政略結婚をして、お家復興を目指す悪魔   作:あさまえいじ

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第6話 人妻に抱きしめられました

どうもゲーティア・バルバトスです。

 

魔王様に報告が終わり、今は用意された部屋で休んでいる。

疲れた。緊張したな。

でも、目的のバルバトス公爵領の問題解決、両親の名誉回復、この二つが解決した。

その上、魔王様に縁談の斡旋までお願いできた。

完璧だった。さすがデュフォーの作戦だ。

まあ、うちの眷属の清磨との頭脳2トップだ。今後も頼もう。

だが、この展開はデュフォーの読みになかったな。

 

「バルバトス公爵、いやゲーティア君と呼ばせてもらって構わないかな。」

「はい、魔王様。」

 

まさか、魔王と歓談するなんて。

 

□

 

side グレイフィア

「グレイフィア、ゲーティア君と話をしてみるんだが、君もどうかな。」

 

さっき、サーゼクスが突然言い出したことに私は驚きよりも先に

 

「参加します。」

 

返答していた。

 

彼には、申し訳なさがあった。

私も彼の母も旧魔王派に所属していた。

なのに私は幸せを、彼女は不幸を享受した。

私の息子ミリキャス・グレモリーと彼女の息子ゲーティア・バルバトス。

二人は似た境遇だ。

でも、今の立ち位置は全く違う。

優しい世界に育ったミリキャス、厳しい世界で育ったゲーティア。

親として比べるべきではないとわかっている。でも、どうしても比べてしまう。

ミリキャスではゲーティアに決して勝てない。

生まれた時には負けていなかったと思う。

でも、育った環境が違い過ぎた。

私はミリキャスを厳しく育てたつもりだ。

でも、ゲーティアのことを見ると、厳しいなどとお世辞にも言えない。

ミリキャスが今いる場所は仮初の平和だと、本当の世界はゲーティアがいる世界だと、そう見えてしまう。

 

ゲーティアが悪いとは決して思っていない。

むしろ・・・あれ、どうしたいんだろう?

謝りたいのかしら?何を?幸せでごめんなさい?

知りたいのかしら?何を?生き方を?

怒りたいのかしら?何を?ミリキャスが勝てないから?

憐れみたいのかしら?何を?苦労しているから?

・・・・・・・・・・・・・

浮かぶことが全て、自分の小ささを、ひいては私の息子の不出来さを感じてしまう。

こんな気持ちなら会うべきではないと、思う。

でも、何故か、何故か会わなければいけないと突き動かされる。

 

□

 

「急にこのような場を用意してすまないね。ゲーティア君。」

「いえ、光栄です。魔王様。」

「ははは、ここでは公の立場ではなく、私(し)の立場だよ。堅苦しい言葉は無しにしよう。私のこともサーゼクスで頼むよ。」

「分かりました。サーゼクスさん。」

「ああ、それでいい。」

 

サーゼクスとゲーティア君が話をしている。

私は給仕の立場でここにいる。

やはり、彼を見ると何故か突き動かされそうな衝動に駆られる。

いけない、給仕なんだから仕事をしないと。

 

「どうぞ。」

「ありがとう。」

 

サーゼクスにはいつもの紅茶を。

 

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

 

ゲーティア君には、

 

「これ、オレンジですね。おいしいです。」

 

オレンジティーを作ってみた。

彼女が昔作った物を思い出して作った。

 

「喜んで頂けて光栄です。」

 

私は彼が心から喜んで、私のオレンジティーを飲んでいることが嬉しかった。

彼が喜ぶ姿が嬉しいのかもしれない。

 

「ゲーティア君は先日、グレモリー家を訪れたようだね。」

「ええ、ジオティクス殿には大変よくしていただきました。」

「そうか、父も喜んでいたよ。父とゲーティア君の父上が友人だったと聞いたかい?」

「ええ、私は父のことを知りませんでしたので、父のことを教えてもらえて嬉しかったです。」

「そうか、ゲーティア君は母上のことは知りたいと思うかい?」

「・・・サーゼクスさんの前で言うのはどうかと思いますが・・・知りたいと思います。」

「ならば、ゲーティア君の母上を知るべきだ。今日はここにゲーティア君の母上を知る人を呼んである。」

「え?・・・・彼女ですか?」

 

ゲーティア君が私を見て、サーゼクスに尋ねた。

 

「ああ、ゲーティア君の母上と同じ旧魔王派に所属していた、グレイフィアだ。私の妻でもある。」

「そう、ですか。」

「グレイフィアです。ゲーティア君のお母さんとは昔、交流がありました。」

「そうですか。・・・あの母はどういう人でしたか?」

「彼女は旧魔王派に所属していましたが、戦いを好む人ではありませんでした。彼女は料理を作ることが好きでした。実は今日のオレンジティーは昔彼女が作った味を思い出して作ってみました。」

「これが、母の味ですか。」

 

ゲーティア君はオレンジティーを飲み、天を見上げた。

 

「覚えていないことがつらいな。」

 

私はその言葉を聞き、居ても立っても居られなくなって、

 

「失礼します。」

「え!」

 

彼を抱きしめていた。

私は自分が何をしているのか、理解していた。

その上で分かった。

私が彼に言いたかった言葉を。

 

「よく頑張りました。偉いですね。」

 

褒めたかったんだ。

彼女の代わりに、彼女が出来ない代わりに、褒めてあげたかったんだ。

自分の息子と同じ境遇に生まれた、全く違う境遇で育った、自分の息子が辿ったかもしれない彼を褒めたかった。

ただの私の自己満足。それは分かっている。

 

「ごめんなさい。でも、もう少しだけ、このままで、いさせてください。」

「・・・・はい。」

 

私の中の母性が収まるまで、時間をください。

 

□

 

「ごめんなさい。」

「ああ、いえ、その・・・ありがとうございます。」

 

落ち着いて、すぐに謝った。

恥ずかしい。顔が真っ赤だ。鏡を見なくても分かる。

彼もなんと言っていいか分からず困惑している。

だけど、只一人面白そうに笑っているのがいる。

 

「ククククク・・・」

 

サーゼクスだ。

こう言っては何だけど、自分の妻が他の男に抱き着いているのに止めもせず、笑っているなんて・・・

私が非難の目を向けると、

 

「いや、すまない。グレイフィアが随分思い詰めた顔をしていたのに、彼を抱きしめてから随分と表情が優しくなったから。」

「う!」

 

確かに彼を抱きしめて、張り詰めていた気持ちが落ち着いた。

頭じゃなく、心が理解していた。

彼女がしたかったことをしてあげたかったんだ、それが分かって大分落ち着いた。

 

「ゲーティア君、君のことを教えてほしい。この7年のことを。」

「あ、はい、構いません。」

 

□

 

「・・・今日に至ります。」

「つかぬことを聞くが、学校に行ったことはないのかい?」

「ええ、ありません。勉強は当家の執事に習いましたので。」

 

私は怒っていた。

彼のこれまでが仕事かトレーニングばかりだったことに。

8歳の頃から7年間、遊ぶということをしていない彼に。

子供らしくあるべき時にひたすらに仕事をする彼に。

隣にいる仕事をしない大人に。

怒っていた。

むしろゲーティア君の中身がサーゼクスと逆だといいのにと思ってしまうほどだ。

だから口を出した。

 

「それはいけません!学校とは勉強のためではなく、交友を深める場所でもあります。」

「ですが、私は公爵家の当主です。私がしなくてはなりません。」

「確かにその通りです。ではもし公爵家の仕事が楽になれば何をしますか?」

「そうですね・・・トレーニングですね。」

「趣味はないんですか?やりたいことは?興味があることは?」

「趣味はトレーニングです。やりたいことはトレーニングです。興味があることは効率の良いトレーニング方法の研究です。」

 

私は絶句した。

トレーニング、トレーニング、トレーニング、・・・

何ですかそのストイックなトレーニング押しは!

貴方悪魔でしょ!もっと自堕落になりなさい!そんなんで立派な悪魔になれませんよ!

しかし、隣の悪魔、あなたはダメだ。

 

「この際学校に通ってみましょう。そうすれば他に色々なことも見えるかもしれませんよ。」

 

私が頑張って説得しないと。

彼を立派な悪魔にするためにも、ここで私が頑張らないと。

彼女の分も私が世話を焼かなくては!

 

「そうですねぇ・・・少し考えさせてください。」

「私は学校に行くというのはいいと思うよ。ちょうどリアスが人間界の学校に行くんだ。ゲーティア君も一緒にどうかね。それに君にお願いされた件も時間がかかるかもしれないし。」

 

そうだ、縁談。

それもありました。

彼はバルバトス公爵家当主だ。

家格のつり合い、経済地盤、影響力、等を総合的に判断する必要があるわね。

それに、バルバトス公爵家が一方的に搾取されるような、彼が苦労する相手はダメね。

後はやっぱり当人同士の相性も大事だし。

歳も出来れば近い方がいいかしらね。悪魔が長命とはいえ歳の差があり過ぎるのは苦労するでしょうし。

こんな大変なこと隣のダメ悪魔じゃ何年かかるかしら。

仕方がない。私が頑張るしかないわね。

そうだわ、お義父様にも手伝ってもらいましょう。

彼のことに心を痛めていたお義父様なら、必ず良縁を見つけてくださるわ。

早速連絡をしなくては、ですがその前に。

 

「一度は体験しておいた方がいいですよ。それに先程の話の中で、ご友人の話がなかったのですが、一人くらいご友人は・・・いますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いません。」

「学校行きましょう(ニッコリ)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」

 

ふう、問題は一つ解決です。

もう一つは少し待っていてください。

私とお義父様であなたにふさわしい娘を探しますね。

 

side out

 

いや、色々驚いたな。

まさか母と同じ旧魔王派の人がサーゼクス様の奥さんだったなんて。

母の味もこの体が覚えているのか、何か懐かしい感じだった。

でも、記憶になかったからなあ。

そんなことを漏らすと、いきなりグレイフィアさんに抱きしめられて、ドキドキした。

人妻だとは分かっているけど、めっちゃ美人だったし、胸も大きかったし、めちゃくちゃ興奮したけども、・・・何故だか懐かしい感じがした。

8歳の時に今の状態になったから、それ以前は記憶はほぼない。

前世の記憶はあるが、母の記憶は遠い過去だ。

だから、興奮というよりも落ち着いた気分になったほどだ。

それからはグレイフィアさんも遠慮が無くなってきて、ズバズバ言ってきた。

友達がいないことも学校に行ったことがないことも。

不思議といやな気分ではなかった。

前世の母、いや前世の親戚のおばさんを思い出した。

それくらいの遠慮のなさだった。

結局押し負けて学校に行くことになったし。

これから経済の立て直しも大変なんだけどな。

帰ったらセバスに相談だな。

 

□

 

side サーゼクス・ルシファー

 

「魔王様、失礼いたします。」

「ああ、バルバトス公爵。息災でな。」

「ありがとうございます。」

 

ゲーティア君が帰っていった。

今日の出会いはとても良かった。

彼が実直で誠実だとよくわかった。

さて、彼のお願いに関してどうするか。

 

「お義父様、グレイフィアです。至急ご相談したい案件がございます。」

「どうした。グレイフィア、突然。」

「大変申し訳ありません。ですが一刻を争います。ゲーティア・バルバトス公爵に関わる案件です。」

「詳しく聞こう。」

「はい、単刀直入に申し上げます。ゲーティア君にふさわしい令嬢を探しております。お心当たりはございませんか。私は彼の亡き母に代わり、彼にふさわしい令嬢を選んであげたいと考えております。」

「私もだ、グレイフィア。亡き親友の忘れ形見である彼にふさわしい令嬢を探すことは、私の責務だと考えている。」

「お義父様。」

「グレイフィア。」

 

彼に頼まれたのは私だというのに、グレイフィアと父上が盛り上がっている。

グレイフィアも父上も彼を気に入っている。

いや、気に入ったどころか、我が子と言わんばかりだ。

二人とも亡き友のため、という思いが爆発している。

情愛のグレモリーの父上はともかく、グレイフィアは違うよね。

ヒートアップする二人を宥めるためにも、一言言っておこう。

 

「父上、グレイフィア、ゲーティア君に縁談を頼まれたのは私だ。だから私に任せて・・・」

「なにを言っていますか!普段仕事をしないあなたが、彼の縁談をまとめるだなんてできるわけがありません!」

「そうだぞ、サーゼクス。いつもみたいにテキトーでは済まされないんだぞ。」

「あなたに任せていては何千年かかるかわかりません!ここは私とお義父様で探します。なので、あなたは仕事をしてください!いいですね!」

 

私は二人の迫力に飲まれ、何も言えなかった。

おかしいな魔王なのに、力だけで魔王になったのに。

私は一人蚊帳の外でゲーティア君の将来を案じた。

 

「ちなみにグレイフィア、縁談に関して彼から要望はなかったかね。」

「いえ、ありませんでした。ですが要望を出せなかっただけだと思われます。ここは我々で彼に最良の相手を探すべきだと思います。」

「そうだな。ああ、前回彼が我が家に来た時、【家に力がある】と言うことを重視しているようだった。」

「そうですか。でしたら、【家に力がある】を優先事項の上位に置きましょう。後は私の方で考えた評価点は家格のつり合い、当人の相性、年齢と考えます。」

「そうだね、私もそう思うよ。ではそれでまずピックアップしよう。」

「分かりました。では情報の共有は密に行いましょう。」

「ああ、分かった。」

 

二人の作戦会議は終了したようだ。

頼まれたの私なんだけど。

まあいいか。最終的に伝えるのは私なんだし。

それくらいの役目は回ってくるよね。

 

 

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