イナズマイレブンG 〜Grasp all!〜   作:杠葉

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 こちら、恐れ多くもハチミツりんご様が書いてくださった、この小説の二次小説(つまり三次小説…?やっぱり二次小説?)です。
 許可をいただいたうえで、本文はそのまま全文コピペしております。
 タイトルはお任せいただいたので、こちらで頭捻って付けました。

 情報が出揃っていない状態でしたので、本編とは所々設定が違います。
 が。それを補って余りある良作なのでぜひ読んで!ください!

↓↓↓



イタダキモノ
青雲のもと、新風を待つ


【attention!】

・こちらの小説は杠葉さんの『イナズマイレブンG~grasp all!~』の過去捏造小説となっております。

・コンセプトは『青崎海尊の入部の要因が、綿雲えありだったなら』です。物語開始の2年前〜作品開始当初辺りまでのお話となっております。

・明日葉姉妹のリストラを受ける前から書き始めているので姉の方も出演させていただいております。

・というか捏造マシマシです。杠葉さんの作品とは著しく異なる可能性、及びキャラクターのキャラ崩壊の可能性がございます

・てか変な人がいきなり書いた変な短編です。杠葉さんの本編とは切り離してご覧頂くようお願い致します。

・よければ『なんだこれwwwwwwww』くらいの軽い気持ちで読んでいただければ幸いでございます。

・無駄に2万文字ほどあります。

 

以上が大丈夫な場合はお読みいただければ幸いです。クソみてーな内容なので無視して頂いても構いません。それでは、どうぞ。

 

 


 

 

 

 ______春。それは出会いの季節。

 

 

 一年のうち、始まりとは元旦の事を指すだろう。1月1日、西暦が1つ重なり、新しい年の始まりを皆で祝う日。まさしく始まりの日である。

 

 しかし。現在の日本社会において、馴染み深い始まりといえば春。桜咲き誇るようなこの季節こそ、老若男女問わず新しき環境に身を置くものが多々と現れる。元旦と並ぶ、出会いと始まりの象徴だろう。

 

 

 

 

 そんな春のとある一日。小鳥がさえずり花は咲き誇る、穏やかな日差しが自然豊かな街並みを照らす、まさしく春うららとでも言うべきこの日。全国の学校で入学式の行われる、記念すべき日であった。

 

 それはこの場所______都内に座する『水雲中学校』も例外ではなく。真新しい制服に身を包んだ歳若い男女が、おもむろに緊張した面持ちで校舎の門をくぐっていく。

 

 

 友人は出来るだろうか?どんな先生に当たるだろう?小学校の時仲の良かった子達と離れないといいな。憧れのあのコと、隣の席になれたら…………

 

 

 それぞれの少年少女が思うことに差はあれど、総じて新しい環境下への不安と期待が綯い交ぜになった、新入生独特の感情だろう。これはこの時期にしか、この瞬間にしか味わえない貴重なもの。彼ら彼女らが咲き誇るために必要な、日差しのようなものである。

 

 

 

 

 

「______くぁ、ぁ〜あ…………」

 

 

 そんな彼らが表情を緊張に染める中。一人、場違いな雰囲気の男の姿があった。

 

 

 短めな青の短髪……特に側頭部や後頭部は剃り上げているほどの短さ。刈り上げた側頭部や後頭部は藍色のように濃ゆく、それに反するように頭頂部は鮮やかな水色。

 細身ながら新入生にしてはかなり背が高く、周りの男子と比べてひとつ抜けているほど。そんな高身長も相まって、かったるげに大欠伸をするこの男は酷く目立っていた。

 

 

 

「あ〜ぁ………面倒くさいなぁ………入学式なんて、来ても来なくても大して変わりねぇだろうに……」

 

 

 非常にやる気のない目をしながら、カバンを片手で肩に下げる様にして持っているこの男。真新しい制服と入学式という言葉が意味する所は、この男が水雲中学校の新入生だということだ。

 周りの生徒たちが緊張を露わにする中、全く持ってそんな感情を見せない彼_______【青崎 海尊】は、気だるげな雰囲気を包み隠さぬまま校舎内へと足を踏み入れる。

 

 

 

「靴箱………っと、こっちか………」

 

 

 この学校は、入学式にはクラスごとにオリエンテーションが行われる。その為、既にクラス分けが行われているのだ。従って、青崎の靴箱も自然と決まってくる。

 

 

 正直な話、とっとと教室に行って仮眠の1つでも取ろうと思っていた青崎。つい昨日までは休みだったのだ。渡されていた課題も適当に終わらせた彼にとってそれは、なんの罪悪感も無く惰眠を貪れる至福の日々。面倒な交友関係も無し、自分の好きに時間を使える素晴らしいひと時。

 それを入学式というしち面倒くさいものに奪われ、普段ならば10時過ぎまででも寝ている青崎は親と祖父に叩き起される事、6時半。実に4時間弱も睡眠を奪われたのだ。親しい友人も作るつもりのない青崎は、とっとと寝て終わるのを待ちたかった。

 

 

 

「………………………」

 

「ん〜………!!んにょ〜……!!!」

 

 

 

 

 …………この小娘に出くわすまでは。

 

 

 

 この学校は、それなりに生徒数が多い。しかしスペースは限られているので、必然靴箱も一列に多くの生徒の靴をおけるよう高くなっている。

 しかし青崎の身長ならば余裕を持って一番上の段まで届く程度だ、出席番号一番、つまり最上段に割り当てられた青崎にとってその高さは問題では無かった。

 

 

 問題なのは、んにょ〜という謎の言語を発しながら必死に背伸びをし、手を伸ばして悶えるこの珍生物。制服を見るに青崎と同じ新入生であろう。スカートを履いているので女子だということも容易に想像がつく。

 そして何故背伸びして必死になっているかも簡単だ。この女子はちんまい。とてもとても、ちんまいのだ。青崎の肩ほどまでも届かない、同学年内でもかなりの小柄。

 

 そんな彼女だが、どうも出席番号が一番最後らしい。『31番』に割り当てられた彼女は、一列に十人分置けるこの靴箱で運悪く最上段に属されたようである。なので届かず、必死になっているのだ。

 

 

 

 

「……………………無視だな」

 

 

 

 小さく呟いた青崎は、足音を殺してそっと少女の後ろを通っていく。自分は長身、余裕で最上段に手が届く。つまりは見つかったら頼られる可能性がある。それは面倒だ、非常にかったるい。極力労力を消費したくない青崎は、非情にも同学年、しかも同じクラスの女子を見捨ててさっさと教室に向かおうと画策したのだ。

 

 そっと忍び歩きで必死になる少女の後ろを通り、視界に入らぬようにしながら音を立てずに靴を脱ぐ。すぐさまそれを拾い、最上段にある自分の靴入れにそっと置いて上履きに履き替える。

 

 

 完璧だ。迅速且つ無音でミッションを達成。面倒事に関わらずに済んだと安堵しながら靴箱からとっとと退散しようと足を向けた。

 

 

 

 

「______あにょ〜………しょこの人〜………」

 

「げっ」

 

 

 

 ______そうは問屋が卸さなかった。

 

 

 背後から、フワフワとした声が掛かる。春一番に吹かれ翔ぶ綿毛のような、掴みどころのない綿雲の様な優しい声。

 どう考えても、その声の主は明白だ。掛けられた事に嫌そうな声を上げながら、渋々青崎が振り返る。

 

 

 

「あにょ、こりぇ、しょこにポンッてしてくりぇにゃい?あーし届かにゃいかりゃ………」

 

 

 

 くんっ、くんっ、と何度も手を伸ばすが目的の靴入れに引っかりもしない様子を見せる少女。舌っ足らずな口調でそう願ってくる少女を見ながら、青崎は心底面倒くさいという表情を隠さない。正直嫌だと言ってとっとと去りたい気持ちでいっぱいだ。

 

 しかし同時に青崎は思う。ここで嫌だと言って去った場合、より面倒事に巻き込まれる可能性もある。この眼鏡をかけた少女が入学初日に自分に無視された、なんて広めてみろ。間違いなく自分の置かれる立場は地に落ちる。現状ほぼ全員が同じ立場にいるのだ、いきなり周りより下に行くのは間違いなく面倒な事になる。

 

 自分は確かに誰とも関わりたくないが、それは自分が安全な立ち位置を確保し、周りから中立の立場を手に入れる事。決して嫌われて話かけられず、いじめの候補にされる様な地位にいることでは無い。第一印象というものは中々拭うことは難しいのだ、ここで無視するのは得策では無い。

 

 

 ………何よりこの女子自体が、それなりに面倒な性格していそうという直感も多分に含まれている。

 

 

 

「______はぁ〜〜〜…………めんどくさっ………」

 

 

 

 渋々といった雰囲気を隠さぬまま、青崎は少女に歩み寄る。「貸してみ」、と言って少女から小さな靴を受け取ると、なんの苦労もせずにヒョイッと彼女の靴箱の中に放り込む。

 

 

 

「おぉ〜!!!しゅごい!!おっきい!!」

 

「はいはいそりゃどーも。もういいだろ?そんじゃ」

 

 

 

 オーバーに青崎を賞賛する少女。それを見て面倒くさいタイプだと確信した青崎は礼もそこそこに、さっさと退散しようと足早に去ろうとする。

 

 

 

「あっ、待っちぇ!!」

 

「ぐえっ!?」

 

 

 

 しかし、それを見た少女が咄嗟に青崎のベルトをがっちりホールド。前に進もうとしていた青崎と、自分の元へ引っ張り寄せようとした少女の相乗効果で青崎が潰れた蛙のような声を上げる。

 

 何すんだ、と言わんばかりに振り向いた青崎。しかし彼女はそんな彼の顔を見てもキラキラした顔付きで、噛み噛みな口を回していく。

 

 

 

「にゃまえ!!えっと、おにゃまえは?」

 

「にゃ……?あぁ、名前ね………青崎だけど?」

 

「したのにゃまえは!?」

 

「…………海尊」

 

「かいしょん!!あーしはね、わたぎゅ………わたぎゅむ………わちゃっ…………えありらよ!!」

 

 

 

 糸目故に読み取りにくいが、確実に喜色に満ちているだろう雰囲気で名前を尋ねる少女。どうせ同じクラス、直ぐに知ることになるだろうし手早く答えた青崎に対して、舌っ足らずの口調故に何度もどもる。

 

 そんな少女の言葉を聞き取れず困惑する青崎。喋ってる言語でも違うのだろうかと思う程だ、困惑しながらも、チラッと視界に入った靴箱に書かれた名前を呼んでようやく少女の名前を把握する。

 

 

 

「わたぎゅ………?………あぁ、『綿雲』ね………」

 

「しょう!わたぎゅも!!しゅごい!!にゃんでかいしょん分かった!?」

 

「なんでもいいだろ別に………んじゃ俺、もう行くから。次からは脚立でも用意してくれよ」

 

 

 

 もう面倒くさ過ぎる。この一覧のやり取りでどっと疲れが押し寄せてきたようだ、一刻も早くここから離れたい。今度こそ離れるべく早歩きでその場を離れた青崎。

 

 

「あ!あーしも!!あーしも行く!!」

 

 

 

 しかし、その後ろをポテポテとついてくる綿雲。それを聞いて青崎は密かを顔を歪め、歩く速度を早める。にも関わらず、何故か距離を離さずにポテポテとついてくる綿雲。

 

 更に早める。ついてくる。

 

 もっと早める。ついてくる。

 

 

 

「かいしょん、こっちらよ?」

 

「………………………」

 

「かいしょん、そっちちあうよ〜!!!」

 

 

 

 後ろで謎の言語を発する不思議ガールの言葉を努めて無視する。それに自分の教室はこの先だ、先程彼女が行こうとしていたのは3年教室方向。真逆である。

 

 

 そうして青崎はようやく自分の教室に辿り着く。まだ全員は揃っておらず、来ているメンツも席に着いている。先生も来ていないし問題なくついたのだろう。

 

 

 

「しゅごい!!ついた!!教しちゅちゅいた!!かいしょんしゅごい!!」

 

「………なんっなんだ、こいつマジで………!あぁくそっ、厄日だぜってぇ………」

 

 

 ぴょんこぴょんこと後ろで跳ねる少女と、頭を抱えながら顔を顰める少年という特異な構図に、席に着いていた生徒たちが困惑しながら彼らを見ていた。

 あぁ、なんで初日からこう面倒くさいことが起きるのか。こんな出会いを生み出した八百万の神達へと、軽く呪詛の言葉でも投げつけたい気持ちに覆われる青崎であった。

 

 

 

______これが、彼の運命を変えるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

 

「______はい、今日のところはこれでお終い!この後は、各自自由に校内を見回って下さい!部活動の見学とかもやってるので、興味ある子はぜひ見ていってね!!帰る子達も、教科書やジャージとかの受け取りは忘れずにね!!」

 

 

 

 担任となる教師からの言葉を受けて、生徒たちは続々と行動を始める。この短い時間の間に意気投合したもの同士で校内を散策するもの。興味ある部活動へと顔を覗かせるもの。外に出て、街へと繰り出そうと相談を始めるもの。さっさと帰路につこうとするもの。千差万別だ。

 

 

 

 当然ながら青崎は最後の帰宅組である。手渡されたプリント類をさっさとカバンにしまい込み、その場で立ち上がって教科書類の配られる教室まで行こうと歩き始めた。

 

 

 

「あっ、おい!!えっと………青崎だっけ?お前もこの後カラオケ行かね?」

 

 

 そんな折に、近くにいた男子生徒から声を掛けられる。クラスメイトで出席番号が近かった男子だ、コミュニケーションが得意なのか、既に数名の友人を作ってカラオケに行く算段を付けていた。

 

 

 

「あー、悪ぃな。俺今日家の手伝いあんだわ。また今度誘ってくれよ」

 

「そうか?そんじゃ仕方ないか……またな!」

 

「はいよ、また明日な」

 

 

 表面上は申し訳なさそうな対応を取り、軽く手を振りながら彼らと別れる青崎。

 

 実のところ、彼に手伝うような用事は存在しない。ただ円満に誘いを断るためだけの方弁だ、あぁいった手合いには断るにも納得のいく理由を提示しなければならない。敵を作らず誰にも組みせず。誰にでも接する事が出来てなおかつどのグループにも属さない。そんな立ち位置こそ、青崎の望むポジションだ。

 それに面倒くさい。なんで良く知りもしない連中と好き好んでカラオケなんて行かねばならぬのか。それなら寝ていたい、のが青崎という男だ。

 

 

 

 

「か〜いしょ〜ん!!」

 

「げぇっ、また出た……!」

 

 

 

 ふわんっと響くゆるゆるボイスが鼓膜を揺らす。とてとてと後ろをついてきてた綿雲の存在に顔を顰める。もうなにも用事はないだろうに何故声を掛けてくるのか。

 

 

 

「かいしょん、ぶかちゅ!ぶかちゅ見学!」

 

「はぁ?部活って………なんで俺が付き合わなきゃなんないのよ。そも何部?調理部とかその辺か?」

 

「しゃっかー部!!作るにょ!!」

 

「………あぁこの学校、サッカー部ないんだったっけか?へー、1から作るとは殊勝なこって」

 

「しょう!だからかいしょんも一緒にしゃっかーするにょ!」

 

 

 舌っ足らずな言動の綿雲だが、口の動きと雰囲気からなんとなく言いたいことを読み当てられる。どうにもサッカー部を作りたいらしく、青崎をそこに引き込もうとしているようだ。それを察して青崎はひとつため息をつく。

 

 

 

「………あのさ。なんで俺なわけ?」

 

「?にゃにが?」

 

「誘う相手。今のご時世、好き好んでサッカーやる奴なんてごまんと居るだろ。わざわざ俺を誘う必要なんて無いじゃん。もし助けてくれた優しい人、なんて思ってるならご愁傷さま……俺そういうのやる気ないから」

 

 

 

 ______サッカー。それはこの日本において、最も盛んなスポーツと言っても過言ではない。

 

 数年前に円堂守率いる雷門中がフットボールフロンティアで優勝し、エイリア学園との戦いに勝利。そして初めて開催された、第一回フットボールフロンティアインターナショナルにおいて主催者たるガルシルドの野望をしりぞけ見事優勝。それを皮切りに、元々国内で人気のあった中学サッカー界はより一層の盛り上がりを見せることとなった。

 

 そんなサッカーをやろうと思う人間なんて、今の時代履いて捨てるほどいる。道端で小石でも投げて当たったやつがサッカー部、なんてよく言われる笑い話だ。強い弱い、やる気のあるなしの差こそあれど、それだけ今の日本でサッカーは愛されていた。

 ならば自分を誘う必要性は皆無だ。ほっといてもチームメイトなんて簡単に集まるだろう。それに青崎は、『そういうの』がすこぶる苦手なのだ。

 

 

 

「……?あーしは、かいしょんも一緒にしゃっかーしたいよ?したことにゃくてもらいじょーぶ!しゃっかー楽しいよ!!」

 

「______そういう『貴方も一緒に』、みたいな暑っ苦しいの……俺いっちばん苦手なんだわ」

 

 

 

 あぁ面倒だ、心底面倒くさい。なんでわざわざ自分がそんなことをしなければならないのか。

 青崎はドライだ。昔っからそうだし、今の自分も他人に比べてそういった感情が薄い事は自覚している。

 

 対人の距離感というものは、つかず離れずこそが理想だと常々思っている。誰とも深い付き合いをせず、かといって蛇蝎の如く嫌われることの無いような立ち位置。顔見知り〜友人の中間程度に位置する、面倒な誘いにも誘われないし、そいつらが問題起こしても何も関係ないような、そんな立場。それこそ人間の理想だ、一番楽が出来るポジションだ。

 

 

 

「んじゃ、俺はこれで。もう誘ってくんなよ、面倒だから」

 

「あっ、かいしょ______」

 

 

 

 

 ヒラヒラを軽く手を振って、青崎はその場を離れる。綿雲がなにか言おうとしていたが、無視だ。関わるとどう転んでも面倒くさ過ぎる。それがこの一日でよーく分かった。青崎がトップクラスで苦手とする人種だ、良かれと思ってこちらのパーソナルスペースに踏み込んでくる距離感の掴めないタイプ。善意を持っている分、悪意をもって接してくる輩より余程タチが悪い。

 

 

 

 

「………突き詰めてきゃ、親だって他人なんだ。適度に力抜いて、やらなきゃならない事だけ手早く終わらせる。後はテキトー、誰かと関わるなんてクソ面倒な事、しないに限る………ひひっ、クズらしい考え方ってね」

 

 

 

 誰もいないその場所で、青崎は一人笑う。自分の性格が異端であることなんて重々承知だ、それでもこれが性分なのだから仕方が無い。あれだけぞんざいに扱えばあの少女も自分を誘おうなんてことはもう考えないだろう………どうにも他の人に悪い噂を広めようとするタイプにも思えなかった。辛辣に突き放しても問題無い。

 

 仮にこれから誘ってきても無視すればいい。そうすれば、いつか話かけなくなるだろう。女子を無視するというのはクラスメイトから反感を買うかもしれないが、こちらとしてはやりたくも無いことに誘われてるから仕方なく無視しているという言い訳が出来る。何も問題ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かいしょん!!しゃっかー!!」

 

「…………………」

 

 

 

 

 問題は無い。

 

 

 

 

 

 

 

「しゃっかー!!かいしょんしゃっかー!!しゃっかーかいしょん!!」

 

「……………………………………」

 

 

 

 …………問題は無い。

 

 

 

 

 

 

 

「か〜いしょん!しゃっかーしゃっかーか〜いしょん!!」

 

「………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 …………問題は______

 

 

 

 

 

 

 

「かいしゃ……?しゃっかいしょん……?………!しょっかー!!」

 

「おっかしいだろ………?」

 

 

 

 多分に問題あった。

 

 

 

 

「なんっなんだよほんとお前………俺誘うなっていったよね?なんで1ヶ月も飽きずに誘ってくるわけ…?」

 

「かいしゃん、しょっかー!!」

 

「混ざってるし………俺は海尊だ、か・い・そ・ん」

 

「かいしゃん?」

 

「………お前、頭のネジ何本外れてんだよ……」

 

「うぇへ〜、しょれほどでみょ〜……」

 

「褒めてねぇよ………」

 

 

 

 にへらにへらと笑みを浮かべながら照れ笑いを見せる綿雲。青崎の机の前でしゃがみながら腕を組んで机に乗せ、その腕の上に顎をぽてんと乗せるようにして話しかけている綿雲。席に着いている青崎は、この1ヶ月の間ずっとこの少女からの誘いを受けていた。

 

 

 

 

 飽きもせずに自分のような薄情者を誘い続ける綿雲えありという少女に、青崎海尊は辟易していた。正直ここまで無視すれば、どんなに呑気な奴でも青崎がやる気ないと思い知って話しかけて来なくなると踏んでいた。というか普通の人間ならば事実そうなるだろう。

 

 それがどうだ。この綿雲えありという少女はどれだけ無視しても気にした様子ゼロ。呂律の回らない口調で休み時間も放課後も、姿を見せれば誘い続けていた。無視しても、会わないように姿をくらましても、全力で逃げ出しても何故か近くに現れて勧誘してくる。やめろ、と言っても効果無し。暖簾に腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏、えありに無視である。

 

 

 

 

「……お前さ、なんで俺に拘るわけよ?何度も言ってるけど、サッカーやりたい輩は沢山いるじゃん」

 

「?あーしは、かいしょんも楽しくなって欲しいらけらよ?」

 

「それならお生憎様、俺はじゅーぶん今が楽しいのよ」

 

「……?でも______」

 

 

 

 今でも楽しい。そうだ、このもわもわ少女を除けばクラス全体でもちょうどいいポジションを保てている。綿雲の執拗なまでの勧誘さえ取り除けば、自分の理想の学校生活が送れそうなのだ。だから早くこの少女をどうにかしなければ。

 

 

しかし。キョトンとした表情を見せて小首を傾げながら、綿雲がぽつりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

「______海尊、1回も笑ってないよ?」

 

「____________!」

 

 

「ずっとずうっと、つまらなそう。冷めた目で、これが一番だって自分に言い聞かせてる」

 

 

 

 

 半ば確信めいた口調でポツポツと語る。

 

 この1ヶ月間、誰とも深い付き合いをしていない。周りは大なり小なり、仲の良い友人を見つけているのに青崎だけがそれを避けている。1度も笑わず、終始つまらないと言った表情で無気力に日々を過ごしている。誰とも関わらぬ方が楽だと、それこそ正解だと自己暗示するように彼は独りっきり。

 

 そんな彼を、意図してか意図せずか見続けてきた綿雲。この少女が何を考えているのか、一瞬誰なのかと、青崎の背筋にゾクりと何かが走った。

 

 

 

 

「______あーしは、かいしょんも一緒ににこにこが良いらけらよぉ」

 

 

 にへらっ、と緩んだ様な笑みを見せる綿雲。舌っ足らずで、子供で、表情が読めない。コロコロと笑っていたかと思えば芯が強く、かと思えばふらりと掴みどころの無い。なんとも言えぬ、不思議な少女。今まで青崎が……いや、これからも出会わないであろう、不可思議な少女だった。

 

 

 

「………お前、変人だって言われない?」

 

「?にゃにがぁ?」

 

「自覚無いのね………はぁ〜、ったく………なんでこう上手くいかないかねぇ、俺の計画……」

 

 

 

 青崎が尋ねてもぽけっとしたあほ面で首を傾げる。そんな彼女と関わってしまったことが、運の尽きだったのだろうか。ため息をつきながら、椅子にもたれかかって頭を搔く。

 

 

 

 

 

 

 

「えありー!!ちょっといい!!?」

 

 

 そんな時。がらりと教室の扉を開いて響き渡る叫び声。青崎がそちらに目を向ければ、桜色がかった金髪………ピンクゴールドとでも言えばいいのだろうか。そんなウェーブがかった豊かなセミロングヘアーを高い位置でまとめたポニーテールの少女。目はパッチリとして、背は高め。制服を見るに、同学年の女子だろう。その背後には、同じく一年生と思われる男女の姿が数名分見受けられる。

 

 そんな先頭に立つポニテ少女は、目的である綿雲と、そのすぐ近くにいた青崎を見つけると表情を明るくしてずんずんと教室に足を踏み込んでくる。

 

 

 

 

「あーっ!!!アンタね!!えありが言ってた新入部員!!!」

 

「………はぁ?」

 

「背は高いわね!!火谷とか舘田と同じ……身長だけならそれより高い?身体は細め……あっでも意外にしっかりしてるわね!!うん、DF向き!!」

 

 

 いきなり話しかけてきた上に『新入部員』と言ってきた声のでかい女。なんだコイツは、と青崎が思っているうちに、彼女は座っている青崎の身体をぺたぺたと触りながらうんうん!と一人満足げに頷いていた。

 

 

 

「ちょっ、何よお前!?もしかして、こいつの知り合い?」

 

 

 

 突然のスキンシップに困惑しながら青崎が立ち上がって離れる。当然だ、いくら相手が美形で異性だとしても、いきなり触診されてDF向きだのなんだの言われれば胸に宿るのはトキメキではなく困惑である。

 

 

 

 

「?何って、えありの言ってた新入部員ってあんたでしょ?」

 

「はぁ!?ふざけんなよ、なんで俺が入ることになってんのさ!?」

 

「あっ、違うの?………まぁこれも何かの縁よ!!サッカー部入りなさい!!それにもう入部届けもアンタの名前以外書いちゃってるから!!」

 

「いやいやいやいや、強引過ぎるでしょ……なんなんだよ、サッカー部は頭のネジ外れた奴ばっかなのか……?」

 

 

 

 自分は入部希望では無いことを伝えた青崎。しかしやってきた少女は首を傾げた後に、細かいことは気にするなと言わんばかりに笑って机に入部届けをバンッ!!と置いた。というか叩き付けた。ご丁寧に名前以外必要なところは全部記入されている。

 

 青崎は確信する。この女は面倒くさい奴だ、綿雲と比べて違うようで根っこは変わらないタイプのくっそ面倒くさい輩だ、と。

 

 

 

「はいペン!!はい、書く!!!」

 

「いや、だから俺は入らねぇっての……」

 

 

 

 バンッ!!とペンを手渡されてから書くように指示される。だが当然青崎は書くつもりは無い。なんのためにこの1ヶ月綿雲を避けてきたと思っているのだ、しかも綿雲クラスに面倒くさいのがもう一人なんて全力で勘弁願いたい。

 

 そう思い青崎はちらりと視線を残りのメンバーへと向ける。流石に残りのメンバー全員がこの2人と同類ということは無いだろう。無理やり入部させることに抵抗のあるお人好しがいるはずだ、そいつに頼ろう。

 

 

 

「______青崎君だっけ。大丈夫、貴方が入部したくないということは伝わってるわ」

 

「(来た!)」

 

 

 やっぱり居た、まだ話の分かる人物。空色のショートヘアーをした、涼し気な雰囲気の女子生徒だ。彼女はうんうん、と話を理解しているような雰囲気を見せながら、とても素敵な笑顔で青崎の肩をポンッ、と叩いた。

 

 

 

 

「入りたくない。面倒くさいのね______その表情、すっごくいいわぁ………!!」

 

「(1番やばいやつ!!最早ドSじゃねぇか!!)」

 

 

 

 こいつはダメだ。他のやつら……特に男子ならば話が分かるのではないか。3人いた男子生徒に素早く目を向けた。

 

 

 

「うむ!!新しい部員!!しかも僕と同じDFか!!嬉しいぞ青崎君!!共に頑張ろうではないか!!」

 

「取り敢えず何でもいいから早くしてよ……新入部員なんでしょ?」

 

「別に減るもんでもねぇし入っちまえよ、めんどくせぇ」

 

 

 

 ダメだどいつもこいつも味方になりそうな雰囲気が皆無。なんなんだ、これだけ人数いてこの状況に疑問とか覚えないのか。バカしかいないのか、バカサッカー部か、バッカー部なのかコイツらは。特にうるさい緑色の奴。

 

 

 

 

「………はい、取り敢えずみんな落ち着く。青崎君も一回落ち着いて、ね?」

 

 

 

 そんな中で一人だけ。肩まで伸ばした水色の髪の、凛々しい少女が待ったをかけた。この場にいる青崎を除いた7名のうち、唯一止めに入ってくれた少女に青崎は柄にもなく感謝の念を送る。

 

 

 

「……君はえありに誘われていたんだろう?えありからは新入部員だと聞いていたんだが……違うのかい?」

 

「しんにゅーぶいんだよぉ〜」

 

「なんでお前が答えんのさ………違うよ、俺はこの脳みそまで雲でできてる変人に付きまとわれて迷惑してるだけ」

 

 

 

 青崎の代わりに回答する綿雲の頭に軽くチョップを落としつつ、自分は新入部員ではないと告げる。ようやく誤解を晴らせることに成功した青崎は小さく安堵を露わにする。あのままだと話も聞かれずに引き込まれるところだった。

 

 

 

 

「うーん………事情は分かったよ。その上で聞くんだが、本当にサッカー部に入る気はないかい?」

 

「はぁ?ようやくマトモなのが居たと思ったらアンタもそれかよ。サッカーやる奴なんてそのへんに転がってんだろ……わざわざド素人の俺を勧誘する意味がわからないね。ひと月も経ったんだ、試合人数ならとっくに集まっただろ?」

 

「いや、私達はこれで全員なんだ」

 

「………はぁ?」

 

 

 

 何度も言うが今のご時世、サッカー経験者やサッカーを始めようという人間は多い。わざわざトーシロの自分を誘わなくてもとっくに試合出来るほど集まっているだろうと思っていた青崎は、予想外の言葉に顔を歪めた。

 

 だってそうだろう。この場にいるのは青崎を除けばたった7人。

 

 青崎を誘い続けている天然、綿雲。

 猪突猛進という言葉がぴったりなポニテ女。

 人が迷惑してるのを良しとしてきたドS女。

 ガタイのいい、うるさい緑男。

 物静かだが面倒くさそうな雰囲気漂う目隠れ男。

 黒の短髪をした、暑苦しそうな男。

 それに話の分かる、水色髪の女。

 

 

 1ヶ月だ。1ヶ月も経っているのに、今の日本中学でサッカー部が集まらないなんて有り得ないだろう。それなりにこの学校には生徒もいる、当然幼少期にサッカーやってた奴もいるだろうに。

 

 

 

「にゃかにゃかあちゅまらにゃいのよにぇ〜……」

 

「……なら余計に俺に関わらないで勧誘しに行けよ………フットボールフロンティアまで、あと2ヶ月くらいだったか?集まんないとまずいんじゃないの?」

 

「だからかいしょんしゃっかー!!やるにょ!!」

 

「だからさぁ……あーもう、アンタらコイツどうにかしてくれよ……ここまでやって入部しない奴に割く時間なんかねぇだろ?」

 

 

 

 くいくいと制服の裾を掴んで引っ張る綿雲を見ながらまだ諦めないのかと呆れ顔を見せる。一体この少女の何が自分をサッカー部に引き込もうとするのだろうか。甚だ疑問であるが、そんなことはどうでもいい。早いところこの少女を連れ帰って貰わねば。

 

 

 

「んー……君が本気で嫌ならそうしてあげてもいいんだが………」

 

 

 水色髪の女子生徒がそう呟いた。それを聞いた青崎はこれでやっと自分の求めていた学校生活を過ごせると安堵するが、次の台詞を耳にした瞬間その願いは崩れることとなる。

 

 彼女がチラリ、と1人の方を見る。視線の先にいるのはピンクゴールドのポニテ少女………つまるところ、このチームの発起人であり、中心人物である少女だ。その少女はにっこりと笑いながら、青崎の机をバァン!!と叩く。

 

 

 

「______気に入ったわ!!!」

 

「______は?」

 

 

 唐突な『気に入った』宣言。いきなりこの猪は何を言っているのだろうか、はっきり言って初対面もいい所なこの女と自分のあいだに気に入る要素なぞ皆無、というかどちらかと言えばこんなに直球で暑っ苦しいタイプはトップクラスに苦手だ。まだフワフワしている綿雲の方が適当に流せる分マシだ。五十歩百歩ではあるが。

 

 

 

「気に入ったって……あいにく俺はお前さんみたいなタイプは勘弁願いたいんだけど?」

 

「いいえ大丈夫!!分かってるわ!!アンタの言いたいことはウチ、完璧に分かってる!!」

 

 

 

 遠回しに何言ってんだお前、という感情を多量に込めて言ってやれば、この猪突猛進を通り越してほぼイノシシ女は分かってる、とドヤ顔気味でこちらの言葉を切ってくる。どうにも青崎の中で嫌な予感が走る。こういう手合いは自分の中で決めたらこちらの都合なんてお構い無しに振り回してくるのだ。

 

 

 

「……あっそう。んじゃ、俺の求めてること言ってみ?」

 

「ふふん!!アンタ______【本気にさせてみろ】って言いたいんでしょ!?」

 

「………はぁ!?」

 

『ブフっ!!』

 

 

 

 そう思い青崎が一縷の望みをかけて聞いてみれば、ポニテ少女は青崎の望みとは180度逆の事を言ってのけた。清々しいまでの間違いっぷりに、青崎だけでなく後ろのドS女や男子生徒3人組も揃って噴き出した。

こいつはなんと言った?『本気にさせてみろ』?自分がか?アホか?アホなのか?青崎の脳裏で幾度も『アホ』という言葉が反芻していく。

 

 

 

「えぇ!!要するにアンタは、中途半端が嫌なのよ!!」

 

「いや、ただ単に俺はお前らに関わりたくないだけなんだけど?」

 

「いいえ違うわ!!アンタはそんなことを言いながら信頼出来る相手を求めてる!!だけど中途半端に仲良くなって、面倒な関係になるくらいならいっそ関わらない方がいいって、自分に言い聞かせてるだけよ!!」

 

 

 バァン!!と今一度少女は熱を込めて机を強く叩いた。

 

 

 

「アンタが真に求めているのは起伏の無い、何事もない学校生活なんかじゃない!!!自分を受け入れ、無理やりにでも引っ張っていく『友達』よっ!!それに本当にアンタが変化を求めてないなら、この1ヶ月の間無理やりにでもえありを引き剥がすだろうにそれをしなかった!!」

 

「………曲解だな。読解ですらない、自分に都合のいい言葉をそれっぽく当て嵌めてるだけだ」

 

「ならなんで律儀に人の話を聞いてくれてるの?」

 

 

 

 ナンセンスだ。ここまで来ると笑い話にもならない。青崎が求めているのは深い友人関係なんかではない。大きな山も、深い谷もない。平坦に、ただただ真っ直ぐ伸びた人生。誰にも邪魔されずに、責任も無く、与えられた役割を相応にこなすだけ。そんな人生こそ青崎の理想。

 

 そう言って話を切ろうとした青崎。しかし、少女の発した言葉に思わず言葉が詰まった。

 

 

 

「本気で嫌なら、アンタみたいなタイプはさっさとここから離れるわ。それこそ職員室にでも行けば、私達も諦めざるを得ない。なのにアンタはそれもせず、この1ヶ月えありの勧誘を受け続けて、今私の無理矢理の会話にも対応してる。______それって少なくとも脈アリだと思うんだけど?」

 

 

 ニヤリ、と笑いながら確信めいてそう言ってくる。

 あぁ、と青崎は一人思う。前言撤回だ。

 

 

 

 ………この女の方が、綿雲の何倍も苦手なタイプである。

 

 

 

 

「それにアンタ、えありがずっと勧誘してる相手だもの!今更逃がすわけないじゃない!!!うちのチームの8人目はアンタしかいないわ!!さぁ早く入部届けを書くのよ!!ハリー、ハリー、ハリー!!!」

 

「はりぃはりぃはりぃ〜〜〜!!」

 

「8人目って、それっぽく言えば特別感出ると思うなよ………あぁっクソ!!こんな事なら少し時間かかっても十衣路の方に行くんだった……」

 

 

 

 ずずいっ、と迫ってくる少女。そんな彼女に付随するように綿雲もふわんとした口調で入部届けを書くことを急かしてくる。そんな彼女達との出会いを神に呪いながら、青崎はガリガリと忌々しげに頭を搔く。

 

 そして彼は、パシッと少女からペンを奪い取って用紙に乱雑に言葉を書き連ねる。

 

 

 

 そして、入部届けに刻まれた………【青崎 海尊】の文字。それが意味するところ、つまりは組み込まれた、ということだ。

 

 

 

 

 

 

「………いいか、俺は『繋ぎ』だ。お前さんらのメンバーが揃うまで、夏の大会までの繋ぎのメンバー!!練習も最低限は参加するが、夏の大会が終わったら速攻で辞めさせてもらうからな!!」

 

「ええ!!それまでにアンタをサッカーの虜にすれば問題ないわね!!」

 

「そういうこっちゃねぇっての……」

 

「ふふふっ………さぁ!!歓迎するわ、8人目!!青崎海尊!!!」

 

 

 

 

 この物語に、やる気無し、熱意無し、だけど少しばかり、心の奥底で『友達』を求めているかもしれない細身のDF______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______ようこそ!!!水雲中学サッカー部へ!!!」

 

 

 

【青崎 海尊】、という歯車が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで集まらねぇんだよ!?」

 

「いやー、全国制覇に乗っかってくるやつは少ないわね!!燃えてくるわ!!!」

 

「あーしももえりゅよ〜!!」

 

「これじゃ辞めるにやめれねぇじゃんか………あーあ、とっとと代わり見つけねぇと……」

 

「まだ言ってるのか青崎。いい加減諦めたら?」

 

 

 

 

 少し時が経って______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かぁいそぉん!!!共に昼食をとって親睦を深めようではないか!!!」

 

「げぇっ、舘田……!」

 

「あ、あーしも一緒にごひゃん〜!!」

 

「ぬっ!勿論だとも、歓迎するよ綿雲君っ!!」

 

「ウチも混ぜろ〜〜〜!!!!」

 

「あーあ、バカとバカとバカの不協和音………飯時くらい勘弁してくれ……」

 

 

 

 

 時が経って______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おおおお!!いい感じ!!いい感じよ!!やるじゃない火谷!!!」

 

「なんで俺が焼き芋焼く係なんだよ……おい青崎、変わってくれよ」

 

「なんでよ。お前無駄に暑っ苦しいんだからそういうの得意だろ?俺は食べる専門なもんで〜」

 

「けっ、口の減らねぇ野郎だな………おい綿雲、そんな顔近づけたら危ねぇぞ?」

 

「あったきゃいのぉ〜………」

 

 

 時が経って______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 大 掃 除 タ イ ム よ ! ! 」

 

「やるからには徹底的よ!!」

 

「なーんで俺まで、めんどくせぇ……」

 

「部室でいつも爆睡してる常駐者はどこの誰だったかなぁ〜青崎くぅん……??」

 

「わーった、わっーたよ。だから箒こっち向けんなって澄川……」

 

「あーしも、おねーしゃんだからがんばうにょ!!」

 

「おねーさん?背伸びしたい年頃の子供の間違いだろ?ほーれほーれ」

 

「にょあー!!かいしょん、あーしのじょーきんかえひて〜!!!」

 

「遊ぶなっつってんでしょうがァ!!!!」

 

 

 

 

 …………時が経って___________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明けみゃしておめれとうかいしょん!!」

 

「はいはいあけおめ。今年初噛みだな、お前」

 

「はちゅかみ?」

 

「今年もそのへんちくりんな口調は変わりそうにねぇってこった……げっ、凶かよ」

 

「!!あーしも!あーしも凶らよ!!」

 

「うっへぇ、やめてくれよ……変なこと起こりませんように……」

 

『うおおおおおおお大吉よおおおおおおおお!!!!』

 

『見てくれ碓氷!!僕の日頃の行いが、神様に届いていたようだ!!うおおお大吉だああああああ!!!!』

 

『うるっさいなぁ………あっ末吉……』

 

『あらあらあら………涼しい顔して一番つまらない結果引いてどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?』

 

「………既に変だったわ」

 

 

 

 ………時が、経って…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして!月紙宗次!サッカー部、入部希望です!!」

 

「宗次ぃ!!!久しぶりじゃな〜い!!!」

 

「なんだ、明日葉の知り合いかなんかなわけ?」

 

「しょーじは『かちょーふうれつ 』の月らもん!」

 

「かちょー……?あぁ、前言ってたお前らのサッカーチームの……へぇ、アイツが月で、明日葉の妹が花……あの暑苦しそうなのが風……ん?鳥はいねぇのか」

 

「りきやんは来年らよ〜!あーしのおちょーちょも、来年中学しぇい!!」

 

「へぇ〜、お前さんの弟とは災難な奴だな」

 

「なんじぇ!?………もし2人がここに来ることがあったら……その時は、2人をよろしくね、海尊!」

 

「うわっ、なんだよ改まって気持ちわりぃ………」

 

 

 

 

 ______時が経ってしまって______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おい、綿雲」

 

「?どしたにょお、かいしょん?」

 

「……俺は詳しくは知らねぇが、明日葉とケンカしてんだろお前。しかも澄川達にも説明してないみたいじゃん」

 

「……………………」

 

「別に俺がとやかく言うつもりも無いけどさぁ。………お前らが暗い顔してると、気が狂うのよ。どっちが悪いのか知らないけど、とっとと仲直りでもしろよ。後輩連中も心配してっからさ」

 

「………うん。ありがとう、海尊」

 

「はいよ。まぁお前の事だ、そのうち元通りになってるだろ。いつもの風がどうのこうのって言ってさ」

 

「……………………そうだと、いいなぁ……」

 

 

 

______そして最後に______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、皆さんに残念なお知らせがあります。私たちのクラスの一員である、綿雲えありさんですが______」

 

「__________________は?」

 

 

 

 

 

 

______『綿雲』の様に、消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______やっぱりこんな所にいた」

 

「ん?」

 

 

 

 

 そして、彼が一陣の風と出会ってから2年の月日が経ったある日のこと。

 

 かつては入学その日に大欠伸を見せていた青崎も既に最高学年。以前綿雲が間違えかけていた3年教室に正式に通学している青崎は、最近部活に出ることも少なくなった。それも当然だ、サッカー部は部長に就任した月紙の方針で【無期限活動自粛】状態なのだから。

 

 

 

 そんな青崎は、休み時間や放課後などを屋上で過ごすことが多くなった。本来この学校の屋上は立ち入り禁止、バレれば問題になるのだが、青崎は気にしていないようだ。

 それに、滅多に教師が来ることも無く、校舎から見えることも無い。名目上サッカー部に所属している青崎の時間潰しにちょうどいい場所なのだ。

 

 そんな屋上で寝そべっていた青崎に声が掛かる。視線を向ければ、屋上の扉から一人の少女が彼を見つめていた。

 

 

 

 

「よう、澄川。久しぶり」

 

「………ええ、そうね。久しぶりに、なっちゃったわね」

 

 

 軽く手を挙げて『久しぶり』と告げる。そんな青崎の言葉を聞いて、悲しげに顔に影を落とす。

 

 久しぶり。そう、久しぶりなのだ。かつては練習で嫌という程顔を合わせていたチームメイト。しかし、今ではそれすら無くなった。

 

 

 

 

「…………みんなが居なくなって、もう随分経つね」

 

「ん?まぁそうだなぁ」

 

「………えありも、瑞花も、熱人も、水斗も、翠も………優唯は学校に入るけど、サッカー部は辞めちゃってる。……残ってる3年、私達だけだよ」

 

「良いんじゃねぇの?これで活動しないまま、内申点は貰えるし、こんなふうに適当やってても文句言われないし……俺は満足だね」

 

「………本気でそれ思ってる?」

 

 

 

 8人いた。こんな部活動にも力を入れていない中学校で、本気で全国制覇を目指そうとしていた大馬鹿者が7人。

 

………そして、その大馬鹿者たちに魅せられてしまったもっと大馬鹿者が、1人。

 

 

 

 そのうち5人は、何も告げずに学校から去ってしまった。残った3人のうち、空色の髪をした天原優唯も、今のサッカー部は自分の望んでいたものでは無いとして部活動を辞めてしまっている。

 

 残っている3年生は、そこにいる澄川清香。そして、青崎の2人だけ。

 そんな2人も、顔を合わせることは稀になってしまった。普段の生活で顔を合わせても、軽く挨拶する程度で前のように話すことは無い。

 

 

 

「あの子達が作り上げたサッカー部なんだ………あの子達が頑張って、頑張って、頑張って……!!そうして作り上げた、私たちのサッカー部なんだ!!!それを、そんなふうに済ませていいの!?ねぇ青崎!!!」

 

「………んじゃ聞くけど。その『私達のサッカー部』って、誰を指すのさ」

 

「はぁ!?そりゃ、瑞花と、えありと……………」

 

「その2人と?」

 

「______熱人、水斗、翠、優唯!!それに2年生のみんなに、私に、貴方!!全員揃って水雲中学サッカー部の仲間達!!そうに決まってるでしょ!?」

 

 

 青崎の問に、叫びながら答える澄川。自分たち3年が土台を築き、月紙を筆頭に2年生が加わって出来上がった『水雲中学サッカー部』。それこそ自分たちの居場所だったと。

 

 

 

「へぇ、お前にとってはそうなんだ」

 

 

 そんな彼女に向けて、青崎は酷く冷めた表情でぽつりと青崎が呟く。

 

 

 

 

「……それならなんで、その『仲間達』はなんの相談も無く居なくなってんのさ」

 

「ッ!!それ、は……!!」

 

「三年生8人のうち、5人居なくなった。特に明日葉と……綿雲。仲間だってんなら、なんで相談は無かったんだ?特に澄川、お前あいつらの親友だったんだろ?______月紙達は知ってるのに、さ」

 

 

 

 そう。何も無かった。何も知らされなかった。この場の二人も、既に部を辞めた天原も。何も言われず、何も相談されず、何も出来ず。そのまま、サッカー部創部の立役者達は、霞のように消えてしまった。その理由を、その事件を、あの後輩達は知っているのに。同学年の自分たちは、何も知らない。

 

 本当の仲間だというのなら。友達だと言うのなら………何も声をかけられないのは、おかしくは無いだろうか。

 

 

 

 

 

「…………じゃあ………どうしたら、いいのよ………」

 

「どうにも出来ないね」

 

「っ!!なんでアンタはそんなに気楽でいられるのよ!!!アンタは……アンタは!!えありと仲良かったじゃないっ!!!」

 

 

 

 

 どうしたらいいのかと縋るような声を上げる澄川に、そう断言する青崎。そんな彼に、思わず声を荒らげてしまう。

 

 もう、2人だけなのだ。

 

 あの時、あの場所で………一年間、共に過ごしてきた水雲中学サッカー部を知っているメンバーで、在籍しているのは澄川と青崎だけなのだ。天原は、彼女なりの考えがあるのか何も相談してこない。そんな彼女にとって、思いの丈をぶつけられる相手はある意味青崎のみなのである。

 

 

 

「…………今更俺らが動いたところで、なんにもならないよ。俺たちは『三年生』ってだけだ。偶然この水雲中学に進学して、偶然あのバカ達と同じ学年で、偶然引き込まれた、たたそれだけ。事情を知るような立場にいないのよ、俺ら」

 

「……じゃあこのまま、卒業するの………?瑞花とえありが作って、みんなで練習してきて……それを発揮する場所がないまま卒業で、貴方は平気なの……?」

 

「さあ?平気かもしれないし、内心残念に思ってるのかもね」

 

 

 ある意味、一年生の頃から変わらぬ態度を貫く青崎。真面目で責任感のある澄川とは違い、適当かつ責任感もやる気も無い青崎だからこそ、という事だろうか。

 

 

 

「______まっ、もしかしたら変わるのかもね。入ってきたんでしょ?綿雲の言ってた『アイツら』」

 

「………【花鳥風月】と鳥と、えありの弟……?」

 

 

 

 はっと気が付いたように澄川が呟く。

 

 

 【花鳥風月】。明日葉が、綿雲が、月紙が、風見が所属していた、謎の多いサッカーバトルチーム。ある意味この騒動の根幹に位置する、そのチームメンバーならば。花鳥風月の『鳥』を関する少年ならば。

 

 

 そうして……綿雲のように消えてしまった、あの優しい少女の血縁者。彼女が愛していた、その弟ならば。何か、現状を打破出来るのかもしれないという期待があった。

 

 

 

 

「変わらないなら、俺はこのまま自由気ままに残りの学校生活過ごすだけ。ただもしも…………もしも、変わるんなら______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______あんの馬鹿共全員の頭、引っぱたかないと気が済まないね、俺は」

 

 

 

 ニヤリと笑って、彼は立ち上がる。どう転ぼうが、自分は自分を貫くだけだ。斜に構えたクズの皮肉屋なりに、それなりの事をやっていくだけ。それが、自分なのだから。

 

 

 

「特にあのちみっ子だな。人の事引きずり込んでおいて何も言わねぇとか、無責任にも程があんだろ」

 

「………プッ。ふっ、ふふっ、ふふふふ……!!」

 

「?なんだよいきなり、気持ちわりぃな」

 

「いや、ごめんごめん!……アナタほんっと、変わらないよね。何だかんだえありの事大好きじゃん」

 

 

 

 

 思わず笑みが溢れてしまった。目じりに溜まった涙を拭いながら、澄川は変わらぬ友にそう投げかける。なんだかんだとあの穏やかな綿雲と共にいた皮肉屋の青年は、とっくに彼女の暖かな風に染められていたようだ。

 

 そんな彼女の言葉を聞いて、青崎は顔を顰める。

 

 

 

 

「げっ、やめてよそういうの。柄じゃないんだって俺………それに他の奴らも引っぱたくぜ?あんのクソうるさいイノシシ女もそうだし、よりにもって俺に押し付けてどっか行きやがった馬鹿な男3人もな……ったく、なんで唯一の3年男子が俺なんだか………」

 

「それじゃ、えあり達のこと嫌い?」

 

「嫌いだね、大っ嫌いだ。人のこと面倒ごとに巻き込んどいていなくなる薄情もんだし、アイツらのせいで俺の学校生活めちゃくちゃだからな」

 

 

 

 

 あぁ全く。面倒だ、心底面倒だ。

 なんで自分がこんな事になっているのか。ただ呑気に日々を生きて、惰性で過ごしていきたかったのに。あんな奴らに出会ってしまったせいで、自分の設計は滅茶苦茶だ。人の事引きずり込んでおいて、張本人共は勝手にどっか行ってしまった。やっぱり奴らはバッカー部だろう。

 

 

 

 

 ただ、少し思う。多分二年前、この時期の自分に今の話をしても…………

 

 

 

 

 

 ______この場にいない人間のことを気にするようになってるなんて、信じないだろうなと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、そんなことどうでもいいさ。折角の特等席だ、『脇役』は『脇役』らしく、面白おかしく拝ませてもらおうじゃないの」

 

 

 

 そう笑って、彼は屋上から下を覗き込む。その先にいたのは、二人の少年。

 

 

 

 

『……………なんでついてきてんですか貴方』

 

『………………(一緒、に、行動………チームメイト、っぽい……!!)』

 

『いやだから喋って下さいよ』

 

 

 

 片や口を開かぬ、長めの銀髪をした整った容姿の少年。あのサッカーバトルチーム、【花鳥風月】において最も長く『鳥』を務めていた、口下手で、しかして確かに熱い心を持った男。誰よりも純粋に、誰よりも無垢に。バカ正直に『約束』を護るために翔ける鳥。

 

 

 片や忌々しげに銀髪の少年を見つめる、ゆるふわとした明るい緑色の短髪の少年。濃い緑色の縁をしたメガネの奥に見えるのは、何処と無く冷たさすら感じる瞳。しかし彼は彼女の……誰よりも優しい風の弟だ。自分から姉を奪ったものを見極める為、一歩を踏み出した駆け出しの風。

 

 

 

 

 変えるかもしれない。現部長の事を……恐らく誰よりも抱え込んでしまっている、孤独な『月』を掬い上げる、その主たる要因になるやもしれない。

 

 

 

 

「『もしここに来たら、2人をよろしく』……だったもんな、約束」

 

 

 

 脳裏に浮かぶ、他愛ない約束。本来の青崎ならば既に忘れ去っているであろう、なんともない約束だが、彼は覚えていた。

 

 

 

 一年間、共に過ごしてきた。偶然あの靴箱で出会って、舌っ足らずな喋り方で何度も何度も声を掛けてきて、最終的にはほかのメンバーと一緒になって自分を引きずり込んだゆるふわガール。この物語の根幹に位置する、要石たる少女。

 

 自分をこの、気苦労が多く、面倒ごとが絶えず、思い描いていた未来とは全く持って異なっている………刺激に満ちた毎日に引っ張りこんだ上に、自分だけ抱え込んで、どこかへ去ってしまった薄情者。サッカー部崩壊の、主たる要因。

 

 

 ______青崎を引っ掻き回した、最高で最低な、大罪人にして大恩人。

 

 

 

 

「さってと………どう転ぶのかね。個人的には付き合いのある在籍組を応援したいけど………まっ、せいぜい頑張って面白くしてくれよ」

 

 

 

 

 そう笑って、彼は手すりにもたれ掛かる。自分は動かない。動けない。変わるべきとは自覚しているが、同時に苦労を抱え込んだ後輩を凶弾出来るような立ち位置にはいない。唯一の3年生男子だ、自分が表立って動くのは得策とは言い難い。流れを見て、程よい塩梅を見つけて、より良い未来に転がるかどうかを見定めるのが最高学年者である自分の______否。『綿雲えあり達に魅せられた者』としての役目かもしれない。

 

 

 

 

「なぁ…………【主人公】?」

 

 

 

 

 春うららとでも呼ぶべきその日。暖かな風が、彼の前を吹き抜けて____________。

 








 タイトルにバッカー部使うか小一時間悩んだ←

 みんなかわいいかよ……(遺言)
 ハチミツ先生、こんな風にわちゃわちゃさせたいです…!

えありのかちゅぜちゅ

  • ん〜、わかりやしゅい方がいいにゃ〜
  • 加減にゃんていりゃにゃいいりゃにゃ〜い
  • ……ほどほどが一番、かな
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