上手くまとまらなかったので、何度か書き直しました。
よろしくお願いします。
義兄殿とリアス達の戦いは義兄殿の勝利で幕を閉じた。私は大きく息を吐き、天を仰いだ。
パァン、パァン、パァン、パァン、パァン、‥‥‥
突如大きな、銃声のような響く音が聞こえた。その音の方を見てみると‥‥‥
「ウオオオォォォォォォッ!!凄かったぞーーーーっっ!!」
サイラオーグだった。物凄いテンションだ。
見れば周りの貴族たちもサイラオーグ程ではないが、戦いに熱狂し、拍手を送っている。どうやら今回の戦いはこの場の貴族たちに受け入れられたようだ。
そうだな、私もまずは彼らの健闘を讃えよう。私も立ち上がり拍手を送った。
パチパチパチパチ‥‥‥
だが、両隣からは拍手の音がしなかった。おかしいな、隣の義父上殿とレイヴェルなら拍手を送るはずなのに、ましてや義兄殿が勝利したというのに、拍手の音がない。私は訝しんで、両隣を見てみると‥‥‥泣いていた。
「お兄様、うっ、うっ、うっ、うっ」
「ライザー~~~~~~~~~~~」
どうやら義兄殿の戦いに感じ入ってしまったようだ。確かに、義兄殿の最後の戦いは胸に来るものがあった。私ですらそうなのだ。家族である、二人にとってはなお一層の感動だったんだろう。このままにしておこう。代わりに私がその分の健闘を讃えよう。
side サイラオーグ・バアル
俺は戦いの終了の合図と共に思わず立ち上がっていた。そして、力一杯自分の手を叩いていた。貴族として、次期大王家当主として、落ち着いた振る舞いをするべきだとわかっている、だというのに‥‥‥そんなことは出来ない。我ながら、実に汚い拍手だ。とても拍手などと呼べるシロモノではない。だが、止まらなかった。俺の魂が熱く燃えていた。滾っていた。この衝動をぶつけたかった。
「ウオオオォォォォォォッ!!凄かったぞーーーーっっ!!」
思わず声を上げていた。俺もあんな戦いがしたい。そんな思いが俺の胸を駆け巡った。こんな戦いを目の前で魅せられて、俺には抑える術がなかった。だから只管に叩き続けた。彼らの健闘を讃えると共に俺のこの衝動が少しでも収まるように叩き続けた。
周囲の貴族たちもどうやら同じ様だった。熱狂、その一言に尽きた。強大な相手に挑むリアスの眷属のその姿に、倒れても倒れても仲間と共に立ち上がり戦う姿に、皆が手に汗握った。そして、遂に逆転か、と思った。だが、ライザー殿も意地を見せ、最後はライザー殿の勝利となった。勝ったライザー殿も、負けたリアス眷属も、どちらも素晴らしかった。
当初、俺はどちらも応援する気はなかった。従兄妹とは言え、これだけの騒動を起こしたリアスを身内びいきで応援するほど、俺は貴族の世界を軽んじるつもりはなかった。
貴族の世界はただ一度の過ちすら、許されない魔窟だ。俺自身も何か失態を演じれば、この地位を追われることは確実だ。だから言動には細心の注意を計るべきだし、そう心掛けてきた。
だが、俺は気づけばリアス眷属を応援していた。
下馬評では圧倒的にライザー殿の優位だった。だが、ふたを開けてみれば僅差の勝利だった。この結果はライザー殿の強さに懐疑的になるかもしれない。だが、この場にいる誰もが言うだろう。それでライザー殿の評価が下がる、そんなわけがない、と。あれほどの力は紛れもなく上級悪魔、いや、最上級悪魔にさえ迫る力だった。
ならば、今回の戦い讃えられるのは誰だろうか。リアスの眷属、『ナイト』の『木場裕斗』、『ビショップ』の『アーシア・アルジェント』、そして『ポーン』の『兵藤一誠』、この三人こそ讃えられ、評価されるべきだろう。その三人が圧倒的な劣勢を覆し、あのライザー殿にあと一歩にまで迫った。残念ながら他の眷属に見るべきところはなく、リアス自身も評価に値しなかったが、あの三人はまず間違いなく、評価されるだろう。だがそれ以上に俺には注目するべきことがある。
それは、ゲーティアの指導を受けた、ということだ。ゲーティアは試合前に木場裕斗と兵藤一誠の二人を指導していたと言っていた。それに最後に兵藤が使った技、アレはゲーティアが唯一出場したレーティングゲームで使用していた。つまり、兵藤の師とはゲーティアであると言うことだ。ゲーティアは一体どういう指導をしたのか、その指導を出来れば俺も受けてみたい、体験してみたい等、そのような思いが溢れて仕方がなかった。出来ればこの熱が冷める前にゲーティアに色々聞いてみたいところだ。
私はふとゲーティアの方を見るとフェニックス家の当主と自身の婚約者が泣いている中、立ち上がり拍手を送っていた。よし、後で聞いてみよう。何か俺が強くなるヒントがもらえるかもしれない。俺ももっと強くなりたい。いずれは彼らと戦うだろうし、それに何より、何時かはゲーティアと戦いたい。先程のような素晴らしい試合をしたい、心の底からそう思った。
side out
周囲に拍手の音が響いているとグレイフィアさんがアナウンスを行った。
「皆さま方、今回の試合の結果、ライザー・フェニックス様とリアス・グレモリー様の婚姻と相成りました。これより2時間の休憩を挟みまして、結婚披露宴を執り行います。今しばらく、お待ちください」
まあ、さっきまで戦っていたんだ。式典の準備も必要になるだろう。これから主役の義兄殿やリアス達の準備も行われるんだろうな。だが二時間か、後で義兄殿にご挨拶に向かうとして、今なら時間があるし、裕斗達を励まして来よう。さっきの戦いの反省もあるが、まずは彼らの健闘を褒めなくてはな。
「レイヴェル、私は裕斗達の様子を見てくる。レイヴェルはどうする?」
「ぐす、私は、お兄様の方に行って参りますわ」
「そうか、私も後で義兄殿の下に向かうので、伝えておいてくれ」
「ええ、分かりましたわ」
「義父上殿、私は少し席を外します」
「あ、あ、分かったぞ。婿殿~」
私は涙ぐんでいたレイヴェルと義父上殿に断ってから、席を立った。
「楓、行くぞ」
「はい。ゲーティア様」
私は楓を伴って、観客席を後にしようとすると、
「バルバトス公爵、お待ちを!」
私が振り返ると、サイラオーグが駆け寄ってきた。
「どうなさった。サイラオーグ殿」
「これからどちらに向かわれるんですか?できれば先程の戦いについて意見を交わしたいのですが‥‥‥」
「私はこれから、木場達に会いに行くんですが‥‥‥」
そう言うと、サイラオーグは俺の両肩を掴み、
「是非とも、お供させていただきたい!」
サイラオーグが私に頼み込んできた。
私の両肩が非常に熱い。サイラオーグの手が熱を帯びている。先程の拍手で相当強く手を叩いたんだろう。手が腫れているのかも知れない。それほどまでに力一杯拍手を送ってくれたんだろう。ただの社交辞令であれば、これほどまでに、手が腫れる程に手を叩く必要などない。それほどまでに彼は拍手を送ってくれた、私を師と慕う者達のために拍手を送ってくれた。
彼は先程の戦いの終了直後に盛大に歓声を上げてくれた。そのおかげで、周りの貴族たちも取り繕うこともなく心情を明かしてくれたと私は思っている。言い方は悪いがサクラになってくれたようなものだ。ならばせめて彼に対する感謝として、それくらいは買って出るべきなんだろうな。
「ああ、サイラオーグ殿。共に参りましょう」
「感謝致します。バルバトス公爵」
そう言って、私達は彼らが転移した先、医務室に向かうことにした。
□
医務室に向かう道中、サイラオーグの口が止まらなかった。
義兄殿の分離について、から始まり、聖水の魔剣や義兄殿の全体攻撃についての是非について、様々な話を交わした。話しているのは8割がサイラオーグ、2割が私だった。概ね聞き役で意見を求められたときに話すようにした。それでもサイラオーグは止まらず、気付けば医務室に着いていた。途中何度か道を間違えそうになるたび、楓に手を引かれて軌道修正して、だが。
「ああ、もう着いたか。思いの外、近かったな」
「‥‥‥ああ、そうだな」
同意はしたが、この道中で30分程掛かっていたことを私は知っている。楓が安堵のため息を吐くのを気にしないようにした。
裕斗達は中にいるようで声が聞こえてきた。どうやら元気なようだな。
コンコンコン、扉をノックした。
「失礼、ゲーティア・バルバトスだが、入っても構わないか?」
すると中から声が聞こえてきた。
「ゲ、ゲーティア部長!!」
中から、足音が近づいてきて、扉が開いた。
「「申し訳ありませんでした!!」」
「ごめんなさい!」
裕斗と一誠、そしてアーシアが地に頭が付かんばかりに平身低頭の姿勢を取っていた。一体どうしたんだ?
「どうした。三人とも、その様に頭を下げて‥‥‥」
「‥‥‥今回の戦いにおいて、僕らはゲーティア部長に指導を賜りながら、勝利を報告出来ませんでした。この度の不始末、何とお詫びすればいいか‥‥‥」
「わ、私も今回の戦いで、ゲーティア先輩には開始同時にリタイヤしろ、と言われていたのに、言いつけを守りませんでした」
「お、俺は無断でゲーティア風紀委員長の技を使ったにもかかわらず、ライザー様に勝利することが出来ませんでした。ゲーティア風紀委員長の技を辱める結果となり、大変申し訳ありませんでした!!」
どうやら三人は今回の戦いの結果が振るわなかったことを私に詫びている。確かに結果は残念だった。私も残念に思った。だが、私は彼らを攻める気持ちなど微塵もなかった。
「頭を上げろ、裕斗、一誠、アーシア。」
「で、ですが‥‥‥」
「先程の戦い、全て見ていた。アーシアは精神で義兄殿に負けなかった。裕斗は技量で義兄殿を負けなかった。そして一誠は力で義兄殿に負けなかった。三人は一人一人では確かに義兄殿に勝てなかった。だけど、支え合い仲間としてなら、決して負けなかった。ただ最後に勝てなかったのは意地、ただそれだけだった。義兄殿は妹、レイヴェルのために、意地を見せた。私に、意地を見せた。だから、最後に倒れなかった。今回の戦いは意地の差が勝敗を分けたが、それだけがすべてではない。学ぶべきことも、多くある。反省すべきことも、多くある。だが、今だけは、結果よりも内容にこそ、誇ってもらいたい」
「ゲ、ゲーティア部長」
「裕斗」
「は、はい!」
「一誠」
「はい!!」
「アーシア」
「は、はい」
「よくやった」
「「「は、はい!!」」」
三人は泣き出した。泣く必要など、何もないと言うのに‥‥‥
だが、すまないがお客を待たせるわけにはいかない。それに、褒めるべきところは褒めるが、これくらいで泣いていては先が思いやられる。
「しっかりせい!!」
「「「は、はいーー!!」」」
よし、しっかりしたな。では早速紹介しよう。
「三人とも、こちらの方を紹介しよう。こちら、バアル家次期当主、サイラオーグ殿だ」
「サイラオーグ・バアルだ。よろしく、木場裕斗、アーシア・アルジェント、兵藤一誠」
そう言って、サイラオーグは一人一人と握手をしていた。三人ともあまりの圧に、圧倒されていた。
「ど、どうして、僕らの名など‥‥‥」
「何を言う。今日の戦いを見た者は皆、君たちの名前を覚えただろう」
三人ともが信じられない、と言う様な表情でお互い顔を見合わせていた。
「そ、そうですか‥‥‥」
「まあ、とりあえず、何時までも入り口にいるのもなんだ。中に入れてもらってもいいか?」
「!!は、はい。どうぞこちらへ」
そういえば、入り口で騒いでしまったが、他には誰もいないのか?
「裕斗、中にはリアス達は居ないのか?」
「リアス部長は式のために、お母様に連れて行かれました。朱乃さんも同じです。中には僕ら三人以外は‥‥‥」
「‥‥‥先日ぶりです。ゲーティア先輩」
「小猫ちゃんがいます」