政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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前回の続きです。
よろしくお願いします。

いつも多くの感想ありがとうございます。



第36話 グレモリー眷属VSライザー・フェニックス(下)

 ドゴオオオオオン!!!

 二人の拳が生み出した衝撃は見ているこっちが驚くほどの大音量になった。

 まさか、一誠がこの場で禁手に至るとは‥‥‥いや、それ以上に驚きなのが、アーシアがあんなことを言うとは‥‥‥彼女に強い芯があるのは分かっていた。だが、それが一誠を立ち直らせる程とは思っていなかった。それに彼女は義兄殿の力に動じなかった。もう、一誠に守られるだけの存在ではないと言うことか‥‥‥見誤っていたな。私は彼女を戦う者ではないと、決めつけていた。認識を改めよう、彼女も立派な戦士だと認めよう。

 それに裕斗も一誠と協力して義兄殿を奇襲で倒して見せた。

 二人は正攻法では義兄殿に勝てないと踏んで、その策を取った。それ自体は見事だ。

 ‥‥‥だがそれ自体が義兄殿の策だった。倒したのは偵察用の分離体で情報を入手することを目的にしていた。だから裕斗と一誠の手札は尽きていた。

 力の差は如何ともしがたい。弱者が勝つには、勝てる状況を作る必要がある。そのためには手札を効果的に切る必要がある。二人が使った手は十分に効果的だった。‥‥‥だが、義兄殿はその上を行った。

 二人が間違えたとは思っていない。あの場面で使わなければ、結局は分離体に負けていたし、仮に倒せていても余計な消耗を強いていただろう。‥‥‥意外と義兄殿も驚いたのかも知れないし。

 だが、その後が良くない。気を抜いてしまった。だからあっさりと背後を取られた。実際の戦闘ならあの時で終わりになっている。‥‥‥今残っているのは義兄殿の恩情だな。その上、種明かしまでされた。あれは義兄殿なりの敬意の表れだろうな。分離体を倒した者に対する敬意、というものだろうな。

 だが二人は、義兄殿の力に恐れをなしてしまった。分離体を統合したことで分けていた力が元に戻った、その力が当初に感じていた力のおよそ四倍~五倍程だろう。どうやら、やられた分離体にはそれほど力を使っていなかったようだ。だから一つに戻ったときに圧倒的な力に思えたんだろう。

 だが、そんな心が折れた一誠を立ち直らせたアーシア、同じく心が折れた裕斗を立ち直らせた一誠、一人では折れてしまう状況を仲間だから踏み越えた。

 お前達は私が考えていた以上に強くなった。彼らの成長に関わった者として、思わず嬉しく感じてしまうな。

 

「まさか、神滅具の禁手とは‥‥‥婿殿は知っていたのか?」

「いいえ、彼は私との鍛錬では発動したことはありませんでした。なので、これは彼が戦いの中で成長したんです。この戦いの中で常に成長を続けている証です」

「なるほど、婿殿が目を掛けているだけの事はありますな。‥‥‥ですが、それでもまだライザーの方が上の様ですな」

「そうでしょうね。いくら神滅具とはいえ、まだ力が目覚めて一月程の若輩者です。それに悪魔となってもまた一月、それまでは戦いとは無縁の生活を行っていた者です。いくら才が、いえ潜在能力があったとしても、今はまだ、咲く前の花と同じです。実力というのは、才能と努力とやる気と根性と時間で出来上がるものだと私は思っています。今の一誠には努力とやる気と根性はあります。ですがそれだけです。彼には武術の才能も魔術の才能もありません。彼はこの一か月、いやそれ以下の時間しか掛けていません。だから今の一誠の実力はそれまでです。‥‥‥反対に義兄殿は才能と時間がありました。そして今はそこに努力とやる気と根性が上乗せされているようですね」

「‥‥‥婿殿のおかげです。ライザーの才は私から見ても長男のルヴァルに劣るものではありません。ですが‥‥‥才があったが故に驕り、慢心により努力と言うものをしてきませんでした。親としてはその有り様が歯痒かった。先程の婿殿のいうように才能と時間はありました。ですが、ただ有っただけです。努力とやる気と‥‥‥根性でしたか、それがない時間などただの浪費です。ライザーはただ無為に時を過ごしてきただけです。それがこの一年で変わった。変わってくれた。婿殿、貴方のおかげだ。ライザーが必死で努力しなければならない程の高みにいて、最愛の妹の婚約者である、年下の者。それはライザーが決して膝を屈したくない者でした。婿殿が初めて我が家に来てくれた時、ライザーは婿殿に言ったな。『妹を泣かしたら承知しないぞ!その時は俺の炎でお前を焼いてやる!』あの時は失礼ながら、親としては嬉しかった。今まで、やる気も根性も見せなかったライザーがこの一年、龍王タンニーン殿の下に修行に赴いた。そして長男であるルヴァルに負けぬ程の力を得た。いや勝ち取ったのです。だから、我が息子ライザーは決して負けませんぞ!」

 

 義父上殿は誇らしそうに義兄殿を見ている。実に嬉しそうだ。なるほど、親としての喜びか。私には分からないものだな。

 

 

 

side 兵藤一誠

「ブルアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 俺の最大強化の一撃が相殺された。これであと一発、無駄撃ちは出来ない。

 

「いいぞ!今の一撃はまさにドラゴンの一撃だ!」

「クッ!ありがとうございます」

「だが!ハァッ!」

「ヤバッ!」

 

ライザー様が左手に発生させた炎を投げつけてきた。とんでもない威力だ。俺は全力で回避した。だけど、

 

「甘い!」

「グハァ!」

 

 俺が避けた方向に先回りされて、待ち構えていたライザー様に俺は蹴り飛ばされた。

 くそ、いくら力が上がっても戦闘技術まで向上したわけじゃない。俺よりもライザー様の方が戦い慣れている。だから俺の動きを先読みして対処してきている。それに今だ余裕があるようだ。

 俺は無い知恵を絞り、考えようとしている。だけど、相手は待ってはくれない。

 

「戦闘中に考え事か?」

「!!!」

 

 一瞬で距離を詰められ、目の前にライザー様が現れて咄嗟に顔への攻撃を防御しようとした。

 

「ボディがお留守だぜ!」

「グ!」

 

 だけど、防御するのが早すぎて、がら空きのボディに強烈にボディブローが叩き込まれた。

 鎧のおかげで、直接は受けてはいない。だけど、ものすごく響いたし、すげえ熱い。炎を纏った一撃のせいで、鎧を通して熱が俺の腹を焼いている。

 まずい、このままだと一撃を放つ前に体がもたない。なんとかしないと‥‥‥

 

「どうした、さっきまでの威勢はどこにいった?まさかそれくらいで終わりではないだろう」

「く!」

「期待外れだったな。義弟殿が鍛えたわりに、存外だらしない」

「なに!」

「そうですか、なら期待外れの一撃でも食らってもらえますか」

「ハッ!?」

 

 ライザー様の背後に木場がいた。そして、木場の一振りはライザー様を捉えた。

 だが、ライザー様は背後からの攻撃に掠りはしていたが、有効打とは言えなかった。

 

「今のはヒヤッと、いや、ゾクッとしたぞ」

「そうですか‥‥‥残念です」

「その剣、またさっきと同じ様に聖水をコーティングしてあるな」

「ええ、僕がダメージを与えられるとすると、これしかありませんから」

「だが、それでも俺には効かんぞ」

「それでも構いません。僕ではあなたに勝てません。‥‥‥だけど、仲間が、貴方を倒します。僕は捨て駒で結構です」

 

 木場が一瞬でライザー様に接近して、斬りかかった。

 くそ、あそこまで言われて、ここでやらなきゃ男が廃るぜ!

 

「イッセーさん!」

「アーシア!」

「今直します!」

「ああ、頼む」

 

 アーシアの神器で俺の怪我を直していく。腹の熱が収まっていく。よし、これならいける。

 

「助かった、アーシア」

「はい、ゲーティア先輩にお世話になったんです。私の分も恩返し、して来てください」

 

 アーシアはそう言って、俺の背中を叩いた。

 ああ、任せとけ!アーシアの分も俺が返してくるさ。

 

side out

 

 義兄殿と一誠の戦いはやはり、義兄殿に軍配が上がるか。やはり一年と一か月の差は大きいな。一誠は戦いの才能はない。この一か月は悪魔としての基礎能力の向上と神器についてしか教えていない。だから戦闘で役に立つのがスペック頼りのゴリ押しだけだ。格下ならともかく、格上いや同格にすら勝てないだろう。‥‥‥だけど義兄殿、裕斗は強いですよ。

 

「クッ!ちょこまかと」

「ハッ!セイ!ヤァッ!」

 

 裕斗は小刻みにリズムを取りながら、回避しながら攻撃、攻撃しながら回避をしている。

 義兄殿が一年の努力というなら裕斗も一年の努力だ。私が戦い方を教えて一年、剣道部で格上と戦い続けて一年だ。その一年は決して義兄殿に劣る一年ではないと私が保証する。

 それに、ここで義兄殿と裕斗の戦い方に差が出てきている。

 

「ク!なぜだ!なぜ当たらん!」

「ハアッ!」

 

 裕斗は的確に攻撃を与え、義兄殿の攻撃を躱し、また攻撃を与え続けた。

 裕斗の戦い方と義兄殿の戦い方の違い、それは規模感の違いだ。裕斗は対人型に特化していて、義兄殿は対大型、おそらくはドラゴンに特化した戦い方なんだろう。だから、義兄殿の攻撃は大振りが目立つんだ。一撃一撃の威力は確かにすごい。ドラゴンを倒せる程の威力を持っている。ドラゴンも回避はするだろうが、どちらかと言えば防御に比重を置いた戦い方なんだろう。だから、攻撃は相手の防御を貫くような威力を持たせる必要がある。だから自然と大振りになっているんだろう。だが、裕斗は相手の初動に合わせる戦い方、カウンター主体の戦い方をしている。大振りに攻撃のスキを突き、的確に攻撃を仕掛けていく。本来なら、相手が剣で戦う、いや攻撃に意味がある相手ならが倒せている。だが、相手は義兄殿、フェニックスだ。故に、どれだけ的確に攻撃してもダメージはない。だが‥‥‥イライラはしているようだ。

 

「クッ!何故だ!」

「先程のお礼にお教えします。ライザー様はドラゴン、龍王タンニーン殿と戦ってきたのでしたね。僕は剣道部の先輩、そしてゲーティア部長と戦ってきました。大きさに差があるんですよ。ライザー様は目をつぶっても当たる程の大きな相手とばかり戦ってきた。確かにそれは力は付きそうですか、その反面、正確性が雑になるんじゃないですか」

「‥‥‥チッ」

「僕が相手にしてきたのは、動きも素早く、簡単には触れる事すらできない相手。‥‥‥だから、僕は貴方に攻撃を当てられ、貴方は僕に攻撃が当てられない。それが理由です」

「‥‥‥なるほど。確かにそうだな。俺自身、強くなることは強い相手を倒すことだと思っていた。強い相手、すなわちドラゴンを倒せるようになれば強くなれると思っていた。だが、確かにお前が言う通りだ。俺はデカイ相手と戦ってきた。だから、お前のように動きの素早い相手とは戦ってこなかった。‥‥‥だが、それがどうした。お前攻撃は俺には効かず、俺の攻撃が当たればお前は一撃だ。どちらが先に限界が来るか、根競べだ。行くぞ!」

「お受けします。ハアッ!」

 

義兄殿は開き直ったようだ。一撃に賭けるようだな。まあ、この場合は正解だろうな。今更、戦い方を急に変えなければならない程、義兄殿が追い込まれているわけではない。フェニックスの再生能力は魔力量に比例するそうだ。だから、その再生能力を上回る攻撃をするか、精神を破壊するかのどちらかしかない。そして義兄殿は精神は折れない。裕斗に再生能力を上回る攻撃は‥‥‥おそらく無理だ。裕斗は何処まで食い下がれるだろうか。

その後、約3分の間、裕斗は一方的に攻撃を当て続け、反対に義兄殿の攻撃は掠りもしなかった。だが、追い込まれているのは裕斗の方だ。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、‥‥‥」

「どうした、息が上がっているぞ」

 

 裕斗の体力が一方的に削られていく。義兄殿の熱は体力を奪い、強烈な一撃は気力を奪っていく。当たること、いや掠ることすら許されない極限状態はあっという間に裕斗を疲弊させていった。

 

「大したものだ。俺が技量で完全に負けている。認めよう、木場裕斗。お前は紛れもなく強者だ。‥‥‥だが、相手が悪かったな。聖水が効きにくい俺でなければ、いや剣が通用する相手であれば確実に勝っていた。俺がお前に勝ったのはただ俺がフェニックスだからだ。生まれによるものだ。故に俺自身がお前に勝ったとは思わない。‥‥‥悔しいが認めざるを得ない」

「ハァ、ハァ、ハァ、‥‥‥そうですか。僕程度でそう言われるとは、存外大したことありませんね」

「ほう、随分と自分を過小評価しているな。俺が認めたんだ。少しは喜べ」

「僕は剣道部序列()()、僕より強い相手なんて、駒王学園には腐るほどいますよ」

「‥‥‥ハハハハハ、そうか、それほどいるか。‥‥‥ならば、俺も全力でその技量に応えよう。俺に出来るのは技量など関係がない一撃、決して避けれない一撃だ。その一撃を持って、お前を倒そう!ハアアアアアアアアッ!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥

 

 リングが揺れている。義兄殿の魔力が高まり、その衝撃は大地を揺らしている。その魔力は力の高まりと共に、漏れ出した魔力は炎となり、大地を焼いている。

 

「クッ!」

 

 裕斗は魔力を高める義兄殿に近づけない。高めた魔力の圧力、漏れ出す炎の熱は誰一人近寄せない。

 裕斗は義兄殿にデカイ相手としか戦ってこなかったから戦い方が雑だと指摘した。確かにそうなのだろう。その戦い方は雑だと言えるだろう。‥‥‥だがな裕斗、それは違うぞ。

 相手の攻撃を躱して攻撃を当てることが丁寧、だから勝てると言うわけではない。雑が悪く、丁寧が良い訳ではない。義兄殿の雑な戦い方も悪くはない。結局のところ、戦いとは強い者が勝つんだ。

 この場合の強い、とは何を持って決めるか、それは時と場合による。

 ただ、今の戦いにおいて決め手になるのは、絶対的な魔力量だ。

 

「ハァァァァァァァァァァァ!!!!」

「ハァハァハァ‥‥‥クッ!」

「木場さん!こっちへ!!」

「アーシアさん!!うん!!」

 

 裕斗がアーシアの方に駆けていき、

 

「魔剣創造!!」

 

 氷の剣を作りバリケードを作り出した。どうやら、一時的に炎を凌ぐことを選んだようだ。いくら氷の魔剣でも今の義兄殿の炎の前では大して役に立たないだろう。

 

「スキだらけよ。喰らいなさい、ライザー!!」

「雷よ!!」

 

 リアスと朱乃が遠距離から義兄殿に攻撃を仕掛けた。

 すっかり忘れてた。リアスが開始頃から魔力を集中していたな。

 確かにリアスの滅びの魔力は破壊力が高い。その力であれば義兄殿、いやフェニックスに対してダメージを与えることが出来る。‥‥‥力が近ければ、な。

 

「どうして!!」

 

 リアスの魔力弾も朱乃の雷も義兄殿は気にもしていない。ひたすらに魔力を高めていく。

 だろうな、力の差は元から圧倒的だったし、今は魔力を高めている最中だ。

 魔力を集中させることに意識が集中していから、周囲に意識が向けれていない。スキだらけ、確かにそうだ。だが、まともにダメージも与えられない攻撃ではスキを突いたとは言えないな。

 折角の才能が有っても、努力もやる気も根性も時間も掛けなければ、実力は付かない。一か月の一誠にも、一年の裕斗にも、ましてや義兄殿にも届かない。

 だからリアスの攻撃が届かないのも無理ないな。

 

「ハァッ!!」

 

 義兄殿は己が持つ全力の魔力を炎に変換して、一気に放出した。

 その魔力は、炎は、大きな津波となり、リングを飲み込んだ。

 

side 兵藤一誠

 

 ドーーーーーーーン!!!

 ライザー様を中心に魔力を含んだ強烈な炎が、津波のように周囲を襲った。

 なんて力だ!木場が作った氷の魔剣が次々と溶けて、消滅していく。俺一人だったら確実にやられていた。今は木場が耐えてくれているけど‥‥‥持たない。

 そうだ、俺の譲渡なら‥‥‥

 

「ダメだよ。一誠君‥‥‥ここは僕が防ぐから、君は、力を残して」

「だけど!!」

「今の、僕では、もう戦う力が残っていない。いくらアーシアさんの力でも、失った体力までは回復できないからね。今、最後の希望があるとすれば一誠君だけだ。だから、頼んだよ」

「木場!!」

 

 俺は木場の意志も無視して、自分の意志で譲渡しようと駆け寄ろうとすると、アーシアに止められた。

 

「アーシア、なんで!」

「木場さんも覚悟を決めました。折角木場さんが作ってくれたチャンスをフイにするつもりですか!」

「!!!」

 

 木場が必死で魔剣を作り、炎を止めようとしている。だけど、もう無理だ。

 

「大丈夫です!」

 

 だけど、それを止めたのは‥‥‥アーシアだ。

 アーシアは魔力操作で、壁を作り、木場の氷の魔剣と共に並び立った。

 

「私でも、簡単な壁くらいなら作れます」

「アーシアさん‥‥‥君も頑固だね」

「フフフ、そうですね。でも周りのみんなも頑固ですから、自然とこうなってました」

 

 そう言ってアーシアも俺のために壁を作ってくれた。

 皆、俺に期待してくれてるんだな。木場もアーシアも、こんな俺に‥‥‥

 

「なあ、ドライグ」

『なんだ、相棒』

「力の延長は出来ないんだな」

『‥‥‥ああ、残念ながら、な』

「そうか、わかった。なら、力の3つに、20%、30%、50%に分けることは出来るか」

 

 俺はドライグに力の使い方について相談した。

 

『‥‥‥相棒、禁手状態なら、それくらいはできる。だが‥‥‥何をする気だ?』

「最後まで足掻くため、さ。どっちみちこのままだと勝てない。なら少しでも可能性がある方法を取る。いや、俺に出来る全てを賭けるだけだ」

『いいだろう。力のコントロールは俺に任せろ』

 

ドライグの協力は取り付けた。なら、もう一人、大変だろうけど、最後に一つ頼むことにする。

 

「木場!最後に一つ頼みがある」

 

今一番しんどいのは分かっている。だが俺一人だと勝てない。だから最後にもう一押し頼むぞ。木場。

俺は最後の頼みを告げると、木場を笑って答えた。

 

「ああ、任せてくれ」

「木場さん、少しなら私が持たせます。だから準備を」

 

 アーシアも最後まで協力してくれるようみたいだ。一番しんどい、木場をサポートしてくれるようだ。ありがとう、アーシア。最後に一撃決めてやるぜ。

 もうこれで今、俺に出来ることは何もない。ただ目の前の炎が収まるのを待つしか出来ない。

 木場とアーシアが俺のために道を残してくれる。なら俺がするのはただ一つ、二人が作った道を真っ直ぐに進むのみだ。この炎が収まったときこそ、俺の出番だ。

 

side out

 

side ライザー・フェニックス

 

 俺が魔力を一気に解放し、魔力は炎となり、一気に燃え広がり、リング上を焼き尽くした。

 リング上には煙が上がっている。木場裕斗の魔剣が蒸発したときに発生した水蒸気か、氷の魔剣が溶けて水に変化して、水蒸気になったんだろう。

 視界が悪いな、まあいい。これで終わったんだ。

 

「リアス・グレモリー様、及び『クイーン』一名、『ルーク』一名、‥‥‥」

 

 アナウンスが聞こえてくる、リアスはリタイヤか。先程攻撃してきたが、まるで力がなかった。一年前の俺でも大して効かなかっただろう。十日前に会ったときからまるで成長していなかった。俺もおそらく義弟殿に出会わなかったら、ここまで強くなろうとはしなかっただろう。もし今日ここにいるのが一年前の俺だったら、木場にも、兵藤にも‥‥‥決して勝てなかっただろう。それ程に二人は強かった。俺は大きく息を吐いた。だいぶ魔力を消耗したな。まあ、広範囲に広げたことで、余計に魔力を使ってしまった。まあいい。終わりよければなんとやらだ。

 だがこれで俺も次期公爵か、義弟殿に追いつくにはもう少し時間が掛かる。だが、必ずや追いついて見せる。

 

「ハッ!?」

 

グサッ!!

俺は気付いたときには背後から右肩を突き刺されていた。

この剣は木場の剣。何故今ここに‥‥‥

 

「ブーステッド・ギア・ギフト!!」

「何故、まだお前がいる。兵藤一誠!!」

 

 俺の意識は困惑していた。

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、兵藤がまだいる?先程の俺の攻撃で倒したのではないのか?俺の頭の中にはそれしか意識が行かなかった。

 

「『ナイト』一名、『ビショップ』一名、リタイヤ」

「!!」

 

 油断した。まさかまだ残っていたとは‥‥‥それに木場の剣が右肩に刺さったままだ。

 俺はその剣を焼き尽くすべく熱を上げようとして‥‥‥出来なかった。

 先程、魔力を使い過ぎて、この程度の剣すら焼けないようだ。

 引き抜こうとしたが、俺の腕が届くのは刃側だ。このまま押せば抜け落ちるだろうが、もう一方の腕も使い物にならなくなるだろう。いまは魔力も少ない、回復するまで消費は避けたい。

 まあいい、この程度の障害、左腕一本で乗り越えるまでだ!

 

「ブルアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 兵藤が突っ込んでくる、俺はそれを躱そうとしたが、右肩の剣のせいで動きが鈍い。いや、()()()。まさか‥‥‥

 

「さっきの譲渡は、この剣の聖水の効力を高めたのか!!」

「ええ、木場の魔剣に残った聖水に力に俺が譲渡したんです。今までとは違って良く効きますか?決め技の直後、油断したところを狙われる。俺達にやったのと同じですね。そしてここからが俺の全力だ!!俺の師の技、受けてください!!」

「ーー!」

 

『Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!‥‥‥』

「行くぜ!!ドライグ!!」

『おう!相棒!!』

 

 兵藤が俺の方に迫ってきた。今更回避は出来ない。ならば受けるしかない。

 俺が両足を踏みしめ、防御の構えを取ると、兵藤は魔力を左腕に集中させている。俺に残りの力、全てを賭けた一撃だろう。ならば受けて立つまでだ!

 

「今死ね!」

「すぐ死ね!!」

「骨まで砕けろ!!!」

「ジェノサイドブレイバーァァァァァァァァ!!!!!」

 

 兵藤の左腕が俺の方に突き出され、魔力が打ち出された。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 兵藤の魔力砲は凄まじい威力だ。奴自身の魔力はさして多くない。いや少ないほどだ。だが、それを奴の神器が増幅している。流石は神滅具、赤龍帝の籠手といったところか。

 そして、師の技、といったか。これは義弟殿の技か。‥‥‥ならば耐えねばならないな。この技で倒れる訳にはいかないな。俺はライザー・フェニックスだ。レイヴェルの兄だ。ゲーティア・バルバトスの義兄だ。義弟と妹の前で膝を屈する訳にはいかんのだ!

 

side out

 

「ジェノサイドブレイバーァァァァァァァァ!!!!!」

 

 一誠が私の技を使っている。まさか、あの技を使うとは‥‥‥まあいい。

 私としては技を使われたことよりも、最後に至るまでの試合運びが実に見事だったと思う。

 

「どうして兵藤さんがまだ残っていますの?!」

 

 レイヴェルは困惑している。見れば義父上殿も困惑している。説明しておくか。

 

「一誠が残ったのは木場とアーシアの二人のおかげだ。こちらからの映像では、義兄殿の攻撃で見えなかったが、おそらく裕斗の氷の魔剣で壁を作り、その中でアーシアが魔力操作で壁を更に作った、というところだろう。それで義兄殿の攻撃を二人が凌ぎ、一誠を残したんだろう」

「だ、だが、いくら残ったとしても、ライザーが何故あれほどの状況に追い込まれているんだ?!」

「アレは義兄殿のミスです。それにつけこまれたんです」

「ミス?」

「ああ、レイヴェル。このゲームの一番最初に朱乃が同じことをした。何だったか覚えているか?」

「一番最初?‥‥‥雷の攻撃で視界が悪くなったことでしょうか?」

「その通りだ。義兄殿の広範囲攻撃はミスだった。裕斗に指摘され、裕斗を倒すことに意識が向きすぎて、裕斗に攻撃を当てるために、リング全体に影響を及ぼす炎を捻出した。もし残っていたのが裕斗だけであれば良かった。だが、全員残っていた。裕斗はアーシアと一誠の3人で固まり、防御に務めた。その結果、裕斗とアーシアが命がけで一誠を守った。このゲーム唯一、義兄殿に通用する攻撃が使える者を残す結果になった。そして義兄殿は広範囲に魔力を全力で放出したために、魔力切れに陥った。だから今、追い詰められている」

「そうですか。‥‥‥ゲーティア様、兵藤さんは一体何をしたんですか?」

「まず、あの水蒸気だ。あれは裕斗が最後に氷の魔剣、いやおそらく水の魔剣だ。その水の魔剣と氷の魔剣で水を蒸発させて水蒸気を作り、一誠を隠したんだ。一誠は水蒸気で身を隠し、義兄殿がスキを作るのを待った。そして、気を抜いた瞬間に自身を強化し、裕斗の剣を投げたんだ。そしてその後すぐに再度、強化を開始し、裕斗の剣を譲渡で聖水の効力を強化した。ここまでが一誠が行ったことだ。そして、義兄殿のミスは今も尾を引いている。先程の一撃は魔力を使い過ぎた。おそらく、そのせいで自身の回復力が落ちているんだろう。だから、腕を切り落としてでも、あの剣を抜くべきだがそれが出来ていない。現に今も聖水の効力を強化された剣が刺さったままだから継続的にダメージを受けているし、動きも制限されている。我々悪魔にとって聖水と十字架は種族としての弱点を思っている。義兄殿も聖水が弱点だが、それを炎と再生力でカバーしてきた。だが今、魔力が足りないから、それが出来ない」

「そ、そんな‥‥‥このままではお兄様が‥‥‥」

 

 レイヴェルは不安げにリングに目を向けている。

 私もリングに目を向ける。一誠のジェノサイドブレイバーが義兄殿の防御を打ち破れるだけの力がまだ残っているか、それとも義兄殿の意地が勝利するのか、勝負は最後まで分からなくなった。

 一誠の禁手の鎧が維持できていない。そして、一誠の魔力放出が終わり、その場に膝をついた。

 義兄殿はリタイヤはしていない。どうやら防ぎ切ったようだ。だが、まだ戦う力が残っているのか‥‥‥

 

「‥‥‥凄まじい一撃だったぞ。‥‥‥兵藤一誠」

「‥‥‥これでも、ダメ、ですか‥‥‥」

 

 どちらも限界のようだ。一誠はブーステッド・ギアで強化が出来ない程、弱っている。

 義兄殿は左腕がボロボロだ。ただ、右腕に刺さっていた剣が一誠の攻撃で砕けてしまったようだ。これで義兄殿は継続的なダメージを受けることはない。だが、それが必要ない程、ダメージを受けている。

 どちらも、ボロボロだ。体力的にも、魔力的にも、もう残っていないな。

 だが、最後に力を残していたのは‥‥‥義兄殿の方だ。

 

「‥‥‥兵藤一誠、最後に使った技、アレは‥‥‥義弟殿の技、だな」

「‥‥‥ええ、そうです」

「そうか、最後に選択を間違えたな」

「え!?」

 

 義兄殿は左手に炎を集めている。まだ力が残っているのか。

 

「俺が、義弟殿の技で負ける訳にはいかんのだ。俺はライザー・フェニックス。レイヴェル・フェニックスの兄、いずれはゲーティア・バルバトスの義理の兄になる男だ。俺は兄だ。だからこそ妹や義弟の前で膝を屈する訳にはいかんのだ。兄より優れた弟はいない。これは兄としての俺の意地だ」

「クッ!‥‥‥まだ、それだけの力が残ってましたか」

「ああ、だが、これが本当に最後だ。‥‥‥ライザー・フェニックスの正真正銘、最後の炎だ。行くぞ!!」

 

 義兄殿が放ったの最後の炎は一誠を飲み込んだ。もはや声を上げる事すら出来なかった。

 

『リアス・グレモリー様の「ポーン」一名リタイヤ。以上を持ちまして、ライザー・フェニックス様の勝利といたします』

 

 義兄殿は勝利を勝ち取った。

 




あと、一、二話でフェニックス編を終了します。
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