ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!   作:オールドファッション

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前話の出来事に混乱されている方向けの説明

・イエスロリータゴータッチの変態がネッサンのお腹をぺろぺろしただけで陵辱エロ同人的な展開にはなっておりません。その後スーパーイケニ人が下半身ごと捥いでます。

・前回でローマ陣営が死にましたが正確には死んではいません。この話で明らかになります。

・唐突なシリアスに心臓を潰された方々もいると思いますが、展開上ネロとブーディカが対立する必要があったのでこんな胸糞展開になっております。これからどうなるか心配されていると思いますがこのルートでは基本グッドエンドです。なによりルシウスを信じろ。


ルシウスが捕まるわけないだろ!いつから私が戦えないと錯覚していた?

 ああ煩い、水の滴り落ちる音が鳴っている。瞼を開けば足元に水がたまり、トーガが肌に引っ付く嫌な感触が煩わしい。水たまりに赤色が混じっている。口内に充満する鉄と生臭さで思わず吐き出し咽せた。水たまりがより赤く染まる。切り傷の鋭く液体が染みる痛み。打撲の皮膚表面が熱を持つような鈍い痛み。骨折の電撃みたいな強烈な痛み。痛覚のカクテルが脳幹に流し込まれて叩き起こされる。

 

(何でここにいるんだっけ? 家でぬくぬくと寝てた筈なんだけど)

 

 ネロ帝に呼び出された後、そのまま家に帰り死んだように寝ていた。そして気づけば自宅の椅子に縛り付けられローブの集団にリンチでこんな有様だ。読書感想文にもならない簡潔な説明になる。後日、先生に怒られて図書室で居残りさせられるパターンだな。

 

 周りを囲んでいる男たちがルシウスの腫れた顔に冷水を乱暴にかける。水が傷にも骨身にも染み、声が出そうになるが喉の奥から何も出てこない。

 

「不思議そうな顔してますねぇ」

 

 囲んでいた男たちが両脇に下がり、妙に偉そうな子供がずる賢そうな笑顔を湛えてルシウスの前に立つ。目と目が合ったかと思えば子供が持っていた針のような器具をルシウスの足に深々と突き刺さした。反射的に悲鳴をあげそうになるが喉が硬直したように声がでない。

 

「痛くても声が出ないんですよね。何でもギリシャの蛇の怪物を元に再現した停止の魔眼らしいですよ。魔術で人払いもしてくれましたし、魔術師って本当に何でもありですよね。人の生皮を被ることでその人に成り変われたり、対魔力のない相手の思考を誘導出来たり、本当に使えますよ」

 

 ああ、だからローブのおっさんがずっとガン見してたのかとルシウスは納得した。ドライアイになりそうとちょっと心配になる。

 

「それにしてもずいぶんあっさりと捕まってくれましたね。何か裏があるんじゃないかと疑うか、それともただの馬鹿なのか。英雄だ何だと称えられるわりには大した男ではないですね」

 

 ただの馬鹿です。縛られて拷問されている間も爆睡していました。

 

 ルシウスの呑気そうな顔に苛ついたのか、子供は新しい針を足に突き刺す。先ほどから激痛が走る部分に深く突き刺す割には出血は少ない。平然とした様子から拷問に手馴れているように感じた。

 

「貴方は僕のことなんて知らないでしょうね。僕が今までどんな思いで生きてきたのかなんて興味もないんでしょう。だが、僕には貴方に復讐する権利がある。今度は僕があなたから全てを奪う番だ……!」

 

 目の前で復讐ムーブかまされているが、ルシウスにはまったく身に覚えがなかった。だってそういう裏仕事は大体古弟子達が処理しているんだもん。

 

 魔眼使いが瞬きをしたわずかな時間に溢れたその先の言葉は、まあ空気は読めていなかったが正しい反応ではあった。

 

 

 

 

「え、誰?」

 

 

 

 

 周りを囲んでいた魔術師達もドン引きするほどの素の反応。目の前の子供も想定外の言葉でフリーズした。だが脳が再起動すると怒りで眉間の血管から血が吹き出し、針を掴んでいた手に力が篭る。

 

「ま、まあ、このまま殺すこともできますが、それでは面白くありませんしねえ、私はしばらく離れ…」

 

「眉間から血出てるけどハンカチいる?」

 

「お前少しだまれ!魔眼発動!」

 

 魔眼でルシウスが停止している隙に怒りを我慢している雇い主を素早く外へ連れ出した魔術師チーム。もうこれだけでやりきった感がすごかった。というかローマに来てからというもの美味そうな料理や見たこともない建物が気になって仕事にまったく身が入らない。はやくルシウスを始末してローマ観光したい気持ちでみんないっぱいだが、雇い主からのしばらく痛めつけてから殺せという契約に縛られている。

 

「ふう、喉乾いたぜ。ちょっと水飲んで……お、水の入ったコップがあるじゃん」

 

「やめとけよ、こいつの飲みかけかもしれねーぜ」

 

「別に構わねえよ」

 

「あ、それは…飲まない方が…」

 

 魔眼の魔術師がそのコップを掴んだ瞬間、ルシウスがおそらくこの場で初めて動揺を見せた。今まで能面のように拷問を耐えて来たルシウスの変化に思わず頬が緩む魔術師たち。その心境はにらめっこしていた能面の相手がようやくそれらしき反応を見せ始めた時のもの。まあ、もともと爆睡と魔眼の効果で勝負にもなっていなかったがな。

 

 魔眼の魔術師は思った。おそらくルシウスは喉が渇いているのだろう。拷問とはいわば互いの精神力の駆け引き。どちらかが精神的に優位に立っていれば、その影響は終盤まで続く。ならばこの場で水分補給できなかった方は断然に不利であろう。その上、喉が乾いた状態でうまそうに飲まれたら精神力の消費は絶大なはず。

 

「あげねぇよ。バーカ」

 

 魔眼の魔術師はドヤ顔を決めながらコップの水を飲み干した。他の魔術師たちでもちょっとむかつくレベルのドヤ顔。決まったぜ、お前がナンバーワンだと心の中で拍手する。

 

 だが、変化は唐突に起きた。

 

「へへ……うっ!」

 

 魔眼の男は突然、喉を掻き毟るように苦しみ悶えた。それもそのはず、なぜならそのコップの水はルシウスがトリカブトをいける花瓶の代わりにしていたもの。その水は帰って来た時に花を取り替えようとしたまま寝落ちした時の水だ。つまり前日からトリカブトがいけてあった毒成分たっぷりの水をドヤ顔で飲み干したことになる。

 

 魔眼の男はドヤ顔を決めたままその場で息を引き取った。

 

「て、てめぇ!一体なにをした!」

 

「やっぱり罠だったのか!畜生やられた!!」

 

 そっちの完全な自爆である。

 

「もう容赦しねえぞ!てめぇはここで殺す!」

 

 囲んでいた魔術師達が一斉に魔力の弾丸を放出した。一発当たれば人の体など粉々にできる威力の魔術の嵐に砂埃が舞う。見えなくとも的は縛られているのだから照準を変えずに撃ち続けられた。さらに砂塵が舞い部屋の中に充満する。

 

「やめだ!煙で何も見えねよ!」

 

 あまりの砂煙でむせる者も出始めた頃、誰かの静止の一声で頭に血の上った魔術師達は一斉に攻撃を中止した。

 

 冷静になった頭で何を慌てていたのだろうかと全員が後悔する。敵は縛られた男一人のはずなのに、その場の全員が今ここでこの男を殺さねばならないような強迫観念に苛まれていた。殺す必要なんて最初からなかったはずだ。

 

 皆は報酬は減るだろうと気を落とすが、ルシウスが死んだという安堵の気持ちが強かった。煙がようやく晴れて死体とご対面するであろう瞬間、

 

「ぐおっ!」

 

 魔術師の一人が空中へ円を描くように舞った。メンバーの中でもかなりの巨躯の持ち主だ。巨体が地面に落ちると同時に煙が晴れ爆心地があらわになる。

 

「お、お前は!?なぜ、どうして!?」

 

 そこにはあのルシウスが立っていた。体中魔弾が掠め拷問の傷も合わせれば五体満足とは言い難いが、どれも奇跡的に急所を外している。おそらくは何らかの手段により縄から抜け出し、素早く床に身を伏せたのだろう。

 

 精神的駆け引きで上位に立っていた魔術師たちが、その想定外の状況によりどん底へ突き落とされていた。だが、相手はあと一発でも当てれば倒れそうなほど弱っている。何人かが勇気を振り絞りルシウスへと突貫した。

 

「う、うおおおおお!!!」

 

「ま、まて!そいつはおそらく!」

 

 魔力により身体能力を向上させた魔術師三人が獣の俊敏さで迫っていく中で、ルシウスは至って冷静に息を吐き腰を深く落とした。その初動に何人かが反応する。目の良い者たちはその流麗な動きを捉え、ルシウスの拳が彼らの急所を穿つ瞬間を目撃した。三人が力つきその場に倒れ込むと同時に叫ぶ。

 

「なぜだ!なぜローマ人であり、浴場技師であるお前が我が国の技術を使う!!」

 

 彼らはルシウスの技を知っている。ギリシャ人である彼らだからこそ気づいた。古代ギリシャの格闘技にして『全力』を意味するその技の名。

 

「いつから私は非戦闘職だと確信していた?私はギリシャ、アテネに赴いたとき既に“パンクラチオン”を会得している」

 

 この男、何気に原作一巻通りにギリシャに赴いてみたが、建築学を学ぶ前に悪質なキャッチセールスに捕まり無理やり格闘技を覚えさせられ有り金を持って行かれていた。ルシウスにとってギリシャなど荒木作品の一部二部も真っ青になるほどの苛烈な修行の思い出しかない。

 

「くっ、全員で掛かればお前なんて…」

 

「密室の中でパンクラチオン使いを相手にする危険性を知らないわけではないだろう。私がその気になれば、数分でお前らを半分程度に減らすことなど造作もない」

 

「う、嘘だ!お前だって満身創痍のはずだろう!?」

 

 そう嘘である。拷問のダメージに加えて先ほどの動きで無理がたたり全身ボロボロ。元々戦うのが嫌いな性格が災いし、普段は使わない筋肉の酷使により筋繊維がずたずたであった。あと一撃でも擦れば気絶するだろう。

 

「提案がある。ここから出て外でやり合おう」

 

「何?」

 

「私も自分の家がめちゃくちゃにされるのは困るんでな。そっちにとっても悪い条件ではないだろう」

 

 確かに基本中距離攻撃、遠距離攻撃の魔術師たちにとって密室での戦闘では全力が出せない。わざわざ近距離攻撃を使うルシウスが自身のホームグラウンドを捨てる点については不可解ではあったが、十分に美味しい条件ではある。

 

「いいだろう、その条件に乗ろう」

 

「よし、じゃあまずは私が先に出よう。背中に攻撃して来たら即パンクラチオンだからな?」

 

「ちっ、構わん行け!」

 

 魔術師たちがルシウスの背中を見つめ続ける中、ルシウスは計画通りと笑みを浮かべた。なぜならルシウスの隣の家はペトロ宅。キリスト教の総本山であり、ここ最近の磔の影響で家の中には護衛もたくさんいる。何よりペトロ本人も磔のされすぎで割と不死身になっていた。異教徒の魔術師にはキリスト教をぶつけるんだよと、関係のない人間を巻き込もうとするクズである。

 

 ルシウスは家から抜け出すと真っ先にペトロ宅に逃げ込んだ。

 

「ペトロ、助けてくれ!ペトロ……あれ?」

 

 そこには誰もおらず、テーブルの上にぽつんと置き手紙のみがあった。

 

 

『度重なる磔被害により引っ越ししました。ご近所さんが入信するなら帰ってくるのもやぶさかじゃないんだからね!』

 

 

 終わったと思った。だいたいこいつの自業自得とネロのせいであるがな。

 

「おい、どこ行ったあいつ!」

 

「ひぇ!どこかに隠れられる場所は……ん?」

 

 ルシウスは何とか隠れられる場所を探していると、何とペトロの隠し風呂を発見する。おい、風呂禁止とかのルール立てた宗教の聖人なにやっとんねん。

 

 魔術師たちはペトロ宅を荒らし回ったが、壁の中に隠された風呂の中にルシウスの血塗れのハンカチだけが浮かんでいた。ぶっちゃけ瀕死の重傷を負ってるしルシウスは死んだことにして魔術師たちは報酬を貰おうと口裏を合わせるが、それが彼らに何倍もの仕返しとなって返るとは予想だにしなかっただろう。


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