらいにしてください。ゲーティア様もお困りですわよ」
現れたのはレイヴェルだった。今日は一緒に会場には来なかった。新郎の妹としてめかし込むために先行して会場に向かっていた。
いつも一緒に居るというのに今日は一段と美しい。思わず見とれる程だ。だからこの気持ちを伝えることにした。
「レイヴェル、今日は一段と美しいな。また見惚れてしまったな」
「まあ、ゲーティア様にそのように言って頂けるなんて‥‥‥ですが
どうやら言葉を選び間違えたようだ。だが、今日も、と言ってしまうと、特別感がないと思って、この言葉を選んだと言うんだが‥‥‥そう思っていると、義父上殿に手招きされ、近寄ると耳打ちされた。
「婿殿、こういう時、どういう言葉を選んだとしても女性には怒られるものだ。私も経験がある。みんなこういう道を辿っていくんだ。諦めたまえ」
「まあ、義弟殿もこういうことは勉強だと思って、妹を宥めてくれ」
ありがたい言葉と共に肩をポンポン、と叩かれ、ルヴァル義兄殿からは指令を与えられた。
レイヴェルと合流出来たことだし、他の貴族にご挨拶をしなければな。こういう場合は一番最初に挨拶をすべきはグレモリー公爵だ。私は周囲を見渡すと、ある一か所に集団が出来ている。どうやらあそこにグレモリー公爵がいらっしゃるようだ。出来ればグレモリー公爵にご挨拶をしたいところだが、それは今は避けた方がいいか。しかし、グレモリー公爵を差し置いて他の貴族にご挨拶をするというのも、グレモリー公爵に失礼だ。さてどうするべきか、悩んでいると扉が開き、そこから歩かれてくる方に皆が跪き、出迎えた。
「魔王ルシファー様、レヴィアタン様、ベルゼブブ様、アスモデウス様、ご入来」
魔王様方がお見えになった。4人全員がお揃いだ。まさか、全員が来られるとは思っていなかった。サーゼクス様は確実だとしても、他はどなたかお一人くらいだと思っていた。まあ、全員が来られても当然と言えば当然か。義兄殿とリアスという、悪魔界でも数少ない72柱の家同士の婚姻だ。悪魔界全体で考えても非常に意義のある婚姻だ。それを悪魔界のTOPが婚姻の見届けとして来られてもおかしくはない。
ならばご挨拶に伺わねば、私は使命感に駆られ、魔王様方の下に向かった。
「魔王様方、ご機嫌麗しゅうございます。バルバトス公爵家当主、ゲーティアにございます」
私は魔王様方の前に跪き、ご挨拶申し上げた。
「ああ、ゲーティア君、久しぶりだ。最近の働き、実に素晴らしいものだ。‥‥‥本当に助かるよ」
何故かサーゼクス様は疲れた表情を見せている。やはり魔王様ともなると相当な激務何だろう。だが、魔王様の中でも元気な方が私に抱き着いてきた。
「ゲーティア君、ここのところの働き、お姉さんとっても嬉しいよ☆また何かご褒美用意するからね。また考えておいてね☆」
「はい。その折には宜しくお願い致します」
「うんうん、良い傾向だよ。頑張ったんだもの、ちゃんと受け取るんだよ☆」
「はい。ありがとうございます」
「あ、そうだ。明日は選んだ技術者達がゲーティア君の領地に行くから、よろしくね☆」
「はい、本当にありがとうございます。セラフォルー様」
「ううん、ゲーティア君が頑張ったんだから、当然のことだよ☆」
非常に上機嫌なセラフォルー様が私から離れると、今だ御顔を拝見していなかった、お二人の魔王様が私の前に立った。
「ほう、貴公が現バルバトス公爵、ゲーティアか。アジュカ・ベルゼブブ、初めましてだな。サーゼクスとセラフォルーが良く噂をしている。一度会って見たかったところだ。‥‥‥なるほどな。サーゼクスの言うことも分かる。どうやら私やサーゼクスと同じ側のようだ。実に喜ばしい。いずれはじっくりと話してみたいものだ。」
「はい、いずれが来ることを心待ちにしております」
「なに、意外と早いかも知れんよ」
そう言って、アジュカ・ベルゼブブ様は私の前から去っていった。
「ゲーティア・バルバトス公爵、初めまして。ファルビウム・アスモデウス。君にとっては嫌いな名前だと思うけど、よろしく」
「いえ、滅相もございません。私が魔王様の御名を嫌うなど‥‥‥」
「
「‥‥‥関係ありません。私が敵と見ているのはクルゼレイ・
「そう。まあ君がそういうならいいけど、あんまり溜め過ぎたらダメだよ。君見てると、周りも働かなきゃ、と思っちゃうから。もう少し怠けてよ。そうじゃないとサボれないよ。僕仕事したくないし」
「は、はあ~」
「そういうことだから、もう少し手を抜いてね。あ、あと魔王になりたくなったら言ってね。すぐ代わるから」
そう言って、ファルビウム・アスモデウス様は先に行かれた。何とも反応に困る方だ。
だが‥‥‥アスモデウス、か。父上と母上の事もあるが、特に気にしていたつもりはなかった。だが、どういう終わりを俺は望んでいるんだろう。‥‥‥父上と母上は私に何を望むのだろう。私には両親の望む答えは分からない。ならば私が望む答えを出そう。いつかクルゼレイを俺の手で殺そう。それで両親と私の因縁を終わらせよう。
魔王様にご挨拶を終え、次はグレモリー公爵にご挨拶に参ることにした。どうやらあちらも気づいたようで、こちらに歩み寄ってきてくれた。
「グレモリー公爵、お久しぶりです」
「バルバトス公爵、ご健勝で何よりだ。‥‥‥このような場で貴殿にこのようなことを言うのは申し訳ないとは思うが‥‥‥我が娘の不始末、並びに数々のご無礼、大変申し訳ない」
いきなり頭を下げられた。このような場で行うべきことではない。ましてや周りの眼もある。私は何とか、頭を上げていただくことをお願いした。
「!!こ、公爵!いきなりどうなさいました。頭をお上げください!」
「‥‥‥重ね重ねすまない。だが、我が娘の不始末、親として頭を下げることしかできない。なんとお詫びをしていいか‥‥‥」
「グレモリー公爵、今日はおめでたい日です。そのようなことは抜きにしましょう」
私が何とか、グレモリー公爵を宥めた。遠くからもう一人、歩み寄ってきた。歩み寄ってきたのはグレモリー公爵夫人だった。
「バルバトス公爵、この度はお越しくださり、ありがとうございます。そして、娘の不始末、大変申し訳ございませんでした」
どうやらこちらも同じようだ。新婦のご両親に頭を下げさせている私は周囲からはどう見られているんだろう。悪評が広まるんではないだろうか、不安になってきた。
「グレモリー公爵夫人もそのようなことは御止め頂きたい。お二人にそのようなことをされては、私の立つ瀬がございません。今日の良き日に免じて、これくらいでご容赦ください」
「いえ、主人共々お恥ずかしいところをお見せいたしました。‥‥‥娘の仕事ぶりはグレイフィアやサーゼクスから聞いておりました。親として何もしてこなかったのは何時か、成長してくれると信じておりました。‥‥‥ですが、自分の仕事も満足に出来ず、あまつさえご支援頂いた目上の方に大変失礼な事を申したとあっては‥‥‥最悪、廃嫡と言うことも考えました」
「‥‥‥リアスをあれほどワガママに育ててきたのは親である私達です。幼い頃から好きな物、欲しい物、何でも与えてきました。サーゼクスには‥‥‥何も出来なかったので、せめてリアスには、と甘やかしてきました。‥‥‥その結果が今に至ります。バルバトス公爵にはどれ程‥‥‥忍耐強く娘に向き合って頂き、親として感謝に堪えません。またこのような申し出を受けて頂いたライザー殿にも感謝に堪えません。‥‥‥私は今回、万が一にでもリアスが勝利した場合‥‥‥リアスを廃嫡致します」
「!!ですがそれでは」
「‥‥‥リアスが勝っても負けても、どちらにしろ、これ以上自由にはさせません。それに今回、このような場を与えられたこと自体が異例です。本来なら頭を下げてでも招き入れるべきライザー殿をこのような場に出すこと自体、礼を失していることです。私はグレイフィアからその知らせを聞いて、リアスを廃嫡しようと致しました。‥‥‥ですがそれを止めたのがライザー殿だ。ライザー殿は此度の一件は好きにさせてやってくれ、と言われた。一番迷惑をかけているライザー殿がそのように言うのであれば、もう私には何も言えない。‥‥‥娘のワガママに付き合って頂くゲーティア殿にもライザー殿にも大変申し訳ない。このお詫びは私、ジオティクスに出来る事なら何でもさせていただく」
「‥‥‥グレモリー公爵」
「‥‥‥子の責任は親が取らねばならない。それが親の責任です」
グレモリー公爵は私に再度頭を下げた。私はその姿をしっかりと心に刻んだ。
私はグレモリー公爵にご挨拶に伺った後に、用意された席に戻ってきた。考えるのは先程のグレモリー公爵の事だ。グレモリー公爵に非はない。だが、それでもグレモリー公爵は自分を責めるのだろう、容易に想像がついた。確かに子供の責任は親の責任、というのは分かる。私には前世でも今生でも子供はいない。だから分からない。何時まで、親は子供の責任を取り続けなければいけないのか、まるで分からない。
「‥‥‥婿殿、どうされた」
「義父上殿、先程グレモリー公爵に言われたことが分からないもので」
「ほう、一体何を言われたんだね?」
「『子の責任は親が取らねばならない。それが親の責任です』、何時まで親の責任を果たさなければいけないのか、それが分かりません」
「ハハハハハ、簡単な話ですぞ、婿殿。答えは『死ぬまで』ですぞ、婿殿」
「『死ぬまで』ですか‥‥‥」
「ええ、親になる以上、子供の人生には責任が伴います。ましてや未成年者であれば尚更だ。だから、今回の一件はリアス殿の責任であり、グレモリー公爵の責任でもあるのだ。それが親、と言う者ですぞ、婿殿」
「つらくはありませんか?」
「ハハハハ、子を愛しているから、つらくはありませんぞ。それに一番かわいい娘が立派な婿を捕まえてきましたので、これから先も楽しみですぞ」
なるほど、私に分かるはずもないな。義父上殿の笑う横顔を見て、親にしか分からないことだな、と納得した。
さて、そろそろ始まるかな。私とレイヴェルは隣に座り、私の隣に義父上殿が座られた。
私は公爵で父上は侯爵だ。位では私が上になる。
だが今日は新郎の父である父上が最も最上位にくる。私は新郎の妹の婚約者だ。本来ならもう少し中央から離れた席になるが、公爵を端に置くわけにもいかず、義父上殿の隣という席になった。
アナウンスが流れだした。どうやら始まるようだ。
『皆様、このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役を担う、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます。我が主、サーゼクス・ルシファーの名の下にご両家の戦いを見守らせていただきます。よろしくお願いいたします。早速ですが今回のバトルフィールドは異空間に作ったリングの上で行います。勝敗はどちらかの陣営が全員戦闘不能になるか、王が投了するか、どちらかです。制限時間はございませんので、引き分けはございません。また、ポーンはプロモーションは戦闘開始後すぐに可能です。以上で説明を終わります』
義兄殿一人とリアスと眷属五人の計六人で戦う、それに一誠は即プロモーションが可能か。だがそれでも、義兄殿の優位に変わりはない。義兄殿は手を抜く気もないようだし、一誠と裕斗も気合が入っている。どうなるだろう、楽しみだ。
『開始の時間になりました。それでは‥‥‥ゲーム開始!』