ヒーローとは一種の狂人である   作:科葉諸友

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前話の個性の説明で、15日以上身に付けたものは一緒に転移できるっていうのを7日以上に直しました。

理由は特に無いです。


逃げ足に自信あり

我が神出家は4人と1匹家族だ。

父、母、姉、俺、ペット。これが神出家の構成員。

 

そしてその構成員が、今全員集まっている。

いつも仕事で帰るのが遅い親父も少し早めに仕事を切り上げ帰って来ているし、大学から帰って来たらいつも部屋に篭ってゲームばかりしている姉貴も、本来ならご飯の支度で忙しい筈の母さんまで家事を中断して。

「ペット」も俺の胸ポケットにいる。

 

家族皆でリビングにある唯一のテーブルを囲っていた。

そこにあるのは緊張感と1つの茶封筒だ。

 

何故か俺より緊張している親父を横目に、封を切る。

 

…。えっ?空?んん?

 

一瞬頭が真っ白になったが、茶封筒を逆さにすると謎の物体が落ちてきた。

そういえば茶封筒を掴んだ時に変な感触がしたけど、これか。

 

『私が投影された!!』

 

あ、どうもっす。…って、はい?

 

その謎の物体は投影機だったらしく、オールマイトが合格を伝えてくれた。

というか焦らすような合格発表するなよ。一瞬で終わらせてくれよ。

…まあ流石に落ちた人にはそんなことはしないか。というかオールマイトが担当するかも怪しい。落ちたら最早投影機じゃなくて紙で伝えられるんじゃないか?

 

まあいいや。俺は今凄く気分が良い。

恐らく受験生が最も喜ぶものを貰えたんだから。

第一志望の高校からの合格届け。

 

そう。俺、神出鬼火都は雄英高校ヒーロー科1年に合格した。ついでに入試トップで。

 

「…やたぁああぁあーっ!!」

 

「良かったねぇ。本当に良かったねぇ…」

 

「お前なら受かると信じてたぞ!」

「うわっw雄英のヒーロー科とかマジでエリートじゃんwしかもトップってwマジかw」

上から俺、母さん、親父、姉貴だ。

母さんは語彙力を失いながら涙し、親父はガハガハ笑い俺の背中を叩き、姉貴も語彙力を無くして喜んでくれてる。

いや、姉貴の語彙力はいつも通りか。

 

まあそれぞれ反応は違うが、俺の合格を喜んでくれた。

というか親父。あんた心配で昨日眠れなかったとか言ってたろ。手のひらくるっくるじゃねぇか。

 

「信じてても心配なもんは心配なんだぞ」

 

…ま、そうか。

 

肩の荷が降りたというか、なんというか。

新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のようだ、というのは某漫画から借りた言葉になるが、まあそんなとこだ。

 

なんかもう今なら空だって飛べちゃいそう。

いやまあ個性で飛べるけど。

もういっそ飛んじゃう?別に俺は飛んじゃっても良いのよ!?

 

「キビトw」

 

「なんだ姉貴?」

 

「正式に入学する前に犯罪犯すとどんなに優秀な生徒だろうが合格取り消しになるって知ってた?w」

 

「おうふ」

 

「ソースは私の友達。受かった喜びでハメ外して外で酒飲んでバレちゃって高校行けなくなっちゃったw」

 

「マジか」

 

「マジよw」

 

マジかー。止めとこう。うん。止めとこう。個性を外で使うのは軽いとはいえ犯罪だ。

流石に目立つ使い方は良くない。

危うく合格取り消しになるところだった。俺は馬鹿か。その点姉貴ってすげぇーよな。最後まで草たっぷりだもん。

 

っと。俺の胸ポケットから「ペット」が出て来る。

コイツの名前はアダンソン。アダンソン・神出だ。俺が名付けた。最高にセンスの良い名前だと思う。

 

「どうしたアダン。お前も俺の合格喜んでくれてるのか?」

 

アダンが頭を縦に振る。可愛い奴め。

 

「なんか最初はキモかったけど段々可愛く見えてきたわwやばいw洗脳されてるのかもw」

 

「やっとコイツの可愛さに気づいたか姉貴。ほら見ろ俺が正しかったろ?」

 

「いやw蜘蛛をペットにするとかどう考えても正気じゃないでしょwしかも10センチの蜘蛛とかwどう考えても異常個体w」

 

「そうだぞ。コイツは特別な蜘蛛なんだ。もうヴェルター○オリジナルあげちゃうレベル」

 

というか蜘蛛は益虫なんだぞ。コイツ…アダンソンハエトリグモ、というかハエトリグモは巣を作らない種類だからダニとかを取ってくれるだけの有能ペットなんだぞ。

あと可愛い。サイズもスマホくらいの手乗りサイズ。エサも人のご飯の残りで平気。

やはり有能だ。

 

…取り敢えず受かった。それだけで良い。今日は旅行に出かけよう。最近のマイブームのオーストラリアとかに行こう。

流石に遠すぎるからちょっと時間がかかるけど成長したからせいぜい5分くらいで転移できる。

個性訓練と称して色んな所に転移して遊び回った甲斐があった。

 

「姉貴も来る?」

 

「行くわーw」

 

因みに姉貴は小さい頃おんぶしたり筋トレで上に乗ってもらったりとか色々してる内にいつの間にか一瞬に転移できるようになっていた。

勿論アダンソンも。

さーて、遊ぶぞー!!

ーーーー

 

 

さてさて。時間がググッと飛びまして入試式の日。

俺はついいつもの癖でどうせ転移できるからいいやと時間ギリギリまで家にいた。

で、転移を発動しようとした所で気がついた。

あ、制服とカバン持ってからまだ7日経ってねぇ。転移したら服が脱げちゃうッ!

 

びっくりな事実。一応制服を事前に着ておいて既に何日か過ごしといたけど、まだ7日には達していない。

 

……。

時計は俺に残された時間はあと8分だと示している。

 

ワーオ。

 

考えろ考えろ考えろ。

 

私服登校?…これは最後の手段にしとこう。最悪登校中川に落ちてずぶ濡れになって、一旦家に帰って着替えたとかでいける。あ、でもカバン持ってけない。

 

プルスウルトラ?却下。無理だわボケ。

 

頼れる親父に電話?却下。あの人ピンチの時ほど役に立たな………それだ!!!

 

「もしもし親父!?今何処!!?」

 

スマホを素早く起動させ親父に電話をかける。

 

「え?○○駅だけど?」

 

「今行く!!」

 

親父は「物飛ばし」という個性を持っていて生物以外のものを好きな場所に飛ばせる。

つまりは親父に制服とカバンを飛ばしてもらい俺は自分を飛ばす。

これでオールライト。

○○駅ならここから走って5分だ。駅近な我が家に感謝だぜ。

 

 

ーーその後。

 

俺は無事に時間に間に合うことができた。

入学初日に校門の少し横にパンツと中シャツ姿で現れたのは恐らく俺が初めてだろう。急いで制服を着て走って教室に行けば間に合った。

 

…そういえばパンツ姿を誰かに見られた気がするけど、気のせいだな。

 

入学早々遅刻ギリギリ。クラスメイトもちょっとビックリしてた。

クラスで浮いたらどうしよう。

と、その時、俺の鼓膜を可愛らしい声が揺らした。

 

「あ!!転移の人!!!」

 

?…!!あの助けようとした少女じゃないか!

そうだよそうだよ!このためにフラグを立てたんだよ!

いやぁーこれはクラスで浮くどころか入学早々リア充か!?

 

「おはよう。俺は神出鬼火都っていうんだ。気軽にキビトって呼んでくれ。よろしくな」

 

よーしイケメン挨拶。昨日寝ないで(5分くらい)考えた完璧な自己紹介。サラッと名前呼びを強要する当たりがポイントだ。

 

「よろしく!私は…」

 

だがしかし。少女がそこまで言ったところで俺達の青春(笑)は止められてしまう。

 

イモムシのような寝袋から不健康そうなおじさんが1匹出てきやがった。

なんだ?不審者か?おぉん?やんのか?俺の青春を邪魔する奴は容赦なく殴るぞ?

 

…え?担任?…おいおい雄英、マジかよ。

 

は?グラウンドに出ろ!?頭沸いてんじゃ…あ、はい、別に睨んでなんかいません。だからこっちをチラッと見ないで下さい。その無駄に眼力のある目でこっちを見ないで下さい。

 

親と子供、資本家と労働者。この世には覆し難い力の差があるのだ。

だから支配階級である先生からの命令は、被支配層である生徒の俺はを従わせるのに十分な力を持つのだ。

歴史は繰り返されるもの。この大きな力の差は何百年という歴史の中で表面上は埋まったように見えても実際のところ…

 

え?長い?あ、はい。すみません。

 

 

ーーーー

 

 

チキチキ!個性ありの新体力テストォォオオオオ!!!

 

あ、最下位は除籍ね。

 

相澤と名乗る男はそう言った。(言ってない)

俺の推理を聞いて欲しい。実はこの男、先生を名乗る全くの部外者で雄英に侵入して来た敵なんじゃないだろうか。

 

俺がそんな名探偵ムーブをしていたら、アイツは入試トップの俺じゃなくて爆豪にボールを投げるように指示してた。

一瞬俺の方を見たが爆豪に投げるように言ったのだ。

で、爆豪はそれはそれはやっべえ記録を出したとさ。

 

コイツ、内部情報を知ってやがる!?

それも入試順位から各生徒の個性まで。これは危険だ。今のうちに消しておくか…。

 

あ、やめて。冗談だから。というかなんで心の声読んだかのようにこっち見るのさ。

そういう個性?だとしたら俺とっくに除籍確定されてそう。

ここは1ついい所見せないと。

 

 

ー50メートル走ー

 

「先生、本当に何をしても良いんですね?」

 

具体的に何をするかを言わないで再度確認をとる。

 

「ああそうだ早くしろ」

 

言ったなぁ〜?

 

それはつまり、服を脱いでも良いってことですよねッ!!

 

俺氏、50メートル走タイム0.02秒。

 

人間の反応速度の限界はおよそ0.2秒と言われている。

しかし、俺はその限界を超えることに成功した。

簡単に言えば、スタート合図が来るのをだいたいこれくらいかな〜?と考えて予測で個性を発動した。

たとえ精神的にフライングだろうと実際に動き出した時間がフライングしてなければセーフなのだ。

 

1回目はそんなことはしなかったが、2回目にはもう1回目で記録が出ていたためさらなる向上を目指してこれを行った。

狡いように思えるが、よく考えてみて欲しい。

 

もし戦闘で敵と対峙した時、こんな状況が有り得るのか。

スタート合図が送られてからじゃないと動いてはいけない?

そんなことはない筈だ。もし人質がいても俺の個性でいきなり現れて敵を蹴り飛ばせば問題ない。

 

「何故服を脱いだ?」

 

「7日以上身に付けていないものは一緒に転移できない個性なんですよ」

 

「…はぁ」

 

俺は水色と黒の縞パンを晒す代わりに除籍回避を行うことに成功した。

…まだまだ新体力テストは終わらないが。

この調子で全部乗り切れるかな。

俺は制服を着ながら考えた。

 

ー握力ー

 

いくら強個性とはいえ出来ないこともある。

右手と左手の平均が42。

これが記録だ。仕方ない。

 

 

ー幅跳びー

 

 

まあそうだよね。空中で転移しまくって遊んでたらこう判断されましたとさ。

∞!!

 

 

ー反復横跳びー

 

 

これも俺の個性が強個性と言われる理由の1つだが、この個性、クールダウンを必要としない。まあ要するにやろうと思えば1秒間に何百回も発動できる。…流石に距離が空くと無理だけど。

 

とまあそんなわけで。残像による分身が3つできました。

測定不能により∞!!

ここら辺でみんな俺のパンツ姿に慣れちゃったね!

 

 

ーボール投げー

 

 

…これは俺の中で重要なものだ。

握力とかとは違って「やろうと思えば記録を伸ばせる」種目だ。

 

「…おらっ!!」

 

俺は気合いを入れてボールを真上に投げた。

そして空中のボールの横に転移。ボールを掴んで上に投げる。

 

これをしばらく繰り返し、息が苦しいほど酸素が薄いところになったら止め、

 

足から落ちる。

 

大丈夫。スカイダイビングなら個性の暴走で何回も経験済みだ。

落ちる。オチル。おちる。

 

そして地面ギリギリで身体の向きを変える。上手く手でボールを掴んだまま、45度傾ける感じ。

 

そして、投げる。だいたい標高5000メートルくらいから落ちた。その力を、ボールに乗っける。

右手を大きく振りかぶり脚を引く。

最後に指で押し出して終わりだ。

 

で、そのままだと白線からはみ出てしまうので転移。向きを鉛直上向きに転移。

減速し止まったところで地面に転移。

 

で、転移。ボールの横に現れ、掴み、投げる。

 

おお。結構飛んだな。

結果、512メートル。まあ、そんなもんか?

 

 

 

「緑谷くんはこのままだと不味いぞ」

 

眼鏡の奴が言う。俺か?俺に話しかけたのか!?

 

「ったりめぇだ!無個性の雑魚だぞ!!」

 

うおっ!なんだよお前!何?爆豪?あ、そう。

 

アイツ、入試で0p敵ぶっ壊した奴だよなぁ。

で、その後全身大怪我した奴。

 

怪我を代償に力を得るとか、そんなところだろう。

というかアイツ受かったんか。

敵pが1ポイントも貰えなかったとか言ってたから、救助pで受かったのか?

 

…ガチのやべぇ奴じゃねぇか。

自己犠牲大好きマン。Mなのか?Mなんだな?なんだただのMか。

 

って、えぇー。すげー飛んでる。

なるほど、指だけに個性を使ったのか。

 

…って、おい!ダウト!!おかしいぞそれ!

指だけでそれはおかしい!

オールマイト並だよそれ!

 

…いや、あの0p敵ぶっ飛ばすくらいだしそれくらいできるのか?

よく考えれば踏ん張りが効かない空中で殴ってあれだしな。

なんだよそのジャンプ漫画主人公みたいなの。

…まあ、羨ましくはないな。寧ろ絶対なりたくない。

 

 

ー上体起こしー

 

 

俺の個性は体勢を変えながらの転移はできない。

 

自分の身体の1部分だけの転移はできる。実際に爪の白い部分だけとか、髭だけとかを転移する実験に成功した。

 

が、自分の上半身だけを転移するのは無理だ。いや、できるが、絶対したくない。

理由は簡単。胴がちぎれるからだ。どんなに上手くやっても数ミリ「ズレる」だけでアウトだ。

 

よって結果は普通。30だった。

 

 

ー持久走ー

 

 

これは本当にガバガバな競技だった。

一直線だったら転移で一瞬なのだが、輪状のコースだったからそうは行かず。

結局コースに沿って転移を連発した。

で、記録は0.2秒。まあ、転移個性だもんね。仕方ないね。

 

 

ー長座体前屈ー

 

 

こう、ググッと。

地味にそこそこいい記録。42。

 

ーーーー

 

 

除籍はウソだよーん。

 

…。

 

随分演技力が高いんですね。というか変人だから何してもおかしくないと思っちゃいましたよ。

あっははは。

 

はぁ…。

 

あ、因みに順位は1位だった。

どういう判断基準なんだろうかこの順位。

まあいいや。

 

今は下校中だ。一人で。

 

やっぱり友達出来なかった。いや、スタートダッシュ遅れただけだから!!まだまだ巻き返せるからッ!!!

 

と、俺が脳内で言い訳大会を開きつつ明日は早めに登校しようと決意していると、後ろから声をかけられた。

 

「おいそこのクソ白髪!」

 

失礼なッ!そういう髪の色ってだけで白髪ではない!断じて違う!

 

「なんだ4位か」

 

おっ。イラついてるイラついてる。ああいう性格の奴は順位を気にするのだ。俺が1位、おっぱいが2位、紅白が3位。

アイツは4位だ。

もう一度言おう。俺が1位。アイツは4位だ。

 

「誰が4位だってこらてめぇ!!」

 

「お前のことだよ4位」

 

「がーー!!!」

 

なにこれ面白い。4位。ほら4位。4位4位4位。

顔真っ赤じゃん。

 

「次はぜってぇ負けねぇぞクソが!!」

 

それが言いたかったのか。

いやまあ今回のテストは俺の個性の相性が良かっただけだしな。

 

「…わかった。楽しみにしとくわ。4位」

 

「4位って言うな!」

 

その後彼は「ケッ」と吐き捨てて去って行った。

 

やっぱり面白い。今度からアイツと話す時は語尾を4位にしよう。

小さくなっていく彼の背中を見ながら俺はそう考えるのだった。

 

その時、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

 

「あっ!キビト君!」

 

あの名前を聞きそびれた女子だ。なんて言うんだろ。あ、そういえば緑谷が麗日って言ってたな。

 

「麗日さん?」

 

「そうだよ!なんでわかったの?」

 

そうだよと聞くと淫夢に繋がる。あ、いやそうじゃない。

 

「そっちの緑谷くん?が言ってたから」

 

緑谷がビクっとする。おう。典型的なコミュ障か。

 

「あ、名前合ってる?飯田君が言ってたんだけど」

 

取り敢えず中身のない薄っぺらい会話を繋ぐ。

その後飯田も含め4人でだべりながら帰った。

 

道中の会話で緑谷の俺の個性への食いつきが凄かった。

応用性がどうのとか色々言ってた。

もう典型的なオタクだった。

 

これには麗日さんもニッコリだ。引かれたな。

強く生きて緑谷!少なくともスカしたイケメンとかよりは好感持てるよ!

 

 




主人公の容姿

透明感のある白い髪は短髪で、乾燥気味な白い肌を持つ。目の色はグレー。でも私服はカラフル。

身長は175で平均的。声は切島くらいの低さ。

まとめ そんなに特徴的ではないよ!

オリキャラ追加について。

  • 許すまじ
  • マジ許す
  • 助言だけ残して去っていく謎キャラを出せ
  • 出すんだったらキチンと設定を練って欲しい
  • 適当な他原作から引っ張って来い

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